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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第二部 第1章 翔³の目覚めの裏側で
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握手させてみた~♪



 利幸(としゆき)小夜子(さよこ)も見つからないまま、8月も半ばになった。


 夏休みに入ってからの彩桜(さくら)は、店番をしながら修行と勉強をし、早朝と夜には交差点でショウに向けて力を注いでいた。


 この夜も彩桜は動物病院で青生(あお)と一緒に瞑想した帰り道、遠回りして交差点に寄った。



 あ……また御札(おふだ)お姉ちゃんだ。

 ちょっと待ってよ~。


 お店に来てくれても聞けないけど

 あのお兄さんと知り合い? 恋人?

 早く目覚めたらいいのにね……。


 あっ!


 お兄さん叩いて走ってっちゃったぁ。

 もしかして泣いてた?


彩桜は宵闇に紛れていく背中を見詰めた。


 さっきの泣いてた顔……誰かに似てる?

 ん~~~誰だろ?


 あ! ブランコのお姉さん!


 5月くらいからだっけ?

 犬達のお散歩の時 見かけてたけど

 声かけらんなかった。


 最近 見てないけど……暑いから?


考えながら青年ユーレイの前へ。


 そっか!

 このお兄さん、お婆さんユーレイさんの

 お部屋のヒト!


 寝てるから分からなかった~。

 毎朝 見てたのスーツだったし~。

 別人なるの白久(はく)兄だけじゃないんだ~。


 じゃあブランコお姉さんが恋人さんで~、

 御札お姉ちゃんのお姉さんかな?


 お姉さん泣かせてるから叩いた?

 お兄さんもショウも飛翔(たかし)さんも神様も

 早く目覚めないかなぁ……。


 あ、考えてないで力ねっ。

 今日は浄化にしよっかな~。


青年ユーレイの背に両掌を当てて全力で浄化を注ぎ始めた。


 ブランコお姉さんにはユーレイ

 見えないのかな?


 見えるんならアパート見てないで

 コッチ来るよね?



 でも……眠ったままなの見たら

 余計に悲しいかな……?


 瑠璃(るり)姉も お友達が目覚めないって

 泣いてたもんね……。



 瑠璃姉……今日も捜しに行ってる?

 だから青生兄が夜勤なんだよね。

 どっちも来ないんだよね。


 トシ兄も行方不明のままだし……

 明日から俺もユーレイ捜ししよかな?

 物見の水晶玉じゃなく街の中で。


 うん! そーしよ! ――あれれ?


すぐ近くの歩道に男の子ユーレイが現れ、ふわふわとした足取りで歩き始めた。


〈ソラ♪ どこ行くの?〉


男の子ユーレイは首を傾げて見回し、声の主を探しているようだった。


〈俺だよ。彩桜♪ 覚えてない?〉

瞬移して捕まえた。


「ん~~~」


〈今は夜中だからバス走ってないし、病院も面会時間じゃないから帰ろうね。

 お見舞いは明日ね?〉


「ん」コクン。


〈お家は公園の大きな木だったよね♪〉


「ん」コクン。


彩桜はソラと手を繋いだ。


 あ! コレって……コレも魂の震え?

 お稲荷様が言ってた共鳴だよね?


 兄貴達のとも、瑠璃姉のとも違うけど

 きっと共鳴だよね♪

 ソラの欠片の神様も親戚なんだね♪


 ん? それじゃあ お稲荷様も親戚?

 えっと~~――


《親戚じゃなくて父の親友だよ。

 父とは強い絆を結んでいるから、父から貰った命の欠片が共鳴しているんだ》


〈そっか~♪ ドラグーナ様ありがと♪〉


《もしかしたら……その子を近づけたらトリノクスが目覚めるかもしれない》


〈そぉなの!?〉


《その子も目覚めるかも。

 親子の共鳴は大きいからね》


〈近づけてみま~す♪ あ……〉


 ドラグーナと話しているうちにソラは深く眠ってしまっており、ふわふわと漂うように浮かんでいた。

彩桜はソラを抱き上げ、青年ユーレイの前へと瞬移した。


《すぐに効果が現れるとは限らないけど、手を繋がせてみてくれるかな?》


〈はい!〉握手~♪〈あ♪ 震えた~♪〉


《そうだね。早く試したらよかったね。

 思い付かなくて すまなかったね》


〈だ~れも思いつかなかったんだから~、ドラグーナ様すっご~い♪〉


《ありがとう彩桜》


〈えへへ~♪ あ♪ お稲荷様だ~♪〉


《目覚めたんだね。何か感じた?》


〈ふむ。父子の共鳴であったか〉人姿に。


《そうか。あまりの強さにオフォクスにも共鳴が伝わったんだね。

 それで体調は?

