第71話 久しぶりに会うと、なんか知らんけどめっちゃ上から目線のやつおるよな
/639年9月30日/
昼間でも長袖で過ごしやすくなってきた
PM15:00
リ「とうちゃーーく!」
パ「うおぉぉぉぉ!!」
タ「みんなお疲れー!」
村を出発してから3日。特にこれといった問題も無く、見立て通りに次の町である『パイドパイパー』にたどり着いたタイト達。
街は建物毎に色とりどりの色彩を施しており、ごちゃごちゃしたような印象はなく、花畑のような綺麗な印象を受けた。
建物の間を抜ける優しい風が、平和そのものを表すかのようで、どこか温かみを感じる。
タイト達が街に立ち入った西側には、それなりの規模の冒険者協会がすぐ目に入った。
リ「久しぶりに見たな。この、色がごちゃごちゃしてる協会」
コ「街全体が色を基調としているからね...仕方ない」
シ「それでも、他と同じで1色にすればいいのにね」
タ「でも俺なんかは、こういうの見るだけで楽しい」
レ「新鮮」
パ「じゃあ、観光スっか?私も久しぶりに来たしな」
リ「お、いいねー」
タイト達は街に立ち寄ったということで、まずは観光をすることとなり、街を徘徊し始めた。
街の中心、緩やかな坂のてっぺんには、大きな貴族の城が中座しており、街全体を見渡せそうな感じ。
リ「あれが貴族の城か...一生縁なさそうだな」
シ「まぁ、関わることとかそうそう無いよ。」
コ「関わったとしてもロクな事じゃないだろうね」
西側は寺子屋や保育園、病院、宿などの施設が集中して配置されていた。
リ「病院もデケェな」
シ「寺子屋もあるね」
タ「てら、こや?」
コ「勉強を教えてくれるところのことだよ」
街の北側に建っている教会はかなりの規模のものとなっている。しかし、
シ「あ、ここの教会も襲われてる」
タ「でも、もうそろそろ復旧が完了しそうな感じだね」
コ「なんかあれだね。教団の教会だから嬉しい気持ち反面、困った時の避難所とか、受け入れ先が無くなるのは単純に不安だよねー」
パ「表はちゃんとしてるっぽいからなー」
東の方は店が多く、壁一面が硝子張りにして商品を通行人に見せるように置かれるなど、田舎育ちからすれば少し先の未来に来たような気持ちになった。
あと、でっかい煙突型の謎の建物もある。
ロ「全体的に大きいのな」
コ「建物ばっかの中にちゃんと公園とかもあるし、土地が有り余ってるんだろうね」
タ「街に活気があるね」
シ「この街は花卉栽培、観賞用の花を育てるのが有名で、色んなところに輸出してるみたい。金銭的な余裕がある人が多いんだろうね」
レ「そうなんだ」
タ「そういえば、街の外にめっちゃ広い花畑があったね」
パ「あと、もうそろそろ祭りがあるってのも関係してると思うぜ」
コ「祭り?」
パ「例の教団とやらがこの時期に、悪霊や魔のものを追い払うという名目で笛吹きながら、各街で街中を行進するっていう行事があんだよなー」
シ「あぁ、あれか」
コ「そんな意味があったんだね。ただの祭りの音楽だと思った」
リ「まだえいぎょーしてない売店があるのはそういう事か」
タイト達がそんなことを話しながら、観光がてら街をぐるっと見て回っていると、大きめの公園の横に来た。
パ「南側はこのだだっ広い公園があんだよな〜。懐かしいぜ」
シ「野球できそうな広さしてるね」
コ「やる?」
シ「コクウが無双するだけじゃん。いつも」
コ「えへへ、」
シ「褒めてないよ?」
タ「公園かー、初めて見たわ」
レ「私たちの場合、村全部が遊び場みたいだったもんね」
何故か、暗い顔をしながら言うレイを、タイトは公園の方に何となく目を向け、レイの表情に気づくことは無かった。
公園では、複数の子どもが遊具で遊んでいる中、1人の少年が暗い顔をしてブランコに座っているのが目に入った。
