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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第一部 第7章 古の人神と龍狐神
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古の出来事



 月の新たな神殿内で、半龍半狐姿のラピスリは、古の人神カイダームの欠片へと神力を注いでいた。


【クウダーム様、隣が気になりますか?】


背後のクウダームは、ザブダクルを封じている神殿の方を向いていた。


【王の気を感じたような気がしたのですが……悪しき気に掻き消されてしまったのです】


【そうですか】


【あの……此方に居させて頂く事は叶いましょうか?

 協力をお約束しておいて申し訳御座いませんが……】


【それは……月の守護に相談致します】

慈愛の女神らしい微笑みを向け、外に出た。




 外にはマディアも来ており、青龍と話していた。


【青龍様、クウダーム様が此方に居させて頂きたいと仰っておられますが】


《うん。いいよ~。

 そもそもそのつもりだったんだよね~》


【しかし危険なのでは?】


欠片(カイダーム)を置いているんだから同じだよ~》


【確かに……】


《僕としても欠片(カイダーム)には早く目覚めてもらいたいし、人神(クウダーム)には思い出してもらいたいんだよね~。

 ザブダクルを知ってそうだからね~》


【カイダーム様とクウダーム様は双子で、国を追われた王を捜していたそうです】


【それじゃあザブダクルって王様?】


【おそらくな】《そう……》


【王様なのに何して追い出されちゃったんだろ~ね?

 青龍様、滅しろって言われたんでしょ?】


《何も……していなかったのかも……》


【【え?】】


《玄武は何か知っているのかも。

 でも僕は何も聞いていないんだ。

 当時は若かったからね、長老様が仰ることは絶対だったんだよ。

 もっと若い白虎も同じだと思う。

 朱雀は微妙なところだね。


 だから……ザブダクルを囲んだ時、何も知らないまま滅するなんてしたくないと言ったんだ。

 でもザブダクルは話してくれそうもなくて。

 それどころか僕達の声なんて全く届いていなくて……まぁ、僕達も追っ手なんだから当然だよね。

 そうこうしているうちに人神の大軍が迫って来て……だから とりあえず封じたんだ。

 その封珠を持って大軍から逃げたんだよ》


【待ってもザブダクルは話さなかったんですね?】


《そうなんだ。

 落ち着けば話してくれるだろうと待っていたんだけど……全く。

 だから簡単には掘り出されないように深く埋めて封印して、何があったのかを確かめに里に戻ったら、人神の地が燃えていたんだ。


 それで確かめられないまま。

 人神達を逃がすのに時を要したから掘り出されたり荒らされたりしていないかとザブダクルの所に戻って……。

 それからまた待ったけど、口を閉ざして閉じ籠ってしまって……。

 だから人神も獣神も信用していなくて、こんなことになってしまったんだと思う》


【ザブダクルを護っていたんでしょ?

 何度も人神に攻められたんでしょ?】


《そうだけどね。

 強い禍は地に封じて鎮めないと滅せないんだと何度も何度も話したよ。

 でも次々と攻めて来たよ。

 せっかく灼熱から助けたのに……何度もね。


 僕達は大して反撃もせずに耐えたんだ。

 でも僕達が動かないから、今度は里を攻め始めてね、だから里を助けに行くしかなくなったんだ。

 でも皆、争いなんか好まない。

 だから人神達に見えている里は壊されるままにしておいて、隅っこに里を作り直して見えないように隠して住んだんだ。

 そうしたら人神達は どんどん国を拡げて、ザブダクルの周りを囲んで護りを固めて、更に激しく攻め込んできて……》


【だから離れるしかなかったんですね?】


《僕達は孤立していたからね。

 今の人神なら弱いけど、当時は対等。

 数なら向こうが圧倒的だったから僕達は逃げたんだ。

 四獣神なんて呼ばれているけど……本当は、こんなものなんだよ》



―◦―



〈聞こえているのでしょう?

 獣神様は悪くないのですよ〉


《ええい煩い!!

 全て嘘に決まっている!

 話し掛けるな!

 騙されるものかっ!!》


いつものようにザブダクルはダグラナタンを封じようとした。


《小癪なっ!

 獣の力なんぞを強めおって!》

封じきれないと感じたザブダクルは閉じ籠った。



 この人神の気……王の執事達に違いない。

 追っ手が近くに迫っているのだな。

 執事達め……ならば利用してくれよう。


 通路とすべく種を込めた男神は

 目を付けられてしまったからな。

 種は込められずとも儂を知る者ならば

 通路と出来よう。


 それはそうと先程の話……

 人神の地が炎に包まれただと?


