第64話 消えないモノ
/639年9月13日/
夕日が沈み、移ろいで行く季節に肌寒く感じてくる頃。
PM19:00
湿地帯を抜け、コクウの確認により明日の午前中には木々を脱出できるかというところで、タイト達は野宿の準備に取り掛かった。
タイト達は寝床を生成し、水浴びを順番に済ませ、夕飯を作り始めた。
夕食の準備が終わり、さぁ今から食べるぞ!というところで、シキが真剣な表情でみんなに声をかけた。
シ「・・・みんな、戦闘態勢に入って」
杖を取り出しながら、シキが周囲を見渡す。
タ「既に囲まれてるね」
コ「数は...8人、か」
魔力探知で敵の大体の配置と数を割り出す。
リ「ついこないだ来たばっかりなのにな」
パ「晩飯はお預けかー」
リ「食前の運動で腹空かせるか」
レ「・・・」
各々武器を握り、構え始める。
ロ「ちゃっちゃか、カタをつけてこい。私はここで待ってるから」
コ「ちょっとくらい手伝ってくれてもいいのに」
ロ「お前らでなんとかなんだろ」
ローネはそう言うと、その場で座り込んでしまった。
シ「・・・みんな、気をつけてね」
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*視点 戦闘時*
リ「来る!」
ある地点から、白い何かが急速に肥大化しながらタイト達の方へと近づいて行く。
パ「煙幕!」
シ「下がって!」
シキが煙幕をかき消そうと、風魔法で対抗するも、肥大化し続ける煙幕の前ではあまり意味を成さず、逆に広がってしまう。
コクウが咄嗟に無言で、煙幕に向かって右手をかざそうとした瞬間、
ガキィ、!
コクウの後方から奇襲してきた敵をコクウはわかっていたかのように、見ることなく収納魔法から剣を取り出しながら防いだ。
敵は、初めて襲撃された時と同じく、真っ黒の服で身を包み、目元だけの仮面をつけていた。
コクウは両手で剣を振ってきた敵との鍔迫り合いに、左手1本でピクリとも動かさずに止め続け、ゆっくりと敵の方を振り向く。
コ「そう...知っているんだね、」
そう言ったコクウの目は、背筋が凍りつきそうな程に心底失望した目をしていた。
その間に煙幕はタイト達を飲み込んでしまった。当たりを見渡しても、1寸先も見えない煙の中。
タ(狙いは、分断か!?)
タ「みんな!あんまり離れないで!」
リ「隊長!既にパルスが単独で瞬間移動してしまっています!」
タイトの咄嗟の声掛けは手遅れだったようだ。
タイトが自分を中心に、全方位に風魔法を放つも煙幕が広範囲に広がっているのか、やはり何も変化がない。
キィン!
金属同士がぶつかり合う音が近くで鳴り響く。続けてリューソーの大きな声がタイトの耳に届く。
リ「すまんタイト!視界悪すぎるから一旦出るわ!」
煙幕の中での戦闘は厳しいとのリューソーからの報告。また、金属同士がぶつかり合う音や、低く鈍い打撃音がそこかしこで増えていくのをタイトは実感して、少し考えた後、
タ「〜〜、わかった!全員!一旦煙幕から出て、合流出来たらする流れで行こう!」
シ「了解!」
リ「ああ!てことで死ねやァァァ!」
タ(治安悪っ)
普通に敵側な発言をして戦いに臨むリューソーに、少々驚くタイト。シキも接敵したのか、近くから足音が遠のいていくのが聞こえる。そんなタイトの頬を掠めて氷魔法が前方から通り抜けていく。
カァン!
