第79話 君がいるから
修行を始めてすぐの頃、色んな大人達が俺たちの特訓を見に来ることが多かった。そいつらは俺たちに足りないことや、効果的な修行方法なんかを教えてきた。
俺たちからしてみれば、有難いことなのだが、こいつらが自分で戦いたくないからだということを知っていると、虫酸が走る。
そんな大人たちも、俺が魔法を使わず、剣だけで『守護者』になると宣言しているうちに誰も寄り付かなくなった。
リ(12歳)「いやぁ〜、宣言した時の大人の目は、本当にえげつなかった!明らかに子どもに向ける視線ではなかったぜー」
[なれるわけが無い][期待して損したわ][不可能だ][夢ばっか見てないで、そろそろ現実を見ろ][大人になれよ][世間知らずのガキ][無能][劣等種]
とかも言われたな。もちろん俺は無視したが、スパイルは真に受けてしまうようで、その度に傷付き、気落ちしているように見えた。
リ[なんでお前が落ち込んでんねーん]
ス[落ち込んでねーよカス。自意識過剰かよ。妄想も甚だしいわ]
リ[なーに言ってっかわかんねーよ。難しい言葉を使うなよー]
ス[このマヌけがぁ!この汚らしい阿呆がー!]
リ[そこにシビれる憧れるゥー!]
冗談は置いといて、
リ[まぁ、あんなカス共無視すりゃいいんだよ。聞くだけ無駄だ]
ス[それが簡単にできたら苦労しねぇーんだよ。このスカポンタン。誰もがお前みたいな鳥頭と思うなかれ]
俺たちは今日も、そんな言葉を投げかけられながらも、武器を構える。
スパイルは、いつかメアリーがスパイルに教えていた、罠魔法を主に魔法の練度を上げていった。何か知らんがいつの間にか、めちゃくちゃ罠を張れるようになってた。もうほんとに隙がないくらいに。
だから俺も、魔力を目に込めて見ることを覚えた。これのおかげでだいぶ魔法が見えるようになった。あと、罠魔法の対処法も。
時たまに来てくれるお父さんのおかげで、俺たちは戦いにおいて、有用なことを教わった。
この魔力を込めた目もそうだが、闘心、体の使い方、騙し方等など。
お父さん自体は強くはなかったが、昔よく戦いをまじかで見ていたらしく、そういう戦いの傾向なんかを覚えたらしい。
/633年/
俺とスパイルと2人で修行を初めて1年が過ぎようとしていた。
俺とスパイルは、開けた場所の離れた位置から開戦し、どちらかに1発いいのが入る、もしく剣を寸止めするかのどちらかで勝敗を決めるという決まりの元、ほぼ互角の実力でやり合っていた。勝ち負け交代ごうたい的な感じ。
俺たちはこの1年でかなり強くなったと思う。メアリーにはまだまだ足りないが、そこら辺の大人と全力で戦っても、いい勝負をするだろうと思う程度には強くなった。
予測的な言い回しなのは、大人は俺たちに負けるのを嫌がったのか、腕試し的に戦うことすらも全力で拒否してきた。
そのくせ、難癖や冷やかしにだけは来やがる。暇かよ。馬鹿なことやってねーで働けよ。
スパイルはまだ大人たちからの言葉を心で受け止めているように思えた。でも、大人たちからの冷やかしはまだ耐えていた。
1番可哀想だったのは、昔よく一緒に遊んでいた友達2人からバカにされ、笑われていた時だった。
スパイルが言い返さないのをいいことに、一方的に暴言を、あることないことを叫んでいた。俺が何か言い返そうとするも、スパイルはこれを止めた。
そして、スパイルはこれに加えて、家族からも非難を受けていると言っていた。
その証拠に、一緒に修行をしていると、どこからかスパイルの親がやって来て、スパイルを引きずるように連れ帰る光景を見ることがあった。
それでもスパイルはめげずに俺の元へ、何度も帰ってきてくれた。1度、心配で声をかけたんだ。
リ[大丈夫か?ここに来て、色んな人から色々言われて、]
ス[ふん!この俺が心配か?!あんなのに負けるわけがないだろう!お前こそ嫌ならやめてもいいんだぞ?!]
スパイルはどこか上から目線で言ってきた。こいつ、昔から俺の時だけやたら態度でかいな。
ス[あと、お前といる時が一番楽で楽しいわ]
リ[ハハーン、ツンデレちゃんかー、可愛いやつだな〜]
ス[やっぱ〇すわお前]
だから俺も、もっと頑張ろうと思えた。でも、スパイルはやっぱり無理していた。
/633年/
ある日、俺が少し遅れて集合場所にたどり着くと、そこにはスパイルと、いつもバカにしてくるガキ2人が居た。
ガキ1[お前まだこんなことやってんの?]
がき2[本気であいつを助けようとしてんの?]
2人はいつにも増して、心を抉るような心無き言葉を吐いていた。俺は遠くから聞き耳を立てて、木の影に隠れた。
2[通りかかった時、たまに見てるけど、お前いっつもリューソーに負けてるよな!]
1[才能ねーんじゃねぇの!?]
2[<昼夢>のくせに、魔法の癖に、圧倒的有利の剣相手に負けるとか。
その程度で良く、助けたいだなんて言えるよなー。恥ずかしくねぇの?]
