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今、生きているあなたへ  作者: ひびき
雷鳴の如く
88/92

第83話 最後の一手

〜仮想空間〜


タ「はぁ、はぁ、っんぐ、」


ダッ!

 息も絶え絶えになりながら森の中を逃げ回るタイトの後ろで、何かを蹴る音が聞こえた。次の瞬間、


ズァッ!

 タイトの目の前に周囲の空気を巻き込むかのような勢いで、剣を振るいにかかってきたイブリン。あと少し止まるのが遅かったら危なかっただろう。


 タイトは走る足を止め、大きく後ろへ引いてイブリンの顔面目掛けて火炎玉を放つ。イブリンもすぐに体勢を立て直して放たれた火魔法を切り裂いてかき消す。

 掻き消えた火の中からタイトがすぐ側まで詰めて来ているのがイブリンの視界に写った。


バチバチッ!

パキパキ…


 電気の剣、氷の刀で打ち合う2人。2、3度打ち合ったところでイブリンの剣に付着していた電気が解除された。タイトは気づいているが、不意打ちを警戒し、氷を解除せずに応戦。

 イブリンが縦に振り下ろした剣を、タイトは右半身を後ろに引きつつ回避し、続けて刀をイブリンの胸元へと突き刺しに行く。


バチッ!

 タイトがイブリンの腕に電気の気配を感じたのも束の間、イブリンの振り下ろしたはずの剣もとい、手や腕は自身の胸元へと持ってきていた。

 右手で剣の切っ先を自身の右側へと向け、水平に持つイブリンは左足を後ろに引きながら、右手のみで剣を左へと引いて剣の握りの先端でタイトの刀の軌道を逸らした。さらにそのまま手首を返してタイトへ向けて剣を振るう。


 まさかの回避と反撃にタイトは、咄嗟に風魔法を足から出して大きく飛び上がりその攻撃を回避。


ィ「思ったより飛ぶね」


パキィ!

 上空でタイトの刀に付着していた氷魔法が四方へと弾け飛ぶ。タイトは刀に風魔法を付与し、空中で振り下ろしの体勢に入った。

 周囲の空気を急かすように巻き起こる風。風を切るように刀を振り下ろしたタイトは風の斬撃を飛ばしイブリンを攻撃。


 イブリンは横へと大きく飛んで回避。タイトは着地後、間髪入れずにイブリン目掛けて走り出す。まだ体勢の整っていないイブリンの右手に電気を溜めていることを察知したタイト。両足を地面に急激に速度を落とし、刀を収納魔法へと落としこんで両手に魔力を流す。


 イブリンは3、4mまで近づいてきたタイトに向かって電気を飛ばす。タイトは両手を体の前で重ね、そのまま両手を外側へと開きつつ水魔法を放出し、薄めの壁を作り出して電気魔法を防ぐ。


 イブリンが走り出すことを予測してタイトは収納魔法から金属製の棘を掴み取る。予測通り距離を詰めてきたイブリン目掛けてタイトは、棘に魔力を込める。


タ(他人の電気は、ちゃんと聞くかな)


 電気魔法を込めた棘をイブリンへと放り投げた。狙った訳では無いが棘は顔へと一直線に飛んで行く。イブリンは咄嗟に首を横に傾けながらその棘を掴み取りやがった。


タ(マジか、電気が効いてねぇ!…てか、)

イ「悪くねぇ、!」


 そう言いながら口の端を上げて、頭脳派の裏切り者がするような、怖めの笑顔を見せるイブリン。


タ(逆に笑ってやがる。気持ち悪っ!)


 棘程度ではイブリンは速度を落とさず、さらに加速する。タイトは右手に手のひら程度の水魔法、左手にできる限り温度を高めた火魔法を生成し、イブリンと自分の間で2つが交わるように投げた。


イ(なんだ!?)


バァァン!

