第84話 人を誘う時は、その用件をまず先に伝えろ!
/639年11月1日/
AM10:30
〜決闘は、続いたままなんだ!〜
タイト達が仮想空間の部屋を出ると、冒険者協会中が騒がしい雰囲気に包まれているのが見て取れた。
「おいあいつら、1位に勝ちやがったぞ!」
「やべぇよ…やべぇやべぇマンだよ!」
「イブリンに勝ったあいつ、五等星らしいぞ!」
「は?嘘だろそれ!?まぐれじゃないと説明つかねぇよ」
「まじなのか?こいつら、まじで魔王倒すのか!?」
「認めねえ。初見だから相手の戦略に嵌っただけで、次やったら《下克上》が確実に勝つ」
「それでも、すごいんじゃない?」
「・・・ふん、!」
「当たった!当たった当たった!エグすぎる!金が!金がフォー!!!」
「コイツッ!逆張りが当たった反動で脳みそが持ってかれた!」
等など、聞こえてくる声に耳をすまして聞いてみると、様々な声が聞こえてくるのがわかった。ロ「おつかれー」パ「勝ち」コ「もっと労り給えー」
その中でも、一際はっきりと聞こえてくる超デカイ声。
イ「おいぃぃー!お前なーに最後諦めてんだよ!?最後まで戦い抜けよぉ!」
フ「4体1だぞ?魔法専門だぞ?無理だろ」
イ「いやいや、まだわかんねぇって!なんでそこで辞めちゃうんだよ!」
フ「無駄に手の内を明かすよりはいいだろ」
イ「負けちまったら、1位の示しがつかないじゃん!」
フ「1位の示し、ねぇ...」
それまで、イブリンの鳴き声を背を向けて対抗していたフレーバーが頭だけを後ろへと向き直して言った。
フ「お得意の、一対一の真っ向勝負で階級が下の相手に無様に負けたのはだ〜ぁれ?」
イ「くっ、!てめこの野郎!」
隊長と副隊長で言い合ってる声が遠くにいるタイト達の方まではっきりと聞こえてきた。
リ「おーおー、やってんなぁ〜」
タ「相も変わらず、声がでかいのなんのってねー」
パ「風物詩ですなぁ〜」
現実でも戦いを繰り広げている横で、2人そっちのけで普通に話し合いをしている3人の方へと近づくタイト達。
リ「よっす!」
ギ「おー!さっきは楽しかったぜー!」
コ「一部を除き、総力戦って感じがして面白かった!」
ホ「わかる」
ス「一部はうちの隊長のせいだね。ごめんね」
シ(うちの隊長も個人の方が都合がいいことは言わないでおこう)
タ「ハッ、!」
タ「今、失礼な、思考の電波を、感じ取った気がする」
シ「・・・〜〜〜!!!」
ゆっくりと歩み寄っていくタイトと、近づいてくるタイトに険しい表情に変わっていくシキ。
ギ「びっくりしたんだよな〜、まさか自爆覚悟で突っ込んで来るとは思わなんだ、」
パ「いやぁ〜、守られたら打つ手無くなるなーと思ったら、」
リ「とりま防御展開される前に動き止めてやろってなったんだよなー」
ス「男の方に至っては、電気の柵を生身で突破してきてたからね。イカレすぎてる」
リ「あぁ!ちょっと痛かったぜ!」
レ「ちょっ...と、?」
コ「普段の行動といい、痛覚に対する鈍感さといい、人として大事な何かを置いてきてる気がする」
ホ「自分の身すらも厭わぬ、勝利するための献身的な姿勢…、かっこいい…!」
ス「ちょっと何言ってんの?!嘘でしょ!?」
ホローの言葉に、血相を変えて振り向きつつ問い詰めるスターリー。そんなスターリーには見向きもせずにリューソーを見つめ惚けるホロー。
ス「ねぇ、!嘘だよね?!嘘って言ってよ!」
リ「そこまで嫌か?失礼極まりないなお前」
スターリーのあまりにもな嫌がり方に、リューソーが思わず口を挟む。
イ「お前なんか、鼻からうどんを出してしまえ!それを私が勢いよく吸い込んでやる」
フ「あなたなんか、磔にされてしまえ。そこに僕が砂糖を付けたおにぎりを持って行ってやる」
お互いに両手で中指を立てながら馬鹿し合う2人を他所に会話を続けるタイト達。
タ「楽しそうだなあいつら」
シ「ウンソウダネ!」
ス「イブリンのやつ、どう考えてもイブリンの方が嫌でしょ」
コ「フレーバー、わざと地面に落としてから食べさせてそう」
ギ「えーっと...お前ら今日この後予定あるか?」
タイトは答えた後に何を言い出すのか分からない問に、少し考えた後正直に答えた。
タ「宿代があと2日分しかないからお金を稼ごうかなとは思ってたところ」
ホ「何するのー?」
シ「マダキマッテナイヨ」
タ「とりあえず、また近いうちに任務を受けるつもりだから、今日中で完了するやつかな?普通に今の戦いで疲れたし。」
ギ「ほぉん、じゃあ!今夜は一緒に飯行こうぜ!
