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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第4章 成荘湖の上空で
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湖上空の戦い



 死司神達が結界へと一斉に動いた。


〈トウゴウジさん!〉


〈えっ!?〉素早く視線を巡らせる。


〈ゴウちゃん師匠!

 結界から離れて破邪して!〉


〈彩桜クン!?〉どこ!?


〈結界の外! 龍神様と一緒!

 コッチは任せて! とにかく離れて!!〉


〈確かに……これじゃあ無理よね。

 わかったわ、破邪ね。

 浄化も有効かしら?〉


〈うんっ!〉


〈皆! 少し降下して破邪と浄化を放つのよ!

 目標は上の死神!〉


〈はい!〉弟子達 一斉!


 ウィスタリアとナスタチウムは各々が目隠しの結界で身を包んでいるので、自由に死司神達の間を飛んでいた。

ウィスタリアの背では紅火が具現化大剣を振るって死司神達の鎌をブッタ斬っている。

それを見たナスタチウムの背の彩桜も剣を大きくしてブン回した。


〈斬ると鎌の先が消えるんだ~♪〉


それでも数で圧倒する死司神達は次々と結界に鎌を差し込む。



 結界内のトウゴウジも破邪を纏わせた具現化剣を手にしており、素早く動いては差し込まれた死司鎌の柄を斬っていた。


〈ゴウちゃん師匠! も少し離れて!!〉


叫びつつ彩桜が結界へと破邪を飛ばした。


それが触れるより一瞬早く結界が光を帯びた。


〈ほえ?〉


〈響チャンとヨシさんね♪〉


〈ヨシさん?〉


〈私と響チャンのお師匠様よ♪〉


〈そっか~♪〉


 対岸に神眼を向けても合掌している響しか見えなかったが、御札の文言を唱えている声は重なって聞こえた。


〈狐神様、龍神様、御無理なさいませぬよう。

 気付かれぬ程度にならば妨害しますので!〉

正気な死司神達が一瞬だけ互いや獣神達に目配せや小さく笑みを送っている。

〈そうだ! 破邪を当ててください!

 私達に当たっても清々しいだけです!

 落ちた奴を連れて帰りますのでっ!〉


〈うんっ♪〉破邪球連射♪


ウィスタリア達も破邪球を連射し始めた。

紅火は彩桜の破邪球を具現化大剣で拾って増幅し、剣から連射を始めた。



 正気な死司神達は破邪球を避ける振りをして周りの死司神達を突き飛ばしたり、鎌を絡ませたりするので、黒い集団は次第に騒がしくなっている。

やがてそれは連鎖し、連鎖が連鎖を呼んで大混乱となった。


〈面白いわねっ♪

 皆! 張り切っていくわよ!〉

トウゴウジがフォンッと剣を振り上げて大混乱な黒い集団を差す。


〈はいっ!〉トウゴウジの弟子達、一斉♪



―・―*―・―



 死司最高司ナターダグラル(ザブダクル)は、そんな下の様子ではなく、眼前に現れた瑠璃鱗の龍神を睨み付けていた。


〈エーデラーク、また姉なのか?〉


〈はい。

 話し合うべきですか? それとも――〉


〈邪魔をすると言ってきたのだ。

 以後そのような事が言えぬよう痛め付けよ〉


〈はい。では僕から離れてください。

 この姉と戦うのは命懸けになりますので〉


〈ふむ……〉暫し考え、更に上空へと瞬移した。

〈命懸けとまでせずともよい。

 抵抗するのならば応戦するとの意志さえ伝わればよいのだ。

 危うくなれば逃げよ〉


〈はい。ありがとうございます〉


〈儂に……礼か?〉


〈命を落としても已む無しと思っておりました。

 ですが逃げよと仰ってくださいましたので。

 では……集中しますので〉心を閉ざした。



 光を纏った碧龍と瑠璃龍が間合いを詰め、絡み合った。

各々の鱗色をした雷光が迸って拡がり、また、打ち消し合う。



 獣神の術は知らぬが……

 瑠璃光の方が強いと見える。


 姉ならば弟が逃げる隙くらいは

 与えてくれようか?


 それとも既に敵でしかないのか?

 マディア……無理はするな。



―◦―



 そんなザブダクルの思いは知らぬまま、ラピスリに取り込んでもらったマディアは嬉しさそのままに胸に飛び込んだ。


【父様っ♪】


〖マディア、よく耐えているね〗よしよし。


【今のところ悪さしてませんので♪】


〖そう? でも無理をしてはいけないよ?