 耳を刺すような破裂音が響き渡った。水蒸気爆発によって飛び散った水と発生した水蒸気でイブリンの視界を奪い、足止めし、その隙にタイトは森の中を全力逃走を始めた。


イ「あの野郎…!」


 タイトは木々の間を走り抜ける最中、罠魔法と時間差で発動する魔法を適当に設置。後ろでは罠魔法が発動した気配と木が倒れる音が聞こえてくる。


タ(引っかかってる。多分バチくそにキレてるやろうなぁ。)


タ(・・・逃げなければ)


 命の危機を感じて再度走り出したタイト。


 後ろでは罠魔法に引っかかったイブリンが怒りに震えながら、遠くに見えるタイトの背中を睨みつける。


イ「逃げ回るだけじゃなく、罠も仕掛けやがって…

時間稼ぎか?その手には、」


 そう言いながらイブリンは、地面に落ちている石を掴み取って電気魔法を流し、


イ「乗らねぇよ!」


 タイト目掛けて放り投げた。そして、イブリン自身の足にも電気を流し、強く、強く地面を蹴り上げてタイトを一直線に追いかけた。



バキッ!バキッ!

 木の弾ける音が聞こえたタイトが咄嗟に後ろを振り返ると、超高速で飛んでくる石が、途中の木々を貫通しながらタイトのすぐ後ろまで迫ってきているのが見えた。


 タイトは右へ倒れながら、その石は回避。すぐに立ち上がって走り出そうとするタイトだったが、左肩に何かが触れる感触が。


イ「捕まえた」


 上から声が聞こえ、見上げたタイト。視線の先にはタイトの左肩を左手で掴み、逆立ちのような状態になっているイブリンが居た。


 刀を逆手に持ち替え、左肩に乗る手を突き刺しに行くタイトだったが、すぐに手を離され空振りに終わる。イブリンは空中で体を捩り、落下しながらタイトの首元へと水平方向に剣を振るう。

 タイトは刀では間に合わないと判断し、左腕の肘から下を氷魔法でガチガチに固めてイブリンの剣を防御した。


 イブリンは落下する体を、タイトの腕を利用して頭の方へと剣に体重をかけて、空中でやや浮き上がり体勢を整えて、回転しながら華麗に着地。すぐに走り出してタイトとの距離を詰め始めたイブリン。


 タイトは左腕の氷をイブリンへ投げ飛ばしながら、再度、棘に風魔法の術式を付与し、表面に電気魔法を流して、今度はイブリンからやや逸れるように投げる。


 イブリンは氷を切り伏せ、タイトの投げてきた棘を確認すると、やや逸れているはずの棘を剣でわざわざ受け止めた。


タ(なるほど?馬鹿め)


 棘に付与していた風魔法が発動し、棘に触れた剣が風魔法の衝撃を受け、イブリンの右手が後ろへと弾かれた。予想外の衝撃に体勢を崩したイブリンは速度を落とし、タイトはそれを機に背を向けて走り出した。


イ「クソがっ!逃げんな、、って!!」


 イブリン、再度石を掴み取ってタイトへと電気を込めて投げ飛ばす。進行方向に飛んできた石をタイトは立ち止まって避けるも、すぐ後ろから飛んできたイブリンに追いつかれた。

 イブリンはタイトへと勢いを利用して蹴りをかましてきた。タイトが咄嗟に腕で防御するも、勢いに負けて蹴り飛ばされた。


タ「いてぇー、」


 背中から木に衝突したタイト。背中に痛みを覚えながら、木に体重を掛けつつ立ち上がるタイト。


イ「お前ー!ちょこまかと逃げ回るんじゃねぇ!男なら正々堂々戦いやがれ!」

タ「はあ〜?近距離触れたら即死の、圧倒的不利で戦うアホを男だって言うなら、俺は女でもいいわ」

イ「屁理屈言うな!ヘタレ!ビビり!雑魚!」

タ「何回も追いついてるというのに、全く仕留めきれないお前はなんだってんだよ。この、」

タ「ノロマが」


イ「あぁん??」

 顔に血管が浮き出るほど、分かりやすく激怒するイブリン。


イ「たまたま逃げ延びてるだけのカス野郎が…

そこまで言うなら、今すぐ殺してやるよ」


バチッ、バチバチッ!

