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キョウエン

作者: 桂飛鳥

様々な視点から物語が進行します。

名前は出てきません。男と女と言う表記で読む人がどの視点で見ても物語が進むようになっていますが、少し難しくなってくるかもしれません。

語り:

ココは不思議な場所。それぞれの人生がそれぞれ交差しながらも、皆が1つの物語を観る場所。

さぁ、本日の人生模様はいかがでございましょう?



語り:

さて今宵の先ずは一人目。現れたのは男……


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


あぁ、どうして彼女は私を捉えて離さないんだ。

サラサラと風に流れるその美しく輝く長い黒髪。

透き通るように白いその肌を化粧で隠す事はしていない。


そして今日、彼女はココに来た。


きっと、私が届けた手紙を見てくれたんだね。

嬉しいよ……


そう、僕も今日はココに来た。

君の座るその席の後ろに5列、右に2席。

そこに僕は座ろう。


君の後ろから君を眺めよう……


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


語り:

男は席につき女を眺めた。逃がさないような突き刺すようなその目で。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ふぅ、彼は驚いて喜んでくれるかしら?それとも怒る?

突然来てごめんなさい。でも、練習があるからと貴方が出て行ってもう1週間。

貴方が帰ってこないあの部屋は寂しすぎるわ。


だから来てしまったの。

凄いわね、席は満席に近い……人気があるのね。


全てが終わったら手作りのお弁当をもっていこう。

きっと喜んでくれるわ。


貴方の好きな卵焼き、貴方の好きなおかずを沢山つめてきたんだもん。


あぁ、幕が上がる……

久しぶりに貴方に会えるわ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


語り:

女はゆっくりと上がる緞帳のその向こうに視線を走らせた。舞台の幕は上がる……


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


幕が開く。

俺の人生のターニングポイント。

やっと掴んだ幸運。


逃がしてなるものか……この女。

コイツさえ掴んでいれば俺の幸運はずっと続く。


女は利用できてこそ、その存在理由があるんだ。

俺を高める為に女は働けばいい。


俺にとって女はその程度の存在。

俺は役者だ……女を騙す事なんてわけは無い。


今度はこの女。

簡単だ、既に俺の虜になっている……

さぁ。俺に栄光をもたらしてくれ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


語り:

男は表の顔で女にニッコリ笑いかけたが裏の顔でニヤリと笑う。男の笑顔に女が応えた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


幕が開く……コレが私の最後の舞台……

あぁ、貴方……見に来てくれたのね。


私は貴方の為にこの栄光を捨てる覚悟をしたのよ。

最後の舞台、私は輝いてみせる。

だから、その席から見ていてね……私を、私だけを……


この男に貴方が嫉妬するほどに情熱的に演じるわ。


そして貴方は私を手に入れるのよ……

この私からの告白を貴方はこの舞台の最後に受ける事になるわ。


断わる事なんてないでしょう?

だって、私はずっと貴方の脚本を演じてきた。

貴方の一番のお気に入りだもの。


この舞台が終わった時、私は貴方のものになる……


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

語り:

女の視線は客席から舞台へ。そして劇場での舞台が始まる。




語り:

男は女を想い女を追いかける……自分の正体を明かさず。

女は男に愛を注ぎ尽くす……愛と言う名の偽りとも知らず。

男は女の栄光を貪る為に狙う……その栄光は今夜終わるのに。

女は男がそこに居る事に喜ぶ……男がココに居る本当の理由は別にあるのに。


そして舞台では一人の男と一人の女の物語が繰り広げられる。


愛は愛を呼ぶ。

だが、それが必ずしも愛と愛をつなげる物ではない。

つながる愛。

それは何処にでもあるものではない。


さて、この4人一体どうなる事やら……


舞台が終わる時、またこの場で二人の男と二人の女の舞台の幕が開くだろう。



……私?

私はこの劇場。ソノモノ。

何度も繰り広げられる舞台上の舞台と、舞台の外の舞台を眺め、楽しんできた一番の観客。


また今夜も楽しい舞台となりそうだ……

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