 ルロザムールに伝えれば、こうして出て来られるようにするからね?〗


【はい♪】



―◦―



 その横で兄と姉は――


【ではマディアに入ってみます】


〖ラピスリと手合わせ出来るとは……〗


【私では不足ですか?】


〖いや、嬉しくて仕方がない〗フッ。


【そうですか】ふふっ♪



―◦―



【えっ? 僕の身体が動いてる?】


〖うん。話している間、全く動かないのも不自然だからね、ラピスラズリとラピスリが手合わせしているんだよ。

 だからマディアの身体を借りているよ〗


【見ながら話していい?】


〖勿論。俺も見たいと思っていたんだ〗


【父様と一緒に、って嬉しいな♪

 わ~、速っ! やっぱり凄い……】


〖でもマディアの身体なんだから、マディアだって同じ動きが出来る筈だよ?〗


【そっか……頑張って修行します♪

 目標が見えたの、とっても嬉しい♪】


〖俺はマディアが元気になったのが嬉しいよ〗


【と~っても元気いっぱいだよ♪

 あ♪ この前ね、封珠からエーデの声が聞こえたんだ♪ 込めてたみたい♪

 だから会いたくなって……会えるようにしなきゃ、って頑張ってるんだ♪】


〖頑張るって、どんなふうに?〗


【えっと……父様に渡したザブダクルの夢、って言うか記憶かな?

 見たでしょ?】


〖うん。皆で共有させてもらったよ〗


【僕、ザブダクルは良い王様だと思うんだ。

 だから仲良くなって、ちゃんと話したら無差別復讐なんてしないと思うんだ。

 それに……毎日一緒に居て、なんか見方が変わったって感じなのかな?

 僕も仲良くなれたらな~って思うようになってて。

 今も自由なんて全然だし、普通に話すなんて程遠いけどね、なんだか……ダグラナタンを許した時みたいな……気持ちが軽くなってくみたいな……そんな感じなんだ】


〖そう。マディアが思うようにするのが一番だと思うけど、無理矢理に自分を言い(くる)めて納得したと思い込まないでね?〗


【うん。それは大丈夫だと思ってるよ。

 グレイさんともコッソリ文通してるし、ルロザムールも友達になってくれたから最初みたいに困ってないんだ♪

 最初は頭の中が真っ白になったみたいで何も考えられなくて『どうしよう』しかなかったけど、今は普通にエーデラークしてられるから大丈夫だよ♪】


〖それなら良かった。

 グレイも元気? 大丈夫?〗


【うん。最初はグレイさんも落ち込んでた。

 でも今は物凄い勢いで修行してるよ♪

 ユーチャ姉様は修行に出てるって事にしてるから負けられないってね♪】


〖少し安心したよ。

 でも、これからも時々こうして会うからね〗


【うんっ♪】


〖俺も戦いは好まない。

 だから説得してもらえるのなら嬉しいよ。

 でもね、マディアが笑顔で居られる方が遥かに大事なんだ。

 それだけは忘れないでね?〗


【うんっ♪ 僕ね――】〈もうよい! 退()け!〉

【あ~あ、呼ばれちゃった~】


〖マディアを心配しているのかな?〗


【さっきも『危うくなれば逃げよ』って。

 やっぱり優しいんだよ】


〖そう……仲良くなれるといいね〗


【うん♪ それじゃあ行くね♪】


〖でも……まだまだ気を付けてね?〗


【はい♪】


ラピスリが戻った。

【マディア!】【うん!】

皆で気と機を合わせて押し戻す。


【また会おう!】【姉様ありがと♪】

〖次で離れろ!〗【はいっ、兄様!】


 ラピスラズリが放った(いかずち)(かわ)す形でマディアは上手く間合いを取った。

その勢いを利用して火炎を放ったマディアが身を翻して大きく離れた時、ザブダクルがマディアの前に現れ、両手を広げて睨み据えた。

「これ以上させぬ!!」

禍を瞬間的に膨張させて放ってきた。


〖〖【滅禍浄破邪!!】〗〗


巨大な禍が消え去った時には既にマディアとザブダクルの姿は無かった。


〖意外と元気そうで良かったな〗【はい】


〖心配は尽きないけどね〗父、苦笑。


【最後の敵神の行動は……?】


〖マディアを護ったとしか思えぬな〗【はい】


〖マディアはザブダクルとも友達になれるのかもしれないね〗


〖【ふむ……】〗



―・―*―・―



 離脱の初手こそ瞬移したが、疲れているだろうから飛べばよいと言われたマディアは速度控え目で飛んでいた。


〈ありがとうございました〉

ザブダクルは背に乗っているので、仕方なく前を向いたまま頭を下げた。


〈ん?〉


〈命拾い……できましたので〉


〈ふむ……先程のは、、いや、何でも……乗り物を失うと不便なのでな〉


〈そうでしたね。でも嬉しいので〉


〈……嬉しい、か……〉


〈はい♪ あ……〉


〈如何した?〉


〈死司の皆様、()ったらかしですが……〉


〈今日のところは構わぬ。

 明日からまたルロザムールに励まさせよ〉


〈はい〉


〈……姉は何か言っておったか?〉


〈いえ、特には〉


〈妨害の理由は?〉


〈それでしたら、おそらくなのですが……〉


〈構わぬ。申せ〉


〈堕神の殆どが獣神です。

 ですので頻繁に怨霊化させられている事に対する怒りではないかと……〉


〈ふむ……モグラには程々にせよと言っておく。

 それでよいか?〉


〈はい。ありがとうございます〉



―・―*―・―



「偉そうな奴、とっくに帰ったわよ?

