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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第1章 翔³の目覚めの裏側で
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美女神達の導き



「お待ちください美しい女神様ぁ~」


 輝くような微笑みを湛えた美女神が手招きする方へと、男神は泳ぐように両手を櫂いて、ふらふらと進んでいた。


「捕まえ――あっ、お待ちくださいませ~」


あと少しという所で女神は離れてしまう。


〈此方ですよ〉


「お声までも お美しい……」


虜となっている男神は追い続け、とうとう女神に触れた――かと思いきや、何やら硬い。


〈お目覚めなさい〉


「え? こ、これは!?」


 男神が触れているのは、赤と黒が斑に蠢く岩のような禍々しさの塊だった。

 思わず手を引き、後退ろうとしたが、その塊から伸びる鎖が男神に絡まるように巻き付いている。


〈その鎖を断ちたいと望んでください。

 鎖は貴方を操るものなのです〉


「私が……操られていると!?」


〈はい。今は未だ手足とまではされていないのでしょう。

 しかし、いずれは神世を滅ぼす為の手駒とされてしまいましょう〉


「神世を滅ぼす!? まさか!?」


〈手足とされたくなくば鎖を断ちたいと強く望みなさい。

 それが、貴方が助かる唯一の方法です〉


「はい! 私は操られぬ! 鎖よ消えよ!」


男神が光を帯びると、鎖は砂と化してサラサラと消えた。


 本来は、こういう御方なのだな。


先程までのデレデレ顔を思い出し、内心では苦笑しつつもラピスリは続けた。


〈よくぞ打ち勝ちました。

 その塊は貴方の神力が術者を超えなければ消えません。

 操られたくなくば修行に励みなさい。

 塊が消えねば、鎖は何度でも伸びましょう。

 意識を向けておれば見える筈。

 先程と同じように消しなさい〉


「はい! ありがとうございます!」


〈術者はナターダグラル。

 今後は近寄らぬよう、また、操られている振りを続けなさい〉


「まさか最高司様が……」


〈解けていると見破られたならば今度こそ強く支配され、手足とされてしまうでしょう。

 心しておきなさい。


 彼の者の言葉を思い出し、振りに徹しなさい。

 もしも遭遇したならば、目を見てはなりません。

 ユーレイ達が怨霊化せぬよう会得している『視線外し』を伝えます〉


光が飛んで来て額に入った。


「このような技を……ありがとうございます!

 私は女神様を信じます! 従います!

 女神様! もう一度お姿を!」


やれやれと思いつつ姿を見せる。


祈りの姿勢を取ったが、顔を上げた。

「女神様のお名前は!?」


〈私は神世の窮地を感知し、古より蘇りしピュアリラ。

 操られし神は多い。

 再び操られようとも救えるとは限らぬ。

 悪神に近寄らず、操られている振りを続け、静かに時を待ちなさい〉


「はい! ピュアリラ様!」


慈愛に満ちた微笑みを湛えたまま女神の姿は薄れていった。



―・―・―*―・―*―・―・―



 ラピスリは男神の額に翳していた手を離し、目を開けた。


 バステートも同じく終わったようで、目が合うと労いの微笑みを浮かべて頷いた。


【では、結界の外に運びます】龍に。


【お願いしますね】



 ラピスリは2神を背に乗せて上空へと瞬移し、眠ったまま浮かせて社に戻った。


 キツネの社に死司神達を集めて以降、比較的 神力が強い者から順に、こうして支配の鎖を断たせて夢の中で指示をし、職域に戻しているのだった。


【ラピスリ様、今日も いらしてますよ?】


【またですか……】今度は瑠璃として隣室へ。



 隣室ではオフォクスが浄破邪を施していた。そして彩桜も。


「彩桜。連日 浄破邪を手伝ってくれるのは助かるが、ショウやソラに会わなくてもよいのか?」

俯く真剣な顔を覗き込んだ。


「ショウ、自由じゃないし……俺、カケルさん見知ってるだけだし~」


「ソラは?」


「避難誘導班サブリーダーなったって。

 怨霊 多いから忙しそぉなんだ……」


「要するに、また自信が持てずに避けているのだな?

 ショウが自由でないのならば、彩桜が紗を護らねば誰が護るのだ?