漕ぎ出す訳でもなく、降りるわけでもなく、ただただ座って下を見ていた。
タ(どうしたんだろう、)
タイトは少年のことが気になり、そちらに体を向けたが、
タ(さすがに怪しすぎるか、)
あまり不用意に近づくのは、第三者目線的に怪しすぎると思い、その場を通り過ぎた。
街の建物は全体的に大きく、東西南北それぞれに設置されている時計塔はたちの外からでも見える程。また、街全体に多くの家があることから、人口はかなり多いのだろう。
さっきから人がそこかしこにいるもんね。
シ「こんなところかな」
ロ「なかなかに面白そーな街だな」
タイト達は街をざっと一周して、冒険者協会の目の前に戻ってきた。
タ「ちょっと長居しちゃいそう」
コ「この街を去る時は、泣きながら出ていくことになりそうだよねー」
シ「この調子だと、魔王城に辿り着くのに何年かかることになるのやら」
パ「相場はどんくらいだろうな」
コ「ただ旅行するだけならだいたい2年掛からない位で、この世界は回れるっぽいよ」
リ「俺らはまぁ、任務とか受けなくちゃだし。道中とかも魔族はいるからな、少しくらいは仕方ない」
ロ「すこ...し...?」
ローネが神妙な面持ちでタイト達を見つめる。
タ「とりあえずお金が少し心もとないから、近いうちに受ける任務でも受注しようよ」
レ「そうだね」
パ「いい感じのやつがあるといいなー」
協会の大きな扉を開けると、外観から見てわかる通りに中は人が今までの協会の中で1番広かった。また、それに比例するように人が何人もいた。
張り紙の前には人だかりができていて、張り紙の内容を見るのすら困難な程の人の量。
シ「あちゃー、、、これは少し人が減るまで待った方がいいかもね」
コ「やっぱり多いねー」
リ「ここの人の量を見ると、この街に来たって感じするわー!」
?「お?その声はリューソーか!?」
リ「ん?だれだぁ?」
食事処となっている空間の方から、数人の人がこちらに向かって人だかりを避けながら歩いてきている。
?「よおーいて、ちょ、じゃ、ど...いや、そっちにちょま、、」
?「ちょっとこっち押さないでよ」
?「すみません...すみません...ちょっと通ります・・・すみません、」
?「お前ら全員邪魔だー!」
?「狭いのですっ、」
?「・・・よし、面倒だ戻ろう」
?「戻らねぇよ!話しかけといて放置とか、ただでけぇ声出した恥ずかしいやつになるだろうが!」
?「その声も大きすぎるんだよ、丸聞こえだよ」
ロ「・・・かっこつかねぇな」
シ「あはは...人が多いからねー、なかなか抜けて来られないみたい」
その場で待つこと2、3分。人だかりの中から5人の男女が出てきた。?「あれ、エービーいなくね?」?「あいつなら宣言通り、机に戻って飯食ってるぞ」?「あの野郎」
恐らくリューソーに声をかけたであろう人物は、側頭部は刈り上げ、耳ら辺に剃りこみを入れており、リューソーと、同じく赤い髪をしている。目の色は藍色。装いは、薄めのローブを上から羽織り、靴は固そうなブーツ。
動きやすいかと言われたら、そうではなさそうなどちらかと言えば、性格には合わず魔法使いのような見た目。
リ「お前!スパイルじゃねえか!久しぶりだなー!」
ス「よぉ!リューソー、2年ぶり?だなー!」
レ「同じ赤髪、てことは」
リ「そう!こいつは俺とおんなじ村出身の、、、あれ?苗字なんだっけ?」
ス「デイジーな!スパイル・デイジー!」
リ「そうだったそうだった!いやぁ、お前身長伸びた?俺が村出る時もっと身長差あったと思うんだが?」
ス「元々そんなに身長差なかったろ!むしろ俺の方が高かったわ!」
リ「あっはっはー!相変わらず冗談が上手いなお前ー!」
ス「冗談じゃねえよ?!」
昔のことを思い出しながら、楽しそうに笑い合う2人。