タイトのすぐ後方で氷魔法が何かにぶつかった音がする。タイトが振り返るとそこには剣を振りかざしてきていた敵の姿が。
氷魔法が剣の軌道をずらしていなければ、ここでタイトはやられていたと思う程、スレスレのところに敵の剣が振り下ろされてきた。
タ(みんなの心配するよりもまずは目の前の敵から)
タ「2人は、渡さない!」
敵「2人、?」
タイトは目の前の戦闘に集中することに決めた。
タイトはまずこの煙幕を抜けるため、今タイトが向いている方向へと全力で走り出した。敵からの追撃をなんとか避けながら、木々の合間を走ること数十秒。タイトはついに煙幕から出ることができた。
ただ、案の定周りに仲間はおらず、なおも接近してくる敵を1人で倒さなければならない。
躊躇なく、真正面からタイト目掛けて煙幕から飛び出て攻撃してくる敵。
タ(しかしまぁ、改めて気配を探ると、どいつもこいつもとんでもない殺気してんな)
本気で殺しに来ているのが肌で伝わってくる。
敵の剣を刀で受け止めては、攻撃、止められては、防御と、やや押され気味に攻防を繰り広げてるタイト。
敵の対人用にも思える戦い方、無駄も隙もない動きにタイトは、取り返しがつかなくなる事態になる前に1度、土魔法を敵の後方から放ち、敵がそれに気を取られているうちに離れて距離を取った。
タ(気を取られると言っても、一瞬だけそちらに剣が振られるだけだがな。)
距離を取ったタイトは木々の間を蛇行し、剣を満足に振られないようにしながら、魔法で牽制しつつ攻撃の機を伺う。
敵は魔法を掻い潜りながら、走って距離を取るタイトに追いつき、タイトの背中目掛けて剣を振り下ろす。タイトはギリギリのところで右から左へと振るった刀でそれを弾く。
そのままの流れでタイトは左下から逆袈裟の方向へ、頭の上からやや斜め気味の振り下ろしで連続して敵に切りかかるも、敵はぬるりとタイトの攻撃を避ける。
しかも、避けつつ回転で力を増しながら攻撃へと転じてくる。
タ(これはやばい避けれん!)
防御しようと刀を構え直していたタイトだが、敵の攻撃に間に合いそうにない。
タイトは咄嗟に足から土魔法で壁を作り出し、ギリッギリで敵の剣を止める。
ガキィン!
敵「ー!」
タ(今じゃあー!)
剣を受け止められ、無防備となった敵の胸に向かってタイトは容赦なく、刀を左から水平方向へ振るった。
敵は左手の手のひらでそれを止めようと手をかざしてきた。
タイトは敵の左手が刀に触れて、左手ごと切り伏せようとしたその時、
シュン、!
タイトの両手から刀を握る感覚が無くなった。
タ(あれ、手の感覚が...)
否、敵を切り付けていたはずの、左手を切り落とすはずだったタイトの刀が、消えた。
タイトが状況を完全に把握する前に、敵は攻撃を仕掛けてきている。
タイトは咄嗟に足から風魔法を放ちながら後方へと大きく飛ぶ。
タ(刀が、、、無い!?)
理由は明らかに敵の手が触れたことにあるだろう。タイトは気に入っていた刀を突然失い、何を思ったのか、
タ「あのー、俺の刀、知りません?どこへやりました?」
少々残念そうにしながら、敵に直接聞き始めた。これには敵さんも理解できないと言った表情。
敵「どうせ今から死ぬのだ。教えたところで意味は無い。」
タ「さいですか」
冷たくあしらわれてしまったタイト。
タ(かーたな、とられーちゃったーよー。)
タ(戻って来るかどうかくらい教えてくれてもいいだろ!!不安だろうが!)
そんなことを考えても、敵の攻撃は止まない。敵はタイト目掛けて接近してくる。
タイトはすぐ側の木を相手との間に挟むように一旦隠れた。が、敵がその木に素手で触れるのが見えた。
タ(また素手で触った)
と思ったら、敵とタイトの間にあった木が突然姿を消し、バッチリと目と目があってしまった。敵は既に剣を上から振り下ろして来ていた。
タ(このドキドキ、もしかして...恋?!)
・・・
タ「危険が危ないッ!!!」
タイトは足から魔力を流し、1点が勢い盛り上がるように地面の形を変えて、敵の振り下ろしてくる手を、剣がタイトに触れる前にぶち当てて剣を止める。
さらに右手にアイハブア火球、左手にアイハブア水球、オーン、水蒸気爆発でお互いに後方へ吹き飛ぶ。
タ(死ぬかと思った)
そんなことも考えてられないうちに敵は体勢を立て直して来るだろう。タイトは刀のことは一旦、頭から消して、記憶の隅において、やっぱりすぐ思い出せるところにしまっといて、次について考え始めた。
タ(これ人が触れたら死ぬんかな?だとしたら即死級の最強神技になる訳で、そうでないと信じたい。
近距離は触れられたら消される手前、もう剣とか短刀とかは使わん方が良いな)
タ(ということは魔法主体での戦闘か。懐かしいなー最近は刀主体ばっかだったからな〜。ちいせぇ時以来かー。あ、そういえば昔誕生日に貰った杖が...あった!)