 全身に電気を纏うイブリン。


タ(来た、)


 タイトは2歩前へと歩き、光速で移動するイブリンに対応できるよう、剣を正面に構えて神経を研ぎ澄ます。


 体勢を低く身を捩り、剣を右側へと構えるイブリン。


バガァッ!

 雷のような轟音をかき鳴らしながら、イブリンが走り出した。

 

タ(みg、


 タイトが気づいて振り向いた時には、イブリンは既に剣を振り抜いていた。


 右の脇腹から左肩にかけて大きな切り傷がタイトの体に刻まれ、血が溢れ出て服に滲む。体に走る電気に体の自由を奪われ、力が入らず刀を落とし、片膝立ちの体勢へと崩れ落ちるタイト。


タ「がっ…ぐ、、、」

イ「ギリギリで体を後ろに引いて即死は免れたのか。だが、致命傷だな、」


 ゆっくりとタイトへと歩み寄るイブリン。


イ「まあ、五等星にしてはよくやったよ。多分。

・・・ただ、負けは負けだがな」


 剣を振り上げ、項垂れているタイトの首へと振り下ろすイブリン。


ガッ!

イ「なッ!!」


 イブリンの剣を、地面から生えてきた土の壁が阻んだ。動揺を隠せず、周囲へと注意を向けるイブリン。役目を終えたと言わんばかりに、目の前にある壁が音を崩れ始めた。


 獲物を探すかのように周囲を警戒するイブリンに、瓦解する土の壁の向こうから拳を構えているタイトが姿を見せた。


イ「はぁっ?!」


ドッ、!

 完全に警戒を解いていた方向からの攻撃に、防御の間に合わなかったイブリンは、腹に重い一撃を貰った。

 タイトはそのまま拳を振り抜いて、イブリンを殴り飛ばす。


イ「げほっ、がはっ、」


タ「ふぅー、危ねぇ。もう少し反応が遅れてたら死んでた」

イ「なんで…生きて、!」


 理解の追いつかないイブリンはタイトに噛み付くように問い詰めた。


タ「お前の電気、魔法じゃなくて神技由来のやつだろ?魔力と技力どっちも使うやつ。」

タ「だから、全身に魔力を薄ーく硬ーくして守ってたんだよ。剣は掠る程度に避けて、バレないくらいで電気喰らう感じでな、」


 そう言いながら、タイトは胸の傷を水魔法で洗い流し、傷の浅さを見せてから回復魔法で治す。


イ「意外とやるじゃ/タ「で、ここからが本題」


 やる気を高めるイブリンに被せて、タイトが喋りだした。


タ「お前の神技、使える電気に限度、残量が決まってんだろ?」

イ「ッ!!!」

タ「図星だな」


 目を大きく見開くイブリンにタイトは、自分の考えが合っていることを確信する。


タ「お前の神技、<充電><発電><蓄電>。それに近いなにかだろ?」


タ「神技の使用には技力が必要で限度があるのは当然だが、お前は技力だけじゃなない。電気を使うのに必要な電池みたいな感じだな。」

タ「時間経過で増えるんだろ?だから、途中途中電気を纏わずに攻撃してんだもんな。その全身に纏うやつが1番強いけど、1番電気使う的な?で、残量無くなってきたから、その次からは電気なしで攻撃する」


タ「あと、電気を受けると残量回復するんだよな?

お前、俺がわざと逸らした電気魔法に触りいったのも、電気を溜めるためだろ?」

タ「回復がなかったら、俺だったら全部大袈裟に電気避けて、大事なところで無効化しながらぶん殴るもん。」

イ「・・・、」


 無言を貫くイブリンにタイトは追い打ちをかける。


タ「で、今お前電気を1番使うであろう技を使ったよな?今まで頻繁に使ってきたのに」

イ「ちっ、」


タ「おぉ…!残量はあといくつだろうな?!

