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今、生きているあなたへ  作者: ひびき
序章:幼少期 助走編
9/80

第8話 未来の記録

         *エレナ視点*

/7月4日/

 

 今日はなんだか視界に違和感を感じる。いつも通りの見え方とは別に、人やものなどの輪郭だけが視界に映って見える。

 そして、輪郭だけの方が動くと後に続くように遅れて動く。


 いや違う、多分、輪郭の方が先に動き、その1、2秒後に現実が追いついている。

 試しにタイトが今、コップに手を伸ばし水を取ろうと、輪郭が動く。私はタイトの手が動いたのを確認し、タイトの手を掴む。

 輪郭の方では既にコップに届いている手が、私が掴んだことによりその未来が消えた。コップに触れたことにより、輪郭の方では波打っていた水も、今は静止している。


タ「え、ちょっと、、、もしかして、まだ怒ってる?」


 ビクビクしながらタイトが聞いてくる。


エ「え?あ、違う違う。ごめんね、今ちょっと実験してて、」


 正直今はそれどころじゃない。この目に映る全てが、神技(しんぎ)と思われるこれが、私の頭の全てを占めている。もっと知りたいという感情が底の方から湧き出てくる。


エ「タイト!遅い!早く行くよ!」

タ「ちょっと!僕まだ食べ始めたばっかりなのに、」


 タイトは残っていた朝ごはんを水で流し込み、手を合わせる。


タ「ご馳走様でした。もう、ご飯くらいゆっくりさせてよ」


 そんなことを言うタイトを背に私は既に、玄関のドアノブに手を掛けて


エ「行ってきまぁーす!」


 と勢いよく飛び出す。

 修行はいつも一対一の実戦形式でする。私は剣主体の近距離で時折、魔法を混ぜながら戦うが、タイトはまず多彩で大量の魔法で攻撃してくる、そこで捌ききれずに怯んだり、逃げ出したりしたところに一気に近づき剣で攻撃してくる。正直、相性悪くてずるい。魔法で押し切られたらさすがに勝てない。

 近距離は私の方が強いから、なんとか魔法を捌きながら戦ったおかげで反射神経はめちゃ良くなった。その甲斐もあり今のところ勝敗は引き分けといったところだ。

 だが、今日からは違う!


エ「じゃあ、始めるよ!」

タ「いいよ!」


 すぅー、と1呼吸置き、全ての意識を目の前に向ける。


エ「始め!」


 合図と同時にタイトはまず魔法で牽制してくる。手を前に出し、空に魔法陣をいくつか作り出して私に向けてくる。氷、岩、風、水、大量の魔法を飛ばすタイト。

 いつもなら捌ききれない無数の魔法だが、未来が視える今なら見える。速い魔法と遅い魔法がある。今までは気づかなかったことも。

 右、左、下はジャンプで避ける。魔法を剣で捌き、時折避けながら徐々に距離を詰める。


タ「え?!ちょ、なんで?怖い怖い」


 明らかに動揺している。


エ(そりゃそーだ。昨日までできなかったことがいきなりできてんだもん。おっと)


 タイトからはかなり離れた、森地帯から顔目掛けて水魔法が飛んでくるの視え、すんでのところで避ける。


エ(なにそれ?初めて見た。そんな遠くからも出せんの?)

タ「今の避けられんの?初耳なんですけど?意味わかんない!今まで隠してたのに!切り札なのに!」


 このままでは押し切られると思ったのか、魔法を止め、剣を強く握り走り出すタイト。それを見て、前傾だった姿勢を戻し、こちらも距離を詰める。


 未来でタイトが足から魔法を出して急加速する。1度足を止め、剣を上にあげ、叩き潰そうとするが、寸前で右へと急に回り込むのが視える。体を右へと向け、正面からタイトと打ち合う。

 カンッ、カンッ、

 という乾いた木剣がぶつかり合う音が響き渡る。左からの防御、そのまま左へ攻撃、上からの防御、右上へ攻撃、そして、空いたタイトの右脇腹への攻撃が当たる。


タ「うぐっ、」


 タイトは足からの水魔法で後方へと大きく飛びながら、いくつか魔法を出す。


エ(今更余裕!焦ってんねぇ)