タイトは収納魔法から、10歳の誕生日の時に貰った魔法の杖を取り出した。
タ「さて、やりますか」
タイトが魔力探知で敵の位置を特定。敵はゆっくりとタイトに近づいてくる様子。姿を見せた敵は殺気はありつつも、今すぐに襲ってくるという様子では無く、なにか語り始めた。
敵「なぜ、抗う。?死んで、消えて無くなれば全てが楽になるというのに。君にとって死とは、救済でもあると言うのに、」
タ(なんだこいつ、思想強、怖、)
敵「無駄に抗うから痛みを知る。嫌な記憶があるから苦しみが伴う。意地汚く生きようと足掻くから恥をかく。」
敵「私の神技では、痛みも、苦しみも、恥も、消すことは出来ない。だからお前の存在を消して、楽にしてあげようと言うのに、なぜ、拒む?」
ボソボソと、それが正しいことかのように、自分の考えをうるさく押し付けてくる。
タ(こいつ、若そうな癖して何を知った気でいるんだか。気に食わねぇなー)
タ「馬鹿め。いや、カバめ」
敵「なんだ...カバ?」
タ「痛みがあるから人は学ぶ。苦しみがあるから人は分かち合える。恥をかくから人は成長し続ける。」
タ「俺は、どんなに無駄だろうと、意地汚かろうと、嫌な記憶も全部背負って、今を必死に足掻いて生きているやつが一番かっこいいと思うけどな」
タ「本当は消したいものかもしれない。けど、その経験があるから、俺は今ここに立っている。俺の存在を証明してられる」
タ「死なねぇよ、俺は。俺が満足できる結果に辿り着くまで。俺は絶対に死ねない。それに辿り着けるのなら、俺は何度だってやり直せる」
タイトの長文反論に敵は少々戸惑っている様子。やがて、まとまりが着いたのか、敵がポツポツと話し始めた。
敵「そうか、そうか。恥を覚悟で生きると言うのか。良い考えだ。存在の証明、実にいい。
・・・ここで俺に勝てるなら、の話だがな」
流れ変わったな。敵の殺気がさっきよりも増してタイトに向けられる。
敵「貴様の存在意義も、生きたという証も全て消し去ってやる」
タ「上等だ。消せるもんなら消してみやがれ」
タイトは杖に魔力を通し、手始めに氷魔法で先制攻撃を行った。敵はそれを走って距離を詰めながら、左手で触れて消す。
タ(移動速ぇなこいつ)
敵はタイトとの間に10m強あった距離を一瞬にして、剣の射程範囲まで詰めてきた。大きく足を踏み出して、タイトに向けて剣を振るい始めたところで、タイトは会話の時から準備していた無数の氷魔法を頭上から一斉照射。
タイトは照射と同時に杖と左手で風魔法を思いっきり放ち、後方へと飛びつつ、敵の勢いを完全に殺して逃がさないようにした。
敵「ちっ、」
刹那、敵は瞬時に剣で自身の左腕を浅く切りつけた。
パリン、
氷魔法が着弾する直前、硝子が割れるような小さな音が鳴った。次になった音は、敵の断末魔でもなく、氷魔法が地面に衝突する音でもなく、無数の氷魔法が粉々に砕け散る音だった。
上から降り注ぐ氷魔法を敵は、5本のグネグネと生物的に蠢く赤い触手のようなものを鞭のように扱い、全ての氷を叩き割った。
先程自分で付けた左腕の傷口から生えた、腕程の大きさの触手。その全ての先端をタイトの方へと向ける。ゆっくりと顔を上げた敵の目は赤く厭らしく光って見えた。
タ「珈琲しか飲めなそうな見た目しやがって」
タイトは風魔法の弾丸を敵に目掛けて連射する。敵は触手で自分の身を守りながらも、正面からゆっくりと歩いて、確実に近づいてくる。
風魔法が着弾した触手は、表面は貫通するも、まるで水の中に石を投げたかのように、勢いを殺され、直ぐに触手の中で止まってしまっていた。さらに、触手は穴の空いた部分も瞬時に均すかのように修復される。
タ「無理そう」
タイトはちまちました攻撃は無駄と判断し、今瞬時にできる、ありったけの魔力を込めて火魔法の特大の玉を投げ飛ばした。が、それも触手の一振によって、軽々とかき消されてしまった。
敵は火魔法を消すと、タイトが魔法を準備する暇を与えないと言わんばかりに距離を詰めてきた。
なんでも消せる左手を伸ばし、5本の触手を縮こませた体勢でこちらに向けて、殺意マシマシで近づいてくる敵。
タイトは魔道具であるローブの前部分を右手で掴んで広げ、掴んだまま波立てるように回転して、自身を相手から隠すように空気抵抗を利用して大きく広げる。
すると、見た目よりも大きく、大きく、広がってゆくローブはたちまちタイトの全身を見えなくするほどに大きくなった。
敵は大きく広がったローブにお構い無しに、5本の触手で貫通させてタイトに攻撃を試みる。
ドドドドド!
