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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第3章 利幸の件の裏側で
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鬼のルロザムールと老神



 利幸の魂を新魂に、死司装束を再生装束に偽装したリグーリ姿のラピスリは、リグーリ達が住んでいる廃教会へと降り、中に入った。


 留守か? ……ああ街の上か。


それならばと、偽装を解いた利幸を窓の無い小部屋に押し込んだ。


「暫く出るでないぞ。

 追っ手が居るやも知れぬからのぅ。

 確かめて来るからのぅ」


「寝ててもいいかぁ?」


「好きにすればよい」苦笑。


扉を閉めたリグーリ(ラピスリ)は姿を戻し、リグーリの近くへと瞬移した。




――姿と気を消したまま、離れた位置で周囲の死司神達の様子を窺い、気取られる様子は無いと判断して声を掛けた。

【リグーリ、ウンディは教会だ。後は頼む】


【ルロザムールは?】


【すっかり元通りだ。

 ハーリィとも絆を結んだ】


【それは良かった。

 さて……弟子達に面倒を見させようかの♪】


【エィムに?】


【弟で弟子じゃからの♪】


【アーマル兄様の弟子なのだが……】


【ま、双方にとって良い修行になるじゃろうよ】


【ふむ。確かにな。

 では頼む】


【社に行くのじゃろ?

 (フェネギ)とオニキスにも伝えてもらえるかの?】


【勿論】ふふっ♪


【何じゃ?】


【流石、板に付いていると思った迄だ】


【ま、、当然じゃろ】なんだか恥ずかしい。


【では】笑顔で瞬移した。



【エィム、何処じゃ?】


【はい】現れた。


【教会に戻ってくれるかの?】


【はい?】


【行けば分かる。頼んだぞ】


【……はい】【もうっ! 置いてかないでよ!】


【来たの?】【トーゼンでしょっ!】


【当然、ね……】瞬移した。


【待ってってば! エィム!】探す!


【教会じゃよ】


【あ♪ はい♪】追った。



―◦―



 教会に何が――この気……こっちかな?

 居た……けど寝てる?

 眠らされているんじゃなさそうだよね。

 それなら――


「起きてください」ゆさゆさ。


全く起きる気配は無い。


「相変わらずなのですね。

 では、いつも通りに!」

思いっきり蹴り上げ、雷を放った。

「起きてください!!」


「うわわわわっ!?」

無意識のまま雷を躱してから目を覚ました。

「何しやがる!? ……ってジーサンは?」


「師匠から何を聞いたんです?」


「修行して飛翔と紗を護るんだ♪」


「そうか。そういう事か……」


 今は人のユーレイ。

 兄だと思うな、か。


やれやれと溜め息。


「エィム♪」腕に絡まった。「捕ま~えた♪」

「離してよ。話の途中なんだから」「やん♡」


「お前ら、夫婦かぁ?」


「そうよ♪」〈チャム!〉〈いいでしょ♪〉


「神様も結婚するのかぁ♪」


「するわよ♪」

「それより修行を始めてください。

 修行の場に入ってもらいます。

 まずは何でもいいので思い出そうと集中してください」


有無を言う隙すら与えず、掌に出した賽子(サイコロ)のような箱に押し込んだ。



「チャムも神なんだから嘘は駄目だよ」


「だったら~♪」うふっ♪


「何?」


「ホントにしちゃいましょ♪」「離せっ!」

「エィムだ~い好き♡」「離れてくれっ!」


「私じゃ……ダメ?」


今にも泣き出しそうなチャムから目を逸らしたエィムは、返す言葉を探しているのを誤魔化そうとして小さく息を吐いた。


「今は昇格する事しか考えられない。

 僕達のターゲットが あの状態なんだから大問題だろ。

 恋愛とか結婚とか、そんな余裕は皆無だよ。

 僕は仕事に戻るけどチャムは修行するの?」


「答えてもくれないの?」


「行くからね」手を(ほど)いてチラッと見た。


「行っていい?」


「相棒だからね」手を繋いで瞬移した。




――街の上。


〈手繋ぎは仲良くないとしないわよねっ♪

 エィムの答えなのね♪

 ね♪ エィム♪

 さっきのユーレイ、誰?〉ぴょんぴょん♪


〈手を離すか、跳び跳ねるのを()めて〉


〈離さなくてもいいのね♪〉止まった。


〈仕事しないの?〉


〈待ってるだけでしょ?