リ「こっちの人達は、お前の仲間か?」
ス「そうそう!こいつが、ファーレン」
ファ「ども!ファーレン・ムスカリです!階級は4!」
先程、一際大きな声で不満を垂らしていた少女が1歩前に出た。短髪に整えられた灰色の髪に水色の目。めちゃくちゃ動きやすそうな格好に、獲物を狙うかのような好戦的な目つきをしている。
ス「こいつがマーキュリー」
マ「紹介にあずかりました、マーキュリー・ルドベキアです。僕たちの隊『空兎』の隊長をになっております。階級は個人の方では四等星、部隊の方は三等星です」
身長が少し低めの男の子が1歩前に出て、爽やかな笑顔のまま丁寧な仕草で挨拶する。額の真ん中で分けられた薄い青緑色の髪に赤い目。垂れ下がった目と、ふわふわとした柔らかい雰囲気が少年の優しさを表しているようだ。
だがしかし、
パ「丁寧な口調、常時笑顔、うっ...頭が」
タ「頭にこびり付いた嫌な記憶が、、」
コ「君は何も悪くないのに...体に拒否反応が、」
シ「武器、神技、持ち込み、ゼッタイ」
レ「殺」
マ「ヒェッ...」
初手からこういう笑顔を振りまく相手に嫌な思い出があるタイト達は一気に警戒の態度を示した。
リ「どうしたんだお前ら、」
タ「いやー、ルーザを思い出して、ちょっとね...」
リ「誰だそいつ」
シ「記憶を抹消しているッ!気持ちはわかるけども!」
ス「えと、次いいか?」
コ「あっ、どうぞ」
茶番はさておき、続けて紹介を再開した。
ス「えーと、こいつはナンサー」
ナ「はい!ナンサー・ユキハナソウなのです、!階級は三等星なのです!
『なんくるないさー』で覚えて欲しいのです!」
シ「ほんとにそれで覚えて大丈夫なの?」
左右と後ろで円形に綺麗にまとめられた白い髪と緑色の目。(スプラ〇ゥーンのボブイカちゃん的なのを想像してね。あれ可愛いよね)コ「急に気持ち悪い」ロ「自我出して来んな」
大きめの帽子に小柄な体型の少女。丁寧な口調だが、自信満々な物言いに好感を覚える。あと、意外とお茶目?
ス「そしてこれが、キィスペス」
キ「はい、これ呼ばわりのキィスペス・ケイトウだぞ。階級は四等星だ」
小さく纏められた刺々しい紫色の髪が特徴的な橙色の目をした少年。迷彩柄のマントを身に纏い、比較的軽装な格好をしている。
ス「で、ここには来れなかった、向こうで飯食ってるエービー。エイビーツ・アシ。階級は多分3」
エ「ほごおぐ」
マ「行儀悪いですよ、」
リ「で、さっきからずっと喋ってるうるさいこいつが、スパイル・デイジー。俺の同郷だ」
ス「階級は3だ。よろしくな」
タ「よろしくお願いします!」
少し雑な挨拶で冒険者らしい良さを感じるスパイルと丁寧にお辞儀までするタイト。
パ「私の格上しかいねぇ〜」
コ「大丈夫、大丈夫、!3も4も5もそんなに変わんないって!」
レ「誤差の範囲内」
パ「それがもし誤差だとしたら、だいぶ致命的だろこれ」
そんなことを話している3人を横目に、リューソーが今度はタイト達の紹介を始めた。
リ「次はこっちの紹介だな!こいつはタイト!俺たちの隊長だ!」
タ「タイト・ゼラニウムです!五等星です!よろしくお願いします」
リ「でー、こいつがー((省略))
タイト達の紹介も一通り終わった。
ス「お前ら全員個性的やなー」
リ「お前、自分の仲間を見て言ってみろや」
ス「ハッハッハ、
てか、お前が隊長じゃないんだな?てっきりお前のことだから隊長やるもんだと思ったぜ」
リ「隊長をかけた戦いで負けたからなー、へへへ」
パ「お前が隊長なら、私はこの隊を辞めてたぜ」
リ「へへへ、へ?」
パルス、衝撃(ほぼ周知)の事実発覚に驚きを隠せないリューソー。
ス「へー、じゃあ、お前あの時の夢はもう諦めたんか?」
ス「なんだっけ、世界一の剣豪になるだっけ?」