限りなくゼロに近いんじゃないのか!?」


 タイトはどんどんと表情が険しくなっていくイブリンに笑顔を抑えきれずに居た。


イ「・・・お前、いい性格してんな。

人に性格悪いとか言ってたけど、お前も大概だぜ」

タ「小さい頃からその方面の英才教育を受けてきたのでね」

イ「へぇ〜?どんなやつだ?教えてくれよ」


タ「残念、その話はこの戦いが終わってから現実でやろう。時間稼ぎに付き合うつもりは無い。」

イ「ほんとに最高の性格してんぜ」


 イブリンが剣を握り、まだ痛みの残るお腹を抑えながら立ち上がる。

 イブリンがタイトに視線を合わせた時、タイトの表情には、先程の人を嘲るような笑顔はなかった。代わりに、タイトは挑戦的な、自信に溢れた笑顔をイブリンに見せつけ、こう言った。


タ「さっき、俺の事を雑魚だ、って言ったよな?」


 タイトのピリピリとした弱電流のような殺意がイブリンを襲う。


タ「俺の見せ場はこっからなんだよ、」


 格下と思っていた相手に、ここまで追い詰められた、そして勝つ気でいるという状況にイブリンは、


イ(面白い…!)

 タイトの魅せる強さに、逆境に、ゾクゾクとした恐怖心と好奇心が身体中を駆け巡り、イブリンの顔に笑顔を引き出す。


 1呼吸置いてタイトが最後に一言をイブリンへ叩きつけた。


タ「覚悟しとけよ」

イ「上等」

 

 タイト、まず牽制として刀に風魔法を付与し、右下から足の付け根程度の高さまでの斬撃をイブリンへと飛ばす。

 イブリン、それを上へと足を畳みながら飛び上がって回避。


イ「えっぐ〜、初手からやる技じゃねぇよ」


ビュンッ!

 斬撃を避けることに注力して視線を下に落としていたイブリンが、何かが風を切るような音を聞き、タイトの方へと視線を向けた。

 タイトは既に着地点へと移動してきていた。


イ「えっ、はや


 急速に移動してきたタイトに対応できないイブリンは、タイトの下から斬り上げてくる刀の軌道上に剣を添えて防御することしか出来なかった。

 刀の刃がイブリンの体に到達することはなかったが、空中で受けたイブリンはタイトに力負けして後方へと飛ばされた。


 さほど勢いはなかったため、両足で着地して勢いを殺そうと地面を滑るイブリンだったが、唐突にその勢いが止まり、代わりに左足に鋭い痛みが走った。


イ「いたっ、!」


 イブリンが確認すると、左足に地面から鉤爪のように不自然に曲がり、鋭く尖った地面が左足のふくらはぎに刺さり、先端が脛の横からこんにちはしていた。


 すかさず剣でその地面をふくらはぎの近くで切り離し、足を動かせるようにするイブリン。

 タイトは次にイブリンの周囲八方を塞ぐように10個程度の魔法を展開、一斉照射。その間にイブリンとの距離も詰め始めた。


 左足の激痛のせいでろくに踏ん張れないイブリンは、タイトの魔法をギリギリで弾き飛ばしたり、回避したりして何とか持ち堪える。

 全て捌ききったところでタイトが登場。魔法の対応のせいで体勢の整っていないイブリンは咄嗟に、足にだけなけなしの電気を込めて大きく横へと飛んだ。


 空振りに終わったタイトは逃げるイブリンの方を見る。イブリンは確かに速い。だが、それは電気ありきの移動方法。残量の少ない今、イブリンはすぐに電気を解除して自身の足で逃げ始めた。

 今度はイブリンを追う側に回ったタイトは足に魔力を込めて追いかける。


イ(あいつ速くね、!)


 すぐに追いついて来たタイトに、剣を握りしめて迎撃の体勢に入るイブリン。


ギィンッ!

 空気を割るような甲高い音が、火花を散らす金属同士の衝突によって響く。


 タイトの全てを攻撃に振り切った猛攻に、イブリンが押され、後ろへと後退しつつ応戦する。


 ギリギリで防御するしかできないイブリン。

パチッ、


イ(少し、少しだけ!時間が欲しい、!)