 そう思い、魔法をさっきの要領で視ながら捌く。が油断していた。最後で誤って水魔法を剣で打ってしまい、水が飛び散り体中にかかる。


エ「〜っ、クソ、」


 顔にかかった水を急いで取り除きタイトを捕捉する。

バチッ、バチバチ、

 と、タイトが足を少し上げ、足から音が立っているのが分かる。


エ「え?電気魔法?いつの間に!」

(捕捉:電気はほかの魔法より覚えるのも、扱いも難しい上級向けの魔法です。)


地面→あいつの水魔法であいつから私への一直線が水浸し

私→いまさっき水被ったばっか


タ「切り札その2」

エ(やっべぇ)


 急いでしゃがむと同時にタイトも足を振り下ろす。手を地面につけ岩魔法を繰り出し壁を作り出す。ギリ間に合った、がまだ終わりじゃない。


 剣を握り直し、作り出した岩壁の右からタイトに近づこうと走り出すと、タイトが目の前に急加速して出てきて、右側から水平に大振りを振って来るのが視えた。私は咄嗟にしゃがみ、大振りを避ける。


タ「うっそ!まじでどうして?」

エ「わたしの勝ちぃ!」


 そう言いながら、上からの大振りでタイトの首元に叩きつけ、気絶させる。


エ「はぁ、はぁ、こいつどんだけ切り札あんだよ!はぁ、おめぇの姉突撃ばっかやぞ!ほんとに!」


 少し休憩した後、タイトに回復魔法をかける。


タ「痛た、うーん、」

エ「あ、起きた?」

タ「うん、ありがとう。てか今日どうしたの?あんなに魔法打ち返されたの初めてなんだけど?」

エ「えへへ、実はね、なんと!私にも神技が発現しました!」

タ「ほんと!やったね!ねぇ!どんなの!?ねぇ!」


 今までに見たことないくらいはしゃぐタイト。


エ「うっせ、ちょい落ち着け、この神技は多分未来を視る能力だ!」

タ「未来?!強!良かったじゃん!いいなぁ!」

エ「でしょ!」


 嬉しさとドヤ顔いっぱいの表情。私のことなのに、自分の事のように、私より喜ぶタイト。


エ(なんでこいつの方が私よりも喜んでんの?)


 と思うが、タイトの喜ぶ顔を見てなんだか、神技が発現したとわかった時よりも嬉しく思う。理由は分からないが、分からないけど、自然と私も笑顔になる。いつの間にか、タイトの喜ぶ顔を目で追いかけているのに気づき、


エ(ずっと一緒にいられたらな、、、今私めっちゃキモかったな、ヤバすぎ、兄弟だろ(笑))


 と、1人で突っ込んでしまった。そうして2人ではしゃいでいると、いつも通り急に


レ「2人してどうしたの?神技とか聞こえたけど?」


 レイが現れた。レイを見るといつもは付けていない、右目の眼帯に目がいく。それにはタイトも気づいたようで、


タ「右目、どうしたの?」

レ「あぁ、これは気にしないで。なんか右目の色が変わったらしくて、この眼帯をつけてなさいって言われたの。神技のおかげでちゃんと見えてるし大丈夫だよ」

エ「怪我したとかじゃないんだね?」

レ「うん、でも、2人にはいいけど、他の人に言っちゃダメだって」

タ「え?明らかに人選間違えてない?だって、あの口が軽そうなエレナに言っちゃったらダメでしょ?」

エ(あとで、殴る)


 ここでタイトに食ってかかると、話が脱線しかねないので仕方なし。


レ「2人は毎日のようにあってるから、そのうちバレるし言ってもいいって。あと、タイトとエレナの親にも言ってもいいって言ってた。でも、他は誰に聞かれても言っちゃダメだって。」