美味しい居酒屋知ってんだ!」
リ「おおー!いいなそれ、楽しそう」
パ「お酒!」
素晴らしい提案に気分がとんでもなく上がりだした2人。
タ「なら、集合場所と時間だけ決めよう」
集合場所を冒険者協会の前、時間は19時に決めてその場は一旦解散したタイト達。
タイト達はそのまま依頼を選び、そのまま受注完了まで済ませて早速任務へと赴いた。レ「何受ける?」タ「あんま任務ないね」リ「なるべく心躍るやつがいい」シ「リューソーのその基準はなに?」コ「お昼食べていこうよ」シ「時間的にその方が良さそうだね」
AM12:00
男「お前たちが今日の助っ人だな!」
リ&パ「「よろしくおなしゃす!!」」
頭に手拭いを巻き付け、11月だと言うのに半袖短パンで髭を程よく伸ばしている男がタイト達の前に立って無駄に大きな声で話し始めた。
男「お前たちに今日やってもらいたいのは、ズバリ!引越しの手伝いだ!」
タ(依頼見た時に概要は知ってるんだけどなー)
依頼内容は引越しの手伝い。依頼者は引越しをする本人ではなく、引越しの業者。
話によると、この男ともう1人で仕事をこなしていたのだが、つい最近もう1人が辞めてしまったらしい。それまでならまだ何とかなるのだが、それと同時期にこの男が腰を痛めてしまったようだ。
男「いく時は急にいくからな!お前らも40過ぎたあたりから気をつけろよな!」
荷物の内容を見てみると、家具やら電化製品やらと新品がやたらと多い。新婚さんか同棲か、どちらにしろ新たな1歩を踏み出すに違いない。
コ「こりゃ失敗はできないね」
シ「慎重に運ばないとね。ね?2人とも」
リ「うぃ?」
パ「信用が1ミリもなくて草」
ロ「がんばれー」
男「さて、早速作業に入って貰おうと思うのだが、お前たち一旦こっちに寄れ」
言われるがままに近づくと、男は左手を下、右手を上にして、空を持つかのような構えを取った。
男「これが、今から荷物を運び込んでもらう家の間取りだ」
男がそう言いながら、何も無い空間に目の前の家を半透明の立体写真を映し出した。
それは、各階に別れて上から見ることも、横から見ることも可能で、運ぶ物の場所、高さ、物の置く順番等が分かりやすく見ることができるようになっていた。
男「これが俺の神技<仰せのままに>だ!これでお客さんの注文通りに配置ができる!そして、これは一時的にだが、お前らに共有できる!こいつを使って荷物を運んでくれ!頼んだ!わからんことは俺に聞け!いいな!?」
リ&パ&コ「「サーイエッサー!」」
男「いい返事だ!!行ってこい!!」
作業開始!タイト達は立体写真に従い、次から次へと荷物を運び込み、所定の位置へと配置していく。
コ「私これちょー楽しょー」
タ「羨ましい」
パ「・・・!閃いたッ!」
神技<ベクトル操作>を使って一気に小さな荷物から大きな荷物まで運ぶコクウ。それを見てパルスが何かを閃いてしまう。
パ「レインー!ちょっと来て!」
レ「どしたの?」
