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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第1章 翔³の目覚めの裏側で
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カケル目覚める



 カケルとソラの手を繋がせた翌々日の夜明け前、彩桜(さくら)はまた交差点に向かっていた。

青年ユーレイを眺めがら、点滅から切り替わったばかりの信号を待っていると――


〈トシ兄!?〉


信号手前から、中年男性ユーレイが現れて青年ユーレイの顔を覗き込み、首を傾げていたのは見えていた。

しかしその程度はよくある事なので、ただ眺めていたのだが、続いて現れたユーレイを見て、つい呼んでしまったのだった。


〈待ってトシ兄! 俺だよ、彩桜だよ!!〉


叫びながら周りをぐるりと見渡し、車も人も居ないので瞬移して利幸の腕を掴もうとした。


――が、寸前のところで利幸は中年ユーレイを連れて消えた。


〈トシ兄ってば!! 戻ってよおっ!!〉


返事もないし、戻っても来ない。


〈もおおっ!! トシ兄のバカーーーッ!!〉地団駄!


《ドラグーナ……》


〈トリノクス様?〉


《そうだ。

 父、兄との共鳴で力を得ておったのでな、先程の接触でウンディに込めていた私の欠片を回収した。

 この青年を目覚めさせる。もう暫し待て》


〈ショウと飛翔(たかし)さんは?〉


《皆、無事だ。順に目覚めさせる。

 この青年が本体となっておるから先に目覚めさせねばな》


〈はい♪

 お稲荷様トコ知らせに行きますね♪〉


《頼む……》


彩桜は青年ユーレイに回復治癒を目一杯 注ぎ、稲荷山へと瞬移した。



―◦―



〈オニキス師匠! お稲荷様は?〉


キツネの(やしろ)は留守だったので、山の社に行くとオニキスが振り返った。


〈慌ててどーした?〉


〈トリノクス様が目覚めたの~♪

 でね、トシ兄まだ街に居たよ〉


〈ウンディ何処だっ!?〉


〈おじさんユーレイと一緒に消えちゃった〉


〈おじさんユーレイ? 誰だそりゃ?〉


〈知らな~い。

 でも交差点のお兄さんの知り合いかも~〉


〈ま、無事に街の中ならいっか。

 そのうち捕まえられるだろ。

 で、トリノクス様ナンか言ってたか?〉


〈トシ兄から欠片を回収したから、本体のお兄さんを目覚めさせるって♪〉


〈そっか♪ ナンにせよ一歩前進だなっ♪〉


〈うんっ♪〉


〈彩桜、今日も店番か?〉


〈パトロールしたくて~お休み貰った~♪〉


〈じゃあトリノクス様 見ててくれるか?〉


〈うんっ♪

 あ、お稲荷様は? お出掛け?〉


〈ああ。『サイと話さねばならぬ』つって出てったよ〉


〈そっか~。じゃあ俺ガンバル~♪〉瞬移♪



―・―*―・―



 オフォクスは稲荷山の麓でサイオンジと会っていた。


〈モグラの事、阻止できず申し訳ない〉


〈仕方のねぇこったぁよぉ。

 気にすんなってこった。

 これも運命なんかなぁよ。

 どーしてもオイラと戦いたいんだろ~なぁ。

 成仏させてやるのがオイラの……親友としての務めなんだろ~よ〉


〈サイ……〉


〈そんな顔すんなってぇ。

 キツネ殿らしくもねぇ〉


〈然うか……〉フッ。

〈話は変わるが、交差点の青年とソラは近々目覚める。今日明日の事であろう〉


〈あの兄ちゃんの素性は?〉


優生(ユウキ) (カケル)

 (ヒビキ)の姉と婚約しておった。

 以前、民家に結界を成したであろう?

 その後、街の結界に変えたものだ〉


〈あの家かぁよ。何年前だぁ?

 響ちゃんも随分と頑張ったなぁよ。

 そぉかぁ……死んじまったかぁ。

 で、祓い屋としちゃあど~なんだぁ?〉


〈素性に関しては『それだけか?』と言う顔をしておるな。

 この程度は知っておったのであろう?

 力が開かぬままユーレイと成ったが故に、ごく普通に暮らしていた。

 其れだけだ。

 存分に鍛えてやってくれ〉


〈そぉかぁ。トビキリなんだぁな~♪〉


頷く。〈カケルとソラを頼む〉


〈おぅよ。任せとけってぇ。

 そんじゃあソラに付いててやらにゃあなぁ。

 キツネ殿、無理すんじゃねぇぞぉ〉

笑って消えた。



 サイにまで心配を掛けてしまうとは――。


オフォクスも苦笑しつつ(やしろ)に戻った。



―◦―



(あるじ)様っ】尻尾が嬉しそうに揺れている。


【戻ったか、狐儀(コギ)。長旅であったな】


【モグラが怨霊に戻ってしまいましたので、可能な限り多くの結界を強めておりました】


【然うか。大儀であったな】


【いえ、、梅華(メイファ)様にお手伝い頂きましたので……】

尻尾がモジモジ揺れる。


【来ておったのか。

 ラピスリには会わせたのか?】


【ラピスリ様は悪神の襲撃にて、ご友人を亡くされまして……その……】


【其れで社に来ぬのだな?

