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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第一部 第8章 ザブダクルとマディア
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次は神王殿



 神力射の近くまで追ったラピスリは諦めた振りをして人世に戻った。


【ウィスタリア兄様、ナスタチウム姉様、オニキス。

 話がある、のだが……何事だ?】


【見てなかったのかよぉ。

 アイツのせいでウンディが働いてた店が爆発しちまったんだよ】


【ウンディは!?】


【アレ】小さな公園を指した。


【ユーレイ……か?】


【だよ。死んじまったよ。

 けどウンディらしく皆を集めて連れて公園に行ったんだ。意識なんて無ぇのに】


確かに、けっこうな数のユーレイ達が虚ろな眼差しで佇んでいる。


【小夜子!?】


【知り合いか?】【友だ!】急降下!



 小夜子は四つん這いになり、手探りで何かを探しているようだった。

瑠璃は駆け寄り、肩を揺すった。


〈小夜子! しっかりしろ! 小夜子!〉


「勝てる牌なのに……落としちゃったのよ……」


〈小夜子!!〉


「見つけないと……勝たないと……」


瑠璃は立ち上がると小夜子を眠らせ、取り込んだ。


【おい、ソレどーすんだよ?】


【連れて帰る。

 死司神なんぞに渡せるものか】


【ならウンディも――ってドコ行った!?】


【捜しておいてくれ】瞬移。


【おいっ!? ラピスリ、話!!】


【後にしてくれ……頼む】



 死司神達からウンディを護る為、街の結界に強い浄破邪を込めに行っていたウィスタリアとナスタチウムが戻った。


【ラピスリは?

 話があるとか聞こえたのですが?】


【友達……巻き込まれて死んだから連れて帰りました。

 話は後って……あっ! それよかウンディ!

 消えちまったんです! 捜さねぇと!】



―・―*―・―



 マディアとザブダクルは現世の門を抜け、神世に入った。


「さっきの青い龍は?」


「姉です」


(かな)わぬのか?」


「たぶん……はい」


「邪魔だな。早急に浄化域に送れ」


「はい」


「仲が良いのか?」


「いえ……よく知りません。

 兄弟が多いので」


「仲が良いのならば封珠に加えるのも面白いかと思ったが、それならば浄化域に送るべきだな。ふむ。

 では次だ。王に会う。行け」


「はい」



―・―*―・―



「瑠璃……戻ったのかな?」


事務処理をしていた青生は、瑠璃の気配を感じて手を止め、仮眠室に向かった。



 ノックをしても返事は無く、微かに啜り泣く声が聞こえたので、そっと扉を開けた。


「瑠璃、どうしたの?」

床に伏して泣いている瑠璃を起こして一緒にベッドに腰掛け、抱きしめると、瑠璃は声を上げて泣きだした。

青生は それ以上は聞かず、ただ静かに瑠璃の背を(さす)り続けた。



―・―*―・―



【エーデリリィ様、お目覚めください】


封珠の中のダグラナタンは、目に見えぬ壁に隔てられた向こうで気を失っているエーデリリィに呼び掛け続けていた。


【エーデリリィ様――】【あ……その声……】【エーデリリィ様っ!】


白龍が首を(もた)げる。【ダグラナタン?】


【あっ、はいっ!】


【此処は……貴方が居るということは封珠の中なのね?】


【はい……そうです】


【あら私、こんな姿で……って、人姿になれないのね。

 貴方は獣神が嫌いなのに ごめんなさいね】


【いえいえそのようなっ!

 とてもとてもお美しいと……】ぽ♡


【ええっと……私、一応 貴方の母になったのよね?】


【ああっ! はいっ! 失礼致しました!】


【もうっ、いいわよ】くすっ♪

【前みたいにナターダグラルとエーデラークでもいいわよ♪】


【も、もう、それは……申し訳ありません】


【あの毒気は全てザブダクルだったの?】


【いえ……私も似たり寄ったりで……】


【でも改心したのね?】


【はい。エーデリリィ様とマディア様に浄めて頂きましたので】


【そう……良かったわ。

 マディアは、貴方がしてしまった全てを話して、グレイ――ティングレイスは何も悪くないって、謝ってほしいって言ってたわ】


【そう……させて頂きます】


【それじゃあ此処から出る方法を見つけないとね♪

 ザブダクルは どうやって出たの?】


【術を用いたのは確かなのですが、如何なる術なのか……】


【そう。でもザブダクルが使った術は私には無理でしょうから、そこはいいわ。

 他には? 些細な事でも何でもいいわ】


【あの……無理とは?】


【だって、古~い人神専用の術でしょ?

