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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第3章 利幸の件の裏側で
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己を保つには?



 獣神秘話法を会得して嬉しそうに昇るルロザムールを見送ったラピスリは、狐の兄弟が話している山の社へと瞬移した。


「で?」


「あっ、ラピスリ様(♪)」「姉様♪」

狐の夫婦が嬉しそうに振り返った。


「メイ、双子なのだから『姉様』は……」苦笑。


「ラピスリが言い難いのなら『ラピ』とか?」

同じく狐なリグーリがニヤニヤ。


「えっ……」「リグーリ……」フェネギが睨む。


「ま、私も然程の差も無いフェネギを兄様と呼んでいるのだから、姉様でも良くないか?」


「ふむ。ま、よいか。

 それで、呼び出した理由は?」


「ルロザムールがな、正気に戻った後、落ち着いて考えてみて分かった事を話してくれたから伝えたくてな。

 あと、別件で兄様からもあるんだろ?

 お先にどうぞ」


「では……梅華(メイファ)の事なのです。

 梅華はラピスリ様の余剰に主様が欠片を加えて生まれたとの事で、ドラグーナ様には存在すら伝えていなかったそうなのです」


「父は既に存じておりますが?」


「はい。受け入れて頂けて安堵致しました。

 そういう生まれの為、梅華は龍の力が弱く、ほぼ狐なのです」


「確かに……ですが、今の父からは欠片は得られません。

 私の欠片でも……メイ、よろしいか?」


「姉様……そんな、すんなり……」


「当然ではないか。

 龍の力も使える程にしておかねばな」

優しい微笑みを向け、目を閉じると短く唱え、掌に現れた光球を差し出した。

「変に遠慮される方が余程 困る」

笑って梅華へと飛ばした。


 ラピスリの欠片を吸い込んだ胸元に手を当て、恥じらうように微笑んだ梅華をラピスリは抱き締めた。


「共有して当然だ。

 龍としての修行も共に」


「はい♪ ですが狐は?」


「夫婦で やってくれ」離れて笑う。


「あ……」頬染まる。


「高めて、ピュアリラをしてもらえると有り難いのだが?」


「それは……姉様でなければなりませんよ」


「そうか」ふふっ♪

「では、その力を落ち着かせ、梅華のものとして確かにせねばな」

もう一度ふわりと抱いた。



―・―*―・―



 エーデラーク(マディア)は、議場に残していた荷物を運んでくれた執事から受け取ると、ナターダグラル(ザブダクル)を連れて死司最高司の館に戻った。


「何も見ませんし、すぐに出ますので居室に失礼致します」

前置きして連れて入り、横たえると即座に瞬移しようと――

「待て、エーデラーク」


「はい?」


「いや……何も……あ、いや、何か本を」


「執務室の卓上のもので よろしいですか?」


「それを頼む」


「畏まりました」瞬移。



 戻って本を差し出し、

「お疲れにならない程度になさってくださいね」

執務室へと瞬移した。



 儂は何故、呼び止めたのだ?

 この感情は何なのだ?


受け取った本を開くでもなくザブダクルは自問したが、答えには至れそうになかった。



―・―*―・―



 新たな力を定着させ、安定化に至った姉妹は微笑み合った。


【真の美しさだよな、兄様】


【え? ええ……】


【見とれていましたね?】ニヤッ。


【そっ――妻を見て何が悪いのです?】ムッ。


【目の前に揃っていると、兄様にとっては天国か楽園か、とにかく極楽浄土ですよね♪】


【リグーリ……最近よく思うのですが、話し方がバラバラですよ?

 己というものを(しか)と持ちなさい】


【ずっと爺様していると己という者が分からなくなるのですよ。

 どこまでが振りなのか、それとも振りなんぞ無くて ひっくるめて己なのか、とかね。

 話し方も、その時その時で楽にしているだけ。

 だからきっと『私』も『俺』も『儂』も己なんでしょうね】


【そうなのですか……】


【憐れそうに見ないでくださいよぉ】


【ですが、どうしても――あ……】


姉妹の視線に気付いた。


「構わぬが?

 此方も楽しく話しているのでな」「はい♪」


「いえいえ、説教されていただけですので話しますね」


「説教?」


「話し方がバラバラだと」苦笑。


「ああ、その事か」


「ラピスリも気付いて?」


「オニキスですら言っていた」


「うわぁ……」


「だがまぁ気苦労も多いのだから、そっとしておいてやれと言っておいた」


「そうですか」あは、は……。


「爺様の方が安定しているのは笑えてしまうのだがな。

 それで、ルロザムール様は何と?」


「それで笑ってたのかぁ。

 さておきだ。

 ずっとエーデラークしているマディアも、そうなのかもと心配が増えたとこだ。

 しかもマディアは敵神とずっと一緒ときているからな」


「ふむ……影響を受けてしまうのでは、と?」


「己を見失っている私が言うのもナンだがな。

 マディアは自由には話せない状態だ。

 そういう縛りが心を歪めたり、弱めたりしかねないと思うんだよ」


「人世に来れば私や父が魂を取り込み、話し相手となるのだがな。

 父ですら、あの首輪は外せぬのだから来る機を作らねばならぬか?」


「敵神の奴、モグラを支配して以降、神世で普通に最高司してるのも不気味なんだよなぁ。

 ルロザムールに人世を任せて、全ての職域を円滑に動かしたりして、どっちかって言うと善き最高司なんだよなぁ。

 だから奴が来たくなるような理由なんて難しいだろうが、きっかけ作ってマディアと話してもらえたら元気が戻ると思うんだ。

 マディアは常に心を閉ざして、無表情とも思える笑みを保っているとルロザムールも言ってたからな」


「感情も首輪から伝わってしまうからな。

 しかし敵神が来なければならぬ事態を起こせば、ルロザムール様の立場が危うくなるのでは?」


「それもそうだよなぁ」


「ルロザムール様も休みくらいは貰えるのだろう?