触手は地面に突き刺さった感触はあるも、タイトに触れた感覚はない。敵はそのままの勢いで左手でローブに触れて消した。
消えたローブの向こうで、タイトはギリギリの体勢、触手の絶妙な隙間に立って、上体を反らして回避していた。そして、ローブを消されることを予測していたかのように、右手の拳で殴りかかっていた。
敵の顔面目掛けて殴りかかったタイト。敵は冷静にタイトの右腕に左手で触れた。
シャン、!
タイトは何が起きたのか、理解ができなかった。触手を全て使わせて殴りかかっていたはずなのに、左手で触れられた瞬間、敵の触手はこちらを迎撃する体勢に戻っていた。
タ(???)
タイトの拳の勢いは止められない。敵はタイトの右腕を触手で過剰な力で弾き飛ばし、右手の剣でタイトに袈裟斬りで切りかかった。
タイトは咄嗟に左手から杖を介して、突発的な風魔法を放って、自身の体を少しでも後ろへと押し出す。
ザンッ
無防備状態のタイトはその剣を左肩を少し掠め、少量の血が流れ出た。
敵「無駄なことを」
敵は左腕の触手で薙ぎ払うようにタイトの体を吹き飛ばした。
ドゴォ!バキッ!バキッ!
左腕1枚の紙防御で軽々と吹き飛ばされたタイトは、その勢いで木を2つほど貫通してようやく勢いが抑えられて、地面に転がる。
タイトはズキズキと痛む左肩に治癒魔法をかけながら、直ぐに立ち上がる。そして、魔力探知で周囲を警戒しながら考える。
タ(時が、飛んだ?)
タイトはタイトの動きだけが、意識だけが止まったとしか言えないようなあの状況をもう一度思い出す。
敵の能力は手で触れたものを消す能力。タイトが最初に危惧していた、存在を抹消する即死級の神技では無いことは確定。
タ(能力の詳細は触れたものを一定期間消す能力?消した対象によって消せる時間に差があるのか?)
タ(とりあえず、刀は返ってきそう。やったぜ!)
敵が完全に準備しきれていなかったこと、周囲の環境からして、おそらくはタイトが1度消されてからはそう時間は経っていないだろう。せいぜい2、3秒と言ったところ。
タ(ただそれでも、消されるのは致命的な攻撃を受ける可能性がでかいから、警戒した方がいい。)
敵の気配が近くなってくる。タイトは頭に痛みを感じ、ふと、額を指で撫でて見ると、指先に血がベタっとくっついた。
タ「うわ、てか左側に血、めっちゃ着いてる。肩だけでここまでならんから、どっか怪我してんな。
今は痛くないから後ででいいや」
タイトは顔に付着した血と土を水魔法でサッと洗い流しながら、頭部にも治癒魔法をかける。
タ(触手、どうにかしねぇと。あまりにも厄介すぎる)
攻撃、防御のどちらも熟す、操作性、自由性に富んだ強強な武器。
しかし、対処法を考える暇すらなく、相手は詰めてくる。
タ(対処法わからん!電気魔法でなんとかなるだろ!)
タイトはまず、敵の視界を塞ぐため、もしくは足を止めさせるために、避けられない程度の広域な水魔法の壁をぶっかけた。
敵は足を止めて、即座にそれを1本の触手で水の壁を割った。
タ(まぁ、あんま意味ない、、お?)
ボタボタッ、
なおもタイトに向かって剣を構えて走り出す敵。先程水を割ったであろう触手から、ポタポタと雫が止めどなく滴り落ちるのが見える。
透明な水では無い。明らかに赤色に変色した雫が触手から垂れ落ちている。よく見れば、その触手は半分から先が無くなっており、再生できていない様子。
さらに言えば、滴る雫も水魔法による雫ではなく、血であることが分かる。そこでタイトは気づいた。
タ(この触手、血でできている!吸血鬼的な感じの能力的な!?)