何を見ているんだこいつらは。五分五分だっての。それに、何が恥ずかしいのか分からない。誰かの為に強くなろうとしているのに。
てか、さっきからスパイルは何も言い返さねぇな。寝てんのか?
背中しか見えないから表情も見えず、ただただスパイルは黙って2人の言葉を受け続けていた。
1[いつまでも夢ばっか見てねぇで、そろそろ大人になれよ?]
2[もういいじゃねぇか?もうメアリーのことなんか忘れて、俺たちは俺たちで生きて行けばそれで、]
1[ガキの俺たちがいくら頑張ったって、何も変わらねーよ。無駄無駄。]
2[てか、メアリーて魔透病なんだろ?そんなん俺らの種族じゃ、生かしといてもお荷物だし、このまま『守護者』として死ぬほうが、アイツとしても本望だろ]
この時、胸の内から湧き上がる怒りを感じた。
軽蔑。本気で同じ人間なのかどうかすら疑ってしまう程の、人の心を道すがら投げ捨て、火をつけるかのような発言。
スパイルの手が震えているのが見えた。やり返したくて、堪えているのだと悟った。
1[ぶっちゃけ、リューソーに無理くり付き合ってるだけなんだろ?本当は無理だって、気づいてるんだろ?]
2[そうそう。あんな伝説級の馬鹿に仲間意識持たれて、スパイルは可哀想だな!]
1[てか、お前、ただ利用されてるだけだろ。
お前はリューソーが強くなるための装置的な]
2人の矛先は続けて俺に向けられた。
ここで、沈黙を貫いていたスパイルがようやく口を開いた。
ス[そうだな。俺も自分で何やってんだって思うよ。こんなこと続けたって報われるとは限らないって。全部放り投げて逃げた方が楽なんだって、
俺は被害者なのかもしれない。]
独白するように言うスパイル。本心だろう。最初に誘って、スパイルが一緒に修行をするようになってから随分経ってしまった。心変わりするのも無理は無い。散々周りからも冷やかされたものだからな。
スパイルはここで限界だ。きっと、俺がもっと強ければそんなことを思うこともなかっただろう。自分を殺してまで、無理に戦う必要なんて、あってはならないのだから、
もう、自分の心を殺してまで戦う人を出す訳にはいかない。せめて、スパイルが自然に村に馴染めるように。
そうして、俺は3人の元へと歩き出した。
ス[でも、そん/リ[いやぁー!ついにバレちまったか〜!俺がこいつを利用するだけして、強くなろうとしてることを!お前ら何チクってんだよほんと!]
ス[なっ、]
1[うわっ、聞いてたのかよ]
リ[悪ぃなぁ、遊び相手を奪っちまって。こいつは俺が無理やり修行に連れ回したからなー!お前らくらいの弱いやつのが強くなるために必要だったんでな!]
ス[ちょ、ちがっ!/2[やっぱりそうだったのか!?おかしいと思ったんだ!スパイルがお前なんかと一緒にいるなんて!]
ス[まって/1[この悪魔が、、、お前のやったこと村中に知らしめてやるからな]
そう言いながら、クソガキ2人は走って去って行った。その背中に向かって、俺は大見得を貼り、虚勢を見せた。
リ[あぁ!いいさ!言ってみろよ!まぁ!?お前らのような弱虫が何人結託しようが、俺には関係ないことだけどな!]
そう宣言して、俺はスパイルの顔を見た。スパイルは顔を大きく歪め、顔を左右に振り、体を震わせていた。悪口を本人に聞かれたのだ。報復を怖がっているのだろう。
ス[ち、ちがうんだ!あ、あれは…俺は…!/リ[スパイル]
ス[ッ!]
リ[悪ぃな。今まで無理に付き合わせちまって…
もう、お前の自由に生きろ。無理して、自分を捨ててまで戦う必要は無い]
ス[…!]
俺がそこまで言うと、スパイルは数歩後退りした後、後ろを振り返って走り去ってしまった。
一人ぼっちに戻ってしまった。
だが、あの日、一緒に戦うと言ってくれたあの日に、俺は勇気を貰った。スパイルから貰ったその勇気を無駄にすることだけはあってはならない。
1人になったとしても、俺は夢を諦める訳にはいかない。
俺はそうして、一人で修行を続けた。
でも、やっぱり一人で強くなるためには限界があるのを感じた。今までスパイルと一緒にいたせいだろう。どれだけ体を鍛えても、面白そうな戦い方を閃いても、身体が成長しようとも、それを実感できずにいた。
だから!俺は!
襲撃から村を守る戦いに、参戦することにした!
パ「まてまてまてまて」
リ[どした?]
コ「そっから返事してくるのやめて」
リ[ふぁい…、んしょ…。で、どした?」
タ「どういう生態なんだ、?」レ「考えちゃダメ」
パ「お前、その、メアリー?て子に止められてたよな?来るなって、」
リ「そうだな!」
パ「で、お前何することにした?」
リ「襲撃参戦!」
パ「ふぁー!!!!!」
シ「どういうことなんだってばよ」
ロ「こいつは常識で当てはめてはいけないんだな」
リ「でも、他になくね?大人は付き合ってくんねぇし、友達は居なくなったし、メアリーは頼れねぇし、親父もなんか戦えねぇし、」
コ「一応、理にかなって?るのかな?」
レ「結局、実戦経験がないと戦えない」
タ「実戦に挑めるのすごいなぁ。」
タイトの意識がどこかに飛んでったところで、過去に戻るぜ!
