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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第一部 第7章 古の人神と龍狐神
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ザブダクルの試み



 ラピスリ達が全ての魂を解呪し、浄化し終えて外に出ると、陽は若干 西に傾いていた。


【姉様も月に行く?】


【いや。ラナクスから貰ったトリノクス様の欠片を早く込めたいのでな】


【ん♪ それじゃあ――】

【ね~ね~♪ オフォクスの子って~、み~んな その話し方なの?♪】


【言われてみればロークスもラナクスも同じだね♪】


【知りません。私は降りますので】

イーリスタを睨んだ。


【ラピスリが怒るぅ~♪

 ね♪ 月に行こ~よ♪】


【降りますので!】ぷいっと消えた。



【あ~あ、行っちゃった~】


【青生さんの所に早く帰りたいんですよ】

エーデリリィが穏やかな笑顔を向けた。


【僕もお嫁ちゃん達トコ帰ろ~♪】大――


【僕達も行きますのでっ】


【あ♪ 古神様の欠片だねっ♪

 じゃ、行くよ♪】

ふたりと手を繋いで大術移した。



―・―*―・―



 人世に戻ったラピスリは青年ユーレイにトリノクスの欠片を込めた後、キツネの社に行った。

バステートにもトリノクスの欠片集めを頼もうと思って来たのだが、先に社の奥に入り、蛇型の水晶に触れた。


「やはり昨夜の子が持っていたのはガイアルフ様の欠片であったか……」


そう呟いた時、背後に誰か現れたと感じて振り返った。


【まさか……ラピスリ様……?】

驚きで目を見開いているフェネギが居た。


【はい。此処では狐の姿でと父達から言われておりますので】


【達……?】


【私の父はドラグーナだけでなく……オフォクス様も、でしたそうです。

 今後の戦いの為に、狐の力も解放して頂いたのです】


【そうでしたか……】『キツネ様ぁ~』


トコトコと軽い足音が入口近くを歩き回っている。


【力丸にも姿を見せますか?】


【後になる程、大騒ぎしそうですね】

苦笑しつつ その部屋を出た。



「あ! キツネ様、お師匠様!

 山の犬達が大騒ぎしてるんです!

 ――って、ええっ!? 誰っ!?」


「よく気をご覧なさい」


「・・・俺の女神様!?! ナンで狐!?」


「どういう理由で『俺の』なのです?」


「お師匠様コワっ!!」


「二度と『俺の』なんぞと許しませんよ」


「はいっ!! とにかくハイッッ!!」


「ラピスリ様はドラグーナ様とオフォクス様の御子なのです」

【「ええええっ!?」】


「オニキスまで……」


【いや犬達がな――ってか、さっきの!!】現れた。


「言った通りですが?」

「それより、先に皆の様子を確かめねば」


「コッチだ!」

オニキスが飛び、ラピスリとフェネギが追って宙を駆けた。


「ままま待って! お師匠様ぁ!!」地を駆ける!




 オニキスに続いて飛んでいると、稲荷山で神に戻るべく修行中の堕神達が、ある者は動けなくなって(うずくま)っており、別の者は見えない何かと戦っており、犬同士で組み合って噛みついていたりもして、次第に騒ぎが大きくなっていった。


【ラピスリ様、これは……】


【間違いなく呪。禍を感じます】


【ですが、この山は――】【アレだっ!】


稲荷山と奥ノ山の間で、騒ぎの原因が急激に膨張していた。


【先ずは滅する!!】

【はい!】【おう!】


禍の真上に瞬移し――


【破邪炎無双!!】【災禍浄破邪!!】

【両方に風神翔龍牙っ!!】


――強烈な輝きを放つ炎が禍を呑み込み跡形も無く消し去った。



【続いて解呪、破壊された結界を復元する】

上昇した。


フェネギとオニキスも続く。



【一気に解呪する。力を貸してくれ】


 フェネギとオニキスがラピスリの肩に手を添えると同時に、二つの山をすっかり覆う程の大きな魔法円が、山頂に接する高さに現れた。


【スッゲー……】

【オニキス、ラピスリ様に力を!】

【あっ、おう!】



 ラピスリが詠唱を終えると魔法円はスッと降下して山の地に添い、一度だけ閃光を放つと見えなくなった。


【犬達、静かになったな……】


フェネギは下に確かめに行った。


【浄治癒】【あっ、治癒!】


フェネギが下で治癒を当てているらしく光点が移動している。


【お~いフェネギ?】


【皆、無事ですよ。

 堕神だけでなく、山に住む動物達も】


【そうですか。

 オニキス、治癒を頼む】更に上昇。


【何処行くんだよ?】


【結界を復元すると言った筈だが?】


【ラピスリって……どんだけスゲーんだよ?】


【さぁな】ふふっ。


【ったく~。で、さっきのは?

 やっぱ本物の禍なのか?

 どーして人世に?】


【禍を操る某かが送り込んだのだろう。

 オフォクス様の留守を狙い、二つの山の結界の接点――弱点を突いた形でな。

 新たな結界は二山全てを覆う。

 二度と送り込ませるものか】


【やっぱ……ラピスリってスッゲーな……】



―・―*―・―



 転送成功か……。


 此奴の結界を抜けたという事は

 儂は既に此奴より上という事か。


 老い耄れ亀が入っておらねば

 恐るるに足らぬ、と明らかになったな。


 さて、急がねばならぬからな。

 次なる試みを――


〈貴方様に何があったのかは存じませんが、何故そうまで――〉《黙れ!!》


〈貴方様は悪神ではなかった筈。

 お話しくださいませんか?〉


《お前なんぞに解る話ではない!

