第59話 ざーんねーん、2億年早いっつーの
/639年8月18日/
ロ「お、!おかえりー。惜しくもなく、普通にボコられてたなー」
パ「はっはっは!最後死んだフリからの奇襲を試してみたが、瞬殺されてしもうた」
仮想空間から出ていくと、ローネがニヤついた表情で話しかけてきた。戦闘後だと言うのにまだまだ元気そうなパルス。
タ「いやぁー、最後ちょっと惜しかったと思ったんだけどなー」
ロ「あれは正味、私もいけると思った」
タ「なんかね、気づいたらね、首と胴体がさよならしてた」
ロ「わろた」
タイトの奮闘に何故かご満悦なご様子のローネ。ただ、すぐあとにその他の方を見て、
ロ「あと、お前らなんで、最後全員で寝転んでんだよ」
パ「神技を短時間で使いすぎた」
リ「気づいたらこっちに戻ってきてた」
シ「あれはちょっと、仕方ないかなー?」
コ「どうせなら、ぶちかましたかった」
そんなことを話していると、ジョーカーも仮想空間から出てきた。
ジ「シキ君もコクウちゃんも見ないうちに、かなり強くなったねー」
シ「言葉は嬉しいけど、先生に手加減させているうちはなー」
リ「あれでも手加減されているのか...やはり最強。底が知れねぇぜ!」
パ「本気出したら一体どうなっちまうんだ」
まだ見せぬ隠された力に大興奮のリューソー。そこへタイトが圧をかけるような声でジョーカーに話し出した。
タ「ねぇ、ジョーカー、レインに言うべき言葉があるのでは?」
ジ「なんの話でしょう」
タ「レイに向かって、匂いだの息遣いだのなんだの言ったみたいだね。女の子に向かってそういうこと言うのはどうなんですかねぇ」
ジ「...え?、あ...!あー、あははー、
それはねーちょっとねー、戦ってる時は思ってもないことを口にしちゃうと言うか、なんと言うか、」
タ「・・・」
笑ってはぐらかそうとするジョーカーをタイトが冷ややかな目で見つめ続ける。その空気に耐えきれなくなったジョーカーはレイに謝罪した。
ジ「ごめんね、レインちゃん。あの時は足跡と、ほんのちょっとの気配だけで察知しただけだから。言ったことほぼ嘘だから、ほんとにごめんね」
レ「・・・いいよ。ただ、」
ジ「ただ?」
レ「ううん。ただ、饅頭と今日の夜ご飯、楽しみだなー、っておもって」
ジ「くっ!お、仰せのままに...!」
今日の夜はジョーカーの奢りが決定したそうです。みんなもその場のノリと勢いで言っちゃうと、とんでもない事になるかもだから気をつけよう!ジ「この前負けたばっかなのに...お金、下ろすか〜」
リ「ぶははは!こんな情けない最強を見れるとは!お前ら強すぎんだろ!」
ロ「最強とやらも、2人の深い愛情には勝てなかったか」
パ「賭博にも負けてるしな」
コ「あ、てかジョーカー。最後、あれ使ったでしょ?」
タ「あれって?」
シ「人を先生の気で気絶させる技だよ」
レ「覇〇色?」
リ「最後なんか倒れたのはそれのせいか!」
タ&パ「「何それ?」」
ジ「・・・こんな風に、個人差があるからあんまり使わないんだけどね」
コ「卑怯者め〜、私とシキが耐えれないの知ってたでしょ?!」
最後までやり合いたかったコクウは不満をジョーカーにぶつける。
ジ「いやね、みんな一旦気絶させてから、最後にちょっと色々教えたりしようかなと思ってたんだけどね。
タイト君に効果なくてそのまま突っ込んできてね。おじさん焦って咄嗟にタイト君の首撥ねちゃった」
タ「撥ねられました」コ「効かないの羨ましい」
ジ「タイト君抜きにするのも可哀想だから、泣く泣く全員の首も落として、今に至るってわけ」
レ「泣いてないし、むしろ嬉しそうに笑ってたよ。花御が領域展延を解いた瞬間の五条悟位笑ってたよ」
ジ「人を猟奇殺人鬼みたいに言わないでよ。あれは成長が嬉しくて笑ってたのさ。