この村にずっと住んでたからか、襲撃があるだろうなって日がわかるようになった。
いつもはうるさいくらいに鳴いている蝉が、鳥が、動物や虫なんかの声が、聞こえなくなる日がある。そういう日は大抵、魔獣が襲撃に来る。
初めて襲撃に参戦した日もそういう、異様に自然が静かな日だった為、確信に近いものを得た。
ただ、メアリーや村の人にはバレてはまずい為、なるべくバレないように、メアリーから遠いところから魔獣と戦い、完全に襲撃が終わる少し前に戦線離脱した。
相手が犬型の弱めな魔獣だったとはいえ、我ながら上出来に戦い勝ち、そして逃げ帰ったと思う。
貴重な経験をした瞬間だった。やはり、修行と本物とじゃ、その場の空気感がまるで違う。どこか安全だと思っていた修行とは違い、実戦では油断するとそれは死を意味するのだと悟った。本当の恐怖心を緊張を体験することができた。
そして、自分に足りないことを。これからも修行をしては襲撃に勝手に参加して実戦を積むことを繰り返すこと数回。
メ[リュー、最近、襲撃が来る度に戦いに来てるでしょ?]
メアリーにバレた。人気のない木の影で、土魔法のダイナミックな壁ドンを喰らいながら俺は必死に知らぬ存ぜぬを押し通そうとした。
リ[な、なんの事だ〜?]
メ[魔力探知にバリバリ引っかかってるから。舐めんな?怒らないから。正直に言って]
リ[はい!実は、一緒に修行していたスパイルが色々あって来なくなったので、自分の成長度合いが分からず、それならメアリーに加勢することを兼ねて、実戦で試してやろうかと思いました次第でございます!]
メ[ふーん…。そう…。
私さ、前に言わなかったっけ?襲撃の時に戦いに来るなって、言わなかったっけ???]
リ[あれ、怒らないって言ったのに…!怒ってますやん!]
メ[誰も助けて欲しいなんて頼んでない]
リ[助けて欲しいとも言えない癖に…]
メ[なんか言った?]
いつものようにちょけようかと一瞬、思ったが、他に伝えるべき言葉が思い浮かんだ。
リ[・・・助けて欲しいと、メアリーが言えないのなら、俺は言われなくても助けに行く。それだけだ!]
メ[……]
メアリーは少しの間俺の顔を凝視した後、踵を返してぶっきらぼうに答えた。
メ[あっそ。勝手にしたら…]
不機嫌にさせてしまった。そんなに助けられるのが嫌なのだろうか。と思ったら、不意に立ち止まって、
メ[お父さんが、襲撃が終わったと同時に私の保護に来るから、その前には、ちゃんと帰ってね]
そう言うメアリーの言葉は、どこか嬉しそうに感じた。
リ[あぁ!わかった!]
襲撃をメアリーと共に戦うことで、メアリーの魔法について色々わかったことがある。
メアリーが患っている魔透病の進行が進むのは、急激に魔力を消費した時で、ゆっくりと魔力を放出すれば進行を抑えることができるということ。
魔力を周囲に撒いているのは、そのためだという。
メアリーは運動神経が悪いのではなく、そもそも病弱体質であったこと。そこまで酷いものではないが、少し走ると咳が出てしまうくらいであった。そういえば昔からそうだった気がする…、
ただ、メアリーは魔法に関しては本当に強かった。こっちが魔法を感知した時には完成してて発射し終わってるし、なんなら着弾してる時もある。
こっちが必死こいて走り回ってると言うのに、メアリーはその場から一切動くことなく、敵を蹂躙している。
本当に、いつの間にかこんなに差が開いてしまったのかと思うほどだった。自分には、足りないところだらけだと言うことを知らされた。
だから、もっと頑張った。メアリーが戦わなくていいようにするために、今まで以上に修行に打ち込み、襲撃に参加して自分の強さを確かめた。
そうして襲撃の戦闘に参加するようになってから、1年ほど過ぎたある日。ついに、やらかした。
/636年8月16日/
その日は、朝起きた時から何かがおかしいと、根拠の無い不気味感というか違和感が頭に渦巻いていた。襲撃が来るのだということだけが、頭の中で理解することができた。
今までで最大の襲撃であるということを添えて。
夏の朝だというのに、外が日が暮れた直後かのように暗い。雲の底面の黒さを見ると、光の届かなさから雲の厚みがかなりのものだということがわかった。雲の流れる速度は明らかに速いと言うのに、雷の鳴りそうな、ゴロゴロという音は聞こえてこない。
夏になれば鬱陶しいくらい鳴いている蝉が、森の奥で囁く鳥が、風によって揺れる草や葉の擦れる音が。
何も聞こえてこなかった。まるで音を消された世界に来たようだった。これが虫の知らせというものなのか。
