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今、生きているあなたへ  作者: ひびき
危険が危ない!編
63/92

第58話 いくら仲が良いからって、年上を雑に扱いだすといずれ後悔するから気をつけろ

/639年8月18日/

 夏はこの時間帯に既に暑く感じるんだよなぁ

AM10:30


ジ「タイト君、僕が何を言いたいのか...分かるかい?」


ゴゴゴゴゴォ、

 という文字が見えそうな、緊張した空気感を纏わせながら、冒険者協会の椅子に座って待っていた最強の男。その余波で周りの関係ない冒険者も緊張している。


タ「...おこった、?」

ジ「...おこってないよ」


・・・


タ&ジ「「へへへへへへへへ」」

ジ「あまり調子に乗るんじゃない、ぐちゃぐちゃにして鯉の餌にするよ?」

タ「すみませんでした」

ジ「そしてその鯉を調理して皆に振る舞う」

コ「く...狂ってやがるッ!」

リ「なにこれ?」


 終始笑顔でタイトに圧をかけるジョーカー。理由はまぁ、昨日の伝言の内容だろう。


ジ「まぁ、僕からすれば、真っ白い服に着いた醤油みたいに些細なことはさておいて、」

レ「めちゃめちゃ気にしてる、」


 ジョーカーが椅子から立ち上がり、仮想空間の扉へと歩き出した。


ジ「それじゃ、早速やろうか?場所は何も無い草原で天候は晴れの昼間で、」

シ「はーい」

リ「よろしく!おねしゃす!」


 気合いの入り方が凄まじいリューソーと、いつも通り、かと思いきや少しやる気のありそうなシキ。


ロ「よーしお前ら、負けたら晩飯抜きだからなー。死ぬ気で行ってこい。」

パ「戦わないからって、好き勝手言ってんじゃねーよ」

ロ「ちなみに、抜きになった分の食費は私に加算されるからなー」

レ「晩ご飯...絶対...食べる

ジョーカー...〇す」

ロ「思わぬ所からやる気出てきたな」


 みんなのやる気が上がってきたところで、仮想空間へ入って行ったタイト達。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

         *視点 戦闘時*

〜仮想空間にて〜


ジ「さーて、手始めに準備運動だ。武器無しで軽〜く掛かっておいで」


 右手で挑発するジョーカーと、それに全く興味を示さず、苦虫を噛み潰したような表情をするタイト達。


タ「なんだろう、頭痛が痛い」

コ「蘇る嫌な記憶」


 頭が黄緑色の何かが頭をよぎる。ル「やあ」


シ「先生だから。大丈夫だから」

ジ「?」


 そんな彼の事は、記憶の底の奥の古腐った引き出しの下の方の引き出しの裏側に置いといて、


パ「いくぜぇぇぇぇえ!」

リ「うおぉぉぉぉお!」


 パルスは<瞬間移動>を2度使用し、リューソーはジョーカーの目の前へ、パルス自身はリューソーを囮にジョーカーの後ろちょい上へと移動した。


リ(囮かよォ!!!)



シ「みんなで行っても渋滞するだけだから、2人ずつ行こうか?」

コ「どうせみんなすぐ吹っ飛ばされるだろうしね〜」

タ「一撃でも入れたら俺らの勝ちでいいでしょ、もう」

レ「晩ご飯が、掛かっている」



 リューソーが正面切って右の拳を振り、パルスは空中からジョーカーの首元目掛けて右足で蹴りにいく。


ダン!ガッ!


ジ「いい性格してる子がいるねー」


 ハッハッハ、と笑いながら2人の攻撃を両手を使って2人の攻撃を防ぐジョーカー。


 パルスはすかさず、<瞬間移動>でリューソーの横へ移動、2発目を繰り出そうとするリューソーを<瞬間移動>でやや上空へ移動。

 続けてジョーカーへ右手を振りかざすパルス。それを防ごうとするジョーカーの腕を手で触れて、拳を振るっているリューソーの目の前へと<瞬間移動>。


ジ(敵もいけるのかー)


ガン!