タ「わかった、約束」

エ「任しとけぇい」


 友達がお願いと言ってんだから聞かない訳にはいかねぇだろうがよい。


レ「ところで神技が発現したとか聞こえたんだけど、エレナ?」

エ「いかにも!神技は未来が見える能力だ!」

レ「未来?凄そうだなぁ」

タ「ね?羨ましいよね?まさにエレナに金棒だね」

エ「誰が鬼じゃ!だれが」

タ「それにしてもいいなぁ、2人とも神技が発現して、僕も早く出ないかなぁ?未だに出ないのは少し不安だよ。」

レ「きっとタイトにも発現するよ、、、多分」

エ「タイトはめちゃくちゃ強い神技が発現するんじゃないかなぁ、、、多分」

タ「あれ?なんか僕よりも不安がってない?」

エ&レ「「ソンナコトナイヨ?」」

タ「あはは、嘘じゃん!2人して声揃えてさぁ、フフッ、もう」


 3人で笑い合っていると


ジ「やぁ、久しぶり。エレナちゃんの神技がどうとか聞いてたけど、未来が視えるのかい?それは随分とすごいねぇ」

レ「あ、こんにちは!」

エ「おぉ、いきなり来た!てか、いつから聞いてたんだ?」

ジ「えっとねぇ、エレナちゃんが「ずっと一緒にいられたらなぁ」て、思ってたとこら辺からだよ」

エ「きっしょ、なんで心ん中わかるんだよ!てかだいぶ前からいるじゃんキモすぎ」

ジ「細かいところは気にするでない」

まぁまぁ、となだめに来るが、どう考えてもやばいのはこいつの方だろと心の中で思う。

タ「今回はいつもよりも来るの遅かったね。何かあったの?」

ジ「君たちみたいに修行を見ている子に少しね?だから最近ちょっと忙しくて気づいたらいつもよりも過ぎてた。ごめんね」

タ「ううん、謝らないで、ちょっと心配だっただけ。」

ジ「そうか、タイトくんは優しいね。あ、そういえばこの前10歳になったんだよね?プレゼントを持ってきたんだ。」

レ「ありがとう」


 そう言い、ポケットからプレゼントを出す。プレゼントを渡しながら、


ジ「そういえば、今更だけど、レインちゃんはお父さんかお母さんに修行の許可は貰ったのかい?今どきこんなこと言うとダメだけど、女の子だし」

エ「私も女だが?!」

レ「自分の身を守れる位強い方がいいから、せっかくみんな修行してるなら行ってきてもいいって、言ってた」

エ(え、無視?)

ジ「それなら良かった。」


 私には魔力を流すと、顔が覆い隠される程の大きさで、半透明の盾を出す腕輪。

 タイトには、魔法の効率が上がり、装備者に合わせて大きさが変わるローブ。

 レイには「撃て」と言うと、空気の弾丸(木の幹が少し抉れる程度の威力)を発射する指輪。


 特殊装備ばっかで闇で手に入れたのではと疑いたくなってしまう。


ジ「そういえば、エレナちゃんは神技がでたんだって?」

エ「よく聞いてくれたな!聞いて驚け!なんと、未来が視える能力だ!これでジョーカーをボコボコにできる!謝っとくなら今のうちやぞ!おら、土下座しろ!」


 ジョーカーは面食らったような顔をしている。そして、静かに笑みを浮かべ、


ジ「未来視か、それは強いね。だが、あまり強い言葉を使うなよ、、、泣いちゃうぞ」

エ「うわキモッ」

ジ「直球すぎない?まぁでも、その程度で勝ちを確信しているエレナちゃんには今はまだ負けないかな?」


 まだ私には勝てないと、遠回しに煽ってくるジョーカー。

 それを理解しイラッとくる


エ「あ?舐めやがって!ぜってぇ負かしてやる!そんで、その半々の髪を混ぜて、灰色で塗りつぶししてやる!」

ジ「この髪は僕の大切な身体的特徴なのだよ。これをかけられちゃあ、本気でやるしかないねぇ。」


 しょうもない言い合いをしながら、戦いの地を探しに森野奥地へと歩を進める。

        *タイト視点*

タ「行っちゃったね」

レ「ね、」


 置いて行かれてしまった。急な展開に着いていけず呆然としている僕ら。


タ(まぁ、いいか、2人で実戦でもしておこう。)

タ「レイ、修行して待ってようか?」

レ「そうだね。まぁ、割とすぐに帰ってくると思うけど。」

 そう言い、静かに笑うレイ。


タ「違いない」


 釣られて僕も笑う。2人で笑いあっていると、


エイジ「ありゃ?エレナの神技がどうとか聞こえたんだがどこに行ったんだ?」


 音も気配もなくお父さんが近くにいた。


タ(僕の周りの人はなんでこんなに気配が察知しにくい人達ばかりなんだろう?)