シ「背中に傷なさそう」
リ「いや?全然諦めてないけど?今も尚、世界一の剣士になるための修行中だ」
ス「へぇ〜、?」
ここで、スパイルはニタァ、と唐突に嫌な予感のする、人を嘲るような笑みを浮かべた。
ス「じゃあ、魔法は使ってないんだな?」
リ「そうだな!」
ス「魔法が得意な種族なのに?」
パ「もっと言ってくれよ〜、こいつ魔法が得意なくせに自尊心だとかで魔法使わないんだぜ〜?譲れるもんなら譲って欲しいぜ」
リ「がはは、残念!これから先も、未来永劫、使うつもりはございません!」
パルスも加担して、リューソーを弄るもリューソーには効果はないようだ。スパイルはさらに続けて、
ス「そんなくだらない幼稚な夢を追いかけて、現実から目を背けて、」
マ「ス、スパイル...?」
キ「どしたァ?やめとけぇ?」
仲間の制止すら無視して、
ス「叶うはずもない夢を目標と言い張って、変えることのできない現状から目を背けて、あの子に無駄な期待をさせといて、裏切って」
ス「村からの、周りからの忠告も聞かずに、村から逃げ出した臆病者がよぉ!」
ス「何楽しそうに冒険ごっこやってんだよ?強くなるんじゃねえのかよ?なぁ?」
ナ「急に、どうしたのですか?」
ファ「ちょっと落ち着け」
何故か、どんどんと熱くなっていくスパイルを、怪訝な表情で見つめるタイト達、それを止めようとするマーキュリー達。
ス「こいつ、村でなんて呼ばれてたか知ってるか?」
リ「、、、」
ス「『目覚めない少年』」
勢いのままに今までの不満を、悔しさを、リューソーにぶつけるように言うスパイルに協会にいる誰もが言葉を失ってしまった。
ほんの少しの間静寂が訪れたが、最初に口を開いたのはリューソーだった。
リ「ああー!それ懐かしいな!なんでだったっけな?いつまでも夢ばっかり見てる俺への皮肉を込めたあだ名だったよなー!久しぶりに聞いたぜ」
ス「……!」
スパイルのわざととも言える程の、公開処刑に、リューソーはものともせずに、逆に笑い飛ばしながらスパイルの肩を組み始めた。
ス「つまんね」
リューソーに皮肉が通じなかったことに、不服そうなスパイル。
ス「なぁ?決闘しようぜ?いまからお前らと俺らで手合わせしようぜ?」
スパイルがなんの脈絡もなく、突然の提案をしてきた。
リ「お、いいね〜!やってみようぜ」
ス「決まりだな。そうと決まれば、早速部屋に入って準備だ」
リ「しゃあ!気合い入れて行くかー」
ス「行くぞ」
マ「あ、まっ、すみません!」
提案を受け入れ、マーキュリー達が謝罪をしながらスパイルの後を追う。ファ「どうしたんだろうな?」ナ「男の子なのです。そういう時期なのです」
リ「さーて、俺達も準備するかー」
シ「その...大丈夫?」
リ「・・・あぁ、さっきのか?大丈夫大丈夫。あいつが言ってんのは嘘じゃないし」
タ「それでも、」
リ「気にすんな。あいつは昔からああなんだから。
でも悪いやつじゃないんだよ」
パ「お前がそう言うならいいかあー」
ロ「頑張ってこいなー」
仮想空間用の部屋に入って、準備を進めるタイト達。
リ「いいか?他のやつは知らねぇけど、スパイルの得意なのは魔法だ。それも、魔法罠設置型の魔法使いだ!
神技は<螺旋>。流動体を螺旋状に動かすことができるようになる神技だ。速度も範囲もあいつが決めれる。
まぁ、ここら辺は自慢癖のあいつなら勝手にネタばらししてくると思う」
シ「罠設置型か、、常に目に魔力を集中させとかないとね」
コ「それでも慎重に戦わないとね」
レ「ほかも警戒しないと」
タ「なんか、色々釈然としないけど、やるからには勝ちに行こう」
リ「だな!」
パ「がんばろー!」
タイト達はそう意気込んで、布団に横になり、仮想空間へと意識を落とした。




