第44話 本物の痛み、本物の恐怖
/639年8月2日/
19:00
*視点 戦闘時*
ロ「ちょっと、気ぃ抜きすぎなんじゃねーのか?」
ローネの声に全員が一斉に振り向いた。太陽が完全に落ちたあとのほんの少しの薄明かりを背に、ローネが剣を握り締めて言った。
パチパチ、という先程着けた火が何故か不気味な音を奏でているように聞こえる。
何か怒っているのか、その表情には一切のおふざけはなく、ただただ、タイト達をじっと見続けていた。
ローネのただならぬ気迫に全員動くことなく、黙って聞いていた。
ロ「街の中なら、街の近くならまだしも、ここは完全に他の目が届かない。何かあっても誰も分からない。そんな孤立した場所に今、お前らはいるんだぞ?」
突然、いや、ローネはずっと態度に示していた。それに気が付かなかっただけなのだ。
ロ「なぁ?そんなんで本当に、私らを倒すつもりなのか?」
タ「・・・いきなりどうs
タイトが一言、言いかけた時には既にローネはタイトの目の前で剣を構えていた。ローネとタイトの距離は約7m。予備動作の一切ない、一瞬の移動。
シキとレインがこれに反応できていたが、遅かった。
ローネは勢いそのままに右下に構えた剣を振り上げた。タイトを半歩通り過ぎた辺りから。剣がタイトには当たらぬよう。
カァンッ!
ローネはタイトの後頭部目掛けて飛んでくる何かを上方向へと跳ね返した。
くるくると回転するそれは1本の棒であった。先端は鉄製で尖っており、真ん中には真っ直ぐの木の棒、最後に白い羽の付いたなにか。
シ「矢、、、」
ローネは自由落下してきた矢を、大袈裟に音を立てながら思い切り踏み砕いた。
次の瞬間、コクウがすぐさま弓矢を取り出し、遥か後方の岩柱の頂上に目掛けて矢を放った。コクウの狙った場所に矢は飛んで行ったが、それらしい手応えはない。
コ「遠い上に暗い。多分当たってない」
矢の着弾を見届けたコクウは一言、悔しそうに言う。
コ「この暗さじゃ、弓矢は役に立たないな」
コクウは弓矢を収納魔法に戻し、1本の短剣を取り出した。
レインとシキ、コクウは既に戦闘態勢に入っており、パルスとリューソーも状況を読み、慌てて剣を抜き取る。
パ「なに?!魔物?」
リ「矢...知性があるのか?」
シ「・・・複数いる。
それも、既に近くに」
シキの言葉に言葉を失う2人。カァカァという烏の声が夜の闇で響く。
タイトは後頭部に矢、というローネが防いでいなければ即死していたであろうそれと、なぜ自分がという疑問。矢に気づかなかった自分の不甲斐なさ。という情報が、タイトの頭の中でとめどなく溢れ、呼吸もままならず、立ち尽くしていた。
真夏というのに、体の体温を奪って行くような、いやに冷たい風がタイト達を通り過ぎた。
何かの影が岩柱の傍から飛び出してきた。それも複数の影が至部分には
ガァン!
未だ剣を構えていないタイトに、1つの影が襲いかかった。それをローネが防御する。
襲いかかってきたそいつは火に照らされ、ようやくその風貌を見ることができた。
相手は人間だった。
全身が黒で統一された動きやすそうな服装に深く被ったフード。顔には目元を隠すような仮面。露出の少ない顔に浮かぶ、一切の表情の読み取れない口元。
ローネが反撃を叩き込もうと剣を振るったが、ギリギリのところで躱されてしまい、暗闇の中へと戻って行った。
ロ「おい!早く剣を抜け!」
ローネの叫びにタイトの意識がようやく地に着いた。だが、既に周囲を囲まれており、逃げることは困難な状況。
それらはタイト達を焦らすように、追い詰めるようにわざと音を鳴らしながら、襲いかかることなく周囲を駆け回り続ける。
パ「なんなんだコイツら!」
リ「旅物にありがちな盗賊か?」
コ「盗賊とはちょっと違う感じがする、」
シ「また、か」
周囲を警戒しながら少し考え込むシキ。そういうものとは離れたとこにいたタイトは理解が追いつかないでいる。
リ(この場を和ます俺渾身のボケが...泣)
バチッ!