 不思議でたまらず、考え込んでしまう。まぁ、いいや


タ「あ、お父さん」

レ「こ、こんにちは」

エ「こんにちは、いつもありがとうね2人と一緒にいてくれて」

レ「私も、一緒にいれて嬉しいから、」


 なんだか気恥ずかしくなる


エ「あれ?その右目の/割愛



エ「そうか、それなら良かった。それで、エレナは?」

タ「あ〜、たった今ジョーカーさんと戦うために森に入っていったよ。今ならまだ始まってないし、呼んでこようか?」

エ「いや、いい。今、きっと集中しているから2人の邪魔をしない方がいい。神技のことはあとでエレナに直接聞くとするか、」


 そう言い、嬉しいような、寂しいような表情で遠くを見つめるお父さん。そういえば、昔は王国の護衛の団長を勤めていたとか何とか聞いた気がする。


エ「神技が出るかは運次第だから、あんまり気にするなよ。それに、神技がなくても強い人は多いからさ、」


 通常は5歳~10歳までの間に発現する神技。お姉ちゃんも僕も、正直諦めていた。


タ(でも、今お姉ちゃんに発現するとは思っていなかった。お父さんもそんな僕を気にかけているのかな。)

タ「大丈夫だよ。そのために今のうちから修行しているんだから。」


 そう言って笑ってみせる。すると、レイが僕の手を握ってきた。


レ「タイトならきっと大丈夫だよ。ずっと頑張ってるの見てるから。」


 顔が暑くなっていくのが分かる。このままでも恥ずかしいので、話題を変える


タ「そ、そういえば、お父さんの神技はなんなの?多分、今まで聞いたことないよね?だから、その、聞いてもいいかな?」

エ「ああ!確かに言ったこと無かったかもな。別に秘密にしてる訳でもないしいいぞ!」

タ「いいの?!やったあ!」

レ「私も聞いても大丈夫?」

エ「全然いいぞ、じゃあ、言うぞ。お父さんの神技はな、ーーー

             *エレナ視点*

 私は今、地面に突っ伏している。

 負けた。未来が視えててもコテンパンにされた。惜しかったとかそんなのは微塵もなく。負けた。目で追うことすらできなかった。私の攻撃が当たることもなく。

 こっちは全力で走って、木剣を振って息をあげているのに、ジョーカーは本気の1%も出していないような様子だ。


レ「こっちこっち。ほら居たよ」

タ「あ、ほんとだ。ありがとう。それにしても」

レ「予想通りの結果」

タ「だね、僕たちが3人で掛かってもジョーカーさんに勝てるわけないのに、」


 そう、愚痴を垂れる生意気なタイト。聞こえてんだよ。ぶん投げてやる。


ジ「タイトくん、エレナちゃんが倒れているから、近くに寄って、回復させないのかい?」


 ナイスな助言を言うジョーカー。だが、


タ「え?嫌だよ。どうせ死んだフリでしょ。こんな無様に負けたとこを見られて僕を殴らないわけないからね。僕はたとえ、お姉ちゃんが血だらけで倒れていても絶対に近づかないよ。」