あまりの異様さ、異質さに普段は無視を貫いていた村人でさえ、少し騒いでいた。外に出ているのは大人だけで、子どもは誰一人としていなかった。おそらく、家から出ることを止められていたのだろう。
俺は不安になって、メアリーの元へと走った。
メアリーの家に着くと、メアリーはまだ家の中にいた。
メアリーは震える手を胸に当てて、深呼吸を繰り返していた。メアリーは俺を見るやいなや、すぐに笑顔になったが、その奥にある不安感が抜けきっていない。
メ(15歳)[お、はよ、リュー]
リ(ほぼ15歳)[……大丈夫、か?今日、なんか、やばい気がする]
メ[そう、だね…。私も、変な胸騒ぎが消えないんだ…。でも、大丈夫、だよ。私が…!何とかする、から。]
こんな状況でも、『大丈夫』なんて言葉を使うメアリーにどこか悲しくなった。
リ[な、なぁ、!メアリー、今日は俺が/メ[リュー]
一緒に戦う、その言葉を伝えようとしたが、2人だけの秘密をメアリーは両親にも聞かれたくはないようだった。
メアリーの両親は、方は片やただ沈黙を貫いて1寸たりとも動かず、片や何かをブツブツと呟きながら両手を組み何かを祈っていた。
この惨状を見てしまえば、そう思ってしまうのも仕方ない。これ以上の不安要素を与えたくないのだろう。
メアリーは子どもで、2人は大人なのに。
募ってはいけないメアリーの両親に対する莫大な嫌悪感が、リューソーの中で積もりに積もる。ただ、もう既に諦めた。今更何かを伝えるつもりにはなれない。
メ父[リューソー君…。すまないが、今日は、帰ってくれないか。]
ここで随分と長いこと黙りこくっていたメアリーのお父さんが口を開いた。告げた内容は、そのまま黙っていろよと、言いたくなる内容だったが。
何か言い返す気にもなれず、俺はそのまま玄関へと歩いた。お見送りにはメアリーが着いてきた。
リ[それじゃ、、お邪魔…しました。]
メ[うん…。ごめんね。ろくにおもてなしもできなくて…]
リ[謝んなって。メアリーは、悪くないよ。]
メ[…。ありがとうね]
玄関の扉を開ける前に、メアリーの方を見た。こんな状況でも、俺の前では笑顔を貫こうとするメアリー。それを見て、言うつもりのなかった言葉を不意に漏らしてしまった。
リ[逃げよう…、]
彼女は今日も戦いに行く。絶対に。震える手を、怯える心を、止まりたくなる足を、己が課した、村が課した責任を背負って、今日も。
行って欲しくない。戦って欲しくない。こんなボロボロになってまで、自分を傷付けてまで戦って欲しくない。可能ならば、俺が代わって戦いたい。メアリーには自分の思うがままに笑って欲しい。
俺は脆く、弱い、幻想めいた欲望が、俺の口から出てしまったことに遅れて気づいた。
リ[ッ、!ご、ごめん!]
メ[・・・]
メアリーは答えない。困らせてしまった。今から戦う人に向ける言葉ではなかった。そのことに申し訳ないと考え直し、慌てて謝り、玄関を開けて外に出た。
扉を閉める直前、最後にメアリーが笑って言った。
メ[待ってて、リュー。私も、待ってるから]
メアリーが発した、初めての助けの声だと瞬時に理解した。
きっと前半は、戦闘が始まるまで待ってて欲しいということだろう。メアリーはこんな遠回しな言葉でないと助けを求められないのだ。
でも、内心嬉しかった。初めて頼って貰えたことが。いつもは、本当は邪魔に思われてるのでないかという少しの後ろめたさが、今日はいらない。助けに行かない理由が無くなった。
俺も覚悟を決めて、メアリーに沿って答えた。
リ[あぁ、待ってる、だから、待っててくれ…!]
・・・
・・
・
家に着くなり、父さんに今日、戦いに行くことを告げた。すると、時は満ちたと言わんばかりの物言いで父さんは立ち上がった。
父[そうか、ならばお前に、伝家の宝刀を授けるとしよう。]
リ[ッ、!そんなものがあるのか!?]
興奮が抑えられない俺に父さんは、収納魔法から1本の剣を取り出して、俺の前に出して見せた。
リ[こ、これが、、、!]
父[あぁ、!3ヶ月前、武器の訪問販売の時に買ったお前の剣だ!!!]
リ[…?伝家の、宝刀?]
父[えへへ、嘘]
俺は静かに中指を立てた。
コ「ブワッハハハハ!」
リ「いやぁ、まじでこの時は親父に殺意湧いたわ笑」
パ「やーい、やーい!お前ん家の伝家の宝刀、3ヶ月物ー!」
リ[3回だけでいいから死んでくれ]
シ「リューソーの性格の理由がわかったね」
リ「どーゆう意味だこら」
リ父[これは、今度の誕生日の時に渡そうと思ってたやつだ。最近、木剣を新しく渡したろ?これはそれよりも少し軽いから、使えぇい]
リ[あ、うん。ありがとう?]