 調べてもらえぬか?」


「そうだな。聞いておこう。

 で、敵神が持っている封珠なんだが――」


「そもそもは敵神を封じた封珠だ」


「そうだったのか。

 其処に前のナターダグラルと王妃様とエーデリリィ様が封じられているらしい。

 敵神はナターダグラルの身体を乗っ取ったんじゃないかと言っていた」


「ではダグラナタンは魂のみなのか……ふむ」


「ダグラナタンが封珠に!?」

フェネギは額の傷痕に触れた。

リグーリは『やっぱりな』という表情で頷く。


「ナターダグラルは偽名。

 滝に派遣された最初の奴、ダグラナタンが その正体だった。

 だが改心していた。

 だからエーデリリィ姉様とマディアはダグラナタンが敵神に操られぬよう欠片を込めて子としたのだ」


「「鱗を剥がされたのに?」」


「龍神にとって鱗が如何なるものかも知らなかったそうだ。

 殺神罪(さつじんざい)とされても解っていなかったと。

 だが和解した。

 ティングレイスに関しても、全てを公とし、罪を償うと誓ったそうだ」


「そうですか……」

「なぁ兄様、そろそろティングレイスは仲間だと思えないかなぁ?」


「それは……別です。

 敵神ではないのかも知れません。

 ですがまだ味方だとは言いきれないでしょう?」


「どこまでも頑固だよなぁ」


「フラフラしているリグーリにだけは言われたくありません」


「フラフラってぇ」

「その辺りにしておけ。

 別視点の者が居る事も重要だ。

 それで他には?」


「それなら封珠に一緒に居ても問題無さそうだよな……うん。

 エーデリリィ様もユーチャ姉様が一緒だから――」

「ユーチャリス姉様が何故!?」


「ユーチャ姉様が王妃様だから」「なっ――」


「兄様は知らなかっただろうけどな。

 滝に居た頃、ユーチャ姉様とマディアは毎日ティングレイスと会ってたんだ。

 マディアは治癒してもらって、一緒に楽しそうに話してたんだよ。

 で、ユーチャ姉様はティングレイスと結婚したんだ」


「ユーチャリス姉様は神王殿に潜入し、王のお茶係となっていたそうだ。

 操られていたティングレイスの世話をし、そして目覚めた後、結婚した。

 絆を結んだのはエーデリリィ姉様だ」


「そんな危険な所に……それだけ好きだったって事かぁ」


「そういう事だ」


「しっかしラピスリ、どれだけ隠してるんだ?

 話してくれよなぁ」

「そうですね。何処から得ているのです?」


「月に通っていた頃に知り得たものだ。

 月の皆様も気になっているのだが……」


「だな。ディルム、元気にしてるかなぁ……」


「クウダーム様も行かれたままですね……」


各々が思いを込めて、天井の遥か向こうに浮かぶ月を見上げた。



―・―*―・―



 ゴッ!! 「ってーなっ!!」


利幸が思わず目を開けると、座している前に頭の5倍程の大きな氷塊が落ちていた。

「おいウンディ!! ナニしやがる!!」


《たぶん俺はも~すぐ消えるんだろーな。

 その氷は温度が保てなくなった証拠だ》


「だったら水止めやがれ!!」


《だな。神力を水化して浴びせりゃ思い出すかと思ったんだがムダらしいな》


滝が消えた。


「お前、水止めても消えるのか?」


《お前から神力が流れてくりゃあ保てるだろーな》


「ジンリョク?」


《神の力だ。

 今なら思い出すだけで高まる。

 分けてくれりゃあ消えずにすむ》


「思い出すからキッカケくれ。

 ナンか話してくれよ」


《ナンか、だと?》


「お前、神なんだろ?

 ナンで俺は人なんだ?

 ナンかヤラカシたんだろ?」


《あのなぁ。ったく。話してやるよ。

 人が生きてる人世の上にゃ神世がある。

 神が生きてる場所だ。


 神にはヒトとケモノがいる。

 ヒトは欲深くてケモノを神だとは思ってない。

 で、ケモノだってだけで捕まって人世の生き物にされるよーになったんだ。

 人世の生き物にされた神を堕神と言う。

 つまり、お前も堕神だ。


 アーマルと俺がアタマで、父様を護ってた。

 父様は神世の守護な四獣神。

 選ばれた、偉大な神だ。

 父様の他。トリノクス様とマリュース様はとっくに堕神にされちまってた。

 オフォクス様は堕神にされた仲間を護ると言って人世に降りた。

 そーなると父様だけで神世を護らないといけない。

 だから俺達が父様を護ってたんだ。

 で、罠にハメられちまった。

 アーマルも道連れにしちまった》


「ふぅん。で、そのアーマルって?」


《飛翔だよ》


「へぇ~♪ だからマブなんだな♪」


《ナンか思い出せたか?》


「アーマルにはナンか……ひっかかったぞ♪

 けど、そんだけだ♪」


《ったく手強いヤツだな》


「そーゆーが、お前だぞ♪」


《なんだよなぁ……》







己に手を焼いているウンディ(意識)ですが、消える前に利幸に何か思い出させることが出来るのでしょうか?



本編では響と話して、飛翔に挨拶して昇っただけの利幸でしたが、その裏側ではルロザムールの支配が解けて仲間になったという、ちょっと大きめな出来事があったんです。


というところで、そろそろ次章に進めます。

m(_ _)m



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