第56話 お前...誰だ...?
お久しぶりです。
ようやく引っ越しやらなんやらが落ち着き、また投稿を再開しますのでよろしくお願いします。
それでは行ってらっしゃい。
/639年8月16日/
灼熱の太陽光が降り注ぐ15:00過ぎ。
タイトの目の前に顔を完全に覆い隠したお面をつけた人物がタイトと対面する位置に立っていた。髪の毛はフードを被り隠され、手は手袋、長袖長ズボンの格好は自身の特徴を全て隠しているかのようだった。
お面と聞くと、この前の襲撃時の助っ人を思い浮かべるが、どうも今回の人物とは背格好からして別人に思える。
お面の人物は、敵を切り刻んでいるというのに、その手に剣は既に握られてはおらず、まるで剣を振るっていたとは思わせないような立ち姿。
タイトの目の前に止まるまで、気づかなかった、視界で捉えることができていなかった。
そんな人物が目の前のタイトに気づき、どこか嬉しそうな声を張り上げた。
?「あれ?タイト君?!久しぶりだねぇ!」
この、ふざけたくらいに余裕そうな明るく、聞き飽きた声はもしや、
タ「もし、、かして、、ジョーカー!?」
ジ「せいかーい!お面つけてるのによくわかったね!」
タ「その胃もたれしそうなうるさい声でわかった 」
ジ「うむ!元気そうでなりよりだタスケテソンシタ」
タ「ほんね出てるよ」
ジ「わざとだよ」
タ「あちゃちゃあーちゃー」
タイトとジョーカーが話しているうちに、後ろ側に居たシキとコクウ、タイトを心配したレイが駆け寄ってきた。
シ「ジョーカーさん?!」
コ「かなり久しぶりな気がするー」
ジ「あら?シキ君とお嬢様までいるとは、
もしかして、仲間同士だったりする?」
レ「そうだけど、、知り合いなの?」
シキとコクウを見て、少し嬉しそうに聞くジョーカーとそれに困惑しながら、答えるレイ。
ジ「君たち全員、僕が戦い方を教えた弟子みたいなものだよ」
タ「へー、シキたちもなんだー!」
シ「こんなことあるんだね、!」
ジ「奇跡みたいな確率だね。ほんとに、」
ジョーカーの教え子同士が、この広い世界で同じ隊に所属するという奇跡が判明したところで、向こうにいるリューソーから声が聞こえてきた。
リ「うぉーい!タイトー!見てみて!」
リューソーの呼び掛けに振り向いて見てみるとそこには、輪切りにされた蛇の横で何故か嬉しそうにはしゃいでいるリューソーがいた。
リ「なぁー!?今これ写真撮ったら、俺がこいつ倒したようなことにならね!?」
パ「それ私も映りたい!」
通常では有り得ない状態で倒されている蛇の死骸で、自分の手柄のように見せる写真を撮ってみたいようだ。気持ちは分かる。
ジ「・・・あの2人も仲間?人の戦果を自分の事のように喜んで写真取ろうとしてるけど...」
コ「だいじょぶだいじょぶ。あの2人のは冗談みたいなもんだよ」
ジ「愉快な仲間だね君たち」
シ「あっはは、それは僕も思ってた」
ジ「そこにいる、角付きのフードを被っている子も君たちの仲間?」
タイト達から離れた場所で静観しているローネを見ながらジョーカーが聞いた。
タ「...うん、まぁ、仲間、かな?」
ジ「ふーん...」
魔族です。しかも幹部です。なんて言えないので、歯切れの悪い言い方になってしまったタイト。
リ「お!?おおお!?な、なんでこんなところに!」
満足したのか、2人がこちらに近寄って来て、仲間とは別のもう1人の存在に気がついたリューソーが大きな声で狼狽え始めた。
タ「どうしたのリューソー?」
リ「あ、あなたはもしや!巷で有名の『最強』じゃないですか!!」
パ「最強?」
タ「え?そうなの?」
ジ「うん、そだよ」
リ「うおぉぉぉぉ!すげぇぇぇぇ!!あ、握手してください!」
ジ「いいよーん」
リ「ありがとうございます!」
明日死んでもお釣りが来そうなくらいに喜びまくるリューソー。
レ「最強って、冗談なんじゃないの?」
ジ「本気ですが?」
タ「そういう勘違いした人だと思ってた」
ジ「それ君たちだけだよ?多分エレナちゃんのせいだけど、」
ジョーカーが半笑いしながら答える。
リ「お前たち!このお方と知り合いなのか?!」
シ「僕たちと、」
タ「俺たちの師匠にあたる人」
リ「いいなぁー!2人しか居ないあの、個人階級一等星の人が師匠とか羨ましい!」
タ「え?そうなの?」
コ「あれ?知らなかったの?」
シキとコクウは知っている様子だが、初耳な情報にジョーカーの方を見る。
ジ「・・・そういや言ったこと無かったな」
レ「私たちが信じてなかった理由。ここにあり」
ジ「ごめんちゃい」
やはり自業自得だった。ふざけた謝罪をしおって、土下座しろ!