『退け』って聞こえなかったの?」嘘だけど♪


トウゴウジの声に死司神達が後ろを見上げ、戸惑い顔を見合わせた後、次々と姿を消した。


〈彩桜クン?〉


〈疲れて眠った〉

紅火の声で気付いた狐儀が彩桜を回復光で包んで微笑み、帰って行った。

トウゴウジには見えていないのだが。


〈そう……お兄さんもお疲れさま。

 目覚めたら『ありがとう』って伝えていただけるかしら?〉


〈ふむ。上空で待機する。

 労いは皆に向けてくれ〉


姿は見えないままだが、上昇したのは感じた。


〈ありがと♪

 それじゃあ皆は街に帰って休みなさい。

 お疲れさま〉


〈はい〉一斉に霊道へ。



〈お~いトウゴウジ♪〉ナンジョウ登場。

ホウジョウを掴んでいる。


〈今頃!? もうすっかり終わったわよぉ〉


〈何がだよ?〉〈何事かあったのだな?〉


〈知らずに来たの? 兄弟揃って?〉


〈お師匠様が結婚したって聞いたからな♪〉

〈ナンジョウに引っ張られただけだ〉


「あ、あの……」下から聞こえた。


「あら、湖の。成仏するのね?」


「はい。全て伝えましたので」


「そう。それじゃあ、もう少し昇ればお迎えが来てくれるわ」

結界端まで手を引いて昇らせ、放つように手を離した。


 結界の外に群がっていた死司神達はすっかり居なくなっていたが、男が結界から出ると即座に迎えが現れた。

「成仏への道、ご案内致します」


「お願いいたします」

「もうっ! エィムってば――あら?」


「仕事なんだけど? 行くよ」

男の手を取り、昇り始める。


「待ってってば!」

追い掛けて行き、エィムの腕に絡んだ。



〈死神夫婦ってか?〉


〈何にせよ仲の良いことは幸せじゃない?〉


〈って言ってるぞ♪ ホウジョウ♪〉


〈ん?〉兄を睨む。〈何が言いたい?〉


〈しらばっくれるなってぇ。ほらよ♪〉

降りて来たトウゴウジへと弟を突き飛ばした。


〈なっ!?〉〈えっ――〉同時に真っ赤!


〈トウゴウジ、親父サンも見つかったんだし、そろそろ女に戻ったらど~だぁ?〉


〈でも父さんは……〉


〈そんじゃあ、お師匠様に相談すっか♪〉


〈待て!!〉兄を羽交い締め!


〈もうっ、ナンジョウてば待ってよね。

 慌てなくてもいいじゃない。

 それに私……ヒカルのことも……〉


〈そっかぁ……〉

〈分かっている。俺は待つ。

 それに……生き人の(ことわり)に縛られる必要も無い。

 二人目であろうが俺は構わない〉


〈ホウジョウ……〉


〈トウゴウジ……俺は――〉

〈俺を挟んでラブラブすんなっ!!〉


〈〈ナンジョウ、邪魔〉だ〉

〈だったら放せホウジョウ!!〉


〈もう降りない? 後で話しましょ〉


〈そうだな〉〈無視すんなっ!〉


が、無視してサッサと降り始める。

ホウジョウはナンジョウを確保したまま。


〈余計なこと言ったら、ずっと無視するわよ〉


〈言いませんよ~だ――ってぇなっ!〉

殴られたらしい。


〈フン〉〈コノッ! ホウジョウ!〉


〈ホウジョウに手出ししたら私が許さない〉

具現化剣とトウゴウジの目が光る。


〈はいはい。勘弁してくれよなぁ。

 ホウジョウよぉ、そろそろ離してくれ~〉


〈手は離すが〉〈野放しには出来ないわね♪〉


〈おいおい……ったく~〉


ホウジョウとトウゴウジが笑いだした。


〈確か俺が兄だったよなぁ?〉


〈問題は中身だ〉〈そうよね~♪〉


〈言いやがったなっ〉ぷっ、はははっ♪


笑いながら横並びになった。



〈皆ぁ、結界強化ありがとうなぁ〉

湖上ではサイオンジが穏やかな笑顔を彼方此方に向けては小さく下げている。


〈サイオンジ♪ トクさん♪ ご結婚〈〈〈〈〈〈おめでとう!♪〉〉〉〉〉〉〉


〈なっ――〉〈皆さん、ありがとう♪〉


それを聞いたナンジョウ ホウジョウ トウゴウジが笑みを交わす。

〈御師匠様〉〈俺達も見に来ましたよ♪〉


満面の笑顔で師と言葉を交わしながら降下を続けた。







サイオンジから対岸へと指示されたトウゴウジは、ユーレイ探偵団 本編では何をしていたのやらでしたが、結界端に近い対岸では直ぐ上に死司神達が黒々と集まっていて戦っていたんです。


彩桜もシッカリ戦っていました。

それでも自信の持てない彩桜なんですけどね。



今回をギュッと纏めましたので少々長くなりましたが、これで湖の幽霊の件の裏側は終わりです。


翌朝、響が目を覚ますと、店長と結ちゃんが来ていて――と、次の件に移ります。

もちろん外伝では、その裏側を描きます。



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