 貴方にも無理かもよ?

 もう半獣神なのだから】


【はぁ……他に、ですか……。

 通路が変わったから押し出す力が必要だとか呟いておりましたが……それも術絡みなのでしょうね……】


【通路、ね……もしかしてルロザムールを使おうとしていたのかしら?

 でもずっと真四獣神様が交替に入っていらっしゃるから諦めて……もしかしてクウダーム様を通路に?


 だとしたらマディアが危ないわ!

 あ……でも近くに居るのかしら?

 そんな感じよね。うん。

 きっと封珠を奪おうとしているのね♪


 押し出す力を得る為に私を引き込んだ?

 可能性あるわよね。うん。

 なんとなく分かったけど……誰かを犠牲になんて出来ないわ。

 他の方法を探さないとね】



―・―*―・―



〈儂は この城の地下に封じられておったのだな?〉


〈そう、聞いています。

 王は此方です〉


 ナターダグラル(ザブダクル)エーデラーク(マディア)は神王殿の廊下を謁見の間へと進んでいた。

ザブダクルが神眼であちこち見、確かめたいと、ゆったりと歩いていたのだった。


 全く興味が湧かず見もしなかったが、

 この王は追って来た執事達の……

 そうか。罠、もしくは見張りであろうな。


 儂が真下に封じられておると

 まだ信じておるのだな。


 ならば先手を打ち、王も言いなりに

 しておかねばなるまいな。


〈王妃は? 一緒ではないのか?〉


〈この時間でしたら、お茶を用意していると思います。あ、用意しています〉


〈そんな事まで王妃が?〉


〈元々お茶係だったのです〉


〈ならば王妃に先に会う〉


〈はい。此方です〉



 すぐに厨房に着いた。


〈どの娘だ?〉


〈あちらの――〉〈連れて来い〉〈はい〉



「王妃様」美しい所作で礼。


「あら♪ エーデラーク様、ごきげんよう」


「少し……よろしいですか?」


「ええ」【マディア、どうかしたの?】


エーデラークは微笑み返しただけで先に立って歩き始め、廊下に出た。


【マディア? ねぇ何か――あら?

 ナターダグラル? ね、どなたなの?】


聞き終わるか終わらないかの刹那、ユーチャリスの前にザブダクルが瞬移して現れ、左手を突き出すと――


「きゃっ――」 「まさかっ――」


――ユーチャリスが消えた。


〈不要な声を出すな。

 次は王だ。行け〉


〈はい〉



〈そう言えば……話す為の特別な部屋とやらが在ったか?〉


〈はい。助言の間です〉


〈其処に案内しろ。

 王を連れて来い〉


〈はい〉



 ザブダクルを助言の間に連れて行き、謁見の間に向かう間、マディアは閉ざした心の内で必死に考えを巡らせていたが、ユーチャリスまでもと動揺した状態では焦るばかりで、伝える手段すら見つからないままに宰相と会ってしまった。


「これはこれはエーデラーク様」


「本日は会議を欠席致しまして申し訳ございません」


「急用と御連絡頂いておりましたので何もそのような。

 ところで死司最高司様はどちらに?」


「助言の間の方に」


「ああ、そうで御座いますな。

 では、陛下にも御移動頂きましょう。

 エーデラーク様も其方で御待ちくだされ」


「お手数をお掛け致しますのは心苦しくございますので――」


「いやいやなんの」笑顔で向かおうとする。


「あ……ありがとうございます。では」


 ザブダクルに会わせる前に

 せめて会っておきたかったのに……。


悔しさが滲まないよう微笑みを保ったまま、それでも顔を隠したくて礼をし、上げきる前に背を向けた。







人世でラピスリと話して少し上向きになった気持ちを叩き落とされたマディアは、孤独感、焦燥感、絶望感と闘っています。


ザブダクルの方は勘違いを更に深めたらしく、その為に動いているのですが、マディアにとっては自分を孤立させたい為としか思えていません。



人世の方も大変です。

どうやら野生の勘で動いているらしい利幸(ウンディ)をオニキス達は見つけ出せるのか?


災厄の章は長くしたくなかったんですけど、まだ続きます。

m(_ _)m



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