 一気に月から戻った疲れは取れたかい?》


〈まさか十日近くも経って出るなんぞと思いも寄らなかっただけだ。

 ()うでなければ倒れるなんぞ有り得ぬ〉


《つまり、もう何ともないんだね。良かった》


〈然う言うドラグーナこそ、もう眠ってしまうのであろう?〉


《うん、そろそろね。

 だから彩桜達をお願いね》


〈ふむ〉青年ユーレイとソラに手を当てる。


スッ――とドラグーナの気が退()いた。


〈寝ちゃった~〉


〈彩桜、儂が唱える間ソラを保っておれ〉


〈うん♪〉



―・―*―・―



 この日、ソラの保護者サイオンジは出掛けており、公園のユーレイ達は不意に消えてしまったソラを捜していた。

度々消えてしまうので捜すのには慣れてはいるものの、男の子がソラという名だと知っているのはサイオンジだけなので、呼び掛けようもなくて毎度 困っていた。


〈今度は何処(どこ)に消えたのやら……〉

〈いつもの場所は全てが行ったんだけどなぁ〉

〈他に行きそうな場所は?〉


〈闇雲に捜しても見つかりっこないわ〉


〈〈〈トウゴウジ様♪〉〉〉

道端で、次は何処を捜そうかと相談していたユーレイ達が嬉しそうに振り向いた。


〈今は眠ったまま動いている子供なんだから、何処に現れるのか、大人には思いもよらない場所に違いないわ。

 総合病院には行ったのね?

 まだ行き着けたことはないけど〉


〈はい。真っ先に〉

〈ですが見つからなくて……〉


〈そう……だったら――あら?〉

目を閉じて探り始めたが、すぐに目を開けた。

〈交差点に大きな力ね。

 この感じ……キツネ様かしら?

 公園に戻って待ってて。

 きっと見つかるから♪〉消えた。



―◦―



 やっぱり、前にホウジョウと一緒に見た

 キツネ様だわ。


 男の子は毎日(かよ)って来てる子よね。

 やっぱり お弟子さんなのね。


 あら、キツネ様で見えなかったけど

 ボクちゃん見つけたわ♪


 でも……何をしているのかしら?

 交差点のコと……手を繋がせて?

 何か関わりがあるのかしら?