 話しててもいいでしょ♪〉


〈勝手にして。でも僕を巻き込まないで〉


〈さっきの誰?♪〉


〈巻き込まないでって言ったの、聞こえなかった?〉


〈その前に聞いたでしょ♪〉


【……兄様】


【え? ユーレイなのに?】


【堕神にされた兄様なんだよ。

 人としては死んだんだ】


【浄化域には? 送らなくていいの?】


【身内を浄化域送りになんて……】


【だから(かくま)うのね♪ 神に戻すのね♪】


【そうだよ。邪魔しないでね】


【もっちろん協力するわよ♪】


【それが邪魔なんだけど?】ぷいっ。


〈エィムったらヒド~い〉


〈もう静かにしてよ〉離れようと――


〈あ~♪ 耳まで赤~い♪〉〈なっ――〉

〈エィム大好き♪ だ~い好き♡〉


〈真面目に修行しろ!

 早く僕に追い付け!

 揶揄(からか)うなっ!!〉


〈追いついたら結婚してくれるのね♪〉


〈追い付けるもんか〉フン。


〈言ったわね~〉


〈その通りだろ〉


〈だったら~♪〉〈何?〉〈こう♪〉ちゅ♡

〈何するんだ!?〉〈修行するわ♪〉消えた。



 取り残された真っ赤っかなエィムは、チャムの感触が残る頬に手を当てて呆然と漂っていた。


 遠くから様子を見ていたリグーリが、やれやれと思いつつ行って肩を叩いた。

「落ちるぞ?」


「あっ」慌てて姿勢を正す!


「仕事せねばのぅ」


「はいっ」


【ターゲットに関しては、この結界から出た時に説得するしか無かろう。

 浄化の門で反転させるだけだ。

 そう気に病むな】


【はい!】


【正職神にさえ成れば、続く昇格試験は最短で駆け昇ればいい。

 ディルムは、いつ戻って来られるのやらだが、代わりにルロザムールを頼ればよい】


【えっ?】


【正気に戻ったそうだ。

 ハーリィの師であり相棒だったのだから信用できる】


【ハーリィ様の……はい♪】


【ま、敵神の懐に居るのだから操られているとせねばならぬし、近付くのは容易ではなかろうがな】


【ですが……】リグーリの後ろを見ている。


【ん?】振り返る。【ルロザムール!?】


『鬼のルロザムール』が睨んでいた。


「怠けておったのではなく弟子を指導しておっただけでっ――」


ルロザムールは威圧的に見据えて近寄り、リグーリの肩に手を置いた。

〈振りですので……その……すみません〉


「あ……」そうだった。


〈獣神秘話法というのをお教え頂きたく……。

 あの……ハーリィから獣神様の欠片があるので私にも話せると聞きまして……そ、その……お願い致します!〉

言葉は低姿勢で必死だが、威圧的に鋭く睨んだ振りのまま。


「でっ、では! 顛末書は拠点にてっ!

 申し訳ございません!」

〈と、いう理由で如何じゃろうか?〉


〈重ね重ね申し訳ありません。

 では、拠点にお連れくださいますか?〉

「ふむ。よかろう」

ぐるりと鋭い視線を走らせる。

「皆も、よく務めるよう」


周囲の職神達からの視線をたっぷり浴びつつ、エィムを庇うようにリグーリが飛び、ルロザムールは厳しい表情を保って追った。



―◦―



 教会に着くと、エィムに利幸とチャムの修行の指導を頼んで奥に行かせた後、リグーリは自分そっくりな等身大の人形を具現化し、着ていた死司装束を着せて、机で書いている風に座らせた。


「もう1つ具現化。

 装束を全てお借り出来ますかのぅ?」

代わりの上着を具現化して渡した。


「あ、はい」脱いで人形に着せる。


窓に背を向けて座らせ、フードを被せた。

「これでよし。

 高位死司神と白髪死司神の出来上がりじゃ。

 窓から覗かれてもルロザムール様と儂にしか見えぬじゃろ」

振り返ってイミシンにニコリ。

「では、場所を移しましょう。

 お仲間に会わせますよ」


「え? 声が――」若い?


微笑むリグーリが手を取って瞬移した。







地星の神は年齢ではなく成熟度合い、つまり修行の成果で成神(せいじん)だと認められることになります。


エィムは150歳くらいです。


人神なら、普通は中等学校を、出来が良くて高等学校を出たばかりの半神前(はんにんまえ)です。

最初に滝に行ったティングレイスと同じくらいですね。


エィムは基底の高い龍神。

しかもドラグーナの子です。

修行もシッカリしていますので、とっくに成神しています。



対してチャムは……?


オフォクスの子ですが、そもそもチビッ子。

神世の地を踏んだ事も無いので危機感0。

修行は……してなさそうですよね。



全てが正反対な2神。

本編終盤では結婚していたようですが……?


現時点ではチャムは積極的かつストレートに好きだと言っていますが、エィムはどう考えているのでしょうね?



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