まさかそんな、『青二才が、僕に勝とうだなんて2億年早いわ』とか思ってないからね?」
タ「考えてないと出てこない台詞ですねえ」
と、ここでタイトが思い出したかのようにジョーカーに質問を投げかけた。
タ「あ、そうだ!話変わるけど、電気魔法を刀に纏ってたのに消えたのなんで?ジョーカーなんかした?」
ジ「あれね。あれはねー、僕の神技だよ。」
タ「おおー、あるんだろうなとは思ってたけど、聞いたこと無かったわ」
ジ「言ったこと無かったね。君たち、結構自分と、身近な人以外どうでもいい感じだったからね」
タ「俺たちというか、『そんなん知らん!はよ着いて来い!』って連れ回してきたやつが居たせいだな」
誰のせいやろなー。そう心に思いつつ、笑いながら遠い目をする3人。
ジ「<裁断の剣>と言ってね、大体なんでも切れる程度の能力だよ。」
リ「なんかふわっとしてんな」
ジ「この能力で、普通じゃ切れないモノも切れるし、構築された魔法と神技も切れる」
タ「なるほど、そういうことだったのか」
ジ「ただ、これは何かしらを切れる道具を持ってないとダメなんだよねー」
コ「拳縛りの時ぐらいでしょ、発動できないの」
ジ「へへ、まぁねー」
その後も、ジョーカーによる質問返信や反省会、助言などが行われた。ジ「レインちゃんは透明の時、少し殺気が漏れ出てるよ」レ「善処する」
シ「先生はいつまでこの街に居るの?てか、なんでこの街に来たの?」
ジ「明後日にはこの街を出る予定だよー。
で、この街に来たのは、最近『フィフティ』の街近くの死災、『絶零』が領域を広げてるとの情報が入ったんだよねー。
だからその領域を縮めるために近寄って圧かけに行く途中にこの街に寄っただけだ!」
ドン!という字幕がでかでかと書かれそうな勢いのジョーカー。((ドォーン!))シ「約束破ったら偉いめに合わされそう」パ「ロッカー、アリの巣、マンション、約束の祭日、長距離通勤」リ「作品屈指のトラウマ回を思い出させる詠唱やめろ」
ジ「みんなはいつまでこの街に居るの?」
タ「最近めちゃ暑いから、少し涼しくなるまで滞在しようかなと、」
ジ「あー、確かにね。最近ほんとに暑いもんねー。僕はお構い無しだけど。動いてられないくらいの暑さだよねー。僕は任務絶対強制だけど。休める時に休んどきな。僕には休みなんてほとんどないけど。」
コ「ウザすぎる」
レ「私たちに言われてもどうにもならない」
ジ「冗談だよ、、、2割」
パ「ほぼ本気だぞ、それ」
心外、!と言いたげな表情をしているジョーカーを殴りたい気持ちをそっと抑えた。
ジ「夜までまだ時間あるね。」
シ「昼もまだだもんね、」
ジョーカーの言葉に時間を確認すると、あと数十分で昼になるといったところであった。
ジ「一旦解散するか。で、17:00にもっかいここに集合してご飯食べに行こう。」
タ&シ「「了ー解」」
ジ「夜ご飯の時、僕はお面を外していくからさ、名前で呼んでね?めんどくさくなるから」
リ&パ&コ「サーイエッサー」
ジ「さーて、ちょっとお金増やしに行くかー」
減るだけやぞ、という言葉は、彼に言っても届かないのだろう。
その後、タイト達は昼ご飯をみんなで食べた後、各々自由行動を開始した。タイトとレイは必需品と食材の調達。シキとコクウも途中までタイト達に同行し、必需品を購入したところで2人と別れた。リューソー、パルス、ローネは続けて仮想空間で修行。
そんなこんなで時間は過ぎまして、
ジ「それじゃあ、かーんぱーい!」
7人「「かんぱーい!」」
カカン、!
グラスぶつかり合い、開戦の合図が鳴り響いた。と言っても半分がお酒を飲めないが。
((席配置↓
ジ シ コ リ
ツおいしそうなクりょうりとエおさけたちー
タ レ ロ パ
こんな感じでよろしく!))
