オニキス=リーロン
再び背に彩桜を乗せたオニキスが空に戻って下を見ると、青年と少年のユーレイが楽し気に喋りながら飛びつつ駆けて来た。
【女の子は?】
【後ろ~♪】
【あ、居た。ナンで苦笑?】
【カケルさんがコドモみたいだから?
ほら、ソラの方がオトナっぽくない?】
【言われると……そ~見えちまうなっ♪
ユーレイとして先輩だからかな?】
【そぉかも~♪
車 乗ったね♪ 帰るのかな?】
【また護衛だな】
【頑張ろ~ねっ♪ あっ】
【落ちたな……】トリノクス様の器なのに。
【背中から埋もれちゃったね~】にゃはっ。
【確かに苦笑モノなヤツだな】【何コレ!?】
【【あ……】】あ♪ 視点合わせしちゃお♪
【ん~~~~~!? ど~して真っ暗!?
タカシどこっ!? アーマルどこっ!?】
真っ暗なままだがキョロキョロしているらしい。
【ショウ♪ おはよ♪】
【サクラ~♪ ね、ど~なってるのぉ?】
【み~んな、カケルってユーレイお兄さんの中に居るの。
でね、カケルさんが埋もれちゃったの~♪】
【ユーレイ? 埋もれちゃった?
あ♪ 見えた~♪ けど誰? 男の子?】
ソラに引っ張り出してもらっている。
【ショウ……事故、覚えてる?】
【ジコ?】
【いっぱい車が ぶつかって……】
【あ……ぱっか~ん……でも……コレ……】
【うん――】【スズちゃんは!?】
【大丈夫。ショウが護ったから】
【そっか~♪ だったらいい♪
僕も大丈夫だし~♪】
【大丈夫じゃなくてユーレイなっちゃったんだよ? ……ショウ、死んだんだよ】
【そっか~。でもサクラとお話しできるから僕は大丈夫♪
タカシは? アーマルは? トリノクス様は?】
【うん。みんな一緒だよ。
でも眠ってると思う。
トリノクス様が みんな目覚めさせるって言ってたから、そのうち話せるよ】
【ん♪ だったらいい♪
ね♪ このヒト、祓い屋さんでしょ♪
御札ヒュン! ってカッコイイの♪】
運転している響を見ている。
【うん。御札お姉ちゃんは祓い屋さんだよ。
シッカリ覚えてるんだね~♪】
【なんかね~、いっぱい い~っぱい、ぱっか~んしてるの~】
【そっか。慌てないで開けてってね?】
【うんっ♪ このコは?】視線はソラに。
【ソラ。ソラは、もっと前の事故でユーレイなったんだ。
バスが燃えて――】
【ボワボワの! コドモユーレイ!】
【あ、うん】
【サクラ、ソラと友達?】
【……ううん。これからなるよ♪】
【じゃあ僕も~♪ あれれ?】
【ど~したの?】
【このお歌……知らない……?
まだ思い出せてないだけ?】
【ううん。新曲だから。
ショウ達、半年くらい眠ってたんだよ。
事故は冬だったけど、今は夏なんだ】
【あ~♪ モクモク入道雲♪ ホントに夏~♪
ん? おっきな水たまり~♪】
【海だよ♪】
【泳ぐ~♪ アッチ行く~♪
って! 動けな~い!】
【カケルさんが行かないとダメなのかも~】
【お兄! 僕と替わって! 泳ぎたいのっ!】
【お兄?】
【ユーレイ探偵団コードネームお兄だって♪】
【探偵団!?】
【うんっ♪ 僕も入る~♪
でも探偵団って何?】
―◦―
カケルには全く気づかれないまま、彩桜とショウは話し続け、ユーレイ2人はサイオンジ公園の前で降ろされた。
【オニキス師匠、これからど~するの?】
【もう街だからな。護衛は終わりだろ。
オレ、瑠璃んトコ行くよ】
【どして?】
【大陸から来た梅華チャンの弟って設定で黒瑯の弟子になるんだ。
早く黒瑯の父様を目覚めさせねぇと進まねぇからな】
【白久兄は?】
【ソッチもなんだけどなぁ。
ま、先に黒瑯だ】【サクラ~、僕 眠~い】
【寝てて♪ でも俺を忘れるのナシだよ?】
【だ~いじょ~ぶ~♪ おやすみ~♪】
【うん♪ おやすみショウ♪】
―・―*―・―
その夜、青生の声掛けで急遽 開かれた狐儀と梅華の結婚祝いの席に、梅華の弟・驪龍として輝竜家を訪れたオニキスは、計画通り黒瑯の弟子になった。
「明日から通わせてもらいます!
ヨロシクお願いします!」深々っ!
「弟までお世話になってしまうなんて……」
「申し訳ありませんが、義弟を宜しくお願いしますね」
梅華と狐儀も苦笑しつつ礼をする。
「オレもまだまだなのに弟子なんて~~~♪
嬉しいじゃねーかよ!♪ 頑張ろーなっ♪」
「はいっ!」
「では――」
店続きの座敷で挨拶を交わし、狐儀達は押入れに入った。
「彩桜もココから、お稲荷様トコへ?」
黒瑯が押入れの襖をツンツンしてから覗き込んだ。
「うんっ♪ お稲荷様がウチ来るのに作った道なんだよ♪」
「そーいやオレがチビの頃、この座敷にゃ、お稲荷様がデーンと座ってたよなぁ。
怖かったんだよなぁ。
で、人な狐儀が店番してたよな。
んで、いつの間にか紅火が一緒に座ってたんだよ」
「小学校入学と同時に弟子入りした」
「金錦兄と青生も よく居たよな?」
「お稲荷様から歴史のお話を伺っていた」
「うん。俺も一緒に。
あと俺は物とも話していたんだよ」
「青生、彩桜と同じか?」
「そうだね」くすっ♪
「青生兄と俺、歳の離れた双子~♪」
「うん。そうかもね」
「いやいや、ナイだろ」
「瑠璃姉とメイ姉、場所が離れた双子だよ?