急いで!と言わんばかりにレイを呼びつけるパルス。
パ「レインの神技って、透視てきなやつだったよな?」
レ「うん」
パ「じゃあさ、その能力を人にうつすことってできるか?」
レ「いや、、、やった事ない」
パ「あれ?まじ?みる系の神技は他人にうつすことが出来るのが多いって聞いたけど、やったことないんか」
レ「初めて聞いた。」
パ「じゃあ!今から言う通りにやってみてくれ!」
レ「え、えぇ〜」
信用出来ないと言いたげな様子のレイと、何がどうしてそんなに謎のことを強いるのか、不思議でならないパルス。
パ「いいかー、まず神技を使用した状態で両手で目を覆ってくれ」
レ「はい」
パ「で、次に神技の力?てきな何かを両手に送る感覚を想像してくれ!で、その後は神技の使用を切ってくれ」
レ「そ、想像???」
戸惑いつつも言われたとおりに手順を進めるレイ。リ「お前らサボってんなよー」
パ「で、その手で目を瞑ってる私の目を、中指と人差し指で挟んで開いてみてくれ!」
レ「こ、こう?」
パ「そうそうそうそう!!!できたできた!」
レ「できたって、何が?」
パ「私の視界にレインの神技をうつすことが!」
レ「え?!ほんとに?」
パ「おう!よし、これとおっさんの神技も見えるようにしてっと、!
それじゃあ荷物を私の手の近くに持ってきてくれ!」
レ「両手が...」
パ「なら片手だけでもいいぞ!」
レイは左手をパルスの目元から離して、言われたように届く範囲の荷物をパルスの側へと近寄せた。
パルスはその荷物に触れて神技<瞬間移動>を発動。荷物は一瞬にして消えた。
タ「うわあぁ!なんか荷物が移動してきたんだけどー!」
パ「お!狙い通りの場所に移動したな!じゃんじゃん行くぞー!微調整はあいつらに任せる!」
パルスの嬉しそうな声とタイトの絶叫が同時に聞こえたところで、戻ってきたシキ、コクウ、リューソーに詳細を説明して微調整をお願いして作業を再開。
PM16:00
男「想定ではあと2時間はかかると思っていたんだが!思いの外、というよりお前たちの連携力のおかげで早く終わった!」
パ「ウェイウェイ!私とレインのおかげ!感謝しろ!」
リ「・・・ふん、やるやん」
ロ「神技を他人にうつせること、よく知ってたな」
コ「今回は譲ってやらんでもないね」
シ「たまにはパルスも役に立つんだね!」
パ「お前ら褒めるならちゃんと褒めろや!あとシキはただの罵倒だからな!?」
協会へ戻り任務の完了報告。報酬として銀貨を20枚手に入れたタイト達。
タ「これで数日は食いつなげるね」
リ「今度はどデカい任務を受けようぜ!」
次に受ける任務に目星をつけつつ、約束の時間まで時間を潰したタイト達。
PM19:00
「「かんぱーい!!!」」
座敷に腰を下ろし、いつもの合図で飲み会の開始を告げる。
タ「いやーまさか、みんな俺よりも年上だったとは」
イブリン18、フレーバー18、ギガ21、ホロー19、スターリー57。
スターリー57!!!