ジ「いい連携だ」

リ「ッ!」


 リューソーの拳はジョーカーに届くことはなく、正六面体の氷魔法で防がれてしまった。ヒビ1つ、入ることなく。

 続けてジョーカーは余裕そうな笑みを崩さず、右手の拳を振り上げる。


ジ「防げよ?」

リ(ちょ、ま!)


ドッ!

 リューソーは咄嗟に両手を交差させて、ジョーカーの拳を受け止めて直撃は避けた。


ダァン!

 が、空中で繰り出したとは思えないあまりの威力にそのまま地面に叩きつけられた。


 <瞬間移動>でパルスがジョーカーの横へ拳を振りかざす体勢で移動。ジョーカーが視線をそちらに向けた瞬間、<瞬間移動>をもう一度発動してジョーカーの後ろへと回り込む。


タン、

 ジョーカーはパルスの攻撃を見ることなく、手首を弾いて回避。


パ(マジかよ)


 パルスの方を振り向き始めるジョーカーから、パルスは1度距離を取ろうと<瞬間移動>を使用した。

 が、しかし


ジ「ははは、どこへ行こうと言うのかね?」

パ「ッ!」


 パルスが神技を使用する直前にパルスの腕を掴み、一緒に移動してきたジョーカー。


パ「叫ぶぜ?変態野郎」

ジ「つれないこと言わないでよー」


 そう言いながら、ジョーカーは両手でパルスの腕を掴み、左手で風魔法を放出しながら自身を中心に、パルスごとぐるんと回転を始めた。


パ「おい、待て/ジ「それー」


 勢いをつけて一回転したところで、両手を離してパルスを彼方へと投げ飛ばした。


バチン!

 ジョーカーのみぞおち目掛けて飛んでくる拳を、何食わぬ顔で受け止めるジョーカー。


コ「変態さん、私とも遊んでよ」

ジ「正面から来るのはいいけど、その言い方はやめよう?おじさん捕まっちゃうから」


 落下しながら凄まじい攻防を始める2人。ジョーカーは落下し続けるだけだが、コクウは<ベクトル操作>を使用して空中で上下左右を自在に動き回り、回避と攻撃を繰り返す。

 ジョーカーもジョーカーで、魔法とコクウに触れる瞬間の力を上手く制御して、動き回るコクウを的確に追い続ける。


 2人で攻防を繰り返す中、ジョーカーをコクウと挟むようにシキが背後に、土魔法で即席の階段を作成して駆け上がってきた。右手に電気魔法を纏いながら。


 落下の勢いを利用しながら拳を振りかざすシキをジョーカーは、休むことなく攻めてくるコクウに触れて自身を動かして回避。


 シキはそのまま落ちるかと思われたが、コクウがシキの左手をお互いに握りしめて、神技を使って全身を横に倒す。落下のエネルギーと神技を噛み合わせて、シキを持ったまま横回転。

 円の最下点を通り過ぎ、コクウとシキの高さが並んだ所でそのまま手を離してシキの位置を動かす。


 シキはジョーカーの上へと移動。すかさず風魔法を上方向へ放出し、勢いつけて自身を下へと、ジョーカー目掛けて足を向けながら、落ちる。


 上からの攻撃を察知して風魔法で自身の位置を大きく動かしてシキが落下する道から逸れる。

 勢いよく落ちたと思われたシキは、音を立てずに軽く着地。


 コクウは攻撃の手を止めないようにジョーカーに喧嘩を仕掛ける。手始めに水魔法を目くらまし目的で広範囲に放出。続けて、まだ残る回転を更に風魔法で回転を増してジョーカーに蹴りを食らわせに行く。

 ジョーカーは氷魔法で自身の前に幕を作り出し、向かってくる水を凍結。その氷を破りながら蹴りに来たコクウの足を難なく防御。と同時に、コクウは蹴りの勢いを利用して、自身の体をジョーカーの上の方へと持ち上げた。

