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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第一部 第8章 ザブダクルとマディア
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ティングレイスの親と兄



 死司最高司の館に戻ったマディアは執務をしていた。

ザブダクルは談話卓の方で持ち帰った書物を広げ、まだ調べものを続けている。


 執務の内容を流しつつ心は閉じて……

 難しいけど、できそうだね♪

 僕も随分と落ち着いたから

 上手く動かないとね♪


 考えてみればエーデだって

 ダグラナタンのナターダグラルと

 長い間 一緒に行動してたんだから

 僕だって大丈夫だよね♪


 ザブダクルは闇に染まれとか

 言ってたけど、ザブダクル自身

 染まりきってないよね。


 きっと、これからの僕次第で

 気づいて改心してもらえるよね。

 それまでの辛抱だよね。うん♪


 それにしても何を熱心に調べてるんだろ。

 グレイさんの父様についてなのかな?

 グレイさんって……あ、もしかして

 ザブダクルは恐れからユーチャ姉様を

 封じたのかな?


 だとしたら―― 「マディア」


「はい」ビックリしたぁ。


「今後も執務は任せる」


「はい」執務してもいいんだ♪


「モグラという怨霊を知っておるか?」


「は?」唐突~。「存じておりますが」


「支配の力を持っておるのだな?」


「はい。それを調べていたのですか?」


「いや。廊下から聞こえたのだ。

 モグラに操られた者に攻撃されたと。

 マディアならば捕らえられるか?」


「モグラは獣を支配する方が得意ですので、正直なところ、やってみなければ何とも申せません」


「居場所は?」


「捜すことは可能かと存じます」


「ふむ。明日、捕らえに行くぞ」


「はい。明日でよろしいのですね?」


「少し休ませてもらう」居室へ。


「はい。おやすみなさいませ」♪



―・―*―・―



 封珠の外殻に想いを込めたエーデリリィとユーチャリスが戻ると、ダクラナタンは瞑想していたものの、まだ悔やんでいるのか涙を滲ませていた。


【あら、まだ話したいの?】

【お気の済むまで、どうぞ】


【もう御存知でしょうが……私は四獣神様を――】


【神力封じの縄とか、禍とかを使って禁忌に触れたとか言って連れて行って、裁きの場には貴方だけで行って嘘八百並べ立てたんでしょ?

 もういいわよ。

 その気持ちは未来に、償いに向けてよね】


【私なんぞに未来、と……?

 ありがとうございます】


【貴方も人神としては かなり強いわ。

 王の補佐として励んでね♪】

【そうですよね♪

 グレイならきっと友達にと言うでしょうね♪】


【へ……?】


【グレイって、そういう子なのよ♪】

【ええ♪ そうなのです♪】


【あ……でも、いろいろと犯した罪の中でも簒奪(さんだつ)だけは失敗だったわよねぇ】

【確かに そうですよね……】


【貴方も神王殿に出入りしていたのよね?

 どうして()りにも()って簒奪(さんだつ)を選んだの?

 濡れ衣を着せる方法なんて、いくらでもあったでしょう?】


【それは……どういう……?】


【グレイはサティアタクス王様から次の王をお約束いただいていたのです】

【それは知らなくてもサティアタクス王様の右腕だったのよ?

 だから『王の影』とも呼ばれていたそうよ】


【それも知らず……】


【ですから宰相様や大臣様方は、唐突な譲位には驚いたけれども、譲位それ自体には驚いていなかったそうなのです】


【そう……ですか……】


【それを簒奪だと裏で騒ぎ立て続けていたでしょう?

 まぁ、皆さん支配を受けているから私も騒ぐままでいいわと思ったのだけれど、エーデラークが諌めたら聞く耳を持っていたのかしら?】


【いえ……持っておりませんでした。

 何も知らず……調べもせず……。

 最果てで出会った忌々しい後任が、幼い頃に苛立ちを覚えた孤児だとは気付いたのですが……まさか、そのような地位になっていようとは……】


【その後の爵位くらいは調べておくべきだったわね】


【はぁ。そうですね。

 ですからサティアタクス王様には偽者と見破られてしまったのですね……】


【それで話せなくしたの?】


【はい。神力封じの力を込めた首輪に『口封じ』と呼ばれる術を掛けたのですが、私の力不足なのか少し声が漏れるようで、獣神様とは話せているような気がしておりました】


【支配も掛かり(にく)かったでしょ?】


【はい。何度も重ねましたが……】


【それは当然よ。

 サティアタクス王様は半獣神ですもの。

 今の貴方と同じよ。

 情報は最強の武器なの。

 しっかり覚えておきなさいね】


【はい】


【あ♪ 情報と言えば、なのですが――】

ユーチャリスは宙に光で模様を描いた。

【――これは紋章ではありませんか?

