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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第3章 利幸の件の裏側で
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力の神ウンディ



 結局、彩桜はソラともショウとも話さず帰宅したので、翌朝も紅火に追い出された。


「どぉしよ……」ぼそっ。


 困りながらも足が向くのはサイオンジの公園しかなく、汗ばんだ背中に風を通すように、膨らんだリュックを背負い直しつつ、刻一刻とジリジリさを増している陽を恨めしく見上げた。


「あ……」


陽を背に黒点が近づいていた。


【オニキス師匠?】


【あ、いたいた♪】姿を消して降下。

【黒瑯は静香とデートでオレは休み。

 んで紅火から彩桜のお()りを頼まれたんだ。

 昨日も上から見てたんだろ? 乗れよ】


【うんっ♪】乗る、即、上昇。



【あれれ?

 ソラもショウも、みんな居ない?】


【だな。出掛けたのかな?

 あ! ヒビキとソラ居た!】


【トシ兄とショウは? おさんぽ?】


【おいおい、カケルだろ?】


【だったね~♪】にゃは♪


【ユーレイの親子連れか?】


【一緒に成仏するんだね……】


【あ、リグーリ!】


 響が送っていた親子霊が昇るのを見ていると、リグーリが弟子達を連れて現れ、結界から出るのを迎えた。


【仕事をするだけじゃよ】


リグーリが父親を、弟子達が各々 子供を連れて昇り始めた。


【たまには死司域を確かめるとするかぁ】

呟きに苦笑が混ざって伝わる。


【ん。頼む。

 けど気をつけろよ】命懸けだからな。


【ああ。ありがとう】解っているよ。



【オニキス師匠、知り合い?

 お爺さんだけどお友達?】


【爺様なのは姿だけ。ホントは狐で蛇。

 狐儀の弟だよ】


【ほえ? 弟なんて居たんだ~♪】


【狐儀も神としては兄弟が多いんだよ。

 オレ達は兄弟だらけなんだけどな】


【俺、兄貴いっぱいで幸せ~♪】


【あ……だよなっ♪

 確かに兄弟だらけは幸せだよなっ♪】


【うんっ♪】



 そして再び神眼を下に。


【ウンディのヤツ、また行方不明かよ……】


【俺、ショウ捜す~♪】トシ兄ムリ~。


【オレも そーすっかぁ】確かになぁ。


キョロキョロ――【【あ!】】――居た!


【ウンディよかショウのが強いってナンなんだよぉ】


(すず)ちゃんも居る……】


【で、ソラまで重なって何やってんだ?】


【紗ちゃん……】


【お~い彩桜?】


【ん? あっ!?

 みんなでトシ兄 押さえ込みかなっ♪】


【誤魔化すな。

 それに下敷きになってるのはショウだろ。

 好きならコクりゃいいだろーがよ】


【違――】【わねぇだろ。神ナメんな】


【……俺、まだまだなんだもん……】


【んなコトあるかよ。

 昨日もガンガン戦ってたってウィス兄様から聞いたぞ?

 浄破邪 使える人なんて、どんだけだよ。

 もっと自信持てよな】


【……オニキス師匠は? 結婚しないの?】


【まだ出会ってねぇだけだよっ!

 今は彩桜の話だっ!】


【ん? 瑠璃姉?】【おいっ!】


【ほら、アパートのトコ】


どうやら瑠璃(ラピスリ)はブロック塀に隠れてユーレイの塊へと神力を注いでいるらしい。


【そっか……アーマル兄様か……。

 彩桜! オレ達も注ぐぞ!】【うん!】



―◦―



 そして、フルートの音色に包まれて飛翔(たかし)が目覚め、(おの)が魂を護っていた結界を破って出た。


今、ショウに具現化された飛翔が家族を、カケルが奏を抱き締めている。


〖オニキス、彩桜。ありがとう〗

瑠璃鱗の龍神がオニキスに並んだ。


【ラピスラズリ様♪ こゆ時、瑠璃姉は?】

彩桜の方が慣れっこだ。


〖私の内に居る。眠ってはおらぬ〗


【修行したら眠らなくなる?】


〖そうだ〗


【じゃ俺ガンバル~♪】

【あ、リグーリ。もう戻ったのか?

 弟子達は?】


結界のすぐ上に浮いていた。

【死司域に行ったら彼奴(あやつ)に捕まった】

後ろ()をチラリ。

【危険だからな。弟子達は教会に帰らせた】


【で、仲良く一緒に死魂待ちか?】


【支配が解けかけているからな。

 オフォクス様とラピスリが何かを込めた効果なのだろう?】

瑠璃龍にチラリと視線を向けた。


〖神力を楔として支配を解く方法は、既にマディアが試していたのでな〗


【やはり、そうでしたか】ラピスリではなく男神?