ジ「さぁ、!食え飲め!今日は僕の奢り/タ「レイ、何食べる??俺これ食べたい!」
レ「いいねそれ、美味しそう。あ、すみません。これとこれと、それにこれと、あとこれとこれも、最後にこれ。さらにこれも、あ、これもお願いします。」
シ「これ美味しい!コクウも食べてみ」
コ「ほんとだ!後で追加で頼もう!」
リ「人の金で飯がうめえ!」
ロ「1番高い酒を持ってこーい!」
パ「これこれぇ!久々にこれが酒場って感じの空気出てきた!」
ジ「...遠慮という言葉を知らないな君たち」
ジョーカーの粋な計らいを無に帰すかのように、遠慮なしに頼み出すタイト達。勇者一行とは思えない鬼畜の所業。
ジ「残したら、残したらご飯代は払ってもらうからね。」
ジ「・・・と思ったけど、そんなことは決してありえないことに気づいた。」
レ「?」
なんの事か分からないという表情のレイ。
ジ「あ、忘れないうちにこれ渡しとくね」
そう言ってジョーカーは収納魔法から紙袋を取り出した。
ジ「はい、レインちゃんが好きな饅頭だよ」
レ「・・・!ありがとう、」
ぱあっ、と表情が明るくなったのが目に見えるほど嬉しそうなレイ。
ジ「みんなで分けてねー。多めのやつ買ってきたからさ」
レ「わかった!タイト、後で一緒に食べようね、!」
タ「やったー」
パ「わかっ、、、た?」
リ「当たり前のように、みんなの中に俺らは入ってない」
レ「私の事なんだと思ってるの?」
リ「食い意地の擬人化」
レ「食い散らかすよ?リューソーを」
リ「すんませんした」
レ「さすがにちゃんと分けるから。2人で1個ずつくらい?」
コ「逆に分けれるようになったことの方を、成長だと捉えるべきなのかも」
ロ「タイト、ちゃんと教育しとけよ?」
タ「俺は貰えるから別にそのままでもいい」
シ「あれ?お前タイトじゃないな?」
タ「フォッ、フォッ、フォッ、」
自分はちゃんと貰えるからと高を括るタイト。そこへコクウが横から飛び込んでくる。
コ「タイトの食べかけなら喜んでもらうよ?」
タ「え、、、」
コクウ、渾身の発言に素に戻ってしまったタイト。
リ「おぉ、さすがコクウ。この手の対処にも慣れてる訳ではなくて、ほんとにタイトの食べかけを貰いたいんだね。その目は。」
パ「タイトの限界ヲタクが出てきちゃったか」
リ「多分貰っとて、食べずに保管する気だぞ」
ジ「君たちは一体、どうやって集まったんだよ」
ロ「それなぁ〜」
((どうしてこんな化け物共を集めたんだろう))
シ「常識人が僕しかいない」
((...黙秘権を行使します。))
シキが何もない空に向かって、魔法を放って裏側にぶち当てたところでちょいと時間が飛びまして、
だーんだん出来上がってきてる飲酒組の気分が、最高潮の1歩手前まで上がって来たぜ。
リ「いやぁー、今日のやつもうちょっとだと思ったんだけどなー!」
ジ「はっはっは!片腹痛し!笑止千万!君たちなんて余裕のよっちゃんさ!」
パ「しょーみ、コクウとシキの電気魔法は焦ったろ!?」
ジ「なーに言ってんだよ!あんなの、めちゃめちゃ焦ったわ!」
急に真剣に答えるジョーカー。相当焦っていたのがよく分かる。
(惜しい、仕留めといて欲しかった。)
ジ「ぶった切って逃げようかと一瞬思ったけど、武器縛ったの僕だった!やむなく氷河期作ったった!」
シ「そんな、道具ないから手掘りで砂場にトンネル作るみたいなノリだったの?あれ、」
コ「まあまあ。私たちだって、まだまだ本気じゃないんだからね!調子乗んなよ〜!」
ジ「そんなん言われたら僕だって本気じゃないし〜」
ロ「実際、死災と戦ったらどうなんだ?」
ローネの質問にジョーカーはあほみたいな顔で少し考えて、
ジ「無事では済まないけど、一対一なら互角かな?」
シ「本気でも?」
ジ「本気でも」
ジョーカーでも死災は五体満足とはいかないらしい。前にも言ってた気がするな。
ジ「ただ、他に人がいると厳しいかも」
ロ「あー、やっぱ強すぎると、味方いても邪魔になるかー」
ジ「邪魔という程じゃないけど、やっぱりどーしても気になっちゃって気が散るんだよね」
リ「やっぱ、数百年生きてても死災は厳しいのか、、、あいつらどんだけ化け物なんだよ」
タ「え...?数百年?」
レ「なにそれ」
突然のびっくりな数字のびっくりな言葉に話を首を突っ込まざるを得ないタイト達。
コ「あれ?それも知らないの?」
ジ「・・・あれ?やったことないっけ?」
タ「...何を?」
ジ「コクウちゃん、前振りからお願い」
コ「え、普通に嫌だ」
ジ「普通に?!じ、じゃあシキく/シ「丁重にお断りさせていただきます」
ジ「まだ言い切ってないよ!