 何方のものか、ご存知ありませんか?】


【そ、それは……第1位公爵家の紋章……】


【やはり紋章なのですね♪

 ありがとうございます♪

 今朝、グレイがペンダント裏を見せてくださったのです。

 肌身離さない、とても大切な物。

 お父様の形見なのです。

 目覚めたらペンダントが光を帯びていて、よく見ようと外したら裏に模様が浮かび上がったそうなのです】


【何が きっかけだったのかしらね?】


【分かりません……ですがグレイの出自が分かって良かったです♪】


【人神の貴族って、細かく順位付けをしているわよね?

 公爵は最上爵位で、その1位ということは間違いなく貴方よりずっと上よね?】


【私は既に勘当されておりますので……】


【生まれたお家は?】


【第3位伯爵家です】


【グレイの長い名前からも貴族かしらとは思っていたけれど、貴方も貴族として育ったのなら気づくべきよね】


【確かに……はい】


【その、第1位公爵家の当主様のお名前は?

 貴方が知っている過去でもいいわよ】


【子供の頃に教え込まれたのはカイダーミスト様でしたが、初等を卒業する頃に、実は私が生まれるよりも前に行方知れずとなられており、長子のカイダリアスト様が継いでおられたと聞き及びました】


【カイダリアスト様にはお会いしたことがあります♪】


【そう。ご健在なのね。

『長子』と付けたということは他にも御子がいらっしゃるのね?】


【はい。ですが次子のクウダリアスト様につきましては、カイダーミスト様をお捜しに出られたとしか……】


【カイダ……クウダ……って!

 カイダーム様、クウダーム様と何か絡みがあるとしか思えないわ!

 だとすれば……カイダーミスト様が再誕なさったカイダーム様かしら?

 捜している王様の手がかりか何かを見聞きして、確かめる為に旅に出て行方知れず――というか小さな欠片になってしまった。とか?

 そのカイダーミスト様を捜しに旅立ったクウダリアスト様がグレイのお父様ね!】


【グレイに教えてあげたい……】


【そうね。サティアタクス王様にもね♪】


【そうですよね♪】【あのぅ……】


【あら、まだ気づいていないの?

 貴神殿に貴方のお供として行った時に私は気づいたわよ?

 サティアタクス王様とグレイは同じペンダントを着けているの。

 つまり兄弟よ♪】


【はい♪ 私達の婚儀はエーデラーク様にお世話になりましたので、そこから兄弟姉妹(きょうだい)の共鳴の話になり、その時にグレイから聞きました♪】


【つまり、簒奪者がグレイじゃないって分かったのは魂が共鳴しなかったからよ】


【あ……】


【このくらい虐められたら、少しは償った気分になれたかしら?

 そろそろ前向きな話をしたいのよね。

 貴方の協力も必要なのだから。

 一緒に此処から出ましょうね♪】


【あ……はい、ありがとうございます】



―・―*―・―



 マディアは執務を続けていた。

ザブダクルの監視がないので、そこそこ楽しく、心を閉ざすのを常にする修行も兼ねて。


 そうか♪ これをもっと極めたら

 グレイさんに手紙が書けるよね♪

 頑張らなきゃ♪


 あれれ? 何か流れ込んできてる?

 これって……首輪に逆流してる?


 確かめてみよ~♪


手を止めて目を閉じ、首輪に集中した。


 ザブダクル、本当に疲れてたんだね。

 封珠から出るのって消耗するんだね。


 早くエーデとユーチャ姉様を

 出してあげなきゃ。

 あ、ダグラナタンもねっ。


 ザブダクル、夢見てるのかな?

 知らない風景……昔の記憶?

 だとしたらシッカリ見なきゃ。







少し余裕が生まれたマディアは閉ざした心の内で策を練り、新たな修行を始めました。


そこに流れてきたザブダクルの睡夢。

ただの夢ではなさそうです。



封珠の中では、すっかりお母さんなエーデリリィがユーチャリスとダグラナタンを引っ張っています。

こちらは強く前に進みそうです。



ティングレイスのペンダントが光ったのは月のカイダームの欠片が光ったのと同時刻。

なのでエーデリリィ達が行き着いた答えは合っています。

ただしまだ確かめる事も伝える事もできませんが……。



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