ス「強調せんでいい!!」
シ「そこにツッコミを入れてはいけない!」
コ「えー、でも全然見えない。私たちと同い年くらいにしか見えなーい」
タ「わかる。みんな若く見える。イブリンなんて、俺よりも年下しかありえないと思ってた」
イ「それは私が、可憐で儚くて可愛い/タ「スターリー、さん?ってもしかして薄明、ですか?」イ「おい」
イブリン渾身のかわい子ちゃんアピールを、完全に無視したタイト。そして更に悲しいことに、誰も拾うつもりがないらしい。
ス「そうそう、種族は薄明だよ。だから実質的な年齢は君たちとそんなに変わんないから、敬語じゃなくていいよ。」
フ「逆にあなたたちは年齢層が低めなんですね。意外です」
コ「低いといっても、16〜18なんだけどね」
ホ「お酒、未成年は飲んじゃダメだよ?」
イ「飲めるやつは、飲めるやつだけで楽しむぞー!!」
パ「で、調子に乗りすぎたら後悔するんだよなー」
パルスが近くも遠からずの目をして、虚空を見つめた。それを見たイブリンがパルスに声をかけた。
イ「いいか?お酒とはその場の雰囲気に揉まれて、人に迷惑をかけない範囲で楽しく飲むことが大事である」
イ「お酒を飲み始めた若いうちに、まずは自分の飲める量を把握することが大切だ」
柄にもなく真面目な表情で人差し指を立てながら力説するイブリン。
イ「自分の飲める量なんてのは、すぐに分かる。これが全然できないやつは、頭がオッパッピーなんだよ」
イ「そして!そのオッパッピーに私はなる!」
そう言いながら、高々と掲げたお酒を一気に口へと流し込み始めた本物のオッパッピー星人が1人。
フ「あ、イブリンだ、おかえり。」
ホ「今までどこに行ってたの?」
イ「お前ら、我、隊長ぞ?いつにも増して扱いが酷いな」
ギ「ははは!そうかもしれんな!」
笑顔の絶えない、雰囲気の良さそうな隊だ。
飲み会が始まっていくらか経ったところで、今回の戦いの答え合わせのつもりでタイトが質問をし始めた。
タ「イブリンの神技ってさ、結局のところなんだったの?予想は合ってる?」
イ「答え合わせ、・・・か。
いいぞ!こっちも気になってたところもあるからな!お互いに開示していこう!」
リ「等価交換だ!」
ここからは神技答え合わせの時間だ!
イ「まぁ、私の神技はぶち当てられたからあんまり言うことないんだがな!」
タ「まじで!?どれだろう」
イ「私の神技は<充電>だ。体内電気を増幅、蓄積してそれを放つことができる神技だな!」
イ「もちろん使えば無くなる!
そして!一定時間使わずに蓄積させる、もしくは外から電気を貰えばまた使用可能になるぜ!」
タ「残量があるおかげで勝てました」
イ「魔法はほぼ使えないぜ!今まで電気で何とかなってたからな!」
リ&フ「魔法なんて、使えなくたって生きていけ...
魔法なんて、使えないと困る状況の方が...」
同時に正反対の声をあげて見つめ合った状態で固まる2人。
ホ「私の神技は<神のみぞ知る>。簡単に言えば透明になれる神技だね、!どうやら君たちの中に神が居たみたいだけど」
レ「目がいいのが取り柄なので」
ホ「いつもなら私の奇襲で初見、1人は倒せるはずなのに目が良い奴だったり、勘が鋭い人とか、逃げが得意なやつであんまり活躍できなかったのが悔しい」
少し笑いながら、見せかけのような悔しい表情を見せるホロー。悔しいのは本心だろうが、そこまで悔しがっている様子ではなさそう。
フ「僕の神技は<天下>。」
ロ「なんか強そうだな」
フ「<天下>と言っても名前だけで、ただ飛び系の攻撃を無効化するだけ。しかもちゃんと意識して発動しないと普通に当たる」
パ「でも強そうだぞ?無効化って、」
フ「まぁ、決闘では常に発動しているからそこまで目立たないけど、これが任務とかだと咄嗟に防御が間に合わない。なんてことがしばしば...」
コ「なんか中途半端だね!」
フ「なんていい笑顔で、なんて非情なことを言うんだ」
満面の笑みでトドメを刺しに行ったコクウと、遠距離攻撃を無効化したフレーバー。
ギ「俺のは単純明解!<守護の籠>お前らが見た通り、防御壁を展開する神技だな!」
リ「そういう防御系は壊されるのが定石なのに、お前のは壊れる気配すらなかったな。」
ギ「そんな簡単に壊せるようなやつなら、最初から出さない方がマシだと思う」
パ「大概は強さの証明として、噛ませみたいなのが多いからな。しゃーない」
シ「なんでその大概にこの物語は収まらないんだろう」
((全く、不思議でしょうがない))
ス「私は基本神技は使わないで、魔法を専門的に扱っているの。私はほら、薄明だからさ。使わないと損だしね」
ロ「言われてんぞ」
リ「自分の戦闘を損得で決めるなぁ!」
タ「店の中で大声を出さないの。冷水ぶっかけるよ?」
リ「しゅみません」
タイトとリューソーのやり取りの最中、スターリーがお酒を1口飲み込んだ後、こちらの方を見て何かを待っているような態度を取った。
タ「あれ?神技は言ったっけ?」
ス「ッ!」ビクゥッ!!!