 終わったみたいね。

 でも話してるから、もう少し待ちましょ。



―・―*―・―



〈彩桜、あまりソラと親しくなるな〉


〈どして?〉


〈今のソラの記憶は仮のものだ。

 完全に目覚めれば消えてしまう。

 彩桜の事も忘れる。

 悲しくなるだけだ〉


〈消えちゃうのかぁ……でも、だったら目覚めたソラとも友達なる♪

 もっかい友達♪ やり直し♪〉


〈然うか……〉


〈うん♪ ソラならきっと祓い屋なるから♪

 一緒に祓い屋したいんだ♪〉


〈しかし相棒は――いや、然うだな〉


〈ん? あ、そっか~。

 ソラの相棒は俺じゃなくて、このお兄さんかもだよね。

 欠片って引き合うんでしょ?〉


〈然うだ。欠片は引き合う。

 しかしドラグーナは儂にとってもトリノクスにとっても親友だ。

 父にとっては親友の子だ。

 悪い方向には向きようもない〉


〈ん♪

 お稲荷様ありがと♪

 それじゃあソラ送って、俺も帰りま~す♪〉


〈ふむ。気を付けよ〉


〈は~い♪

 瑠璃姉 近くに居るみたい~。

 お願いしま~す〉

ソラをおぶってペコリとし、駆けて行った。


オフォクスは娘の気へと瞬移した。



―◦―



〈待って〉


〈ん? あ♪ 祓い屋のオネーサン♪〉


〈あら、知ってたのね♪〉今はオネエだけどね。


〈俺も祓い屋なりたいから~♪〉


〈仲間達が喜ぶと思うわ♪

 キミなら即戦力よ♪〉


〈高校入ってからって言われてるんだ~〉


〈じゃあ待つわね♪〉


〈ありがとございま~す♪

 あ……でも俺、スカウトされて約束してたんだった~〉


〈祓い屋は大抵 繋がってるわよ♪ 誰?〉


丑寅(うしとら)ガラスの嶋崎(しまさき)さん〉


〈あら♪ 私の娘よ♪〉


〈そぉなんだ~♪ じゃあ お約束~♪〉


〈どちらと行動してもいいわよ♪

 それで、交差点のコとは……知り合い?〉


〈お兄さんは毎朝見かけてた。それだけ。

 重なっちゃったユーレイが友達なんだ〉


〈そう……重なるなんてねぇ。

 大きな事故だったからかしら?〉


〈そぉかも~。早く目覚めてくれないと、お兄さんに溶け込んじゃいそぉで~。

 だから(かよ)ってるんだ〉


〈そのボクちゃんとは?〉


〈よくフラフラ~ってしてるから何度か公園に連れてったよ。

 どっちも眠ってるし、おっきな力あるから目覚めないかな~って握手させてみた~♪〉


〈そういうことだったのね〉


〈見てた?〉


〈少しだけね。ボクちゃん捜してたのよ〉


〈そっか~。はい♪ お願いします♪

 それじゃ まったね~♪〉


トウゴウジに渡したソラの頭を撫でて、彩桜は家に向かって駆けて行った。



―・―*―・―



 朝になり、彩桜が店前を掃除していると――


「あ、居た♪ 良かった~♪

 ってまた半分お面?」


「ん? あ♪ いらっしゃいませ~♪

 何かお急ぎですか?」


「バイト前に来ただけなんだけど早すぎた?」


「ぜ~んぜん♪」ガタギシ開ける。


「アイスが美味しすぎて~」あはっ♪


「追加ですね♪」


「いいの!?♪」


「持って来ま~す♪」


笑顔で弾むように駆けて行き、すぐに戻った。


「はい♪ 修行アイスのイチゴとバニラ♪

 特製保冷箱に入ってます♪」


「おいくら?」ちょっと恐る恐る。


「売り物じゃありませ~ん♪」プレゼント♪


「それじゃ やっぱり~~」


「ほえ?」


「何か買うわ♪ バイト代ボーナス出たし♪

 あのね、ユーレイが見えない人に見せられる道具、なんてある?」


「すぐ出しま~す♪」とっとこと♪


座敷の戸棚をガサゴソ――「見~つけた♪」


「小さめの手鏡?」


霊眼鏡(れいがんきょう)

 姿隠してないユーレイさんなら霊視できないヒトにも見えるし、祓い屋さんなら姿消してるユーレイさんも見えます♪ って説明で分かりますか?」


「分かるわよ♪

 使ってみれば一目瞭然ってことでしょ♪」


「です♪ あとね、ユーレイさんも自分の姿が見えるの~♪」


「そっか……ガラスとかじゃダメだもんね」


「鏡面、水晶なの~♪」


「って……私、買える?」


「2千円、、大丈夫?」


「2万円でも安すぎじゃない?

 そんな大きな水晶って……」


「でも、ほら~」

ストラップ用の穴から ぶら下がっている値札を見せた。


「ホントに2千円ね……買うわ♪」


「あっりがと~ございます♪」


「お兄が目覚めるまでに いろいろ試しておかないとね♪」


「お兄さん?」きっと交差点の、だよね?


「お姉ちゃんの婚約者……だったの。

 眠ったままのユーレイ」


「そ……」


 やっぱりブランコお姉さんの婚約者なんだ。

 当たっても嬉しくもないけど~。


「あ、そんな顔しないでねっ。

 お兄も祓い屋になれるって、強い祓い屋のお姉さんが言ってくれたから大丈夫よ」


「ん。大丈夫だよ。

 目覚めるし、なれるから」にこっ。


「ありがと♪ そう言ってもらえたから、確かに目覚めるって思えたわ♪」


「もぉそろそろ目覚めると思いま~す♪

 ね、アイス……」特製保冷箱だけどねぇ。


「ああっ! 急いで帰らなきゃ!」







ユーレイ外伝 第二部では、本編の主役達周辺の動きや行間、神世や月の動向等々を描いて参ります。

m(_ _)m


第二部のスタートは8月半ば。

つまり本編直前です。正確には前々日です。



ショウ達を目覚めさせようと、2月の事故以来ずっと毎日々々神力を注ぎ続けていた彩桜。

ですが夜中や夜明け前だったのでカケルの顔はよく見ていませんでした。


ようやく彩桜にも繋がりが分かり、これから主役達が目覚めます。



響はカケルが目覚めて祓い屋になれたら奏に会わせようと霊眼鏡(れいがんきょう)を買いました。


ところがところが、目覚ましく成長するソラとショウに比べて遅々としまくりなカケルのおかげで霊眼鏡を使えないまま再会に至るんですよね。


まぁ、若返ったサイオンジに使えたから良しとしましょう。



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