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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第一部 第7章 古の人神と龍狐神
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クウダーム



 オフォクスに龍の力を使っての見張りの方法を伝えて人世に戻ったラピスリは、再び禍が現れるかと懸念して可能な限り神眼の範囲を広げて四六時中 気を張っていた。




 そして1週間近くが経ち――


「瑠璃、夕方からの診察も任せてね。

 結局 寝ていないよね?」


 朝、「いい加減 寝てよ」と仮眠室に押し込められていたが、事務処理くらいはと廊下に出たところで青生に見つかってしまった。


「神眼は向けていないけど、そのくらいは伝わるんだからね。

 だから……相談して分担したらどうかと思ってね」


「相談?」


「瑠璃様……」

「ったく、オレ達にも話せよな」

青生の後ろから狐儀と人姿のオニキスが姿を見せた。


「まさか呼んだのか?」


「だってもう6日も寝ていないだろ?

 内に神様がいらっしゃるとしても、瑠璃は限界じゃないかと心配で仕方ないんだよ」


「彩桜も同じコト言ってたんだよ。

 だから――いやオレが話すより、社に来て確かめろよな」


「社か……」青生を見る。


「俺とドラグーナ様が協力できればいいんだけど、まだ無理だから ごめんね。

 でも瑠璃だけで背負(しょ)い込むべきじゃないと思うんだ。

 だから狐儀殿、オニキス様、どうか瑠璃をお願い致します」


「ほら行こうぜ」

それでもまだ躊躇(ためら)っている瑠璃と、狐儀の腕を掴んでオニキスは瞬移した。



 青生は自分の不甲斐なさに溜め息しか出ず、肩を落として事務室に入った。



―・―*―・―



 キツネの社前には山で修行中の堕神達が集まっていた。


【そんじゃ、気合い入れろーーーー!!】


一斉に雄叫びや遠吠えが上がり、それと共に神力が上がるのが見えた。


輝きには数歩手前だが、それでも光る程に上がった神力が落ち着くと、本来の姿に戻って微笑む獣神達が居た。


その大勢の中から人神が進み出た。

【クウダームと申します。

 私の欠片と、神力十分な皆様の欠片をほんの少しずつですが交換致しました。

 人神の目が必要ですとか。

 数名ずつで組み、交替で見張りますので、どうかご指示くださいませ】


【何故それを?】オニキスと狐儀に。


【彩桜父様から話を聞いたのは一昨日だ。

 そこにイーリスタ様がオフォクス様からの手紙を持って来たんだよ。

 で、皆を集めて、こ~なったんだ♪】


【此方の人神様は?】


【獣神を匿ってくれてたそ~だ♪

 見つかって獣達と一緒に犬に、だそ~だ。

 だからなぁフェネギ、人神み~んな敵じゃねぇんだよ】


【それは解っております】言いつつ不機嫌。


【ではクウダーム様、本当に獣と共に戦ってくださるのですね?】


【はい。私の心は此方をご覧頂ければお分かりになられますでしょう】


 そう言って微笑むと、クウダームの掌に小さな鏡が現れた。

その鏡面に山に隠れようとしている陽の光を反射させると、先日 見たばかりの紋章が橙の光を映して宙に浮かび上がった。


【その紋章……】


【やっぱ知ってたか♪

 イーリスタ様が仰ってた通りだな♪ 含みアリアリだったんだがな♪

 ちょうど準備もできたし、コレだし。

 で、ラピスリ呼びに行こうとしてたらフェネギが戻って、青生父様からも呼ばれたんだ】


【そうか。ではクウダーム様と話したい。

 オニキス、フェネギ様。

 班決めをお願いします。

 1班3名以上。

 クウダーム様の欠片を持つ者を必ず入れる事。

 この2山と付近の街は獣神が多いと認識されております。

 最も危険ですので――】


【あ~、解ったから。班決めとシフトな。

 オレ達に任せとけって】

手で『行った行った』と示す。


【では頼む。

 クウダーム様、此方にお願い致します】

キツネの社に向かった。



【ほらフェネギ、始めるぞ。

 せっかく協力してくれた人神をんな目で睨むなよなぁ。

 今ふたりきり~とか思ってるんだろーが、ラピスリは青生父様しか見てねぇし、人神の方はラピスリを紋章の女神様と重ねてるから手出ししねぇよ。

 なぁ、あの人神は信じてくれよ。な?】



―◦―



【早速ですが、先程のものは紋章で間違い御座いませんね?】


【はい。

 我が一族の誇り有る紋章で間違います。

 ただ……私の記憶は古い方へと(ほど)けるように思い出しております最中で御座いまして……未だ定かな事は思い出せていないので御座います】


【ではイーリスタ様がいらした時には?】


【ほぼ全くで御座いました。

 大切な鏡を出す事すらも。

 私と共に堕神犬とされた獣神様方が私の名と、共に暮らしていた事をお話しくださったので御座います】


【イーリスタ様はクウダーム様やオニキスに何を仰っておられましたか?】


【まず、山の皆に集まるよう伝わり、参りますと手紙をお読みで御座いました。

 そして、術で強引になると前置きなされて皆の神力を引き上げてくださいました。


 元の姿に戻れる筈との事にて戻りますと、私は獣神様では御座いませんでした。

 イーリスタ様は大層お喜びくださいまして『ホントに居た』と仰られました。

 オフォクス様がそう仰ったのですとか。