〖二度目だからこそ早かったのではないだろうか〗


【つまりマディアが試したのもルロザムールだったのですね?】


〖そうだ。

 月に居させている間に解けたらしい〗


【月からの道が繋がったのですか?】


〖いや。月に居た間にナターダグラルは何らかの繋がりを成していたようだ。

 それを使って引き寄せたと考えている。

 その際に新たな支配を――〗

「へぇ~♪ 龍ってマジで居たんだなっ♪」


「トシ兄!?」【「ウンディ!?」】


「まだ思い出せてないヤツが居たかぁ。

 で、誰だ?」


「俺、彩桜だよっ!」


「サクラなぁ。サクラ、サクラ――」

「ウンディ! それよか降りろ!」


「さっきから言ってる、そのウン――何だ?」


「お前の名前だよっ!!」「ウンディ……」


「「「えっ!?」」」


オニキス 彩桜 リグーリが声の方を向くと、何かに取り憑かれているような焦点の合わない瞳に赤い光を宿したルロザムールが近寄っており、まだ結界の内に居る利幸に向かって手を伸ばしていた。


「ルロザムール様っ、結界に触れてはなりません!

 御命に関わります!」


「ウンディは浄滅せねばならぬ……。

 ウンディだけは生かしてはならぬのだ。

 ウンディだけは……」


「ルロザムール様! お気を確かに!」

「さっきからウンディ ウンディって人違いだろーがな。

 俺は亥口 利幸。飛翔と紗の身代わりだ。

 サッサと連れてけよな」


「ウンディ来るな!」「ウンディは私が――」


「何してるんだぁ?」肩とんとん。

「ウンディ!? 出たのか!?」

「おう♪」半分出ている。


【オニキス! 何をしている!?

 ウンディを止め――あ……】


 結界が目に入っていないらしく、進もうとするルロザムールを必死で止めているリグーリが下を見ると、ラピスラズリがオニキスを支えて戻ったところだった。


        「お~い、早く連れてってくれ~」

【まさかウンディに!?】

       「そんじゃ、飛翔に挨拶しとくか~」

〖オニキスはウンディに殴られて気絶した〗

           〈良かったな……飛翔……〉

〖リグーリ、どうやら新たな支配には暗示が込められていたらしい〗

    〈先に成仏するぞ。ちゃんと護ってやれよ〉

〖『ウンディ』という言葉で発動したようだ。

 私が共に行く。

 リグーリ、姿を借りるぞ〗

         〈もう出ちまったよ。じゃあな〉

【装束を! また変わったのでっ!】

瞬時に光の球にして投げた。

           「ったく、まだなのかよぉ」

〖ふむ。すまぬな〗

受けて瞬間的に纏うと、姿を偽装してリグーリと入れ替わった。


リグーリは爺様偽装を解くと同時に念の為、姿を消した。


利幸(ウンディ)は、と見ると宙で胡座(あぐら)をかいて欠伸(あくび)をしていた。

結界からは すっかり出てしまっているので、神力の弱い利幸(ウンディ)は下からは見えなくなっているだろう。


「ルロザムール様、ウンディを」


「うむ」「お♪ 連れてってくれるんだな♪」


 ルロザムールの手から伸びた蔦のような縄が利幸の手首を捕らえた。

それが見えているのかいないのか、虚ろな眼差しのままなルロザムールが飛び始める。



〖彩桜、リグーリ。

 浮かせてはいるが……オニキスを頼む〗


【はい♪】【お任せください】


ラピスラズリは姿を消してルロザムールを追った。



【さっきの龍神様は?】


【瑠璃姉のラピスラズリ様♪】

彩桜は腹が上になっているオニキスに乗っている。


【そうか。本当に別神(べつじん)だったのか。

 ウンディが殴ったのか?】オニキスを指す。


【うん。オニキス師匠のお腹をイキナリ】

治癒する~♪


【困った『力の神』だな】


【ねぇ、狐で蛇の死神様。

 トシ兄ってホントに神様なの?】


【……おそらく、な】同代だが自信は無い。


【ふぅん】


【あ、そうか】結界の中に入った。


【あれれ? 入れるの?】


【拒絶されているのは装束だからな。

 オニキスを社に連れて行こう】姿を狐に。


【うんっ♪】







本編では、ブランコだけの三角公園で飛翔が目覚めるお話でした。


死神を納得させる為に身代わりとして成仏しようと昇る利幸ですが……人世に戻ってましたよね?


この後は、その辺りの出来事が続きます。

裏側ですので、章タイトル上主役な利幸は、文中では主役のようで主役じゃありませんけど。



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