なんか、無駄な緊張が解けた。これが狙いだったのかもしれない。
・・・いや、やっぱりないわ。
剣の試し振りをしながら、俺はその時が来るのを待った。
PM18:45
必要以上の食事と飲み物の摂取に気をつけながら、待つこと日没となった。そして、時は来た。
窓から外を眺めていた俺の前に、1本の火柱が控えめに立った。慌てて外に出て、火柱を見に行くと、それは形を変えて、森の方を指す矢印となっていた。
俺は走った。今までで1番速いのではないかと思う速度で。体力のことも忘れて、父さんに貰った剣を手にしながら。
森に着くと既にメアリーは戦っていた。嫌な予感は的中しており、魔獣の数が今までの比にならないくらいに多かった。犬型、鳥型、虫のような奴、様々な魔獣が森の見えなくなる所まで大量にいた。そして、その1番後ろに親玉と思わしき、熊の魔獣が待ち構えていた。
ここら辺で見たという噂すらない、明らかな捕食態勢に入った熊が、奥で鎮座している。まだこちらに向かって来るつもりは無さそうだが、いつ来るかは分からない。
だが、奴から警戒を解くことはないよう、俺は目の前の雑魚に視線を向け、剣を振るい始めた。
嫌な予感の正体はあの熊だけで、数こそ多いものの、他の魔獣は特に強くなったとかそういう訳ではなかった。
俺が前で大きく動き回り、、メアリーが後ろから魔法を放つ。俺とメアリーは互いに援護しながら、必要最低限の力、魔力で雑魚どもを蹴散らした。
メ[はぁ…はぁ…]
リ[大丈夫か!?息も、それに魔力も!?]
肩で息をするメアリー。体力面もそうだが、魔力の方が心配だった。足りなくなるのではないかと。
メ[大丈夫、!ちょっと落ち着くために深呼吸しただけ!魔力も、村全部を覆ってたやつをこっちに極力寄せてるから、まだ余裕はある、!]
目に魔力を込めて、仲間の魔法に被弾しないように俺は立ち回った。不思議と疲れはなかった。アドレナリンとやらが出ていたのかもしれない。
それに、いつもよりも調子が良かった気がする。足も動いて、頭も冴えていて、気分が良かった。
そして、ついに大量の雑魚の終わりが見えてきたところで、奴が動き出した。
メ[リュー!!]
突然全身を襲ってきた殺気に、俺は本能のままに姿勢を低くした。
バギィ!!
激しい破裂音を立てながら、すぐ側にあった木がへし折られた。
まだ距離があったはずの熊が、いつの間にか目の前に来て前足を振るっていた。完全にこちらを獲物として捉えているその鋭い眼光に身震いしてしまった。
立ち止まっている暇は無く、俺は咄嗟に右に飛んで距離を取った。だが、熊はぴったりとくっ付いているかのように追ってきた。
次に両足を振振り下ろそうとしてきた熊と俺の間に、俺の全身を覆いそうな程の火魔法が生成された。光線上となって熊目掛けて放たれた火魔法だったが、熊はそれを左に飛んで避けた。この熊、動きが速すぎる。
ただ、避けた勢いを止められずその先にあった、隠された尖った土魔法の砲弾を食らった。
食らったはずなのに、熊はそれに怯むことなく、再び距離を詰めてきた。
リ[俺が!こいつを引きつける!隙を見て魔法を頼んだ!!]
メ[分かった!野生動物は火が苦手だから!]
熊に力負けすることは目に見えていた為、熊の攻撃に剣を合わせることを極力避けて、仲間の魔法がどうにか有効打になることを願って、俺は避けることに注力した。
避けるのに剣は邪魔になると思い、鞘には収めずに刀身が剥き出しのまま収納魔法に投げ込んだ。
森の中という、逃げには有利な地の利を活かして、俺は木の陰に隠れつつ、魔法の射程範囲外には出ないように攻撃を避け続けた。何度か攻撃が掠ったりして危ない目にあったが、致命傷にはならなかった。
メ[毒がある可能性があるから!回復と解毒の魔法陣をこっちで用意するから!必要になったら踏んで!!]
リ[分かった!]
俺が逃げてる隙に火魔法をぶち込むことを繰り返し行った。だが、こいつは勘がいいのか、全くと言っていい程、火魔法の直撃を的確に避けた。
埒が明かない。メアリーの魔力の領域がだんだん狭まっているのが見えた。このままでは先に限界が来るのはこちらだと思った。
ここで少し賭けに出て、俺は熊の正面に立った。
メ[リュー!!!]
リ[攻撃は何とか避けるから!俺が上に飛べる何かを作ってくれ!]
熊が左の前足を振るって来るのを、俺はしゃがんで避けた。続けて右足でも攻撃してくるのを、予め設置されていた罠魔法に氷漬けにされて一瞬動きが止まる。
俺は右腕に闘心を全部込めて、どっかで聞いたことのある弱点と言われる鼻目掛けて力いっぱい殴った。
狙い通り鼻に綺麗に当たった。熊は少し怯んだ。ほんとに少しだけ。あまり有効打になった手応えは無く、熊はそのまま右足を振るってきた。
だが、それを四角に隆起させた魔力が込められた硬めの土が、熊の腹にぶち込まれた。さらに、周囲に同じような土の隆起が発生。
俺は前足を右に飛んで避けながら、隆起させられた土を駆け上がり、てっぺんで高く飛んだ。
熊は視線を逸らさずに目で追いかけてきて、追撃する気配を見せる。
メ[ふぅー、]
メアリーは熊の周囲1面を凍らせて、動きを封じた。絶好の機会!俺は上から重力を乗せて、収納魔法から剣を取り出して、首目掛けて振り下ろした。
ガッ、
剣は熊の首を切断するには至ることはなかった。それどころか、剣の半分程しか入らなかった。
重力と力いっぱいの剣。それでも力が足りなさ過ぎた。
バキバキ!
氷を破壊して熊が動き出す。俺はすぐに着地して、最速で左に走った。熊の攻撃を避けることに集中して、熊から視線を逸らさず全速力で。
それが仇となった。
メ[待って!!!]