 私の記憶は全くで御座いましたが、そのお喜びように嬉しくなり、求められるままに協力致します運びとなったので御座います】


【それで命の欠片を交換なさったのですね?】


【はい。

 交換で得ました獣神様の御力が落ち着いて(のち)、イーリスタ様は私の掌に現れました鏡をご覧になられまして、準備が整い次第ラピスリ様をお呼びするようにと。

 紋章をお見せすれば前進する筈ですので、可能な限り思い出しておくようにと仰られましたので御座います】


【前進する筈、ですか。

 では……その紋章と同様の姿を見せれば思い出せそうですか?】


【どうでしょう……ですが呼び水となる可能性は御座いましょう】


【そうですか……】


 何も出来ずに仮眠室に居させられた間に、仕方なしに練習していた紋章と同様の龍狐姿になった。


【ほぅ……】(ひざまず)き、祈りの姿勢になった。


【同じ神ですよ?】


【ですが……こうするのが当然と、この身が覚えているようなので御座います。

 我らが祖先をお救いくださりし龍狐神(りゅうこしん)ピュアリラ様…………ここまではスラスラと浮かびましたので御座いますが……】


【焦らず(ほど)けるがままに身を委ねてみては?

 瞑想するのもよろしいかと】


【然様で御座いますね……】



―・―*―・―



 会社の帰りに、小夜子は荒巻との待ち合わせ場所として選んだ居酒屋に寄った。


「大将、ちょっと早いけどいいかしら?」


「おぅよ♪ ぃらっしゃい♪」


 この居酒屋・春菜に初めて来たのは半年程前で、訳あり中途採用された小夜子にとしては、無いと思っていた歓迎会に呼ばれてのことだった。


質素で狭い店ながら、大将の気さくさと高級料亭を上回るのではと思える味に、小夜子は一目惚れの如く気に入ってしまったのだった。


「今日は火曜じゃなかったよなぁ?」


「いつもは火曜に来るんだけど、今日は友達と待ち合わせてるの」


「今日も飲まねぇのかぃ?」


「うん。儲けにならなくてゴメンなさいね。

 お酒は もう飲まないって決めてるの」


「そんじゃあ、いつものノンアルな。

 煮物がいいんだよなぁ?」


「うん♪ 今日は何?」


「里芋と蛸だ。ま、味見して決めてくれ」

芋2つと蛸足1本だけの小鉢を差し出した。


「ありがと♪」ぱくっ。ニコッ♪

「大将の煮物、出汁(だし)が高級料亭なのよね~♪

 今日も美味しい♪ 1人前お願い♪」


「あぃよ♪」『オヤッサ~ン!』「何だぁ?」

店の奥からの男の声に大将が向いた。


『米、前のの下に置いたらいいのかぁ?』


「だよ。全部 運び込めよ」『おう♪』


「若い人、入ったのね?」


「そんなに若かぁねぇがイイ兄チャンだよ。

 先週から来てるんだ。

 ま、押し付けられて1年預かるだけなんだがな」


「先週? 見てないけど?」


「火曜が休みなんだよ」


『イイ兄チャン』が奥の暖簾をくぐって顔を上げ――「小夜子、さん!?」


「え? っと・・・誰?」


「それゃナイだろーよぉ。

 高校3年間、同じクラスだったろーがよ。

 亥口だよ。亥口 利幸」『うわっトシ!?』


「「あ……」」


店に片足入れた格好で荒巻が固まっていた。


「お~い勝利(カツトシ)、心臓止まったかぁ?」


「ナンでトシがいるんだよ!?

 もう料亭 追い出されたのかっ!?」


「チゲーよ♪ 見込みあるからって、ここにシュギョーに出されたんだよ♪」


「マジかよ大将……」


「だよ♪

 昔の弟弟子に押し付けられちまったんだ。

 で、会長さんは?」


「今日は仕事じゃなくて小夜子サンに呼び出されて来たんですよ。

 小夜子サン、仕事でナンかあったんですかぁ?」


「違うのよ。ず~っと前の話なんだけど、麻雀勝負、受けたくなったのよ♪」



―・―*―・―



 ガタギシガタッギギ~。


「こんばんは~♪」


「あっ♪ いらっしゃ~い♪」


「今度はお面!? お稲荷様!?」


「また試作品なんだ~♪

 今日は紙じゃないでしょ?」


「眼鏡の感想をね♪」


「あっりがと~ございま~す♪」


「真正面だとシッカリ防げるけど、斜めとか弱いかな~? 横は無防備ね。

 でも横からの視線なら合わないけどね♪」


「兄貴に伝えときま~す♪」


「そのお面は?」


「盾♪ 呪から護るの~♪

 最終的には鎧兜と盾み~んな合わせて総合防具にするんだって♪

 でね、小さくするんだって♪」


「へぇ~♪ お兄さん凄いのね♪

 あ、この前のトートバッグは?」


「改良中~♪ あ♪ コレあげる~♪」


「受け取ってから聞くのも悪いんだけど、この紙袋……何?」


「修行クッキー♪ 俺も毎日食べてるんだ♪

 兄貴が焼いたの~♪」


「修行……味見していい?」


「もっちろ~ん♪」


サクッ――「美味しい……これも売るの?」


「考えてにゃ~い♪」


「売って♪」


「伝えときま~す♪」







癌が完治し、駒を進めようとしている小夜子ですが……。


本編の通り進んでしまいますが、悲しいままで終わらせるつもりはありません。

堕神の欠片持ちでないのに、神力を知っても恐れず友達でいてくれる小夜子を瑠璃は大切な親友だと思っていますので。


同じく幼馴染みで親友な澪にも笑顔が戻ると断言していますので、女神様の親友達が幸せを掴むのは確定なんです。



ただし二人に幸せが戻るのはずっと先なんですけどね。



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