 両手に多量の電気魔法を帯びながら。


 シキは着地後、直ぐに右手で銃のような形を作り、渾身の電気魔法を溜めながらジョーカー、否、ジョーカーの先のコクウを見上げる。


 ジョーカーが2人の電気の道から抜け出そうとするも、何故か1m範囲しか動けず、進もうとすれば見えない壁か何かに阻まれる。


 困った笑顔でジョーカーはゆっくりとコクウの方へ顔を上げる。コクウはそれはもうニッコニコでジョーカーを見返す。


ジ「やってる事えげつなくない?」

シ「そんなことないよー」

ジ「そんなことあるから、一旦待って」


パリッ、バァンッ!!!

 お互いを繋ぐように一直線に細く、速く伸びる電気の軌道。光と共に轟音を呼び、周囲にその存在を知らしめる。


タ「2人とも強いな〜、

でも、」

レ「寒い」


 ジョーカーは氷魔法で自身を中心に、半径約10mの空間の熱を奪い去った。2人の電気魔法はジョーカーの体を四角く覆う厚い氷の壁の表面を伝い、ジョーカーに届くことは無かった。


 ジョーカーは氷の中に入ったまま自由落下し、そのまま地面に衝突。巻き上がる砂埃でジョーカーが見えない。シキはその間、一切気を抜くことはせず、逆に精神を研ぎ澄ましていた。


シ(来るッ!)


 シキは後方にいるジョーカーへ、振り向きながら魔力と技力を合わせたモノを放つ。


ジ「成長したね」


 それは、ジョーカーに当たることなく、遠くの方で大きな爆炎を巻き起こした。

 ジョーカーはただの移動で、一瞬のうちにシキの後方へ移動し、さらに後ろを振り向くシキの後ろへと回った。


ジ「一旦待って、」


 左手の手袋に書かれた魔法陣を発動しようとするシキを制止する。


ジ「2人とも、これ準備運動だよ?武器なしで本気で来ないで」

シ「・・・わすれてた」

コ「あははー...つい、?」

ジ「先に食いついてきた2人も戻ってきたようだし」


 泥を払い落としながら近づいてくるリューソーと腕を伸ばしながら<瞬間移動>で登場するパルス。


ジ「タイト君、レインちゃん、準備運動なしでも大丈夫?」

タ「大丈夫!こっちは2人で準備運動してたから」

レ「何となくそんな気はしてた」

ジ「ごめんねー!今度お饅頭買うからー!」

レ「許す」


 今すぐにでも走り出しそうな空気の中を一旦落ち着かせ、再び精神を研ぎ澄ます。

 ジョーカーは腰に携えた剣を静かに抜き取りながら6人に言い聞かせる。


ジ「さぁ、武器を手に取れ。全てを持ってして掛かってこい。稽古をつけてやる」


 その声に応えるようにタイト達は武器を構える。


 第2回戦が始まった。



 最初に動いたのはコクウだった。引いた弓から放たれた矢は気づいた時には、ジョーカーは見えない剣速で縦に切り捨て、剣を鞘に納めていた。それを皮切りに動き出した。


 パルスが<瞬間移動>でジョーカーの真横、上、正面と複数回使用し、左足を前に踏み出して剣を振り下ろす。ジョーカーがそれを防ごうと剣を動かした瞬間に再び神技を使用し、真後ろから剣を振り下ろす。


 当然、これくらいは防がれる。パルスは即座に神技で離脱し、リューソーとタイトがジョーカーを挟むように襲いかかった。


 ジョーカーは後ろへと大きく下がり、2人の攻撃を避ける。タイトとリューソーはお互いの勢いを止め、直ぐにジョーカーへと走り出した。


 ジョーカーは左手に氷魔法で即席の剣を生成し2人を同時に相手取る。2人の連携は歪で息が上手く噛み合わず、お互いの攻撃でお互いを邪魔したり、体がぶつかり合ったりして、徐々にキレが悪くなっていく。


 そして、タイトとリューソーの動きが完全に一致し、2人の攻撃を剣1本で防ぎ止めるジョーカー。


ジ「呼吸があって無さすぎる。

赤髪の君は自分の思うように攻撃しすぎ。他に合わせろとは言わないけど、もっと仲間の行動を見て動くように。ただ、我流かな?剣筋は悪くない。」


ジ「タイト君は仲間を気にするあまり、ここって時に攻撃ができていな/


キン!