タイトの一言にスターリーの方が大きく跳ねた。余程聞かれたくなかったのか、みるみると萎縮していき、目が泳ぎまくっている。
パ「どした?お前も神技なしか?」
ス「・・・い、いやー、、あるには〜、あるんだけど...」
・・・
ス「<大地の恵>...」ボソッ、
シ「土系統の神技かな?」
パ「いや、溶岩とかかもしれん」
コ「何が恵まれてんのそれ」
タ「回復もあるかもよ?」
レ「きっと、野菜とか食べ物が生えてくるんだよ、きっと」
リ「あれだろ?感覚遮断の落としあn/ロ「最高最適の個性達でお前を殴る〜」
スターリーの神技を名前だけで考察を始めるも、スターリーの反応的にあたりは無さそうな感じ。いや、レインのやつに少しだけ反応したかな?
と、考えていた矢先、スターリーが口を開いた。
ス「地面を...耕して、、腐葉土を作る、神技・・・」
スターリーの解説に、しばしの静寂が流れる。
ス「うぁぁぁぁぁ!だから言いたくなかったのいぃぃ、!こんな空気になるんだもん!絶対心の中で『ふ、腐葉土?w田舎で野菜でも作ってろやw』とか、馬鹿にしてるってぇ!」
イ「ホロー、慰めてあげてね」
ホ「ほらー、大丈夫だよー。だれもそんなこと思ってないからねー。
大丈夫、大丈夫。スターリーは神技なしでも十分すぎるくらい強いからねー。落ち込まないでねー」
スターリー、突然机に突っ伏して発狂しだした。
そしてそれを優しく諭すホロー。あまりの自然な流れに、おそらく何度もあったのだろうと察する。
そして、タイト達もその慰めに参戦し始めた。
シ「そ、そうだよ!君の魔法には何か、こう、光るものがある!」
コ「神技なんて、運要素10割のものなんだから!そんなに気にしちゃダメだよ?」
レ「野菜、自給自足、羨ましい」
タ「あるだけで羨ましい...」
リ「荒地に行けば、神として崇められそう」
パ「転生系の主人公が与えられて、自由気ままに生活してそうだな、その神技」
ロ(魔王城で雇いたいなこいつ)
スターリー慰めの会が始まり、段々と落ち着いてきた頃合で、今度はタイト達が開示する番となった。
タ「はい、まず俺の神技は・・・多分ありません、」
ギ「多分?」
タ「ちゃんと鑑定して貰ったことはないんだけどね、それっぽいのを一回も見たことがないんだー」
イ「マジで?!」
フ「これは珍しい」
ス「戦闘に一切使えない神技とかじゃなくて?」
タ「うん。ないよ」
イ「え?じゃあ、足から魔法出てたのは?」
ス「足から...?」
タ「ただの魔法だぞ。」
イ「ん?とすると、私は...無能に敗けた?」
真面目な顔で言ってきたイブリン。悪気は無さそうだが、普通に差別的発言してきやがった。
タ「面と向かって言われるとムカつくな。マジで」
イ「いや、違う違う!そういう意味じゃなくて!」
タ「わかってるよ。一般用語化してるからな。普通の悪口が」
ス「足から魔法が...?だめ、ついていけない。なに?変態なの?」
ホ「何がどうなってるの、君の身体?」
タ「子供の時に、できるかなと思ったら案外できた」