 ……有り得ぬ。

 如何に考えようが信じられるものか。


 彼の地は古来より豊穣を約束された地。

 だからこそ人神は栄えられたのだ。

 獣神(ケモノ)の様に武器を身に持たぬ人神でも

 獣神(ケモノ)に負けぬ力を得られたのだ。


 儂を封じおった獣神(ケモノ)め。

 騙そうと聞かせたのであろうが

 そうはゆくものか。


 儂は誰も信じぬ! 騙されるものか!

 神世なんぞ滅ぼしてくれる!!



―◦―



【真実を知る為にもカイダーム様を再誕させるべきと存じます】


《そうだね。

 ラピスラズリと同様の方法しかないけどね。

 そうなるとドラグーナの力が必要だけど、進み具合は?》


【腹部と足腰が未だ……】


《そう。とりあえず前段階として欠片(カイダーム)を無垢な獣魂で包んでおきたいな》


【それなら僕が用意します♪】


《お願いね》


【青龍様、元気出してくださいね。

 神力同等の人神の大軍から、たった4神で封珠を護ってたなんて、やっぱり尊敬しかありませんよ。

 それじゃあ僕、ダグラナタンと話して、獣魂を用意しに戻りますね♪】

サッと飛んで神殿へ。


【マディアが申した通りです。

 私も尊敬しか御座いません。

 では私はクウダーム様とお話しし、父の元に戻ります】

ラピスリも神殿へ。



《ありがとう》


【【お話、ありがとうございました】♪】


青龍の微笑みは後悔を多分に含んだ苦笑から、ほんの少しだけ嬉しさに傾いた。



 でも……まだ全ては話せなくて……ごめんね。



―◦―



【クウダーム様、此方でカイダーム様をお護り頂きますよう、お願い致します】


【ありがとうございます!】


【カイダーム様には再誕をと考えておりますが如何でしょうか?】


【是非とも! どうかお願い致します!】


【では、そのように。

 魂の欠片が僅かですので、暫くは無垢な獣魂に包まねばなりません。

 よろしいでしょうか?】


【獣神様ではなく人世の獣なのですか?】


【はい。魂が混ざらぬよう、最も遠いものが最適なのです】


【では、お任せ致します。

 どうかどうか宜しくお願い致します】


【再誕の際には人神様の魂の欠片が必要となります。

 此方で神力を高めて頂きますよう お願い致します】


【はい!】

クウダームが嬉しそうに祈りの姿勢をとった時、首に下げている小鏡の鏡面に文字がチラリと見えた。


【その鏡……文字を込めていらっしゃいませんか?】


【あ……どうなのでしょう……?】


【解読させて頂いても?】


【お願い致します!】


【では、お預かり致しますね】


【はい! ピュアリラ様!】


鏡を受け取ろうとした手が止まる。


【ピュアリラ様?】クウダームが首を傾げた。


【いえ……あまりに畏れ多く……】頬染まる。


【いいえ、貴女様こそが私のピュアリラ様で御座います。

 私共兄弟の(きぼう)で御座います!】


【……最善を尽くさせて頂きます】

大いに困りつつ鏡を受け取り、神殿を出た。



―・―*―・―



《《《《《協力ありがとう》》》》》


ドラグーナの声で、きりゅう動物病院に集まっている輝竜兄弟5人は目を開けた。


《皆が よく高めているから記憶の共有だけでなく神力も高め合えたよ》


《残りも早く目覚められるように頑張るからね》


《完全復活は それからになるけど、これから少しずつ皆を支えていくからね》


《すぐに紅火のように瞬移が出来るようになるよ》


《厄介な縛りに苦戦しているから眠っている事も多いけど、指導もしていくからね》


「「「「「はい」」!」」♪」




―・―・―*―・―*―・―・―



 大きな変化は無く、ひと月程が過ぎた。


 日曜ということもあって予約は少なく、診察が途切れたので事務室で休憩しようと瑠璃が廊下に出ると小夜子が立っていた。


「どうかしたのか?」


「今日、勝負だから勝利の女神様を拝んでおこうと思ってね♪」

笑顔で手を合わせてウインク♪


「そうか、麻雀勝負か。

 勝利の女神なんぞと烏滸がましいにも程があるが、祈っておこう」


「ん♪ ありがと♪

 それじゃあ勝ってチャラにするわ♪」

手を振りながら弾むように駆け、笑顔で裏口から出て行った。


「勝って前に進め」

瑠璃も笑顔で事務室に入った。



―・―*―・―



【お嫁ちゃん達、と~ってもイイ感じで伸びてきてるよ♪

 ん~、鳳凰も込めとけば良かったかなぁ。

 そしたら一緒に飛べ――あ♪ 龍だったね♪

 それじゃあ空を散歩しよ~ねっ♪】