 ジョーカーは真横から高速で向かってくる氷魔法、ありえない挙動で飛んできた矢を即座に斬った。


ジ「まだ、まだ子供たちに助言をしている途中でしょうがァ、!全く、!君に戦い方を教えたやつの顔が見てみたい」

シ「鏡いる?」

コ「君だよ、君なーんだよー、教えてくれたー」

ジ「...僕か、

まぁいいや、タイト君は仲間を利用する位の気持ちで戦ってもいいと思うよ」


ジ「で、助言を受けている最中に地面を凍らせるのはほんとに誰が教えたのか聞きたくなるね。タイト君???」


 地面を這うように、足から氷魔法を発動させて地面付近を凍らせたタイト。

 

タ「俺にも歌って欲しい?」

ジ「遠慮しとく」

パ「なら逃げるか」


 パルスが<瞬間移動>でタイトとリューソーの後ろへ飛んできて、2人の肩を掴みながら言い、そのまま神技で離脱。


 その後方で杖を構えているシキを見つけたジョーカー。火魔法で足元を溶かそうと魔力を練るジョーカー。


タ&コ「「逃がさないよ!!

     逃げんなって、!」」


 そう言い、タイトはさらに氷魔法に魔力を込めてジョーカーの膝元まで伸ばし、精度を高める。コクウは風魔法と神技でジョーカーの火をかき消す。


ジ「逃げないように、その場から動けないようにして、抵抗する手すら奪う。人の追い込み方が闇の人間のそれなんじゃが、」


 ジョーカーが剣に力を込めると同時にシキの準備が整った。


シ「くたばりやがれください!

<エクスプローーーージョンッ>!!!!」


ドーンだYO!!

 相変わらず、地面を抉り取るかのような大爆発と巻き起こる風、証明を残すかのような煙の大きさ。


リ「さすがに/ジ「危なかったー」

リ「最強はフラグすら建てさせてくれないのか」

ジ「危ない危ない。ね?レインちゃん?」


ギン!

 透明状態のレインの刀を受け止めるジョーカー。


レ(ッ!)

ジ「音はないんだけどねー、殺気が漏れ出てるよ。それに、空気の不自然な揺らぎ、靴の形で潰れる草。

それと、息遣いと匂いと体温、それに人を思う愛ゆえの気配が、どれだけ消そうとも僕には/


ズドっ!

 レインの予備動作なしの拳を受け止めたジョーカー。あまりの勢いに後ろで砂埃が大きく舞う。


ジ「咄嗟に出ていい人間の技じゃないねそれ、、、

殺気も少しは隠してね」

レ「あっ、」

タ「レイ!」


 我を忘れて咄嗟に出た手を受け止められ、レインは正気に戻る。この間に生まれた隙にジョーカーはレインを蹴り飛ばした。


 飛ばされたレインをタイトが全身で受け止めようとするも、あまりの威力にタイトごと後方へと飛んで行く。


シ「タイト!大丈夫!?」

タ「俺は無事!!

