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今、生きているあなたへ  作者: ひびき
序章:幼少期 助走編
5/80

第4話 始まる

        *エレナ視点*

エ「勇者になる!!!」

 と、弟であるタイトに声高らかに宣言する。


タ「何を言っているのかわからない。」


 難しい顔をし、理解が追いついていないタイト。


エ「明日から本気で修行始めるから!途中でへばんないでね!」

タ「え!?僕もやr」


 バターーン!!タイトの言葉を聞かずに素早い動作で扉を閉め、ベッドに入り、眠りに入る。

 それに対し、嵐のような速さで大きすぎる夢を語って取り残されたタイトであった。


|| 翌日||

エ「ほら!早く修行しに行くよ!」

タ「ま、待ってよ!いくらなんでも早すぎるよ!」


 タイトを早朝から叩き起こし、木剣を手にして勢いよく外に飛び出した。少し遅れてまだ眠そうなタイトが家から出てきた。


エ「遅い!」

タ「エレナが早すぎるんだよ。」

エ「強くなるためには1秒だって無駄にできないんだよ!」

タ「どこで覚えて来たのその言葉。」


 もう自分は逃げられないのだと諦め、呆れつつ言うタイト。


エ「絵本の中にあった!意味はよくわかんない。」

タ「はぁ〜〜」


 ついにため息までついたタイト。こうして、私たちの修行が始まった。

 修行と言っても木剣を振ったり、魔法を出そうとしたりするだけのものである。そんなことを1時間ほど続けていると家の中からお父さんが出てきて、2人を見て驚いた。


エイジ「こんな朝早くから特訓か?偉いな〜」

エレナ「ううん、修行してんの。私、勇者になるんだ!」

 お父さんからの問に自信満々に答える。そんな私の隣では、


(言っちゃった)

 という顔をするタイト。そんな2人を見て、


エイジ「そうか!だったら、父さんも手伝ってやる。」

エレナ「本当?ありがとう!」

お父さんにお礼を言い、続けて、


エレナ「よかったねタイト。お父さん手伝ってくれるってよ。」

 そうタイトに告げ、修行から逃がさないようにする。それがわかったのか、逃げることを完全に諦め、


タ「はい。」

 と、返事をするだけのタイトだった。


それから私達はお父さんに剣の振り方、体の使い方、簡単な魔法の出し方を教わり、


エイジ「ちょっと今から仕事行ってくるから2人で頑張るんだぞ。あと、休憩もしっかり取るんだぞ。休憩をちゃんと取ることも修行だからな。」


 と言い残し、仕事へ出掛けた。

 お父さんは普段は畑仕事などをしており、作物を育てる中で特にすることがない時期には害獣や魔物の駆除などを行っている。体は麻痺し、現役時代程の力は出せないが、低級相手ならなんとかなるらしい。


 お父さんに言われたように休憩を取った2人は、剣の打ち合いを始めた。

 しかし、それは打ち「合い」と呼ぶにはあまりにも一方的なものだった。続けざまに攻撃を仕掛け、反撃をしようとも思わせない連撃にタイトは防御に徹するしかなく、必死に防御を続け、息切れを狙うタイト。

 だが、底なしの体力を持つ私が息を切らすことはなく、最後にはタイトの方が息切れを起こし倒れ込んだ。


タ「ちょ、、ちょっと、休憩」

エ「えーー!ちょっと早すぎるよ!さっき休憩したばっかじゃん!」


 息も絶え絶えで今にも死にそうなタイトに対し、まだまだ余裕だということを示す。そんな可憐な美少女である私を恨めしそうに


タ「この体力化け物め」

 と小さな声で聞こえてきたので、脛を足のつま先でガシガシと蹴った。タ「いた、痛い痛い、ごめんって、」

 そしてここでふと思いつく。


エ「そうだ!今から魔獣退治に行こう!やっぱり実戦だよ実戦!」

エ(それに実戦でタイトのビビりなとことか治るかもだし。

フッ、天才すぎて自分が怖い)