レインが両手と刀に電気魔法を付与し、構える。
レ「あまり近づかないで、巻き込むから」
いつもよりも真剣な表情のレイン。電気のピリピリとした感覚がタイトにも伝わる。
ピュン、ドスッ、
何かが風を切る音が聞こえた。そして何かに刺さる音。それに気づき振り返るシキの視界に映るは、左足に矢が刺さり血が吹き出しているリューソーの姿。周囲を駆け回る奴らの中の誰かが放った矢。
リ「ぐ、、あぁぁ、、」
シ「コクウ!」
コ「わかった!」
コクウがリューソーに急いで近寄る。そちらに視線が行ってしまったタイト。
キィン!
タイトのすぐそばで金属音が走った。タイトが正面に視線を移すと、目の前にはローネが剣を振り抜いていた。
タイトは頬に静電気のような痛みを感じ、指で触れてみると、何かに切られたかのような傷、指に付着した赤い血。
ロ「よそ見すんな!」
ローネ2度目の怒号。ローネは続けて剣を構え直す。よく目を凝らして見てようやく見える、風魔法で薙ぎ払ったような微かに光る何か。答えはローネの防いだ時に鳴る音でわかった。
キィィン!
斬撃だ。飛ぶ斬撃がローネ及びタイトに襲いかかっていた。それも絶え間なく無数に飛ぶ斬撃が。
ローネは飛んでくる斬撃を一つ一つ剣で叩き折った。
飛ぶ斬撃が止んだあとすぐ、ローネは再び剣を右手に構え、飛んできた何かに向かって振るおうとしたが、ピタッと動きを止めた。
ロ「ふざけんなよ、」
ドン、
という鈍い音と共にローネは暗闇の中へと消えて行った。タイトが横目で見たのは、高速で移動する人間がローネに突進をする姿であった。
タ「ローネ!」
リ「シキ!」
タイトの後ろでも何かが起きている。だが、そちらを気にかけるような隙は無い。
タ(ッ!)
タイトは右方向からの殺気を本能で感じとり、刀を強く握りしめた。
再度飛んでくる斬撃。タイトはこれを防ごうと、正面から刀を振るうも
タ(防ぎ、きれない!)
右後方へと斬撃を流すも、無理やりに力を使ったせいか、タイトは体勢を大きく崩した。
次を防ぐことはできないと判断したタイトは左方向へと大きく飛んで、無数に飛ぶ斬撃を転がりながら避けた。
レ「タイト」
タイトが転がった先にはレインがいた。が、どうも様子がおかしい。体に力を入れているのか、全身の震えが目に見え、刀を片手で持ち、構えずにゆっくりと前へと1歩ずつ足を進めるレイン。
レ「...ちか...づかない...で」
ズザザ、ズザザ、
と、何かに引っ張られるように前へと進むレイン。やがて、電池が切れたかのようにレインは全身の力をフッ、抜くと同時に暗闇の中へと引きずり込まれて行った。
タ「レイ!」
ドスッ!
レインを掴もうと伸ばした左腕に刺さる、不自然な黒いモヤの中から伸びる剣先。
タイトは一瞬何が起きたか理解出来ずにいた。だが、痛覚が脳みそに直接理解させた。
タ「ああぁぁぁあ!」
腕に走る激痛。仮想空間の中で何度も味わったことのある痛み。だが、あくまで仮想空間。現実となると何かを失うという恐怖が、痛みを加速させる。
コ「タイト!」
コクウがタイトの叫び声に気づき、タイトの傍に近寄ろうとするも、後ろから2人に襲いかかって来られ、足を止めることを余儀なくされる。
コ「邪魔、しないで!」
タイトの左腕に刺さった剣は引っ張られるように抜かれ、モヤの中へと消えた。
剣が無くなったと同時に、タイトの目の前に現れる、半径1m程の円形の黒いモヤ。<空間移動>でその中から1人の人間が歩いて出てきた。手には身長程の長さの槍を持って。
急いで回復魔法をかけようとするタイトに相手は左足を前に踏み出し、右手に持つ槍で容赦なく襲いかかった。
タ「うあぁぁぁ!!!」
タイトは突いてきた相手の槍を何とか体の左へと受け流し、反撃の体勢に入ろうと右足を踏み出した。
相手は受け流された槍を無駄に力を加えることなく、弾かれた勢いで槍を体の右側で縦方向に一回転させ、今度は両手で持って右側から槍を振り抜く。
槍の挙動にギリギリで気づいたタイトは攻撃から防御の体勢に切り替え、すんでのところで槍を刀の切っ先を下に向けた状態受け止めた。だが、
タ(重すぎる、!)