メアリーの声に俺は進行方向に目をやった。しくった。左斜め前、顔の高さ程度の魔法陣があることに気が付かなかった。そしてそれが発動されていることに。
発動したそれは、火炎放射のような一直線に火を放つ火魔法だった。
夜。暗闇に慣れた目にその光は眩し過ぎた。俺はその光に目をやられた。さらに火魔法を顔面にもろに食らった。
幸いというべきかは分からないが、それを食らっても俺はあまり怪我を負うことはなかった。でも、急な出来事に驚いて俺は転んでしまった。
完全に捕食の態勢に入った熊が、尻もちを着いている俺の目の前に立ちはだかった。
その大きな体で、太い前足を俺目掛けて振りかざして来た。
リ[あっ・・・]
死を悟った。世界がゆっくり流れるように見えた。打つ手も逃げの手もなかった。恐怖も後悔も無く、無の心で俺は諦めた。
メ[やめてぇ!!!!!!]
その時、金切音のような、メアリーの叫ぶ声が響いた。
その後は、何かが一気に起こりすぎて、あまり覚えていない。
耳を塞いでも聞こえてきそうな程の、爆発音が聞こえて俺は意識が戻ってきた。ただ、結果を見ると何となく理解できた。
熊の全身を覆い、動くことすら許さぬ程の厚さ、大きさの氷魔法で凍らせ、15mを優に超える高さの超特大の土魔法をとどめに上から落としたのだ、と。
熊はこの土魔法に潰されて、確実に死んだ。血が飛び散っているため間違いない。
メアリーが使った。使わせてしまった。広げていた領域以上の魔力を。一気に。2度も。
ドサッ、
メアリーが地面に倒れた音が聞こえた。俺は慌てて駆け寄った。メアリーは胸の当たりを抑えながら苦しみ悶えていた。
リ[おい!大丈夫か!?]
俺は気になって、恐る恐る、メアリーの着物の袖をゆっくりと捲った。前見た時は、手だけだったのが肘を超える程にまで侵食していた。
リ[あぁ…!ごめん、!ごめん!使わせちまって!ちゃんと守りきれなくて!]
リ[もう、!終わったから!早く医者に!!]
俺がメアリーを背負おうとした時、つい忘れていたことを思い出させられた。
メ父[メアリー!!!]
リ[ッ!!!]
メ父[なぜ、リューソー君がここに、!]
メアリーのお父さんは、介抱していた俺の腕から強引にメアリーを奪い取った。その目は憎悪を多分に含んだ、敵意の目だった。後ろからメアリーのお母さんがしわくちゃな顔で追ってきた。
メ父[メアリーに、!何をした!]
リ[ち、、ちがぁ、
違わない。俺が間違えた。やらかした。もっとちゃんとしていれば、こうはならかった。
視界がぼやける。涙が溢れてきた。悔しくて、歯がゆくて、言い返す言葉が出てこなくて、涙が止まらなくて。
メ[ち、違う…の。お父、さん、、
私が…弱かった、だけなの。リューは…わた、しを助けよう、と、してくれてた…だけ、だから]
メ父[メアリーは無理して喋らなくていい。]
そんな優しい言葉を娘には投げかけながらも、メアリーのお父さんは俺を睨みつける。
リ父[気持ちはわかるが、そんな目を子どもに向けるものでは無いよ。]
メ父[シオンさん、!
そんなこと、言ってられる場合では、!/リ父[リューソーは純粋な気持ちでメアリーちゃんを助けようとしていただけだよ。
君たちには出来なかったことを恥を凌いでやりぬこうとしていた。]
リ父[誰に何を言われても、ケロッとしているリューソーが人のために涙を流している。そこに、子どもの純粋な心に悪意などあろうものか、]
メ父[…く、!]
俺は内心安堵したのか、さらに涙が止まらくなった。
そして、俺は決心した。前にした約束を守るために、必要なことを。
こんな暗い夜だと言うのに、さすがに心配になったのか、人が集まって来た。色々な憶測や偏見が飛び交う。
俺はメアリーに伝えなくてはいけないことができた。少しだけメアリーに歩み寄った。俺の歩みに合わせてメアリーのお父さんが後退する。いらだちを覚えた。
離れてはいるが、このまま伝えようとメアリーに話しかけた。
リ[メアリー…ごめん。メアリー…俺、俺、!メアリーを助けられるくらい強く、!/メ父[もう、]
メ父[もう、構わないでくれ。メアリーに。もう、十分だ。君に、娘は十分助けられた。もう、いいんだ。
もう、/リ[俺は!!!メアリーに言っているんだ!!お前には!聞いていないッ!!!]
ついに、我慢していた心が決壊した。言ってはいけないとは思っていたが、言わずには居られなかった。邪魔だった。
リ[前に言った、俺が強くなってお前を守るって約束…もう少し、待ってくれないかな?]
リ[何年かかるかわかんないけど、俺、絶対に強くなってみせるから!]
メアリーはゆっくりとこちらを見る。何を言うでもなく、黙って聞く。
リ[俺、旅に出ることにしたから!そこで、色んなやつと会って、戦って、絶対!強くなって帰ってくるから!]
リ[だから!待っててくれ!]