フ「泥団子作ってみた、みたいな勢いだな」
リ「ちなみに俺の神技の詳細は不明だぜ!」
何故かリューソーが飛び入りで自分の紹介を始めた。だいぶ出来上がっているのだろう。
ス「なんでそんなに自信満々なの?」
パ「こいつは馬鹿なんだ、許せ」
リ「魔法も使いません!」
ギ「うちの隊長と似た匂いを感じる」
「うぇーい」と2人して方を組み出したので、そろそろ限界が近いのだろうと悟りつつ、残りも紹介し終えた。
パ「お前らって、なんか目的があってこの街にいんの?」
ふと、パルスが疑問を口にした。何気ないただの質問。ただ、肯定的な一言でも、いずれはこうしたい!とかでもいいはずが、なぜだかイブリン達の口が閉じてしまった。
張り紙を貼り直そうと、壁から剥がしたら盛大に破いてしまったかのような、沈黙の空気が流れる。
イ「いやさ...私たち、これという目標、ないんだよ」
リ「そうなのか?」
イ「いや、ある。いや、あったんだ。けど、もう、達成しちまったからな。」
フ「元々の目標はこの街で1番強くなることだったんだ。で、それを言い出したのはイブリン。僕たちはそれに着いてきただけ」
ス「それを達成した今、特にやりたいこともないし、お金は稼げるから現役の間はこれで食いつなぐのかな〜、って感じ」
シ「イブリンはなんで、そんな目標を?」
シキの質問を受けたイブリンは、タイトの方を少し見つめて、ゆっくりと口を開いた。
イ「昔、村が魔物に襲われて絶体絶命の所を助けてくれた人に聞いたんだよ。『どうやったら強くなれますか?』てね」
ス「話飛ばしすぎだよ。それだけだと意味わかんないって。その前の状況説明からいかないと」
テンパっていたのだろう。スターリーにツッコミを入れられてオロオロしだしたイブリン。
ホ「だいたい5年前かな?」
ギ「同じ村出身の俺たちは、なんとなくで部隊を結成してたんだが、、、」
フ「はっきり言って、カスでしたね。仲間同士の連携もできないし、己の力の使い方も理解してなかったので、」
ス「任務も失敗ばっかだし、決闘には負けるしで、なんかもう嫌になって、一旦村に帰った時があったんだー」
フ「で、帰った時に限って魔物の襲撃ですよ。ほんとに〇ね、って感じだった。」
イ「私の神技さ、雨降ったら周りに感電しちゃうんだけど、その日も雨でね、その時は私が1番強かったから、スターリー達を含めた村人達を全員逃がして1人で戦ってたんだ」
タ「・・・」
表情1つ変えずにイブリンの話を聞くタイト。
イ「敵はなんてことの無い、今だったら1人でもギリギリいけるかな?って程度の魔獣だったんだけど、その日は雨でさ、思った通りに電気が扱えなくて、死ぬかもって時に、助けられたんだ。」
イ「昨日、私が君と見間違えた、『ノール』さんに」
イブリンはタイトをもう一度確認と言わんばかりに凝視したあと、ガムを吐き捨てるかのような表情でそっぽ向いた。
ギ「ここで、冒頭に繋がる!」
イ「そうそう!で、その答えが、『この街で、強さを求めて戦い続けること。君達がこの街で頂点に立つその時まで、』ってね!」
・・・