長さと重さから来る遠心力と左腕の痛みが加わり、吹き飛ばされそうになるタイト。
タイトは足で土魔法を放ち、地面を足に巻き付け、浮きそうになる体を何とか踏ん張り、槍を上へと逃がすことができた。
だが、上へと弾いた槍も、自身の体を支点にして回転させて休む間もなく攻撃を始める。
タイトは足元の地面を土魔法で操り、解除の後受け止める時に再び巻き付けるという動作を繰り返しながら2度、3度槍を受け流した。
相手が槍を体で隠すように後ろで回し始めた時、
ザクッ、
と、背中に激痛が走った。何かに切られたかのような横に広がる鋭い痛みと仰け反る体。
タ「な、、、!」
タ(誰に、、)
目の前の敵以外、近づいた気配も無し。矢や魔法などの遠距離攻撃の類でもない。
タイトの疑問の答えは目の前にあった。先程から振り回している相手の槍に付着した真新しい血。
タ「神技...」
最初にタイトの左腕を貫いたように、槍の先端だけを神技の黒いモヤを通し、<空間移動>させたのだろう。
しかし、種がわかったところで相手がそれを止める訳もなく、タイトがそれを防ぐ術もない。タイトは重い致命傷のみを受け流し、浅い傷を体中に増やし続けていた。
タ(痛い痛い痛い!防御だけでは意味が無い!
何とか!反撃をしないと!)
依然、傷を増やしながら、そう考えていたタイトに絶好の機会が訪れた。
防御一方だったタイトの目の前で、槍を体の周りで回していた相手が、突如として何かに押されたかのように激しく体勢を崩した。
おかげで、今回は神技による攻撃は発動せず、相手の振り下ろしの攻撃もタイトの左側へと大きく外れ、槍を地面に叩きつけた。
タ(今しかない!
腕だ!腕を切り落として無力化すれば!)
相手は重い槍を地面に叩きつけたことで次の行動に移れずに無防備状態でいた。相手との距離はおよそ1m。
タイトは左側に刀を構え、右足を大きく踏み出してほぼゼロ距離まで近づいて水平方向に腕、ついでに腹部を狙って刀を思い切り振り抜いた。
ブンッ
刀が風を切る音が聞こえた。素振りであれば快音であると言えただろう。タイトの刀は相手に触れるほんの少し手前のところで全身を隠すような黒いモヤに入り、遥か遠くの何も無いところに<空間移動>させられていた。
相手は既に突きの体勢に入っていた。しかし、振り抜いた刀は急には止められることはできず、防御が間に合うことはなく、
ズドッ、
という鈍い音を鳴らしながら、タイトの左脇腹を正面から突き刺した。
タ「グァ、!」
口から血反吐を吐くタイト。
相手「ッ、!」
槍の穂先はタイトの背中までは貫通せず、中途半端なところで止められおり、相手は何かと力を押し合いをしているのか、槍は微かに揺れていた。
だが、タイトはそれに気づくことはなく、絶好の機会を無駄にしたという自身への劣等感と体中を走る痛み、脇腹に刺さった槍がタイトの思考を奪った。
タ「うぁああぁああ!!!!」
タイトは左手にありったけの魔力を込めて、特大の風魔法を暴発させ、自分諸共、相手を引き剥がすように相手と自分を勢いよく吹き飛ばした。
コ「タイト待って!見えないと、援護が!!」
コクウの忠告はタイトには届くことは無かった。コクウがタイトの傍に行こうとするも、相手が頑なにタイトに近づくことを妨害してくる。
ドン!ゴロゴロ!ダァン!
タイトは吹き飛んだ衝撃で地面に受け身を取れずに叩きつけられ、堅い地面を転がり、やがて岩柱に激突した。
カランカラン、
岩柱に衝突したことで右手から刀を落としてしまった。
バサバサと近くで烏が飛んでいく音が聞こえる。
タ「はぁ、はぁ、」
息切れを起こしながら岩柱を背もたれにして、上体を起こして座り込むタイト。落とした刀を拾おうと右手を刀に向けて伸ばした。
ダン!