 と、自画自賛に浸る私に1人で笑い出してドン引きのタイト。


タ「そ、それは早いんじゃない!?もっと強くなってなからじゃないと危ないよ!」

エ「ビビりだなぁ。さっきお父さんから戦い方習ったし、私もいるからだいじょーぶ。」

タ「ダメだよ!死んじゃうかもしれないよ?」

エ「でェ丈夫だ。なんかで生きけぇれる!」


 本気で心配するタイトに全く聞く耳を持たず揶揄う。その後もタイトは説得を試みるが魔物が出る森の奥地へと行ってしまった。


タ「僕達木剣だし、ヤバくなったらすぐに逃げるからね。」

エ「そんくらいわかってるって。ていうか、逃げる前に全部倒すから。あと、タイトも一体は倒すんだよ?」

タ「無理だってぇ。まぁ、頑張るけどさあ」

エ「大丈夫大丈夫。今から倒すのはちょっと強い中型犬みたいなやつだから。名前は、、なんだっけ?ドーナツみたいな感じだったけど、まぁいいや。」


 不安そうな、絶望の表情でいっぱいのタイト。その間にもどんどんと森の奥地へと入って行く。


エ「特徴は真っ黒な体に赤い目、尖った牙だね。ほぼ犬みてぇなもんだ。あーあと、走るのが速いらしい。」

タ「ほんとに大丈夫なの?と聞こうとしたけど手遅れやんこんなん。」


 まるで待っていたかのようなタイミングで出てくる魔獣。言っていた特徴通りの見た目。


エ「どう調理してやろうか?ヒヒヒ」

タ「悪魔でも取り憑いてんの?」


 明らか悪役サイドなセリフと笑みをこぼす私と、それを心配そうに見つめるタイト。


エ「集中!来るよ!」

 そう言うと同時に走り出す。

 魔獣もほぼ同時に走り出し、10m程あった距離を一気に詰める。切っ先の届く距離まで近づき、木剣を上から思い切り振り下ろす。が、魔獣は左方向に飛び、木剣は空を切る。

 これで決まると思っていたため、木剣を途中で止める力もなく地面へと叩きつけ、次の行動が遅れることに気づく。魔獣は地面を蹴り、口を大きく開け、飛びついて来る。


エ(あ、やばい)

 咄嗟に左手を出す。


タ「後ろに飛んで!」

 聞こえた声に反射的に従い、魔獣から大きく距離をとる。と、同時に周りの木々を揺らし、草葉を巻き込む旋風が目の前を通り過ぎる。

 タイトの風魔法だ。魔獣は空中にいたため、避けれずモロに喰らい、吹き飛ばされ木に背中からぶつかる。タイトが心配そうに走って駆け寄って来る。


タ「大丈夫?怪我は無い?」

エ「大丈夫。ありがとう。悔しいけど、案外やるじゃん」


 少し怒ったような不満そうな態度で言ってみせる。でも、


エ(なんでだろう?自分の事じゃないのになんでこんなに嬉しいんだろう?)


 普段手を引っ張っぱり、タイトよりも先にいる私を助けて何かいけないことをしたのかと無駄な心配をするタイトは何か言おうとするが、言葉がなかなか出てこない。


エ「フフッ」

 慌てる姿が少し愛しく思ってしまいふと笑みがこぼれる。


タ「なんで笑ってんの!?」

エ「ううん。タイト!私なんでか嬉しいみたい!」

タ「なんでだよ。ほんとに意味がわかんないよ。もう」


 困ったような言葉を言うタイト。だがそんな言葉とは逆に少し笑う。視界の端では魔獣が起き上がりこちらを睨みつける


エ「さぁ、まだだよ!気ぃ引き締めていくよ!」


 掛け声に当然と言わんばかりに右手に木剣、左手を前に出し戦闘態勢に入るタイト。


 魔獣は真っ直ぐにこっちに来るかと思いきや、横方向に走り出した。違う。木々の間をジグザグに動き、こちらに近づいてくる。

 背の高い草などもあり、あっという間に見失ってしまった。タイトと背中を合わせ辺りを必死に見回す。あらゆる方向から魔獣が駆け抜ける音が聞こえる。


ガサガサッ!