 そう思う一心でイブリンは、剣にハリボテの電気を流す。力の欠片程度しか込めなかった電気、表面上は普通の電気だが、食らっても静電気にも満たない程度の痛みしかない。

 これにビビって少し攻撃の手を止めることを勘定に入れて、軽めに剣を振るうイブリン。


イ(止まれ、!止まれ!止まれよ!)


 イブリンの画策とは裏腹にタイトはイブリンの剣に氷魔法も纏わせずに刀を合わせた。


タ「んっ、!」


 若干の痛みに瞬き程の間だけ動きが止まったタイトだが、すぐに動き出して弱々しく剣を振ってきたイブリンを弾き飛ばす。


 左手を地面につきながら、何とか倒れ込まずに耐えたイブリンだったが、すぐに目の前からいくつもの魔法がイブリン目掛けて飛んできていた。


 左足の痛みに堪えながら自分に当たりそうな魔法を切り落とすイブリン。力を振り絞って魔法を捌ききったと思ったその瞬間、左の肩甲骨に氷魔法が1発命中した。


イ「あがっ!」


 あまりの痛みにうまく力が入らず、左腕が肘よりも上に上がらないイブリン。


イ(くっそ!ずっとあいつの調子だ!

まずいまずいまずい!気合い出せ!)


 尚も一切の容赦なく攻撃の手を止めないタイト。刀の射程圏内まで近づき振るう。


イ「うああぁぁぁぁ!!!」


 己を鼓舞するように雄叫びを上げながら、右手のみでタイトへと斬りかかるイブリン。これまでとは比べ物にならない程の重く速い連撃。

 追い詰められた生物の生存本能から来る、火事場の馬鹿力。それとも、街の冒険者順位1位としての自尊心か。

 タイトはイブリンの最後の悪あがきに、やや押され気味になり、やがて


キンっ!

 左足を前に踏み出して、右上から刀を振ろうとしていたタイトの刀を外側へと叩き落としたイブリン。


 剣を握り替えて、タイトの首元目掛けて一閃を振るうイブリン。


ドゴォォォ!!!

 森中の木々を揺らす特大の爆音に気を取られること無く、剣を振り抜くイブリン。


カカカン!

 地面スレスレから土魔法の、小さな弾丸を幾つか放って、イブリンの剣の軌道を逸らし、動かすことのできる右腕を上へと強制的に上げさせたタイト。


 左足を軸に、右足を少し過剰なほどに後ろへ引いて風魔法の加速を合わせてイブリンを蹴りに行く。


イ(まだ…!)


 左腕に疑似の電気信号を流し、強制的に左腕を動かしたイブリンは、電気をまとった左腕でタイトの足の軌道上へと持っていった。イブリンの奥の手。


 だが、イブリンの覚悟を嘲笑うかのように、足に氷魔法を纏わせた。


イ(えっ…なん…土だけじゃ…あしに、)


 考えを整理する時間もなく、イブリンはタイトに蹴り飛ばされた。氷の装甲を纏った蹴り。この攻撃により、骨から出てはいけないような、耳を塞ぎたくなる音が鳴った。


タ(いける…勝てる)


 徐々に勝利が目に見えてきて、自信満々にイブリンを低空飛行で飛ぶように追いかけるタイト。だが、イブリンは諦めていなかった。


 後方へ吹き飛ばされながらも、右手に持つ剣を口に咥え、落とさぬよう顎に力を入れるイブリン。追いかけてくるタイトを確認。もうすぐそこまで迫っているタイトに向けて、今ある電気のほとんどを使用して電撃を放った。


バリバリィッ!


イ(くたばれぇぇぇ!)


 目標目掛けて光の軌道を描く電気の先で見える、タイトの左手の指に挟んでいる3つの、光を輝くように反射させる金属製の球。


タ(じじい、たまには役に立つやん!)