レイ、大丈夫?どこか痛むところは?」

レ「〜〜〜の、〜〜〜じゃ、」


 タイトがレインに回復魔法をかけるようと聞くも、返事が返ってこない。それどころか、レインは両膝を着き、右手で右目の辺りを抑えながら何か呟いている。


タ「レ、レイ、?」

レ「ち、違うの...そんな、つもりじゃ...ないの...」


 ジョーカーの言葉が原因で明らかに挙動不審な様子のレイン。タイトの声も聞こえていないようだ。


 タイトがレインの正面に片膝を着いて座り、そっと、レインの左肩に右手を置き、左手でレインの右手を優しく握る。

 タイトが触れた瞬間、ビクッ!とレインは体を小さく揺らした。今にも消え入ってしまいそうな表情のレインをタイトはなだめる。


タ「レイ、落ち着いて深呼吸して」


 タイトの声がようやく届き、レインは落ち着きを取り戻した。


タ「どこか、痛むところはある?」

レ「・・・左、の脇腹」


 タイトは左手でレインの右手を握ったまま、右手をレインの脇腹の近くに添えて回復魔法をかける。


タ「落ち着いた?」

レ「うん...」


 まだ少し切り替えきれていない様子。


タ「ジョーカー、酷いよねー。女の子に向かって、匂いだーとか、息遣いーとか。あんな気持ち悪いこと言うなんてね」

レ「、、え?」

タ「年頃の女の子は繊細なんだぞ!の一撃食らわせたいねー?」


レ「・・・聞こえて、なかったの?」

タ「何が?」

レ「最後の、ジョーカーの声」

タ「おっさんの気配を感じとったコクウが聞きたくないからって、作戦会議を始めたから聞こえなかったよ?」

レ「そ、そう、、なんだ...」


 もう大丈夫だろうと判断したタイトは立ち上がり、カタカタと音を立てて刀を強く握り締める。その表情は、一見普段通りの笑顔のような、真剣な表情のようにも取れた。


タ「じゃあ、俺は加勢しに行くけど、レイは行けるようになったらでいいからね?無理そうなら、そのまま見てるだけでもいいから」

レ「あ...うん。ごめんね」

タ「なーに言ってるのー?いつも助けられてるの俺の方だから、気にしないで」


 申し訳なさそうに謝ってくるレインに笑顔で応えるタイト。

 1呼吸置いて、タイトはジョーカーに視界を固定させ、次の瞬間走り出した。



〜数分前〜


 作戦通り、タイトがレインの助けに行ったところで、パルスとリューソーがジョーカーに距離を詰めた。ジョーカーは目の前に立ち塞がるリューソーと目を合わせて、


ジ「さて、まずは...後方支援組から行くとしよう」


 ジョーカーはそう呟くと、目の前のリューソーとパルスを無視して、シキとコクウの方へ仕掛けに行った。


シ「ッ!」


 ジョーカーの接近を察知し、シキは咄嗟に右手を地面に着けて体勢を低くして、ジョーカーの水平方向への、周囲の空気を巻き込み、砂埃を立てる剣を避ける。


 すかさずシキは地面に着いた右手で神技を発動させようと、魔力と技力を込めてジョーカーのみが範囲内に入るような魔法陣を即座に生成する。


シ「<エクスプロ/ジ「<裁断の剣>」


 ジョーカーは、シキが神技を発動するよりも速く、剣で魔法陣そのものを切り、崩壊させた。シキがそれに気づいた時には、シキの右手には剣が貫通して地面に突き立てられていた。


シ「うっ、!」


 シキは地面に突き刺された剣を右手から抜き取ろうと、右手に魔力を流して土魔法で右手付近の地面を剣ごと勢いよく盛り上げる。

 ただ、ジョーカーがそれを待つ訳もなく、シキが地面を盛り上げている最中に、右手の拳を振り上げ、殴り掛かりにいった。


バァン!

 だが、ジョーカーの拳はシキに当たる手前で、阻まれた。


ジ(またか、、、これは無理なんだなぁ)


 ジョーカーとシキの間に見えない壁があるようで、ジョーカーは破壊できないことを瞬時に悟る。


 この間にシキは剣と共に高く上げた地面を変形させて、地面のみを元に戻して剣と右手を浮かせた状態にする。左手の杖は収納魔法に放り込んで剣を掴み、右手を下方向へ動かして剣を抜き取った。


 シキはそのまま左手1本で剣を振り抜くよう、右足を踏み出して左側に剣を引いたところで、パルスとリューソーがジョーカーを囲むように、間合いに入って剣を構えた。


ジ(少女、少年、シキ)


カカン!