 と、音がした方を見ると、魔獣はタイトの視界の外から襲いかかり、その事にタイトは気づいていない。咄嗟に左足を踏み出し、斜め下から振り上げる。今度は当たったが、所詮は10歳にも満たない少女。


エ(重ッい)


 何とか振り抜くが攻撃を食らったようには見えない。追撃をしようと1歩踏み出そうとしたが、また草木に隠れ見失う。

 木剣は効かない、草木で相手が見えない、音で聞いても速すぎてわからない。


エ「どうしよう!力が全然足りない!」


 タイトは答える間もないのか、何も喋らない。


エ(どうしよう、私が安易に言い出したから。タイトの言ったことを聞いておけば良かった。私のせいでタイトが。タイトが!)

タ「エレナ」

エ「な、なに?!」


 考え込んでいて少し驚いて返事をする。


タ「僕たちの周りだけ炎魔法で暖めれる?火は出さずに空気を暖める感じ」


 今も草木の揺れる音が絶えない。何をするのか分からないが、何か作戦があるのだろう。そのことを確信する。少し息を吸い込み、はっきりとした口調で答える。


エ「わかった」

タ「ありがとう、なるべく地面付近が良いかも。」


 そう言われ、手を地面につけて、先程お父さんに習った魔法を実戦する。

 ちゃんと出てるのかはわからない。少し不安になる。するとタイトも同じように手を地面につける。


タ「少し強めに炎魔法出しといて」


 そういうと、タイトは大きく息を吸い込み、集中を手に注ぐ。


エ(寒い?いや、氷魔法か!)


パキパキ、

 と音を立てながら私たちを中心に周りが少しずつ凍りついていく。魔法の効果が私たちの間近まで段々近づいて来ているのを見て炎魔法を出す手に力が入る。

 左後方で先程まで鳴り続いていた草葉の揺れる音が止まる。


 数秒の間そうしていると、タイトがおもむろに体を起こし、


タ「多分もう大丈夫。魔獣もそこら辺で凍りついてると思う。」

エ「どこにいるんだ?最後に聞いた音的にこっち側だと思うけど」


 最後に聞こえた音を頼りに歩き出す。

 草木を分けると全身が氷漬けになった魔獣を見つける。タイトもまだ未熟なのだろう。凍りついているが、まだ生きている。もう息絶える寸前だが死にきれずにいる。

 なんだか申し訳ない気分になる。もし、私たちが森に入り遭遇しなければ会うことも戦うこともなかっただろう。


エ「ごめん」


 そう言いながら、死にかけの魔獣に手を当て、氷魔法を出し絶命させる。


タ「帰ろう」


 私の気持ちを汲んだのだろうか。優しい口調で語りかけてくる。


エ「うん」

 と、返事を返し歩き始めることはできずに立ち止まっている。

 タイトはこちらをじっと見つめる。


エ(何故立ち止まっているかって?答えは簡単)

エ「家どっちだ?」

タ「予想通りの言葉をどうもありがとう。そして僕は今後、お姉ちゃんと2人では遠出をしないとここに宣誓する。」


 へへ、迷子だ。ここどこだよ。犬畜生と戦ったせいで方向ぐちゃぐちゃになった。

 そして悪いことには悪いことが重なる。


ガサガサッ、

 という先程も聞いた音が2人の耳に入る。それも複数。さっきの魔獣の群れだ。ざっと数えただけでも10匹はいる。


エ「タイト、さっきのもう1回できる?」

タ「できるけど、この数だと意味がない。」


 やばい、かなりやばい。具体的に言うとさっきのよりかなりやばい。


エ(まだ魔獣との距離は少しある)

 魔獣の群れから視線は離さず、1歩ずつ後ずさりをする。


エ「タイト」

 私は覚悟を決め、タイトに語りかけた。そして、


エ「逃げるよ!」

 そう言い、私たちは後ろを向き、全力で走り出す。

 魔獣の群れが追いかけてくる。魔獣に向けて何度か魔法を放ち足止めをするも、意味はなく徐々に距離を詰められる。


タ「あ」

バタンッ!