・・・しょうがない、1人でやりますか」
すると、急に立ち上がったジョーカーはタイトとレイの方を向いて、真剣な眼差しで2人を見つめた。目は空いてないがな。がははは
コホンと咳払いをして、ジョーカーが臭い演技から入りだした。
ジ「くっ、強すぎるッ!どうしてだ!どうしてこうも俺たちの攻撃が通用しないのだ!?」
ジ「少年少女らよ、今君たちの目の前に居るのは、500年以上生きた」
ここで一瞬の間を空けて、前ボタンを開けた上着の胸の辺りをそれぞれ両手で持ち、前を若干開きながら、決め台詞を言い放った!
ジ「最強さんだぞッ」
タイトとレイは無言で無表情で無反応だった。
ジ「あれ、この鉄板ネタ、やったことない?」
タ「ない」
レ「されてたら絶対に忘れない自信がある」
確かな自信があるようだ。そりゃそーか、面白くないのも相まって印象に、てか記憶にしぶとくこびりついてくる。走馬灯には出てきて欲しく無い。
シ「久しぶりに見たね」
コ「なんでこんなんで昔笑ってたのかが分からない」
ジ「酷いなーもー」
タ「で、ほんとに500年以上生きてんの?」
ジ「ほんとだよー!だって僕、『最強』の概念を司る存在だからねー」
またまた新情報。この男、全く信用ならんというか、言ってないこと、言い忘れていることが多すぎるのである。
レ「この嘘つきめ。」
ジ「嘘じゃないよ!言ってないだけ!」
タ「でも、なんだろう。人外と言われた方が腑に落ちるものがある」
レ「確かに、それはそう。」
ジ「君たちが最強の人物像を想像すればするほど、僕は強くなる」
パ「まじの最強かよ」
ジ「今日、みんなを遠隔で気絶させたのも、色んな人が想像を重ねた集合の賜物だからね」
タ「逆に弱い所を考えたら?」
ジ「僕たちはみんなの根源的意識の集合体。逆張りは無意味さ」
得意げにジョーカーが話していると、
?「よぉ!同族がいると聞いて遊びに来たぜ!」
リューソーの肩に腕を回しながら、1人屈強そうな大きな男が近づいてきた。
半袖短パンから生えた、かなり鍛えられている筋肉質でちょい焼けた色の手足。オールバックで、海を彷彿とさせる青い髪に真っ赤に燃え上がるような赤い目。自信に満ちたような、人生そのものを楽しんでいるような笑顔と雰囲気の男。
ジ「同族は・・・お前か!ジョーカー!3週間前にも会ったな!」
ジ「3週間ぶりー」
その男の声に気がついたリューソーが反応を示した。
リ「お前!トコナツじゃねぇか!久しぶりだな!」
ト「よぉ!リューソー!久しいな!」
リ「1年ぶりくらいか!?」
ト「だな!俺は『夏』担当だからな!」
リ「そりゃそーか!」
既に知り合いらしい2人は久々の再開で、もう楽しそう。
タ「その人は?」
リ「ああ、こいつは『季節』の概念を司る」
ト「『夏』担当のトコナツ、またの名をヒトトセだ!よろしく!