 ジョーカーは収納魔法から予備の剣を取り出して、自分に振るわれた剣を一瞬で弾き返した。


 さらに、弾いたことで腕を強制的に広げられ、無防備となったシキの胸に無数の斬撃を浴びせる。


シ「がっ、」


ドゴォ、!

 ジョーカーは追い打ちをかけるように、シキの胸の辺りを左手の拳で殴り飛ばした。


 と、そこへコクウがジョーカーに飛び蹴りをかましながらやってきた。ジョーカーは左手でコクウを受け止め、コクウの足を掴みにかかる。

 が、神技を利用して、コクウはすぐさまジョーカーから距離を取った。


 パルスとリューソーも体勢を立て直し、負けじと攻撃を再開する。


 コクウが2人を援護するために、幾つか自身の周りから魔法を放とうと魔力を練るも、魔法が完成する前に魔力の塊を切り刻まれ、阻害された。


コ(やっぱり、遠距離は無駄だね。なら、)


 コクウは何かの準備を始めた。


 ジョーカーは剣1本で2人の攻撃を防ぎながら、時折攻撃を仕掛ける。正面から根性と執念で攻撃と防御を力強くするリューソー。回避は神技に任せて攻撃のみを多角的に行うパルス。

 3人は位置の入れ替えをしながら、激しい攻防を繰り広げる。

 だが、これでもジョーカーは依然、余裕そうな態度でいる。


ギン!

 そこへ、タイトが突進に近い勢いで、ジョーカー目掛けて刀を突くように押し出しながら加勢に入った。ジョーカーに突きはいなされるも、タイトはすぐ追撃に移行した。


 タイトは刀に電気魔法を纏わせて、ジョーカーを切りにかかる。縦方向の一撃目には移動、薙ぎ払うような二撃目には上体を横に曲げ、ジョーカーは体を大きく動かしながらタイトの刀を避ける。


ジ(電気魔法、厄介だなー)


 体勢が大きくずらされたジョーカーを見て、リューソーが大きく足を踏み出し、決めにかかる。

 が、リューソーの背中に重い衝撃がのしかかる。土魔法で生成された大きい岩がリューソーの背中に落とされた。


リ「あがっ、」


 リューソーはそのまま、ジョーカーに倒れ込むような形で倒れた。と見せかけて、リューソーはジョーカーの右足を抱きつくように掴んだ。


 それを見たパルスは、ジョーカーの左斜め後ろに飛んだ。が、先読みしていたジョーカーに裏拳で殴られる。前に、もう一度<瞬間移動>でジョーカーの左腕が触れる直前に体勢を変えながら移動し、ジョーカーの左腕にしがみつき、自由を封じた。


リ&パ「「タイトォォ!!」」


 ジョーカーの背中側にいるタイトは、刀により一層の電気魔法を纏わせて、大きく右足を踏み出し、左の腰の位置に構えた刀で、ジョーカーに思い切り斬りかかった。


シャン、

 2人を抱えたとは思えないほどの軽い足取りでタイトの方を振り向いたジョーカーは、タイトの刀に付与された電気魔法を切り裂いて魔法を消した。

 電気魔法を消したことで触れることが可能になった刀を軽く弾き、そのままタイトの左脇腹へと剣を振るった。


 タイトは土魔法で咄嗟に防御するも、精度が甘かった。土魔法をやや貫通して、上下真っ二つとはいかずとも、お腹の前面を横方向に切り開かれ、そのまま吹き飛ばされた。


 腕にしがみついたパルスを投げ飛ばし、足元のリューソーを蹴り飛ばしたジョーカー。


 パルスはそれでも、諦めずにジョーカーへと<瞬間移動>で近づき、挑戦を続ける。

 右側、左側、正面へと移動して相手を翻弄しながら、剣を縦に振り下ろすパルス。それを防ぐべく、ジョーカーが右手を動かした瞬間にもう一度神技を使用して、ジョーカーの真後ろへと移動して背中を切りにかかるパルス。