 タイトの声が聞こえ、タイトの方を見ると、前のめりに倒れている。転けたのだろう。そこに魔獣の一匹が飛びかかる。


エ「危ない!」


 咄嗟に木剣を右から横に振り抜くも距離を見誤り、かすりもしない。魔獣はそのまま、木剣を振り抜き無防備となった私の右腕に噛み付く。

 尖った複数の牙がくい込んで来る。瞬間、腕に電撃のような激痛が走る


エ「アァァ!!痛い!痛いぃぃぃぃ!」

タ「うわぁぁぁぁ!!やめろォぉぉぉぉ!」


 タイトは持っていた木剣を思い切り魔獣の腹に突き刺す。木剣が魔獣の腹に突き刺さった痛みからか口の力が緩む。

 私はそれを逃さず、左手の木剣で思い切り魔獣を殴る。今度は頭を捉えた。魔獣は腕から離れる。

 魔獣はフラフラで距離をとろうとする。


ドォォン!

 フラフラの魔獣の辺りで大きな音と砂埃が立ち込める。タイトが岩間法で攻撃したのだ。先のとがった岩は魔獣の頭を潰して血が飛び散っている。

 即死だ。やっと1匹を倒した。


エ(これをあと何回やればいい?)


 気づいたら魔獣に囲まれ逃げ道が無くなっている。


エ(どうする?炎魔法で辺りを燃やすか?それだとこの森じゃあ私達も逃げれない。水ではどうしようもできない。岩魔法で撃ち抜くか?ダメだ他の魔獣に詰められて終わりだ。

誰か!いや、こんな森の奥地に人が来るわけない!)


 あらゆる打開策を考えるが、到底不可能である。先程噛まれた右腕が熱い。見ると出血が酷い、この右腕だと使い物にならない。


タ「お、お姉ちゃん!大丈夫!?ねぇ、あ、あああ!」


 タイトは混乱し始め、泣き始める。

 これじゃ戦うのは無理だ。そうこう考えていると、魔獣の1匹が飛びかかってきた。対処法が未だに出てこない。


エ(あ、、、死ぬ、)


 無駄だとわかっているのに、左手で防御するように前に出す。


ドサッ、

 という音が聞こえた。いっこうに噛みつかれない。

 恐る恐る前を見ると、魔獣が気絶している。


?「大丈夫かい?」

 声のする後ろのほうを見ると、ジョーカーが立っていた。


エ&タ「ジョーカー!!」


 魔獣の視線は一気にジョーカーへと向き、低く唸り声をあげ、威嚇する。が、ジョーカーは気にもとめずにこちらに話しかける。


ジ「どうしてこんなところに?まぁ、それは後で聞こうか。

とりあえず、魔獣を仕留めるか。」

 そういうと、ジョーカーは視界から姿を消した。と認識した時には既に、魔獣の首と胴は切り離されていた。

 圧巻の光景だった。目の前にいたジョーカーも気づけば後ろにたっている。


 窮地に駆けつけ、颯爽と助け出す。この光景はまるで、絵本で見て、憧れた、私の夢そのもの、


エ「勇者」

 つい、ボソッと声が出た。見惚れてしまっていた。一瞬なのか数秒経ったのか分からないくらいに。


タ「ジョーカー!!お姉ちゃんが!お姉ちゃんが!う、うわあああん!」


 タイトのうるさい声で現実に引き戻される。


エ「うるさいなぁ、なんであんたが泣いてんの?血ぃ流して痛いのは私なんだけど」

タ「だって、だってぇ!」

ジ「タイト君、落ち着いて。エレナちゃん右腕出してみ。」

エ「りょ」

 そう言いサッと右腕をジョーカーに突き出す。

 ジョーカーは右腕に手をかざし、魔力を込める。回復魔法だ。空いた穴がみるみる塞がり、血も消えていく。


ジ「こりゃ酷い。幸いこの魔獣には毒とかそういうのもないからこれだけで済みそうだ。よく泣かずにいられたね」

エ「これに涙全部取られた」

 そう言い、タイトを指さす。


ジ「あ、あ〜、なるほどね?」

タ「ひぐっ、うう」


 回復魔法も終わり、腕がちゃんと動くのを確認する。ちゃんと機能するかの確認を一通り終えたが、まだ泣いているタイト。


エ「もう〜、泣かないでよ。」


 今回ばかりは私が悪いため、罪悪感もあり、あまり強くは言えない。それでも泣き止まないので、


エ「ほら、ゆっくり息して、もう大丈夫だから落ち着いて。ね?」

 そう言い、タイトの背中に抱きつく。右手をタイトの右手に乗せてお腹の方に手を回す。左手ではタイトの頭を撫でつつ、時折涙を拭う。

 タイトはこうすると段々泣き止む。


エ(人前でするの少し恥ずいな)