シ「ジョーカーさんは冒険者協会最高戦力として、色々な地に赴いて色々と問題を解決しているんだよ!」
お面で見えないがおそらく、キリッ、とした表情でタイトとレイを見るおっさん。そしてそれをガン無視する2人。
コ「あれ?でも、前に聞いた話だと、南半分はもう1人の一等星の管轄っていう話だったと思うんだけど?
聞いてた話と違う気がする」
ジ「あぁ、そ/?「聞いてた話と違うよなぁ?」
バキィッ!
ジョーカーが後方から飛んできた氷の魔法を咄嗟に右手で破壊する。と、同時に魔法とは反対側にタイト達の間を縫って、ジョーカーに触れる謎の人物。
既に目の前にいるというのに、ジョーカーに触れる瞬間まで気配を感知することができずに、視界に映ってようやくその人物を認識することができた。
ジョーカーも触れられていることに瞬時に気づき、左手でなぎ払おうとするも、そいつは一瞬触れただけですぐに距離を取っていた。
?「ケヒ、ケヒヒヒ、」
?「よぉ、お前が魔王サマの言っていた最強とやらか?」
タ(魔族ですら知っているとは...)
声や顔立ちからして男だろう。黒い髪、青い目で年は20代位の見た目。つり目に眉上の傷が印象的な人間の男。
男は笑いながら、やけにジョーカーを挑発するような喋り方をする。
ここでようやくやつから気や魔力の気配を感じ取ることができるようになった。そして、タイト達は気づく。この捻り曲がったような強大で気圧されそうな程の魔力。前にも感じたことのある気配。
?「お前が来ることは聞いてねぇんだよ。秒であいつを倒しやがってよぉ。
せっかく魔王城からはるばるここまで来たのに、無駄足になったじゃあねぇか」
あれ、とは蛇のことだろう。そちらに目線をやりながら話す目の前の男。
さっきまでのおちゃらけた雰囲気の一切を無くしたジョーカーが上から圧をかけるように問う。
ジ「・・・君は、?」
?「名乗る程のものじゃねぇが、一つだけ言うならば」
男はジョーカーに物怖じすることなく、自信満々といった様子で一言。
?「魔王幹部」
その者はローネと同じ、魔王幹部であった。
魔「魔王幹部だぞ?さっさと倒しに来てみろよ、最強さんよぉ?」
ジ「・・・魔王及び、魔王幹部を討伐することは僕の役割じゃない。」
ジョーカーは魔王とその直属の配下は『倒さない』と、はっきりと言い切った。
魔「ふーん...まぁ、いいや」
そいつはジョーカーの回答に興味を無くしたのか、つまんなそうに呟いた。そして、次にニヤリと人を視線で舐めるような不快な笑みを浮かべた。
魔「なんでお前、わざわざ人間なんかをいちいち助けんだよ?」
男がタイト達を指さしながら言う。
ジ「それが今の僕の役割だからだ」
魔「いずれ死ぬのに、か」
ジ「それは今じゃない」
魔「そうだな、約束の時までもう少しだからなぁ?」
ジ「・・・何の話だ」
相も変わらず不快に笑う魔王幹部と唾を飲むことすら億劫に思えるほどに冷めきったジョーカーの態度。
2人の間に割って入ろうとする勇者、もしくは愚者はここにはいなかった。
魔「わかっているんだろう?」
ジ「……」
魔「今度は誰を殺す?誰を守る?誰を裏切る?」
ジ「そうか...」
ジ「見たのか、僕の過去を...」
この時、ジョーカーから根源的な恐怖を感じる程の鋭敏な殺気を魔王幹部に発せられた。
こちらには向いていないはずだが、あまりの殺気に体の震えが止まらない。剣の切っ先を喉元に当てられているかのような幻覚に陥る程の感覚を味わった。
魔「その通り。そういう地味なモンを持っているもんでね、」
ヤツは向けられた殺気に表情がやや引き攣り気味になりはしたが、不快な笑みを止めることは無かった。
ヤツはそっと剣を鞘から引き抜いて何時でも戦闘ができるような態勢になった。
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*視点 戦闘時*
魔「さぁ、もう一度聞こう。お前はなぜ、そいつらを守った?」
ジ「僕に届きうる若い芽を育てている最中なんだ。
邪魔しないで貰おうか?」
魔「へっ、!まるで、自分が死ぬみてぇな言い方だな?!」
魔「贖罪のつもりか?守るべき仲間を裏切った、取り返しのつかない罪を
と、ここまで言いかけた時、ジョーカーは目に追うことができない速度で魔王幹部の右側へ、素手が届く距離まで近づいた。
予め戦闘態勢に入っていた魔王幹部だが、ジョーカーが脅威的な速度で真横に近づいたことで、一瞬の認識の遅れが生じた。
バキィッ!