タイトはひとまず、右手1本で振りかざしてくる敵の剣を左腕に電気魔法を流して見せて、ギリギリで自主的に止めさせた。
敵「小癪な、!」
続けて右手で風と水魔法を操って渦状の巨大水鉄砲を作り出し、敵に向かって放った。敵はそれを、既に再生出来なくなった触手ともう一本の触手で受け止めた。
タイトの予想通り、既にボロボロの触手は消えてしまい、もう一本の触手も根元しか残っておらず、こちらも再生できていない。
タ(勝機!雨降らせたるわ!)
タイトは予想的中に気分上々、自意識過剰、発想即実行!
タイトは足元を温め、上空を冷やそうと魔法を操作しようと思ったがめちゃ滅茶に時間かかりそうなので、大人しく上空から上に向けて水魔法を放つことに留めることにした 丸
それを察知した敵が急に焦りだした!!すんごい形相で剣を振り回しながらタイトに近づく。タイトは敵の剣には氷と土の盾を剣の軌道上に生成し、消す間を与えずに防御する。左手の神技だけには細心の注意を払い、念の為に大きめに避ける。
降り注ぐ水に触れて徐々に溶けて流れて行く血の触手。逆にタイトは氷の盾が生成しやすくなるため、雨が降れば降るほど、タイトは有利になっていく。
敵の触手が腕から完全に見えなくなった。
ここで敵は完全に有利が無くなったことに焦ったのか、勝負を決めるためにタイトのすぐ目の前まで素早く近づいてきた。タイトはそれに目くらまし目的で超大火球で迎撃を試みるが、左手で消されてしまう。
敵は右手1本で剣を上に振りかぶって、左手はタイトの方へと伸ばし、そのまま今までよりも大きく足を踏み込んだ。
夜、水によりぬかるんだ土。一見では見分けることはできないだろう。タイトは自身のすぐ前の地面に水と土魔法で泥沼を生成していた。
ドプン、
左足を膝の高さまで浸かった敵は大きく体勢を崩す。それでも敵は諦めずに、左手を伸ばし続けた。隠していた触手をギリギリまで近づけるため。
一瞬であれば、触手は水の雨に打たれようとその形を保っていられる。敵はその手を伸ばし続ける。
ただ、性格の悪い2人から英才教育を受けていたタイトは、警戒を怠ってはいなかった。
タイトは微かに傷口から意志を持ったように動く触手を見逃さず、焦ることなく、自身の体の前で杖の先端に左手を触れて、ゆっくりと左右に広げる。
水魔法の薄い膜のようなものを生成しながら広げたそれに、敵は気づかずに手を突っ込む。
一瞬、勢いよく飛び出た触手はタイトに届く手前でその元気を失い、溶けだす。
敵「消えてなくなれぇぇぇぇぇ!」
敵はそれでも左手でタイトに触れようと伸ばし続ける。タイトは自身の左手を収納魔法にそのまま腕を突っ込み、敵から伸ばされた腕には、右手で持つ杖で
コツン、
と軽く触れた。瞬きの間だった。
左腕から左半身へ至るまで、タイトは敵を一瞬のうちに氷魔法でガッチガチに凍らせた。
敵の執念は凄まじかった。敵はそれでも止まることなく、残った右手で剣を振るい続けた。
わざと残されたとも知らずに。
タイトは左手に腕輪を装備した状態で収納魔法から腕を引き抜き、それに魔力を流す。
音もなく生成される半透明の盾で、タイトは裏拳の要領で敵の剣を強めに外側へと弾く。
左足から火と風魔法の超高温の熱風を放ち、敵の氷を溶かしながら、左足を敵に向けて、大きく踏み出した。そして、杖にありったけの魔力を込めて電気魔法を集中させて、杖で刺すように敵に向けて殴りかかった。
熱風により溶けだした左腕でタイトに触れようとしたその腕は、タイトの右足から地面に流された魔力によって形を変えた土が弾き飛ばす。
完全無防備。敵の動きを、執念を未来予知程の精度で予測していたタイトがその手に勝利を収めた。
敵「がぁぁぁぁ!!!」
響き渡る断末魔。
タ「ふぅーーーっ、」
タ(疲れた。でも、みんなの、助けに行かなくちゃ)
生きてはいるが、動かなくなった敵。仲間の加勢に行こうと、歩き出したタイトの背後に揺らめく黒い影。
?「フフ、
やーっと見つけた」
その人物は静かに、大きく息を吸い込んだ。
次回も今回ほどじゃないが、戦闘してるところを書くつもりです!
頑張るぞぉぉぉぉ!




