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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第一部 第1章 ショウと力丸
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バステートの本名



〈おや? 力丸は?〉

戻った狐儀が首を傾げる。


彼方(あちら)に〉


全力で駆けて来ている。


〈狐儀様、モグラは?〉


〈逃げられてしまいました。

 マリュース様の御力を此方のものとする迄は、モグラを滅する事は出来ないのです。

 弱らせて捕らえ、浄魂の際に分離しようと仲間達と進めているのです。

 倒す『トリノクス様』と『ガイアルフ様』を同時進行でお捜ししつつ〉


〈そこまで……ありがとうございます。

 トリノクス様の欠片を集めておられるのは狐儀様のお父様だからではないのですか?〉


〈えええええっ!?!?〉〈力丸……〉苦笑。


〈もう一度 飛ばされたいの?〉


〈いえいえいえっ!!〉ブンブンブンッ!!


〈だったら静かになさい〉〈はいっ!!〉


〈すっかりバステート様らしくなられましたね。

 御力も直ぐに戻ることでしょう。


 私がトリノクス様の欠片を集め始めましたのは、つい最近。

 アーマルが集めていると言っていたからなのです。

 私も弟リグーリも、トリノクス様を父として親しく見ていると申しますより、偉大なる四獣神様と崇拝しているので御座います。


 ですが、欠片を集めるという事には思いが至らず……それに、モグラを倒す『トリノクス様』というのはきっと、父の欠片を持つ何方(どなた)か――人なのであろうと勝手に納得していたので御座います。

 おそらく……弟子であったアーマルの方がトリノクス様に親しい感情を(いだ)いているのでしょうね〉


〈そうでしたのね……失礼致しました〉

〈あれれっ? 山に戻ってる!?

 お師匠様いつの間に――うっ〉ヒュ~ン――


〈実は楽しんでおられますか?〉


〈いずれ子にしてあげようとは思っております。ですので躾を。

 私は猫ですので少々手荒かもしれませんけど――そうですね。

 確かに楽しんでおります。

 ダイナストラの将来、楽しみですので〉


〈では、力丸の御指導もバステート様にお願い致しましょうか〉


〈私は早く自身の力を開き、神世に戻りたいのですが……〉


〈それは危険過ぎます。

 既に貴女様はティングレイスに目を付けられているので御座いますから。

 オフォクス様のお手伝いをお願い致したいので御座いますが、如何(いかが)でしょう?〉


〈確かに……また捕まってしまったら、ご迷惑をお掛けしてしまいますね。

 では力丸と共に修行させて頂きます。

 その後はオフォクス様と共に〉


〈四獣神様の補佐神様に御味方とお成り頂ければ此方の勢力は飛躍致しましょう。

 どうか宜しくお願い致します〉


〈現四獣神様、腰が低過ぎますよ?〉


〈私はトリノクス様の代理に過ぎませぬよ。

 力丸、今度は静かですね?〉


〈こ、腰が……立てなくてっ〉


〈今度は何に驚いたの?〉


〈バステートちゃんとお師匠様の力関係とかナンかいろいろ全部っ!

 だってクッキー盗んで叱られてたのに!〉


〈ああそれは――〉〈確かにそうね♪〉


〈バステートちゃん、クッキー好き?

 また届いてたんだけど~〉


〈甘いものは好きだし、今は必要よね〉


〈必要?〉


〈あのクッキーには修行の効率を上げられるように栄養成分が考えられていて、薬草も使われているわ。

 その上ドラグーナ様の御力が込められているの。

 だから必要なのよ〉


〈知らなかった……〉


〈きっとお世話になっていた間の食事全てが回復や修行に最適のものだったのでしょう。

 その御心を無駄にしないで。

 さ、修行しましょう〉


〈一緒に修行してくれるの?♪〉


〈力を引き出すと約束したから果たすまでよ。

 しないの?〉


〈しますっ!♪〉



―・―*―・―



 ふたりきりの修行が始まって数日後――


〈何が見えてるの?〉


〈え?〉


〈ただ目を閉じていて修行になるとでも?〉


〈えっと……心の内側を見るんだよね?

 奥へ奥へ、って。

 でも真っ暗で……何か見えるものなの?〉


〈目を開けていいとは言ってないわよ?〉


〈ごめんなさいっ!〉ぎゅっ!


〈ホント仕方ないわね……〉


音も何も無かったが、バステートが前に来たとだけ感じ取れた。


〈そのまま瞑想してなさい〉〈はいっ!〉


ぎゅっと目を閉じて己が心の内を見ようとしていた力丸だったが、バステートの息づかいすらも感じられない事に気づいて不安になった。


 あれ? バステートちゃん?

 居なくなった?


 目、開けちゃダメかな?

 バステートちゃん、どこ?


〈ちゃんと瞑想なさい〉〈うわっ、はい!〉


 でも……気になるんだよね。

 こっち来てたよね?