ジョーカーの岩を穿つような右手の拳を魔王幹部は、咄嗟に両の腕を交差させて顔面への直撃を防いだ。
魔「ーッ!」
防御をした両腕は一撃の殴りで使い物にならない程に折れ曲がってしまっていた。
殴り飛ばされながら瞬時に回復魔法で両腕を戻し、既に見えなくなっているジョーカーを視界、気配で探る。
魔(後ろッ!)
後方への勢いが止まぬ状態で地面を滑りながら、魔力探知で感知した背中側へと剣を振り抜く。
ジョーカーは確かにそこに居たが、気配だけを残して本人は瞬きにも満たぬ間に移動しており、魔王幹部の剣は空振りに終わった。
と同時にさらに後方へ、ジョーカーが棒立ちで右の拳だけを構えた状態で移動してきた。
魔王幹部は命の危機を本能的に感じ取り、振り抜いた勢いを利用し、
ゴリゴリッ!
と腰の駆動域を超える回転を行い、すぐさま回復魔法の元に戻る力を利用して、ジョーカーの方へと体を向けて拳を剣で迎え撃つ。
ガンッ!
明らかに素手からは鳴るはずのない、重く硬い音を鳴らしながら、ジョーカーは剣を正面から拳で受け止めた。
魔王幹部は受け止められた剣を直ぐに自分の体の方へと引き寄せ、もう一度振るう。全方位からの様々な魔法を織り交ぜながら、防がれては振るい、防がれては振るい、何度も何度も連続して剣撃を浴びせた。
魔王幹部の剣撃は目にも止まらぬ凄まじい攻撃であった。常人であれば、剣撃のみであっても、初めの数手で致命傷を与えられていただろう。だが、相手は『最強』だった。
ただの素手だ、何の変哲もない両手。ジョーカーはその2つだけで魔王幹部の攻撃の悉くを受け止め、回避し、相殺し、破壊し、傷1つ付くことなく完封した。
それどころかこの猛攻を耐え凌ぐだけでなく、一発、また一発と肩、足、腕、腹と魔王幹部に対して攻撃を食らわせていた。
さらに、ジョーカーは攻撃を捌く手の速度を上げていき、魔法生成の直後にかき消し、剣を振り出しの直後に受け止める程にまで速度を上げていく。そうしていると、やがて阻止され続けたことによって、魔王幹部の攻撃が完全に一瞬止まった。
その一瞬をジョーカーは見逃しはしなかった。ジョーカーは一瞬のうちに左足を軸に、右足を脇腹へと振り抜いた。
ドゴボキィ
弾性のある物が衝撃を受けたような鈍い音と、硬い何かが折れたかのような軋轢音がほぼ同時に鳴った。蹴りの勢いに内蔵が破裂したのだろう、口から血を吐く魔王幹部。
ジョーカーはそのまま、魔王幹部を左側へと、通常では考えられないような速度で蹴り飛ばした。
魔王幹部は即座に自身を治療し、飛ばされた勢いに身を任せて距離を取りながら魔法で追撃を行う。
だが、ジョーカーには当たらない。恐怖心を煽るかのようにゆっくりと近づいているはずなのに、魔法には当たらない。当たったかと思えば、当然のように無傷で止まることなく近づいていく。
今、目を離した隙に瞬殺されそうな、魔王幹部の視線はジョーカーに釘付けとなっている。
タ(今なら、後ろから奇襲すれば、)
そう考えたタイトは相手に悟られないように、気配を抑えつつ刀を構え、両足に魔力を込めた。
シ(ッ!)
シ「タイト、!待って!」
ギュン!