コ「・・・それって、だいぶ丸投g/イ「ちょ〜〜かっこいいよね!こう、なんというか飄々とした感じが最高に痺れる!」
フ「イブリンは、死ぬかもしれない、っていう状況で命を救われた。」
フ「だから思い出補正がかかってこっちの話は聞いてくれないんだ」
レ「厄介すぎるでしょ」
リ「誰が言うてんねん」
ギ「隊長はその『ノール』ってやつにお熱なのさ」
ホ「で、その後早速私たちのとこに来て、そのことを告げて、次の日には出発してたよ」
ス「なんでか、止めようとかも、逆らおうとも思わずにただただついて行ったよね。私たち」
フ「結局、まだ諦めきれなかったんだろうね。僕たちは」
薄く笑いながら遠い目をするフレーバー。
イ「で、この街に来て心機一転!隊の名前も、ここから這い上がるってことで『下克上』に変更し、再度走り始めたのさ!」
ギ「そして今に至る!」
イ「上がりきっちまって、何をすればいいかわかんなくなったぜ!」
ロ「あれだな、とりあえず魔王を倒しただけで、その後のことを何も考えてなかった。みたいな感じだな」
イ「それそれ!」
枠にハマったと言わんばかりにローネの言葉に声をあげるイブリン。
イ「1番強くなったら、また会いに来てくれるのかな?とかも思ったけど、全然そんなことなくて、気づけば半年。だらだらと義務感のように1位を死守してた」
リ「けど、俺らに負けたね」
イ「うっさい〇ね」
リ「辛辣ゥ」
イ「お前ら、魔王、倒しに行くんだろ?」
タ「・・・あぁ、そのつもりだ」
イ「理由、聞いてもいいか?」
タ「理由、かぁ」
タイトが言い淀んだのは、みんなの理由を聞いたことがなく、唯一聞いたリューソーとも理由が違ったことから、何を言えばいいのかわからなくなったためである。
タイトが言葉に迷っていると、横からリューソーが答えた。
リ「俺は、この世界で1番強い剣士になるため!魔法を一切使わずにな!」
大きく胸を張って答えるリューソー。
パ「私は、この世界を自分の目で見て、何かを成し遂げるため!」
お酒を高々と掲げながら上機嫌に言うパルス。
シ「僕たちは、この世界に、認めて貰うため」
コクウの手を握り、固く決意するシキとコクウ。
レ「私は...生きていて欲しい人が死なないため。」
胸に手を当て、絞り出すかのように言葉を発するレイ。
タ「俺は...もう誰も俺と同じ思いをさせない為に、」
過去の光景をもう一度脳裏に写しながら、心に響かせるタイト。そんなタイトの表情には自然と、笑顔が浮かび上がっていた。
それぞれがそれぞれの理由で、今ここに立っている。タイトはようやくそれを確認することができた。そして嬉しかったのだと思う。本気の思いがあるのだとみんなの意志を知ることができたのだから。
イ「・・・お前は?」
ロ「私は居候みたいなもんだ。気にすんな」
ギ「なんだそりゃ」
そこまで聞いたイブリンは突拍子もなく、目の前の運ばれてきたばかりのお酒を一気飲みした。
ダン!
そして、勢いよく空になった器を机に叩きつけながら、立ち上がった。
イ「決めた!」
ホ「何を?