ちなみに夏が終わると俺は眠りにつく!」
シ「あー、ヒトトセか。久しぶりだねー」
ト「シキか?お前も随分と久しいな」
コ「私もいるよー」
ト「コクウじゃねぇか、元気してたかー?」
コ「このとおり!」
ト「なら良かったぜ!がははは」
パ「うるせぇやつが増えたな」
シ「人の事言える側ではないと思うよ。パルスは」
苦笑いしながらパルスにジャブを放つシキ。完全に酔っているパルスには効果はなかったようだ。
ト「なぁ、二次会どこ行く?次、一緒に飲みいかね?」
リ「いいぜ!行こう!他来るやつ!?」
パ「行くに、決まってんだろぉー!」
シ「僕も行こうかな?」
コ「私もー!」
タ「せっかくだし、俺も行こー。レイはどうする?」
レ「・・・タイトが行くなら、、行く」
ロ「面白そうだから行くぜベイベー」
リ「俺ら『魔王倒し隊』!全員参加です!ジョーカーはどうする?」ロ「勝手に入れられてるの草!...草...草。草って美味いよなー。へへへへへへー」
ジ「僕は遠慮しとこうかな?明日早めに出るし、誰かさんたちのせいでお金が厳しいんで、」
リ「わかっだー!」
パ「言われてるぞ、レイン」
レ「お酒、量、少ない、値段、高い、大量に、注文する」
パ「あー、酔ってきてわかんなーい」
レ「おっけーぐーぐる。酔っ払い 一撃で締める方法」
((ウェブでの検索が見つかりました。みぞおち拳で解決します))
リ「俺たち7名で参加します!!!」
ト「よし!着いてこい!」
リ「待て待てまだあと少しここの時間残ってるから!料理も残ってるから!」
ト「がはははは!!」
さぁて、乱入者が現れて、タイト達の席が大いに盛り上がって参りました。誰もがトコナツの方に注目する中、
ジ「フーーーっ、」
と、ジョーカーが深く息を吐くのに気づいたタイトとシキが、静かに座っているジョーカーを見つける。席を立っていた2人は何も考えることもせずに、使命感に駆られたかのようにジョーカーの対面に座った。
周りでは未だに大声で騒ぎ立てているのに、何故か時の流れがゆっくりのように声が、音が風景が流れる。背景で流れているかのようにそれらの音が小さくなっていく。
ジョーカーがやがて、顔を上げて正面から2人を見る。その目に先程までのおふざけはない。
嘘、いつものような優しく少し笑った表情で見つめる。
ジ「人生とは、選択の連続だよ」
ジョーカーは急に語り始めた。いつもと様子の違うジョーカーに、言葉に、2人は聞き入る。
ジ「何気ない、無意識に近い程の小さな、一つ一つの選択がやがて、大きな選択へと繋がる。」
ジ「大きな選択が急に降り掛かってくるのではない。皆が選び続けた道の途中にその選択の時は訪れる。」
無言で聞き続ける。
ジ「タイト君、シキ君。これから君達には、いくつもの選択を強いられる時が来るだろう。小さなものも、君一人では決めきれないほどの大きなものも」
ジ「悔いのない選択なんか存在しない。きっとどこかで後悔する時がくる。」
ジ「だから、君が胸を張れると思った方を選ぶんだ。周りになんと言われても、君自身が誇れる選択をしろ。正しいか、間違いかは、未来が教えてくれる。」
ジ「それと、友を、仲間を、君自身の大切な人達を信じろ。君が誇れる道に進む時、彼らは着いてきてくれる。君が間違った道に進もうとした時、彼らは教えてくれる。」
ジ「僕がこれに気づくには...遅かった。遅すぎたんだ。僕は彼らの少しの合図にすら気づかなかった。
違うな。見て見ぬふりを知らぬふりをした。答えを、知りたくなかった。」
そう言うジョーカーの表情は見たことがないくらいに悲しそうで、苦しそうで、既に壊れたはずの時計の針がその場で進むこともできずに、辛うじて動いているかのような印象を受けた。
進めそうで、前を向けそうで、未来を迎えれそうで、進めない、向けられない、迎えることの出来ない。
タ(なんだろう、この胸をざわめく、知っているような感覚。何故だろう、ジョーカーの気持ちが言っていることが理解出来るのは。まるで、ジョーカーの言っていることを経験したことがあるかのように。)
シ(...)
ジョーカーは何かに囚われている。壊れたことに気づいても、止まることも、進むことも、戻ることも出来ない。気が狂いそうになるほどの何かに。
「何があったの?」
それを聞く覚悟が2人にはなかった。
ジョーカーは目の前のコップに入った水を飲むと、立ち上がった。
ジ「酔ってきたのかもしれない、変な話をしたね。お金は払っておくから、二次会、楽しんでおいで」
タ「あ、う、うん。」
シ「ありがとう、ございます、」
ジ「強く、なってね。僕よりも。
君には、君たちには、期待しているよ」
そう言って遠ざかって行くジョーカーの背中は、寂しそうに見えた。