風魔法を駆使し、今できる最高速度で魔王幹部の背後に立ったタイトはその手にある刀を左から水平方向に首元目掛けて振りかざした。
振り出す直前、気配を抑え、瞬間的に移動したタイトは魔王幹部と目が合った。
魔「遅せぇよ」
カィーン
タイトの刀は、魔王幹部が下から振り上げた剣に、いとも容易く弾かれてしまった。勢いそのままに魔王幹部の頭の上を通過するタイトの刀。
両手で持っているため、無防備状態となっているタイト。右足を踏み込み、左手を振りかぶる魔王幹部。
タ(あー、もしかして終わったくさい?)
ドゴォ!
タイトのお腹目掛けて魔王幹部は左手の拳を振り抜いた。完全に重い一撃を貰ったタイトはそのまま殴り飛ばされてしまう。受け身もまともにとれず、勢いが止まるまで転がり続けるタイト。
タ(呼吸が、、、できない、、、!)
ジ「タイト君、大丈夫かい!?」
うずくまったまま、呼吸もできずに動けないでいるタイトにジョーカーは近寄って回復魔法をかけた。
魔「またな、最強、」
ジョーカーとタイトの方を見ながら、別れの挨拶をしようとする魔王幹部。背後に剣を構えたパルスとリューソーが<瞬間移動>で飛んで来て剣を振り抜いた。
が、その2本の剣は当たることはなく、転移魔法によって逃げられてしまい、空振りに終わった。
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*タイト視点*
ジョーカーに回復魔法をかけられた俺は、直ぐにジョーカーに謝った。
タ「ゲホッゲホッ、す、すみません。俺のせいで逃がしてしまって、、」
もう、申し訳ない気持ちしか無かった。あのまま行けばジョーカーが確実に倒していただろうが、その好機を完全に無くしてしまったのだから。
ジ「気にしなくていいよ。初めにも言ったけど、僕の役目は魔族を倒すことじゃないからね」
ジ「正直、『早く逃げろよカス野郎が!』って、思いながら殴ってた」
それなら、よかった、、、のか?
まぁ、なんというか、さすが魔王幹部。って感じの強さだったなー。
レ「タイト、大丈夫?」
タ「うん、なんとかね」
レイが飛ぶように近づいてきた。心底心配そうにこちらを見つめる。なんだか悪いことをしたようで心苦しい。
リ「タイトー、生きてっかー?」
タ「生きてるから大丈夫」
パ「判断基準が危ういな。この世界は」
周りにいたみんなも次第に近寄ってきた。
シ「タイトー、あんまり無茶しちゃダメだよー」
タ「うっ、ごめん」
コ「まぁでも、生きててよかったよー」
回復魔法による治療が終わり、立ち上がったところで、改めてジョーカーにお礼を伝えた。
タ「ごめんなさい。こんな、回復魔法までかけて貰っちゃって、、、」
ジ「いいんだ、気にするでない。魔力なんて有り余るくらいあるからねー」
さすがジョーカー。余裕が違う。
1つ気になったことがあったので、俺はジョーカーに尋ねてみた。
タ「ジョーカーさんはやっぱりもう、次の所へ行っちゃうの?」
ジ「うーん。僕はこの先の死災に用事があってこっちに寄っただけだからねー。この報告が終わったら用事を済ませに行かないといけないんだー。」
タ「戦うの?」
ジ「いやぁ?勝手に領域を広げてきてるからちょっと圧をかけに行くだけー。多分明日の午後にはこっちに戻ってくるつもりー。」
タ「やったー」
シ「ほんとですか!?」
シキも、やや食い気味に喜びを顕にした。
ジ「うんうん。それじゃあ久しぶりにみんなで稽古、僕と手合わせをしようか?」
タ「したい!」
リ「それ!俺も参加していいですか?!」
ジ「もちろんサー」
リ「うおぉぉぉ!激あつすぎる!」
久しぶりの手合わせが楽しみすぎて、もう今から緊張してきた。
ジ「この後はこの蛇の後始末とか、少しやらなきゃいけないことがあるから今日は厳しいけど、明日の午後なら時間あると思うから、それでいい?」
タ&シ&リ「「はいっ!」」
ジ「お、いい返事だ。僕に負けることになるのに〜」
コ「けちょんけちょんにしてあげる」
レ「なんの餌になりたいか選ばせてあげる」
それぞれの思いを胸に、大きく盛り上がるジョーカー含めた6人。
パ「私だけ着いていけてねぇー」
ロ「安心しな。私もだ」
対して、このおっさんを知らぬ2人はみんなのノリに着いていけずにひっそりとするしかなかった。
((どんまい!))