・・・とは聞かないよ?」
フ「流されやすいのは知ってるからな」
みなまで言わずとも、何かを察した『下克上』の仲間たち。
イ「・・・へっ、!」
イ「なら!一緒に、きてくれるか?!」
ギ「あったりめぇよォ!」
ス「ここでついて行かないなら、そもそもこの街にすら来てないまである」
タ「・・・ええと...、話が見えないんだが、」
イブリンたちの話についていけないでいるタイトの方を、決闘の時にみせた挑戦的な笑顔を見せながらイブリンは宣言した。
イ「私達も!魔王を倒しに行く!」
リ「ほぉ、なら競走だな」
パ「私たちは既に幹部の1人を突破しているからな!」
イ「関係ないね!ぶち抜いてやるよ!」
ただでさえ、苦情が来そうな程に煩かった酒場を、さらに盛り上げる3人。
シ「偏見だけど、君は反対しそうな雰囲気なのに違うんだね」
フ「ほんとに偏見が凄いな。君も人のこと言えないと思うが?」
シ「はは、それもそっか」
めちゃくちゃな偏見を物申すシキと、それに対してフレーバーは1口、お酒を飲み込んで答えた。
フ「一度、光をイブリンに見せられたんだよ。眩しくて、鋭くて、煌めいていて、とても綺麗で汚い光を」
フ「その日から、僕らは彼女について行くと決めた。どこまでも」
コ「何かあったの?」
フ「いや、何もないよ」
コ「・・・んわ?」
フレーバーの返答があまりにも予想外すぎて、間抜けな声が漏れたコクウ。
フ「そう、なかったんだ。普通に平凡に安泰的に過ごすはずの僕らには、それが希望の光に見えてしまった」
フ「単純だと笑うか?」
シ「いや、少しだけ...わかるよ」
コ「ヒヒ、!」
目の前の料理を手掴みして笑顔でタイトの口にぶち込むイブリン。と、それを見て大笑いのリューソーパルスギガ。離れたところから見ているスターリーとホロー。呼吸困難になっているタイトとあたふたしているレイ。
ロ(なんでこいつら俯瞰してんの?俯瞰してるならもっと周り見ろ、白い目で見られてんぞ。この机、)
1人だけバツの悪そうに、端っこでちびちびとお酒を飲むローネであった。
そのあとすぐにイブリンが椅子に座ったまま寝てしまった。
燃えたよ・・・まっ白に・・・燃えつきた・・・まっ白な灰に・・・・・・
タ「よし、こいつの状況説明文のすぐ下に『燃えたよ・・・まっ白に・・・燃えつきた・・・まっ白な灰に・・・・・・』を追加してやろう」
リ「こいつタイトに一対一で負けてるし、丁度よさそうだな」
ギ「バレたらブチ切れるだろうな。面白すぎる」
仕返しと言わんばかりに、何かをやろうとしているタイト。多分何かしらの境界を超えた。
フ「少し喋りすぎた、やはり酒は適度がいいな」
コ「たまにはいいんじゃない?行くとこまで行かなければ、」
フ「さて、隊長が飲み潰れたことだし、そろそろお開きにしようか。」
フレーバーの一言で、フレーバー達は帰り支度を始めた。支払いはフレーバーが全部持つと言ったため、お言葉に甘えたタイト達。
半分寝た状態のイブリンの肩を持ち、店を出て別れようとした最後にフレーバーが一言。
フ「一つだけ、」
パ「おん?どした?」
フ「今回は、うちの隊長は君1人に敗けた。
だが、うちの隊長は個人戦よりも団体戦の方が数倍強い。次に戦う時は僕らが勝つよ」
フ「それだけ。それでは、またどこかで」
踵を返し、帰路につくフレーバー達。その目には闘志の炎が宿っていた。
リ「あいつ、意外と負けず嫌いだな」
パ「フレッシュだけじゃなく、あいつら全員だぞ。私らの開示の時、目がマジだったもん。」
シ「パルス、名前覚える気ないでしょ?」
パ「んー、?お酒のせいかな?!」
コ「冷たぁ〜い水をかけてあげよーか?」
パ「その言い方はー、上から掛けられそうな言い方だから遠慮しとくー」
店の前でふざけ始めたおバカさんたち。
タ「さて、俺達も帰ろうか」
レ「うん」
ロ「今日の飲み会は長かったなー」
シ「人が居たからねー」
冷たい空気で火照る体を冷ましながら歩く。
リ「明日は何するよ?」
タ「んーーー、いい任務があったら受けようかなー」
パ「決闘でもいいんだぜ?」
タ「任務が被ったらねー」
コ「全員蹴散らしてから街を出たいなー」
シ「わかる」
タ「わかるな」
レ「お腹、空いた」
タ「はいこれ夜食」
レ「やったー」
リ「タイトー、俺もお腹空いたー」
タ「そこに雑草が生えてるじゃん。とりあえずはそれで我慢して」
リ「対応の差に涙を禁じ得ない」
11月の夜の風よりも冷たい対応をされたリューソー。
宿に着いたタイトは今日も、紙飛行機を作って窓から投げ飛ばした。