 離れちゃったのかな? あ! 見えた!♪

 な~んだ。前で手を(かざ)して――って!

 俺、目開けてないよなっ!?


額の前に翳していた手でポコッと叩かれた。


〈ホント散漫よね。集中できないの?

 私が見えたのなら、その力を自分で扱えるようになりなさい〉


〈はいっ!♪〉



 ってコトは内じゃなく外見てていいのか?


 バステートちゃんカワイイ♪

 こんな近くでシッカリ見るの初めてだ♪


 うん♪ 睨んだ顔もカワイイ♪

 でも……結婚してるのかぁ……誰とだろ?


 で~もっ♪

 今は俺だけのバステートちゃんだよな♪

 一緒に修行♪ 楽しいな♪


 この距離って……鼻ツンできちゃう?♪


さりげなく寄ろうとしたが、翳していた手で止められた。


〈修行する気が無いのなら本物のただの狐にするわよ?〉


〈ごめんなさい!

 でも……もうそんなに戻ったの?〉


〈その程度なら出来るわよ。でもね……〉


〈邪魔してゴメンナサイ!!〉


〈そうじゃないの。1つ……とても重要なことが思い出せないのよ〉


〈俺……手伝えない? どんなコトなの?〉


〈前もそうだったから突拍子もないこと言いそうよね……うん。


 鍵の分からない封印を解く近道の1つとして己が名があるの。

 思い出しても教えてもらってもいいのよ。

 知れば悪くても隙間が開くわ。

 でも……どうしても思い出せないのよ。

 それに知っている方々は、既に滅されたか欠片になっているか封じられているのよ〉


〈バステートちゃん、じゃないってコト?〉


〈その名前は、お師匠様から頂いた二つ名。

 私の宝物なのよ。

 だから頂いてからずっとそう名乗っていたの。

 友や弟子でも私をバステートだと思っているのよ。

 だから本当の名を早く思い出したくて……焦っているのかもしれないわね〉


〈お友達やお弟子さんも…………あ!

 バステートちゃん結婚してるんだよね?

 その……ダンナさんは?〉


〈当然知ってるわよ。

 でもね――もしかしてまだ気づいてないの?

 もう言ったようなものなんだけど?〉


〈えっと~、聞いてないし、考えたくもないから……〉


〈じゃあ言わない〉〈教えて!!〉


〈聞きたくないんでしょ?〉


〈気になっちゃったから教えてください!〉


〈ま、いずれアナタの父になるのだから知っておくべきね。

 私の夫はマリュースよ〉


力丸は気絶して後ろに倒れた。



―◦―



「ヮキュン……」〈あっ、えっと~……?〉


〈ホント、困った子ね〉


〈バステートちゃん♪〉


〈そのまま休んでなさい。

 私は修行に戻るわ〉


〈待って! 名前のヤツ!

 バステートちゃんのお師匠様は!?〉


〈行方不明よ。

 高位の獣神様方は皆様もう神世にはいらっしゃらないの。

 今も無自覚堕神として人世で生きていらっしゃるのなら良い方よ〉


〈そっか……じゃあ四獣神様は?

 お師匠様――狐儀様は?〉


〈下の世代だから知らないわよ〉


〈ひとり残ってるよね! オフォクス様!

 オフォクス様なら知ってるんでしょ!?〉


〈どうだか……初めてお会いした時もバステートと名乗ったから……〉


〈そうだっ!♪

 知らなくてもオフォクス様なら探りの御力で――〉


〈探りはとても消耗するの。

 気を抜けない現状で、私個神(こじん)の為に、そんなお願いなんて出来ないわよ〉


〈俺、お願いしてみる!

 オフォクス様って人世に居るんでしょ?

 どこ行けば会えるの?〉


〈私の話 聞いてた? 無理だと言――〉


〈そう遠慮するな、カツェリス〉〈あ――〉


〈キキッキツネ様っ!?

 どーしてここにっ!?〉


〈儂に会いたかったのであろう?〉


〈え"・・・えええええっ!?

 まさかまさかのオフォクス様っ!?〉

ふら~んコテッ。


如何(いかん)ともし難い奴だが……他者の心を開く力を持っておるようだな。


 以後、遠慮なんぞ無用だ。

 儂等の力と成ってくれ、カツェリスよ〉


〈誠に有り難く……謹みまして何也と〉

清々しく晴れやかな笑顔で深々と礼をした。







狐儀とバステートの会話と、前話の相関図でマリュースとバステートが夫婦なのはお分かりでしたよね?

驚いたのは力丸だけですよね?



マリュースはパッと見、(たてがみ)のある虎ですが、大型の猫科動物の総合神です。

ですので、『今はチーターがいいかな?』と思えば切り替えられるんです。


他の獣神も、複数種の『親』に命の欠片を貰っていれば、各々の姿になれるんです。



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