 いずれか行動を起こしたらどうだ?」


「でもねぇ……明日からじゃダメ?」


「ふむ。ならば宿題だな」


「夏休みの宿題なら、と~~っくに終わってるのにな~」


「追加だな。彩桜に足らぬのは自信だけだ。

 前を向き、進めば道は開ける。頑張れ」


「……うん」



―・―*―・―



 漂っている2神に、既に解放されている死司神が寄って揺り起こした。


「目覚めろ。おい」ゆさゆさ。


「ん……あ……女神様は……?」

「古のバステト様は?」

「いや、ピュアリラ様だ」


「俺はバステト様だったが、相棒はピュアリラ様だったそうだ。

 だから どちらも居られるのだろう。

 その夢の話は口にするな。

 ルロザムール様が見張っている。

 既に手足とされているようだ」


「あの陽気に踊っていたルロザムール様が?」


「今はニコリともしない。

 とにかく職務に戻れ」


「ああ」「そうだな」


「奴に何か聞かれても、眠っていたから何も知らぬ存ぜぬで徹せよ。いいな?」


「「解った」」頷き、上昇。


「操られてる奴らの方がまだまだ圧倒的に多い。気をつけろよ」


頷き、昇り続けた。



―・―*―・―



 その頃、サイオンジ公園では――


〈トウゴウジどーしたぁ?

 手が足りねぇかぁ?〉


〈こうも怨霊が多いと確かに足りませんが、そうではなく、ソラを訪ねて生き人の男の子が来ませんでしたか?

 ショウとも友達らしいのですが……〉


〈男の子? 来ちゃいねぇが、彩桜かぁ?〉


〈あら、ご存知でしたか〉


〈キツネ殿の社に通ってる弟子だぁよ。

 そぉかぁ、ソラだけでなくショウとも友達だったかぁ。

 皆が楽しそうだからよぉ、近寄れねぇのかもなぁよ〉


〈ですよね。可哀想に……〉〈お師匠様♪〉


〈ナンジョウ、ご陽気だなぁよ〉


〈死神達の様子がですね、真面目になった、つーか、おとなしくなったんですよ♪

 前は見境なく鎌 振りかざして突進して来てたでしょ?

 ソレがですね♪

 怨霊を追い出す時とかは俺達には向かって来なくなったんですよ♪〉


〈言われてみれば確かにね。

 目が穏やかになったわよね〉


〈そうそうソレ♪

 真っ赤に血走ってるヤツが激減♪

 や~~っと!

 ユーレイが怨霊を捕まえてるって理解してくれたのかな~とね♪〉


〈ま、油断は禁物だぁよ〉


〈そうですね〉〈解ってますよぉ〉〈はい〉


ナンジョウと一緒にホウジョウも来ていた。



―・―*―・―



 職務に戻ろうと上昇したものの、死神達は困っていた。


「結界……増えたよな?」「ああ」


「頑丈になったよな?」「そうだな」


「どうやって迎えに行くんだ?」「ふむ……」


「ん? あの再生神、何してるんだ?」


若い再生神が宙に留まり、魂を見詰めていた。


「行ってみよう」「だな」

攻撃する気は無いと示す為に鎌を消して飛んだ。



「そこの若いの、どうした?」


「あ……」死司神達の目をジッと見る。視線外し完璧で。


「ん?」「私達に何か付いているか?」


「あ、いえ。解けているのですね」


「「そういう事か」」


「死司だけでなく他域でも、潜入している獣神様が解いてくださっているのです。

 ですが振りは続けなければなりません。

 再生では、堕神魂を見つけたならば即 浄滅しなければならないのです」


「で、それが堕神魂なんだな?」


「はい。獣神様にお助け頂いたのに浄滅なんて……」


「浄化域にも潜入してるんだよな?」


「はい。そう聞いております」


「だったら俺達が浄化域に送る。

 きっと仲間が助けるだろうからな」


「私達も解いて頂けた仲間に伝える。

 協力し合おう」


「はい♪」



―・―*―・―



 ラピスリとバステートがしている支配を解く方法は、リグーリが広めていた。


【エィムも誘導してみぬか?

 女神達が喜びそうじゃぞ?】


【僕は……】『嫌です』と目が語っている。


【ま、そうじゃろうの♪】


【リグーリ様は?】


【しておるよ♪】


【え?】


【この姿でするものか】チラリと変える。


【あ……】まさかの二枚目……。


【惚れたかの?♪】


【修行に戻ります】ぷいっと消えた。


【チャムは教会じゃよ♪】

【どうしてチャム!?】


【捜しておったのじゃろ?♪】


【捜してませんのでっ!】







ラピスリがピュアリラ、バステートがバステトと名乗っているのは、誰かが喋らされた時の為です。

ラピスリとしては烏滸がましいと恐縮しつつ頑張っているんです。



さて、お話の方は、彩桜の様子に戻ったところで次章に進みます。


本編では、カケルがユーレイとしての基礎を習った次は、壬上(みかみ)さんとトシ兄でしたね。



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