 ここぞとばかりに煽りに煽りまくるタイト。スっと、無言で立ち上がり、無言でタイトへ近づく


タ「あ、え?気絶してるんじゃなかったの?」


目に見えて慌て出すタイトに尚、無言で近づく


タ「ちょちょ、あの、その、、、すみませんでした」


 綺麗なお辞儀をして謝罪するタイト。そんなタイトを見て私は笑って、


エ「タイト、顔を上げて。握手しよう。」


 と、提案し、手を伸ばす。予想外の言葉だったのか、一瞬固まるタイトだが、手を伸ばし、ゆっくりと顔をあげる


タ「ゆ、許してくれr、、、あ、あの、お姉様、口元は笑っていますが、目が微塵も笑えていまs、あ」

エ「おら!死ねぇぇい!」

 そう言い、伸ばしてきた手を掴み思い切り投げ飛ばす。


タ「うわぁぁぁ!ぐっ、」


 投げ飛ばしたタイトは2m程宙を浮かび、背中から落ちた。


エ「あー、スッキリした」

ジ「やりすぎでは?」

エ「先に煽ってきたタイトとジョーカーのせい」

ジ「僕も?!」

レ「さすがにこれはタイトのせいだけど、大丈夫?息できる?」

タ「うぅ、痛ァ。だ、大丈夫、」

レ「そう、良かった。あんなに煽ったら誰だって怒るよ。もう、タイトは馬鹿だなぁ。フフッ」

タ「あはは、ごめんねお姉ちゃん。」


 こっちにも温かさが伝わってくるくらい、穏やかに優しく笑う2人。


エ「・・・」

エ(なんだか、胸がチクチクと痛む、病気かな?初めての痛みだ。ていうか、レイってタイトのこと、、、)


タ「お姉ちゃん?大丈夫?」

エ「え?、あぁ、ううん、私もやりすぎた。ごめん」


 不思議な痛みを感じ、上の空だったが、タイトに話しかけられ咄嗟に謝った。隣でジョーカーは何故か「うん、うん」と頷いている。


ジ「それじゃ、僕は知り合いのお墓参りに行ってくるからもう行くね、3人も日が暮れる前に帰るんだぞー。」

エ&タ&レ「「「はーい

        わかった

        うん 」」」


 その後は少し、1対1対1の、実戦した後、早めに切り上げて家に帰ることにした。


エ「ほんじゃまた明日ねー」

タ「ばいばーい」

レ「うん、また明日」


 レイとも別れ2人で歩く、


エ「ねぇ、タイトはさ、私と、結婚とかできる?」

タ「え?できないに決まってんじゃん。普通に」


 言うと思っていたが面と向かって言われるとムカつくのでお腹を殴ろうと拳を振り上げると、タイトがお腹をガードするのが視えたので、咄嗟に足に蹴りを入れる。


タ「痛ァ!何するの?」

エ「私と一緒は嫌なの!?」

タ「え?いや、そういう事じゃなくて、ほら、やっぱり兄弟では、変じゃん。ダメでは無いけどさぁ。」

 ご最もだ。でも、言い方ってもんがあるだろうが。


エ「タイトはレイのこと好きなの?」

また、胸が痛む。


エ(あぁ、今どんな顔してんだろ)


 そう思いながら聞くが、といの答えは予想していないものだった。


タ「え?好きって何?」


 こいつ、わかっていなかった。多分、レイがタイトのこと好きだと気づいていないし、好きという感情そのものがわかっていない。

 あまりにもアホな答えに吹っ切れる。


エ「あぁー!なんか、もうどうでもいいや!」


 吹っ切れたことで、今まで胸に詰まっていたような思い何かが取れたように感じる。


タ「あ!さっきお父さんがレイの神技のこと直接聞くって言ってたよ。だから早く帰ろう?」


 あまりにも能天気なタイト。


エ(まぁ、こいつはこのままがいいのかもな。多分こいつは何人かに好きだと、言われても選びきれずにドロドロと長引くんだろうなぁ。どうか、こんなアホを好きなやつが少なくありますように、)

 と心の中で願う。

 家に着くと、タイトが言っていたように、お父さん、お母さんから神技について聞かれた。未来が視えると言うと、2人はとても驚き、喜んでいた、タイトも、初めて聞いたかのように喜んでいた。そんなタイトを見るとやっぱりアホだと思う。

 でも、、でも、やっぱり、、、


エ(ああ、私今、笑っているんだろうな)


 ご飯とお風呂も済み、自分の部屋へと戻る。今日一日のことを思い出す。

 神技がでて、タイトに勝って、ジョーカーにプレゼントを貰って、ボコされて、タイトがアホだと知って、色々なことがあった。

 そんなことに思いを馳せながら紙飛行機を折る。作り終わったら、窓を開け、投げる。最近知ったが、紙飛行機は思いっきり投げればいいという訳では無いらしい。どうリで飛ばなかったわけだ。


 遠くまで飛んで行くようにと思いを込めて、1呼吸置き、紙飛行機を飛ばす。それは、大きくゆらゆらと揺れながらも、何とか遠くまで、遠くまで行こうと飛び続けて行った。

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