 タイトがそれを左前に投げつけると、イブリンの放った電撃は軌道を急激に変え、金属製の球に全て吸われた。


 タイト、イブリンの目の前に着地し、落下と移動の勢いを利用して上から振り下ろしの体勢に入った。

 イブリンは電気が吸われたことを確認して、すぐに放っていた電気を中断。足を地につけて大地を踏みしめる。咥えていた剣を右手で握りしめ、タイトの刀に合わせて剣を振るう。


 タイトは刀を素直に振り下ろしてきた。イブリンも左から思いっきり力を、闘心すらも込めて振るう。


 2つの武器が重なる直前、イブリンの剣が卑しく、怪しく、雨の降る暗闇を照らすように輝いた。


バヂィッ!!!

 再度、ほぼ残量の残っていないはずのイブリンの剣に電気が流れ出した。

 タイトの刀には氷魔法が纏うことも、刀の勢いが止まることもなく、走り続けた。


ギンッ!

 やがて、必然的に2つはぶつかりあった。タイトの刀にイブリンありったけの電気が流れ込む。


イ(まだだ!相手の首を掻っ切るまで油断するな!)

イ(油断も慢心もせず、確実に殺す!)


カンッ!

 火花を散らすほどの勢いでぶつかりあった2つの武器だったが、イブリンは腕に違和感を感じた。


イ「えっ、?軽、い…?」

 イブリンの剣と衝突したタイトの刀は、一切の力を感じることもなく、大きな放物線を描き始めるように中を舞い始めた。


 イブリンは視線を下へと向ける。下へ、下へ向けても一向にタイトの姿が映らない。さらに下へ、地面を見る程にまで下げたところでようやくタイトが見えた。


 右足を大きく踏み出し、地面スレスレの体勢で身を捩り、右手を体で隠しているタイトの姿が。


 タイトは逃がさぬよう、思いっきり足で地面を蹴り上げた。そして、旅立ちの時に神父から授かった短剣をイブリンの身体に、すれ違う一瞬のうちに何度も深く重く切りつけ、イブリンの後ろへと駆け抜けた。


ぶしゃァァァ、

 首の頸動脈、切り落とした右腕、横方向に切り裂いたお腹、太もも、左の頬から目にかけて、胸元、あらゆる場所から一斉に血が吹き出し、前のめりに倒れ込み、絶命したイブリン。


ジジ、、

 と脱落を確定させる機械音がイブリンから聞こえ、徐々に消え始めたことでようやく勝ちを確信したタイト。


タ「ふうぅぅぅぅぅぅ、!」


 詰まっていた息を全部吐き出すかのような勢いで息を吐くタイト。


タ「神経使ったァァァ、、疲れたああ、、」


 気を抜かぬよう、目を見開いて身体に力を込めるタイト。


タ「まだ終わらないってことは、敵が生きているってことだよな?」

タ「助けに行こう。っとその前に刀刀刀ー刀ーをたべーるとー…あった!」


 遠くまで弾き飛ばされていたタイトの刀。それを拾いとったタイト。


バチンッ!

 突如、身体に流れる電気。完全に警戒を解いていたタイトは刀に本来残るはずのない電気により感電。


 タイトは全身から力が抜け、地面に倒れ込んだ。


タ(なんで、!倒した、はずなのに!)


 確実に倒した。実は生きてました、という訳でもない。イブリンの呪いのような一撃。体は動かないのに思考だけができることに不安と焦りが加速する。


 そして、その不安を実現させるかのように近づいてくる2人の人間の気配と、こちらへ向かって飛んでくるいくつかの魔法。


タ(ちょっ、動け!動いて!動いてくたさい!お願いしますぅ!)


 そんなタイトの願いが届かず、届かせる訳もなく、魔法が目に見えるところまで近づいてきた。


タ(なんでかっこよく終わらせてくれないのさ!

いつもこんなんばっか!やんなっちゃう!)


 着弾する、と身構えたその時、


キンッ!