 お前なんぞと話したくもない!

 黙っておれ!!》


ザブダクルは苛立ちをぶつけるようにダグラナタンをまた封じた。



―・―*―・―



 山の結界を復元し終えたラピスリはトリノクスの欠片について話すと、あれこれ聞きたそうにしているオニキスに有無を言わさず動物病院に帰ってしまった。


【なぁフェネギ。大丈夫か?】


【何がですか?】


【狐なラピスリ見てズッドーーーン! と落っこちたんじゃねぇか?】


【何が、どう落ちたと言うのです?】


【ず~~っと前からのゾッコンが、深く強~く激し~~~くゾッコーーーン! になっちまったんだろ?】

両手の指で胸の前に♡を作って突き出す。


【そ、それは……】言葉に詰まって外方向いた。


【ど~にかフェネギが報われる方法って無ぇのかなぁ……】


【そんな事っ、考えなくてよいのですっ】


【ラピスリを龍と狐に分けられたらいいんだがなぁ……】


【ですからっ! 私はラピスリ様となんて望んではおりませんのでっ!

 ラピスリ様が幸せならば それでよいのです。

 それが私の幸せなのですっ】


【ったく頑固だよなぁ】


【私は次の地区に参りますのでっ】消えた。


「頑固なヤツ」【聞こえております!】「ゲ」


『お師匠様ぁ~』トントントン。


「入っていいぞ」『はいっ♪』


軽く扉が軋み、力丸がトコトコ入って来た。


「あれ? オニキス師匠だけ?」


「狐儀は また出てったよ。ほらアレ」


「今日はドーナツだ♪」タタタッ♪


「食ったらまた修行しろよ」「はい!♪」


皿を頭に乗せて戻って来た。


「ん~~~?」


「何だよ?」


「オニキス師匠、彩桜達のニオイする?」


「そりゃあ様子見に行ってるからな。

 オレの父様なんだからトーゼンだろ」


「いいなぁ。俺もあの家に帰りたいよぉ」ぱく。


「そんならもっと修行して狐から脱してみろよ。

 そうすりゃ狐儀だって行っていいって言うだろーよ」


モグモグもぐもぐゴックン。「そっか……」


「オヤツに込めてくれてる父様の神力、シッカリ吸収しろよな」


「ガンバリまふ」もぐもぐ。

「うんまいよなぁ、神力♪」


「あのなぁ」苦笑。



―・―*―・―



「青生……」


「お帰り、瑠璃」にこっ。「お疲れ様」

事務室入口で立ち止まった瑠璃を抱きしめた。



「また……行くんだよね?

 診察は俺に任せてね。

 まだ それくらいしか協力できないから」


「そんな……ありがとう、青生」

抱きしめ返して青生の胸に額をつけた。


「瑠璃……もう少しだけ待っていてね?

 出来るだけ早く加われるように頑張るから。

 それまでは此処の事くらいは俺に任せてね」


瑠璃は俯いたまま小さく頷いた。


「此処はいいんだけど、新隈さんは?

 最近ずっと午後の休憩時間に夕食だけ作りに行っていたよね?

 たまには ゆっくり会ってみたら?

 なんとなくだけど良い事が起こりそうな気がするんだ。だから近いうちに、ね?」


「……そうだな。会って、少し気分転換をするのも良いだろうな。

 ありがとう青生。行ってみる」


瑠璃が笑顔を作って上げると、青生の瞳も潤んで揺れていた。


「何故……?」


「何でもないよ。貰ったかな?

 気にしないでよ。そんな事より――」


「どうした? 改まった顔なんぞして」


「うん……。

 瑠璃の中のラピスラズリ様。

 どうか瑠璃をお護りください。

 お願い致します」掌を合わせて礼。


「まさか青生、何か誤解していないか?

 確かにラピスラズリ様は男神様だが、私は そのような感情は――」

言葉を止めて一瞬だけ睨み、


「――青生にだけだ!」


青生なら全てを受け止めてくれる筈と、いろいろとあり過ぎた今日一日に抱いた全ての感情をぶつけるように口づけた。


〈青生がいるから頑張れてい……るのだ〉

〈瑠璃がいるから頑張れてい……るんだよ〉

途中で声が重なっていると気付いた。


顔を離して笑い合う。


「うん、そうだよね♪」「そうだな」


声を上げて笑った。


「では行ってくる。我等の城を頼む」


「うん。行ってらっしゃい、ご武運を♪」


瑠璃は笑顔で『城』を出た。







オフォクスが住んでいるキツネの社は稲荷山の山頂に在り、稲荷山の結界守の役目をしています。


バステートが住んでいる奥ノ社は奥ノ山の山頂に在り、奥ノ山の結界守です。


狐儀(フェネギ)と力丸が住んでいる山の社は奥ノ山の七合目に在り、オニキスが住んでいる小社(こやしろ)は中腹に在ります。





 △奥ノ山(奥ノ社)

  ・山の社

   ・小社


     △稲荷山(キツネの社)





古の悪神ザブダクルは、オフォクスの結界内に禍を送り込めたと思っていますが、結界の接点に落ちただけです。


ですからたぶん、ザブダクルはオフォクスを超えてなんかいないのでしょう。

超えているとすればオフォクスの人神部分だけではないでしょうか?


それでも禍は結界に滅されることなく、呪も結界内に拡散したので、ラピスリは気を緩めてはいません。



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