 然うか。昨夜も其の友を捜しておったのか。

 ……ふむ。近い内に見つかる。

 然う伝えてくれるか?】


【梅華様を会わせても?】


【会わせればよい。

 ラピスリが吸収なんぞするとは思えぬが、会って話せば前を向くやも知れぬ】


【はい。

 主様は、また月にお戻りになられますか?】


【新たな道も滅された。

 次の道が開く迄は此処(ここ)に居る】


【はい(♪)】


嬉しそうに揺れっぱなしな尾には気付いていないのか、狐儀は真顔で一礼して消えた。



 尾の方が素直で雄弁だな。


甥っ子の幸せを願うオフォクスもまた笑みを浮かべた。



―・―*―・―



 交差点近くの公園から青年ユーレイの様子を見ている彩桜は、暗くなってきたので交替してもらえるようなパトロール中の堕神犬は居ないかと探していた。


 お兄さん、目覚めてるけど動けない?

 ずっとキョロキョロしてるだけだよね。


 気を消さなくても見つからない?


 でも~、このお兄さん、とっても強い力

 持ってるんだよね。

 消しとくべきだよね? うん。


 午前中に通った御札お姉ちゃんは

 無視して行ったっきりだし~、

 トリノクス様お返事ないし~、

 お師匠様達だ~れも来ないし~!


 お腹 空いちゃったよぉ。


 おにぎりも~、お菓子も~

 ぜ~んぶ食べちゃったぁ。

 黒瑯兄のご~は~んん~~~!


〈彩桜? 何処で騒いでいるの?〉

彩桜が気を消しているので掴めないらしい。


〈青生兄~♪ あのね、ショウのお兄さん起きたけど動けないのぉ。

 朝からずっと見てたのぉ〉


〈俺は動けないから瑠璃に伝えてみるよ。

 とりあえず、ご飯なんだね?〉


〈うん♪〉



―◦―



 すっかり暗くなって彩桜のお腹が鳴った時、両肩越しに2つの弁当箱が差し出された。


〈瑠璃姉ありが――分身の術!?〉

受け取った特大サイズの弁当箱を重ねて抱き、振り返って跳び退(すさ)った。


〈説明が難しいが……双子の妹だ〉

梅華(メイファ)と申します〉


〈どゆこと???〉


〈人としては双子ではない。

 彼女は大陸生まれだ。

 内の神が双子なのだ〉


〈神様が強いから?

 双子みたくなっちゃうの?〉


〈彩桜達兄弟と同じだ〉


〈そっか~♪〉納得♪


〈簡単に納得するのだな……〉


〈だって兄貴達、黙って立ってたらフツーのヒトじゃ区別できないでしょ。

 フツーの兄弟って区別できるんでしょ?〉


〈確かにな〉


〈瑠璃姉ちょっと元気なった?〉


〈小夜子は近いうちに見つかると知らせに来てくれたからな〉


〈良かったね~♪〉


〈そうだな〉ふっ。


〈メイ姉、瑠璃姉と一緒に暮らすの?

 俺ん家 来る?♪〉


〈いえ。山のお社に……〉

〈よく『メイ姉』で分かったな〉

〈あ……はい♪〉


〈いつでも来てねっ♪〉


〈ありがとうございます♪〉


〈中身ぜ~んぜん違うのも俺達と同じだね♪〉


〈どういう意味だ?〉


〈悪い意味じゃないからっ〉


〈ま、確かに その通りだな。

 ところで食べないのか?〉


〈食べる食べる食~べる~♪

 ビックリして忘れちゃってたぁ。

 わあっ♪ 瑠璃姉のと黒瑯兄のだ~♪

 いっただっきま~す♪〉


〈完食できるのだろう?〉


〈うんっ♪ もっちろ~ん♪〉ぱくぱく♪



―・―*―・―



 キツネの社では――


【主様、ラピスリ様は梅華様を双子の妹と、輝竜(きりゅう)家にて紹介しておられました】


【やはり然うなったか】フッ。


【今宵は彩桜様と共に(トリノクス)の様子を御覧になられるそうです】


【ラピスリもメイファと共に居れば安堵するのであろうな】


【そのようです】


【メイファと絆を結び、支えてやってはくれぬか?

 誰が言ったでもないのだが、ラピスリの力に戻らねばならぬと勝手に思い込んでおったのでな。

 未だ不安は払拭しきれておらぬ筈だ】


【私で……よろしいのですか?】


【頼む】


【私なんぞに頼むだなどと……私は喜んで。

 ですが、梅華様のお心こそが大事で御座います】


【確かめてもらえるか?】


【えっ……? あっ……か、畏まりました】







彩桜がカケルを見ている公園はサイオンジ公園ではありません。

交差点近くに別の公園があるんです。


彩桜の見守りは今回だけでなく、これからまだまだ続きます。

本編ではカケル達は全く気付いていませんでしたが、見ているだけでなく兄達やドラグーナの子供達と共に護り続けるんです。



人としての瑠璃の生みの親は亡くなっています。

育ての親は同じ街で元気に暮らしています。


人としての梅華も同じなんです。

無自覚堕神でしたが桃華(タオファ)に目覚めさせてもらい、修行を経て、育ての親を漢中国に残して来たんです。



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