 と、魔法を弾き、タイトを誰かが守ってくれた。


レ「大丈夫?タイト、!」


 魔法を切り落とし、心配そうにタイトに駆け寄るレイン。


フ「まさか、!あいつ負けやがったな!」


 タイトだけしか残っていないのを見て、声を荒らげるフレーバー。


 その間にレインが回復魔法でタイトを蘇生。


タ「た、助かったよ、」

レ「どういたしまして、

タイト、もしかして勝った?」


 レインの質問にピースで返すタイト。


レ「ふーん…

まぁ?私も勝てたけどね?」

タ「レイ、オレ、ナカーマ」

レ「ふふ…冗談だよ、」


 いたずらっぽい子供のような笑顔を見せるレイン。


レ「敵はあとあの眼鏡だけだよ」

タ「あの眼鏡か、りょーかい」

レ「あの眼鏡、飛び道具が完全に効かないから、近距離で直接叩こう」

タ「やるなあの眼鏡、それで行こう!」

フ「名前を眼鏡に改名してやろうかコノヤロウ」


 レインの情報を聞き、なんの前触れもなくフレーバーの後ろから魔法を撃ち放つ心無いタイト。

 レインから聞いた通り、魔法が壊れたとかそういう訳ではなく、魔法が消滅。


 それを皮切りにフレーバーが魔法を仕掛けてきた。レインに言われた通りに距離を詰め始めるタイト。レインも続けてフレーバーとの距離を詰める。


 2人に降り注ぐ魔法の数々。ただ、魔法を比較的扱う方の2人。対抗で魔法を駆使しながらフレーバーの魔法を相殺しつつ走り抜ける。


 刀の射程圏内まで近づいた2人。近距離の心得がないのか、フレーバーは特に武器も取り出さず、魔法で何とかやり過ごそうとしている。

 

フ(この2人、いい連携だ。男のまだ足りない部分を補うように、女が補填してくる。

まるで隙がない)


 フレーバーは見た目からは想像できないくらい、動体視力が良く、2人の攻撃を致命傷にはならない程度で避けながら魔法を放つ。


タ(こっちが推してるはずなのに、こいつめっちゃ避けるやん。凄っ、)

フ「埒が明かないな、」

レ「ー!!」

タ「、、ッ!」


 フレーバーに向かって魔力が集中していくような初めての感覚を2人は感じ取った。咄嗟に大きく飛んで後退した2人。


 フレーバーは離れていく2人にもお構い無しに、周囲から溜め込んだ魔力を風魔法として全方位へ出力。


ごぉぉぉ!バキバキッ!

 木々をなぎ倒すほどの暴風を放つフレーバー。


フ「あー、ダメか〜。おまけに遠距離担当の2人も追いついてきた…」


 遠距離では攻撃の通らないことを悟ったシキとコクウが、フレーバーを視界で捉えた。その手に剣と短剣を携えて。

 さらにほぼ無傷でフレーバーの元へと歩くタイトとレイン。


フ「仕方ないな…この一手は最後の奥の手。

あまり使いたくなかったが、これで終わりにしよう」


 意味深な言葉を並べ始めたフレーバー。


タ(なんだッ?何がくる?!)


 異様な気配にフレーバーから目を離すことなく、身構えるタイト。タイトだけでなく、他の3人も人数有利を忘れて構える。


 魔法の杖を収納魔法へと片付け、おもむろに右手を上げたフレーバー。

 4人が今から起こることに反応できるよう、集中を高める中、フレーバーが口を開いた。


フ「降参、棄権します」


 誰も何も言わない時間が流れた。まるでその声が聞こえなかったのかのように。

 単純な言葉だったが、皆その言葉を飲み込めないでいた。


タ「ふぇ???」


 ようやく脳の処理が追いついてきたタイトは遅れて間抜けな声を漏らした。


 1度宣言した敗北を認める宣言に撤回はなく、フレーバーはそのまま仮装空間から出ていってしまった。


レ「・・・えーっと…?」

タ「勝っ…た、の?」


 特にこれといった報酬もない

《魔王倒し隊》対《下克上》の勝負、


 タイト達の勝利で決着!!!


コ「納得いかないぃ!!!」

 読んでいたたぎありがとうございました。

 前回言った通り、資格勉強の為1ヶ月ほど失踪します!すみません!


 ではまた来月に会いましょう!おやすみなさい!

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