ジ「誘い方は悪くない。」


 ジョーカーはパルスの一撃を、なんてこともなかったかのように防いだ。


ジ「ただ、これをするなら、1個前でもっと相手の剣を引き付けることと、相手の意識の集中している部分から力を加えにくい位置に移動すること。」

ジ「今の君の位置からだと、体がそれ以上捻ることの出来ない、」


 ジョーカーはそう言いながら、パルスの左側の方に瞬時に移動し、


ジ「左側とかね」


 ジョーカーは左手に風魔法を集約させて、ゼロ距離でパルスに向かって叩き込む。

 パルスは回避しようと神技を使って移動。


ジ「咄嗟の移動先が相手の後方に集中し過ぎているよ。気をつけた方がいい。」


 パルスが移動した時には既に、ジョーカーは後方に飛んだパルスに向かって、左手の風魔法を放っていた。パルスは見事に命中し、大きく飛んで行く。


パ(あー、ちょっともう神技使いすぎて、限界かも)


 パルスは頭に浮遊感と不快感を覚え、体が言うことを聞かず、倒れたまま立ち上がれないでいる。


キン!

 魔力の気配もなく飛んできたそれを咄嗟に弾いたジョーカー。それの正体は何の変哲もない、ただの剣であった。そして、いつの間にか目の前で拳を構えているリューソーをジョーカーは確認する。


ジ(速いな。尻上がりする子か、、)


バァン!!

 リューソーの渾身の一撃はジョーカーの腹部に直撃していた。だが、ジョーカーは何事もないかのようにその場で立っている。


リ「ッ、!」

ジ「闘心を全て込めた、全身全霊のいい拳だ。

ただ残念なことに、僕は闘心を過剰に集中させないのが、可哀想なところだね」

ジ「それに速さは力になるけど、結局1番大事なのは本人の力そのものだ。君の殴りは速くて少し痛むだけで、重さが足りない。もっと足腰を重視して殴るようにしよう!」


ジ「こうやってね」


 そう言いながら、ジョーカーはリューソーを正面から殴りにかかる。リューソーは咄嗟に左手で受け止めようとするも、あまりの重さにそのまま殴り飛ばされてしまう。


シ「<エクスプロージョン>!!」


 瞬間、ジョーカーの足元がほのかに赤く光り出す。


ドゴォォォ!!!

 いつの間にか準備されていた<エクスプロージョン>によって再び大きな煙が辺りに立ち込める。

 ジョーカーは無傷で脱出。シキは火魔法と水魔法を放ち、ジョーカーの目の前で2つをぶつけて爆発させる。


ジ(目くらましか、、、

後方でコクウちゃんがアレの準備が完了している。

シキ君は線上から避けながら電気魔法を準備。

タイト君はこちらに向かって、すぐ側まで来ている。

他は...少年が立ち上がってるね。あ、足凍らされた)


ジ(コクウちゃんのはやばいからな...避けれるけど。

まぁ、だいたいみんなの成長度合いと強さがわかったし、終わらせよーっと)


パリッ、

 ジョーカーはその場から特に動きもしなかった。しかし次の瞬間、周囲にいたはずのシキ達が意識を失ったように倒れた。


 その異様な光景を遠くから見つめていたレインは状況を理解することができなかった。


ジ(よし、倒れた音がしたね。

さて、試合しゅーりょ


 突然、水蒸気の中を体で切り開きながら、ジョーカーの目の前へ刀を構えながら突っ走ってくる1人の少年が現れた。


ジ「...!」


 タイトは、呆けた表情で見つめてくるジョーカーをお構い無しに首元目掛けて刀を振るった。


ザシュッ!


タ「...え?」

ジ「あ、」


 首を切られたのは、タイトだった。

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