【【うん♪】】

ぴょんぴょんぴょ~んバッ! と姿を変え、大きな鳳凰と小さな龍達は飛んで行った。


《あまり離れないでね~》


【【【は~い♪】】】



《青龍、どーかしたのか?》

白虎が寄って来た。


《うん……なんだか悪い予感?》


《疑問形なのかよ? ナンだよソレ?》


《なんとな~くね~》

ザブダクルを封じている神殿を見た。



―◦―



【あ♪ マディア~♪ エーデちゃ~ん♪】


【遊ぶのは後ですよぉ】


【いつも遊んでるみたいに言わないでよぉ】


【やっぱりソックリね♪】

【【うんうん♪】】


【【ナンかヒドくなぁい?】】


【ほら揃ったわ♪】【【うんうん♪】】


【エーデってばぁ。

 早くダグラナタンのトコ行くよ?

 カイダーム様にも神力をあげないとなんだからぁ】


【そうね♪

 今日は会議が午後だから急がないとね。

 私がダグラナタンと話しましょうか?

 力を注ぐのは強いマディアの方が早いでしょうから】


【ん。じゃあソレで♪ 行こっ♪】


【僕達も行くから~♪

 今朝クウダーム様がねっ、カイダーム様が光ったとか言ってたんだよねっ♪

 一緒に聞きたいから待って~。

 お嫁ちゃん達、乗ってね♪】【【うん♪】】



 子兎達を背に乗せた鳳凰が前に出、龍達は追い掛ける形になった。


【マディア~♪ 競争だよっ♪】


【僕は亀じゃありませんからっ】


【亀になれるよ~に修行しなきゃね♪】


【どう頑張ってもなれませんからっ】


【思い込みはダメなんだよ~♪】


【思い込みじゃなく! 僕は龍だけ!】


【それじゃ偽装ねっ♪】【嫌です!】


笑い声が飛んでいく――



―・―*―・―



 車は商店街の駐車場に止め、小夜子と荒巻は雀荘に向かって歩いていた。


「カー君、いろいろ ありがと♪」


「けど、すまなかったな。

 会長さん風邪ひいちまって」


「代わりはカー君なの?」


「俺、麻雀はカラッキシなんだよ。

 ちゃんと代わりは来てるからな。

 俺は見届け人だ♪」


「良かった~♪

 知ってる顔が見えるのって、とっても安心できるわ♪」


「そっか。じゃあ頑張って勝ってくれよな」


「うん♪」


「ここだ」


「あら、春菜の隣なのね♪

 後で寄りましょ♪」


「だなっ♪ 俺もノンアルだがな♪」


笑いながら雀荘に入った。



―・―*―・―



「あれれ? いらっしゃ~い♪

 紙は一昨日だったよねぇ?

 ど~かしましたかぁ?」


「えっとクッキー、、それより今度は何を被ってるの?」


「前のトートバッグ改良版♪

 被ってユーレイさんの声 聞いてるの~♪」


「毎回 何か被ってるのね♪」


「そぉかも~♪

 毎日じゃないんだけどねぇ」にゃはは♪


「被ってる時に限って私が来ちゃうのね♪

 えっと~、修行クッキーありますか?」


「ほえ? それじゃあコレ♪

 修行キャンディ♪ あげる~♪」

抱えて来た瓶をお買上げ袋へ。


「えっ!? こんな大きな瓶のを!?」


「アッチにまだある~♪」


座敷の隅には更に大きな瓶があった。


「霊視線偏光眼鏡の改良版♪

 お願いしま~す♪」


「キャンディ分、頑張って試すわねっ♪」


「うんっ♪ あ♪ ちょっと待ってて~♪」

走って奥へ。



 紙箱を持って戻り、お買上げ袋へ。


「修行パンケーキ♪ ど~ぞ♪」


「修行シリーズのスイーツって、どれだけあるの?」


「たっくさん♪ クッキーで効果あった?」


「クッキーが なくなってから気づいたのよ。

 食べてた間は冴えてたな~って♪」


「力を引き出す神様の力が入ってるから♪

 引っ張られるの~♪」


「なんだか……危ない薬みたいね」苦笑。


「ぜ~んぜん危なくないからぁ」


「分かってるわよ♪

 普通でない力にだけ効いてるって♪

 祓い屋専用スイーツなのよね♪」


「うんっ♪」







第一部 第7章の最終話でした。


青龍はラピスリとマディアに全てを話してはいないようです。

以前、玄武がチラリと青龍を見たのと何か関わりがあるのでしょうか?



その点を除けば、それぞれが楽しそうな1話でしたが……。


平穏な日常というのは失って初めて気づく愛おしい宝物なんです。


永遠はありません。

それは神にとっても、なんです。


次章に続きます。m(_ _)m



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