メアリーの目から雫が零れ落ちていくのが見えた。そして、今できる精一杯の笑顔を見せながら、ゆっくりと頷いた。
メ父[無謀だ。そんなこと無駄だ。やめてくれ。
シオンさん、あなたからも何か言ってくださいよ、]
リ父[如何なる人物であっても、諦めない子どもの夢を、壊すことは許されてはならない]
リ父[それに、それを私に言うのかい?この子は私の子だよ?誰に何を言われようが、止まることなんてありえない]
リ父[ブルースターさん、あなたもよく知っているだろう?]
メ父[ッ、!すみません…]
こうして、長く、辛い夜が明けた。ただ、苦しみが終わることはなかった。
次の日、俺は話を聞いた村長から、襲撃に参加することを禁じられた。そして、昨日の出来事の1部を見た村民の何人かが、事実、虚実、憶測、噂、あることないことを触れ回った。
その結果、俺は村中から疎まれる存在となった。道を歩けば、
[厄介者][現実から目を背け続けるガキ][弱虫][目覚めない少年][裏切り者][呪われた子][ホラ吹き野郎]
そんな言葉が俺に振り掛けられた。俺はその言葉の全てを無視した。気に留めるに値しない言葉だと思ったからだ。
嫌がらせ紛いの扱いも受けた。無視はもちろん、水をかけられたり、石魔法を飛ばされたり、色々と受けた。避けるまでもない。俺は無視を貫いた。
だが、無視を続けようとも、村の悪意が止むことはなかった。
/637年4月/
リ[それじゃあ!ちょっと行ってくるわ!絶対、帰ってくるから!寂しくて泣くなよ!?なんてな!]
出発の日、最後にメアリーの家の戸を叩き、メアリーに挨拶をした。昨日も襲撃があって申し訳なく思うが、伝えずに行くのは嫌だった。
メ[行ってらっしゃい、気をつけてね、体には気をつけるんだよ?ちゃんとご飯も食べて、ちゃんと寝て、危なくなったら逃げるんだよ?]
リ[わかってるよ!メアリーは心配性だな〜]
過保護までに心配をしてくれるメアリー。いつも笑顔だったメアリーがその日は、いつもよりも元気が無さそうに見えた。昨日の疲れがよっぽどなのだろう。
少し沈黙のあと、不安そうな表情のメアリーが押し潰すように言った。
メ[・・・それと…ちゃんと、リューを理解してくれる、仲間を見つけてね、]
リ[…。]
リ[へっ!見つけてやるさ!世界は広いんだからな!]
メ[そう…だね。世界は…広い、もんね…]
リ[そんじゃ!疲れてるところごめんな!そのうち帰ってくるからな!]
メ[…か、……で、]
そう言って俺は扉を閉めた。最後に何か聞こえた気がするが、もう振り返りたくはなかった。
村を出る最後の最後まで、俺は村民から罵倒を受けた。
[清々する][目覚めない少年][弱虫が逃げた!][臆病者][裏切り者][帰ってくるな]
出てって欲しいのか、とどまって欲しいのか、どっちだよクソ共が。
村民の中に、やはりスパイルはいなかった。あれからろくに話せないままで今日まで来てしまった。
嫌われているのだからな、当然だ。でも、最後に少しだけ話したかった。
こうして俺は1人で旅に出た。何か、なんでもいいから、強くなったという証明を求めて。
最初はとりあえず速攻で強くなりたかったから、魔獣が比較的強そうな北へ行ったんだけど、まぁ、冒険者になりたてのペーペー。仲間になってくれる奴もいる訳もなく、いや、いたにはいたが、魔法を意図的に使わない<白昼>と知るや否や素っ気ない態度取られたりしたな。
まぁ、そん時俺の夢を理解して、拾ってくれた部隊と一緒に任務をこなしたりして、経験を積んでいた。
で、そこの隊長から、俺ほど本気で冒険者をやってる訳では無いから、本気で仲間を求めるならば、<ダッシュ>の街へ行けって助言を貰ってな。
あと、北と南で魔獣の強さは変わらんらしい。
俺はそいつらに途中まで同行してもらって、そっからは色んな部隊を転々としながら、旅に出て2年以上かけてようやく、<ダッシュ>の街に辿り着いて、
リ「お前らに出会った」
リ「以上が、俺が魔法を使わない、俺の中にある、絶対に折ることの出来ない自尊心だ」
思ったより長かった〜。みんなよく聞いてられるな。こんなつまらん話。
(え、てかコクウ泣いてる!?)
パ「スパイルって、この前あった<領域>を使ってきたあいつだよな?」
リ「せいかーい!」
パ「なんで!」
急に大声を出したパルス。本当にどうした。
パ「なんで、!あいつ、お前の事情知ってたんだろ!?なのに、あんなこと言ってきて!