刀を拾わせまいと、伸ばした右の掌を貫通し岩柱に突き刺さった、暗闇の中で淡く光る1本の剣。
タイトの目の前に半径1m程の大きな黒いモヤが出現する。
中から仮面にややヒビの入った、槍を持った男が現れた。槍を握り締め、本気の殺意を持ってタイトに槍を向ける。
タ(逃げないと!刀を拾わないと!負ける!殺す...死ぬ!嫌だ!刀!動け!倒さないと...死にたくない!逃げ、!怖い!死ね...やられる、殺される!殺さないと...誰か!助けて!怖い怖い怖い怖い!)
タ「はっ、はっ、はっ、」
痛みと向けられた殺意で、色んな感情がごちゃ混ぜになり、呼吸が浅くなり、取るべき行動も頭に浮かぶも、恐怖で足が竦み動けない。
タ(倒せ...勝て...殺..せ)
出血により、段々と遠のいていくタイトの意識。生き延びようとする生存本能からか、タイトは左手を相手に向かって力なく伸ばした。
相手はそんなタイトに気にもとめず、ただ機械のように槍の穂先を下に向けるように持ち、振りかぶって突き刺そうとした。その時、横から氷魔法が飛んできているのを察知し、槍を持ち替えて氷魔法をぶった斬った。
だが、氷魔法が砕けた瞬間、氷の中には限界まで圧縮された風魔法が封じ込められており、それが解放されたことで、嵐のような風が相手を襲った。
予想外の魔法に相手は大きく吹き飛ばされた。
タイトはその光景をボヤける視界の中で見ていた。援護が来たことによる安心感から、徐々に意識を取り戻しつつあるタイト。
立ち上がろうと、ゆっくりとした動作で、左手で右手に刺さった剣を抜き取るタイト。
そうはさせまいと、<空間移動>で近づき、急いでトドメを刺そうとタイトに槍を突いてくる相手。
タ(あ、ダメ...か)
まだ刀を拾えていないタイトは諦めて目を閉じてしまう。
キィィン!
金属の衝突音が暗闇の中で鳴り響く。タイトがゆっくりと目を開けると、タイトと相手の間を割るように立つ1人の人影。
タ「シキ、、?」
タ(じゃない、、、誰だ、?)
タイトはすぐにシキでは無いことに気づく。背格好は似ているが、服装も装備も丸っきり違う。暗くてよく見えないが髪の色も明るい色ではあるが、白ではないように見える。
謎の人物は相手を剣で受け止め、力で相手を後退させた。
そこで初めてそいつは初めてタイトを見た。そいつは顔全体を覆い尽くすような白を基調としたお面を付けていた。まるで顔を見られたくないかのような。
お面はタイトの方を見ると、しゃがんで手を地面に着けて魔力を流した。
土魔法で地面を変形させてタイトの顔スレスレの位置に刺々しい地面を岩柱へと突き刺した。
タ(味方、じゃないのか)
色々起こりすぎて状況が掴めないタイト。
カァン!
直後、タイトの顔横から出現する槍を変形させた石が防御する。
お面は立ち上がり、すぐに<空間移動>で近づいてきた相手の槍を弾く。
凄まじい速度で繰り出される、攻撃と防御の応酬。<空間移動>で槍の穂先だけを移動させた攻撃も全て知っているかのように、着実に防ぐお面。
そして、ある頃合で<空間移動>からでてきた槍の穂先を手袋の上から掴み、自分の方へと引き寄せた。
槍を回転させるという、まともに掴んでいない状況の槍は容易く奪うことができた。
相手「くッ、」
奪った槍は即座に自分の収納魔法へと放り込む。お面は武器無しとなった相手に容赦なく剣を振るう。
相手は武器は奪われども、攻撃の手をやめようとはしなかった。相手はお面の剣を<空間移動>で剣をいなし、すぐに拳を構えてお面に殴りかかった。
お面は拳をスレスレのところで顔を傾けて躱し、拳に向けて下から剣を振るう。
相手はすぐに拳を引くと同時に後ろへと飛んで1度距離を取った。着地と同時に左手から火球を放った。お面はそれを水魔法で火球を包むように無効化する。
水と火を接触させたことで辺りに小規模の水蒸気が発生する。
この水蒸気に隠れて相手は、明らかに離れた位置から拳を振りかぶって空に向かって殴り始めた。
完全な死角から<空間移動>で殴りかかってきた拳をお面は土魔法で空に生成した大量の砂で見ることなく防ぎ、掴んで離さない。
ザン!