フツー、ナイでしょ?」
「ソッチは まだ可能性あるだろ」
「ふぅん。でも青生兄と俺、双子~♪」
「いいのか青生?」「いいよ」「ふ~ん」
ワン♪
「あ、オニキス。コッチ来ちまったのか。
ウィスは?」
ワン♪ 後ろを向いている。
軽い足音が近づいた。 ク~ン?
「あ、居た。藤慈、呼んでるぞ♪」
「そうですね。私の部屋に行きましょう」
「そんじゃオニキスはオレの部屋だ♪」
ワン♪×2。
【オニキス師匠♪ ウィスタリア師匠♪
頑張って~♪】
【おうよ♪】【はい♪】
―・―*―・―
深夜の西海村――
〈サイオンジ、どうしたの?
私の顔に何か付いてる?〉
〈い~や、なぁんもだぁよ。
ただなぁ、響チャン見てるとナ~ンか思い出しそ~になるんだなぁよ〉
〈知り合いに似てるとか?〉
〈そ~かもなぁ。ま、さておきだ。
此処にも結界が在るぞぃ?〉
〈そうね……でも誰が? お稲荷様?〉
カケルをライブハウスに連れて行き、奏と共に帰宅した響は、ソラが生まれ育った村にも結界をしなければと、サイオンジと話して来ていたのだった。
〈龍神様の結界……らしいなぁよ〉
〈分かるの!? 流石サイオンジ♪〉
〈分かる、つーかぁよぉ、内から声が聞こえたんだなぁよ。
今も近くを龍神様が飛んでるらしいぞぉ〉
〈へぇ~♪
それじゃ補強だけしときましょ♪
結界の内側に御札を貼っておくわ♪〉
扇状に少しずらした御札の束を顔の高さにスッと構え、横に薙ぎ払うように投じた。
〈よ~お飛ぶなぁよ♪〉
結界に着くと見えなくなる。
〈まっかせて~♪ 次!〉
90度回転して次を投げ、また回転して次、と四方に投じて満足気に微笑んだ。
〈流石なのは響チャンだなぁよ〉
〈これしかできないからぁ〉
〈今の生き人で、こんだけ強い祓い屋は居ねぇよぉ。
そんじゃあ此処もオイラが護るだぁよ〉
〈怨霊で大変な時に増やしちゃって ごめんなさい〉
〈ソラはオイラの弟子だぁよ。
ナ~ンで響チャンが謝ってるだぁよ?〉
〈あ……〉
〈ありゃあ育ったら、い~い男になるぞ~♪
ちぃと待つだぁよ♪〉
〈サ、サイオンジってばっ!
何 言ってるのよっ!?〉
〈なぁんも なぁんも♪〉ニヤニヤ♪
〈ソラはユーレイ探偵団の団員なのっ!
私の助手なんだからっ!〉
〈だったなぁよ♪
オイラの弟子を頼んだなぁよ〉
優しく包み込むような笑みに変え、頭を下げた。
〈もうっ、そういうのヤメてよね。
帰りましょ〉
顔を隠すように踵を返し、漁港へと急ぎ足で向かった。
〈でも……ユーレイって育つの?〉
〈さぁなぁ♪〉あっはは♪
その様子を上空から見ていたジョーヌも微笑んで巡視を再開した。
ショウも無事に目覚めました。
まだカケルには気づかれていませんけどね。
ショウに気づくどころか、まだ服も変えられないカケルですので。
主な登場人物と、その内に居る神です。
〈内の神〉
カケル トリノクス(蛇狐)
ショウ トリノクス
ソラ ガイアルフ(蛇狐)
響 キャティス(猫)
サイオンジ フィアラグーナ(龍)/マリュース
ナンジョウ ライパンサー(獅子豹)
ホウジョウ ライガース(獅子虎)
トウゴウジ パンマーマ(豹)
キンギョ ライガース
寿 キャティス
トク アリティア(兎)
輝竜兄弟 ドラグーナ(龍)
飛翔 アーマル(龍)
利幸 ウンディ(龍)
モグラ マリュース(獅子虎)
神様のチョコっと説明です。
★ガイアルフ オフォクス、トリノクスの父
★フィアラグーナ ドラグーナの父
★ライガース マリュースの父
☆パンマーマ マリュースの母
★ライパンサー ライガースの弟
魂内の神は丸ごとだったり、分割されていたり、欠片だったり、と様々です。
欠片でも大小あったりですが、こんな感じです。
利幸の場合は(=ウンディ)なんですけどね。
ショウも(=ショウフルル)なんですが、トリノクスの欠片も入っていたんです(第一部 第1章)。
まだ登場していない神様も書いてしまいましたが、四獣神の親とかですので軽く流してください。
欠片は引き合い集まりたがる、ということで集まった結果です。