 チラッとジョーカーを見ると、驚いた。いやもう、驚いたなんてもんじゃない。声も出なかった。


エ「え?え?なんでジョーカーが泣いてんの?」


 ジョーカーは天を仰ぎ、涙が頬を伝っていた。訳が分からずにいると、


ジ「僕は今猛烈に感動している。僕たちの望む世界が今、目の前に広がっている!」


 こいつも一緒に退治しといた方がいいんじゃないかと、本気で思った。


ジ「ところでなんでこんなとこに居たの?」

エ(え?そんな急に切り替わる?)

エ「私ね、勇者になるの。だからその修行として実戦をしようとして、こんなことに」

ジ「あー、昨日の絵本か。予想はしてたけどエレナちゃんはやっぱり流されやすいね。まぁ、心意気はいいとして、もうこんなことしちゃダメだよ?もう、じゃないな。まだ、ダメだよ。ちゃんと基礎を身につけて、力も強くしてからじゃないと」

エ「ごめんなさい。行けると思ってた。」

ジ「反省してるなら大丈夫だよ。結果論だけど、幸い治る怪我だけで済んだし。」

エ「ジョーカーはなんでここに?正直誰も来ないし、助からないと思ってた。」


 ジョーカーが少し寂しそうな顔をしたのが一瞬だけ見えた。ジョーカーは少し間を置き、


ジ「・・・知り合いのお墓がこの先にあってね、お墓参りに行ってたんだよ。」

 そう言い、ジョーカーはジョーカーが来た方向を指さす。


ジ「で、その帰りに大きな音がしたから駆けつけてきたんだ。まぁ、今回のことは僕のせいでもあるから誰にも言わないようにするから君たちも誰にも言わないこと。いいね?」

エ「わかった」

タ「うん」

 そう言い、帰るために歩き始めた。

 私たちが魔獣の群れから逃げていた方向は村がある方向で、一応走り続けていたら何とかなっていたのかも?村に戻るとレイが家の前にいた。


レ「ジョーカーさんこんにちは。3人とも何してたの?」

エ「えっと、」


 あ、言っちゃダメなんだった。どうしよ。つい言おうとしちゃって、言葉が止まっちゃった。なんて言おう。


ジ「昨日みんなに贈り物をしたでしょ?その中でエレナちゃんに絵本をあげたんだ。で、勇者が魔王を倒して世界を平和にする物語なんだけど、まぁ予想通り、エレナちゃんが勇者になるって言い出して、修行を初めたってわけ。」

エ「そういうこと。」


 ジョーカーが全部言ってくれたのでこれに便乗する。


タ「レイは何を貰ったの?」

レ「お饅頭。抹茶味の。」

エ「お?ジョーカー、よくわかってんじゃん」

ジ「もっと褒めてくれてもええんやで」


 持ち上げてみると、得意げになり誰かわからん語尾になるジョーカーは後でなんとなくしばくとして。


レ「とっても美味しかった。ありがとう。」

ジ「どういたしまして。そう言って貰えると買ってきた甲斐があったよ。」

エ「でさでさ、急なんだけど、レイも一緒に修行しない?

嫌なら断ってもいいんだけど、仲間はずれは嫌だしさ、レイとも一緒に旅したいし。どうかな?」


タ<ダメ、絶対ダメ>


 と口を動かし首を横に振るタイト。レイと遊ぶことにかこつけて修行をサボりたいらしい。

 それを見て、しっかりとタイトと目を合わせて、イタズラっぽく笑って見せながら、


レ「2人とならなんか楽しそうだから私も修行する!」

エ「ほんと?!やった!じゃあ早速今からやるよ!」


悲痛の訴えも虚しく、絶望するタイト。大はしゃぎする私に優しく笑うレイ。


ジ「今からはさすがに遅いから、また明日からね。修行は僕も見てあげるから」

 という、ジョーカーの声で今日の修行を終える。

 そして、明日からホントのホントのホントに修行が始まる。

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