お面は掴んだ相手の腕を一切の躊躇なく切り落とす。
相手はこれに声を上げることはせず、左手で<空間移動>を介して右腕を自分の元へと引き寄せる。相手は不利と判断したのか、半径1mの<空間移動>を出現させ、逃げの姿勢を見せた。
お面はこれを逃がさないよう、そこら辺に転がっている砂を土魔法で操り、無数の弾丸で相手を蜂の巣にした。
仕留めることはできなかったが、かなりの致命傷を与えられただろう。相手は倒れるように<空間移動>のモヤの中へと消えて行った。
お面はタイトの傍に近寄り、回復魔法でタイトの致命傷を癒した。
お面「早く、回復魔法を」
後は自分で治せる程の傷を残して、お面は回復魔法を促した。声はお面のせいでくぐもって聞こえた。
タ「あ、あぁ。すまない、助かった」
お面はみんなの方へと向かうのか、火の光の方へと歩き出そうとした。
タ「なあ、名前なんて言うんだ?」
お面は一瞬足を止めたが、振り向くことすらせずにみんなの元へと消えるように走り出して行った。
タイトも早く仲間の加勢をしようと、自身への回復魔法に注力する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*タイト視点*
回復を終え、みんなの加勢をしに行った時には全てが片付いていた。みんな割と大丈夫そうで、傷だらけなのは俺だけのようだった。
タ「不甲斐ない、、、」
シ「しょうがないよ、!初めてだったし、いきなりだったし」
リ「俺は何回か盗賊と戦った事あったからなー」
パ「コクウにちょー助けて貰った。もうおんぶにだっこ状態だった」
シ「僕もお面の人に助けて貰ったんだ〜」
タ「あの人なんなんだろうね?」
コ「わからないけど、あの人のおかげであいつらが撤退して行ったからね。今度会った時は色々とお礼しなきゃね」
みんなもあのお面の人に助けられたようだ。
タ(一体何者なんだろうか)
ロ「シキ、コクウ、お前らなー、魔力探知が甘い上にバレバレ」
ローネがいつも通りの口調でダメ出しをし始めた。
ロ「常時やってるのは、まぁいいが、それが相手にバレちゃ本末転倒だろ?」
シ「うっ、肝に銘じておくよ」
コ「気をつけまーす」
続けてローネは2人からこちらの方へと視線を動かした。
ロ「あと、その他の奴ら」
リ「はい!」パ「その他?」
ロ「お前らはもっと周りを警戒しろ」
ロ「常に魔力探知をしろ、と言いたい訳じゃない。周囲の環境の異変に気づけ。
周囲の動物が明らかに少ないだとか、下見をしに来たような形跡があるだとか。
あと、殺気を感じ取れ。これはどんな状況でも、誰かを殺そうとする時は必ず感じる『気』だからな。
これだけは察知できるようになれ。」
淡々と俺たちの課題を告げるローネ。何も間違っていないし、無茶も言っていないため、ぐうの音も出ない。
ロ「楽しく旅をするのは構わない。むしろ大賛成さ。
だがな、そっちばっかりで、大切なものを失ってからじゃ遅いからな?」
リ「でも、そういうのって見つけるの難しくないか?相手はそれを隠そうとする訳だし」
ロ「人間の害意に周囲の環境は敏感に察知する。
そういうのを見つけたら警戒するってだけでも、違って来るって話だ」
パ「了解しやすた」
タ「今度から気をつけてみよう」
周囲の環境の異変と、魔力探知。それと殺気を感じ取ること。忘れないでおこう。
お面が今回襲ってきた奴らを壊滅状態に追いやったということで、その日はもう襲ってくることはないだろうと、一応魔法で罠などを十二分に仕掛けて、その場で夜ご飯を食べた。
その後はいつも通り魔法で小さな部屋を作ったが、今日は色々あったせいか遊ぶ気にはなれず、早々に就寝した。
寝る前、シキは何やら悩んでいた様子だったが、聞いてもいつも通りの笑顔で、
シ「ううん、大丈夫だよ」
と、教えてはくれなかった。だが、大丈夫と言った後の一瞬、重く悩む悲しそうな表情を俺は見てしまった。