お前はあんなこと言われて笑ってんだよ!なんで怒らねぇんだよ!お前は、!お前があそこまで言われる筋合いは無いはずだろ!」
鬼気迫るといった表情で立ち上がって怒り出すパルス。そんな大声を上げられるとは。
リ「パルスは、見かけによらず優しいんだな。」
パ「・・・」
リ「・・・怒れねぇよ。メアリーは俺より何百倍も、文字通り、命をかけて頑張ってんだ。
そんなやつを差し置いて、てめえの可愛さ、自尊心が傷付けられたくらいじゃ、怒れねぇよ」
リ「・・・あの時の俺はメアリーに守られてばっかりで、毎日笑えていたんだ。そして今も俺は、あいつに守られている」
リ「メアリーがいるから、俺は強くなれる。どこまでも。必要だって言うなら、俺は山だって斬るし、水面だって走ってやるし、空だって飛んでやる!」
リ「そのくらいの覚悟はできてる!」
パルスはなんで、そんなに悔しそうな顔すんだよ。いつもみたいに笑い飛ばして欲しかった。
リ「スパイルもさ、完全に悪い奴じゃないんだ。ただ、あの村がスパイルを捻じ曲げちまっただけでさ、」
パルスはゆっくりと座り直した。
タイトがめちゃくちゃ何かを聞き出そうな顔してたので待ってたら、勝手に話し出した。
タ「不安、じゃないの?今もその人は戦ってるんだよね?」
リ「不安だよ、本当は今すぐにでも戻って、ちゃんと大丈夫か確認したい。何度も1度帰ろうかと迷った。
でも、まだ俺は弱いままだ。こんなんじゃ帰れない」
そこで、静かに聞いていたシキが質問してきた。
シ「それが、リューソーが階級を気にする理由?」
リ「あぁ…そうだ。やっぱり、焦ってはいるんだ。2年たってもまだ4等星にしかなれなくて…」
レ「強くなるのに、近道はない。それなりの、対価が必要になる」
リ「あぁ、わかってる。分かってはいるんだがなー、」
コ「く゛ろ゛う゛し゛た゛ん゛た゛ね゛…!」
リ「うぉ、泣きすぎてなんて言ってるかわかんねーよ」
ハンカチで涙拭って鼻をかむコクウ。コ「ズビっ、」
ロ「よく、諦めなかったな。村中から色々と言われたのに、旅に出てからも言われたはずだろう?」
リ「そうだな。色々心無いこと言われたよ。
『夢ばっか見て、馬鹿じゃねえの?』とか、『いい加減諦めて現実見ろよ』とかな。まぁ、村の連中と変わんねぇな」
リ「…俺さ、思うんだ。
そいつらもさ、昔は夢や目標があったわけじゃん?」
リ「でもさ、それを諦めるのってさ、自分の限界を感じて諦めたヤツ、ってほとんどいないんじゃないかって」
シ「・・・つまり、周りの視線や環境とかの影響。ってこと?」
さすがシキ。的確なことを言ってくれるじゃァないか。
リ「さすがだ。シキに120点をやろう」
シ「やったー」
話を戻そう!
リ「結局、夢を諦めたやつはさ、追いかけてるやつが羨ましいんだよ。
自分は周りから馬鹿にされて笑われて諦めたからさ。まだやれる、まだ全然諦められないのに、諦めちまったから。
嫌なんだよきっと。目の前で、本気で頑張ってる奴を見るのが、自分にはできなかったから」
リ「でも、そういう奴に限って、宝くじとか賭け事で一攫千金を夢見てる。ただの運試しとか、本気じゃないとか言いながら、当たることを夢見てる」
リ「自分を下げながら言う夢は楽なんだよ。『期待してませんよ』、『本気じゃありませんよ』って周りに公言してんだからな」
リ「俺からしてみれば、大なり小なりあるが、それも同じ夢だ。それなのに、本気でやってるこっちには攻撃してくる」
リ「俺はそんなやつの言葉なんか信用しない。
どれだけ、論理だてて説明されようが、何も言い返す言葉がなかろうが、俺は自分も夢を見ているくせに言ってくるようなやつの言葉を俺は聴かない」
リ「まぁさすがに、死ぬまで夢を追い続けた爺に『その先は地獄だぞ』って言われたらビビるかもだが、」
コ「リューソーは強いね」
リ「まだまだだ。まだ強くならなくちゃいけない」
シ「剣ってさ、鍔が尖ってるよね?
剣身の方を持って頭目掛けて殴ると、めっちゃ強いよ」
リ「なんだそれ、凄そう!」
初めて聞く戦い方だ。シキは本当になんでも知っている。
シ「他にもさ、短剣を隠し持って奇襲とか、武器の投げ方とか、知っていることなら教えられるから」
コ「私も、体の使い方とかは教えられるかも!」
タ「お、俺は!色んな道具の使い方とか?!」
リ「んだそれ笑」
シ「まぁ、だからさ、みんなで一緒に強くなろうよ」
パ「絶対、強くなるぞ!」
レ「そこまでリューソーが言うなら、協力する」
ロ「魔王幹部もいるしな、強くなる環境は十分だ」
コ「今までは1人だったかもだけど」
タ「今は、俺たち、仲間がいるからさ。1人で抱え込まないで頼ってよ」
(メアリー…
俺、ちゃんといい仲間を見つけたよ。だから安心して、今は自分のことを考えてくれ)
・・・俺は、いい仲間を持った。こんなにも、俺のために怒ってくれるやつ、心配してくれるやつ、一緒に強くなろうとしてくれる奴が沢山いる。…魔王幹部?がいるが。
もう十分に、弱音も本音も言った。
さぁ、!あとは強くなるだけだ。
リ「お前ら、ありがとう!」
いつぶりだろうか。穏やかに心から、ちゃんと笑えてる気がする。
リ「お前らが、みんながいるから、俺は強くなれる」
これが、俺の今までの物語と、これからの、物語




