表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今、生きているあなたへ  作者: ひびき
旅の始まりかも〜編
41/92

第39話 主人公

/639年7月14日/

〜仮想空間は今回でおわり〜

         *視点 戦闘時*

タイト&コクウ


タ「陣形どうする?俺が前に出た方がいい?」

コ「うーん、めんどうだし一緒に攻めよう!

自由に動いていいよ!私合わせるから!」

タ「俺...年下に配慮されてる」

コ「経験年数で言えば私の方が先輩だからいいの」

タ「それじゃあお言葉に甘えさせてもろて」

コ「1発は顔殴ってやるぞー!」


 コクウがやる気に溢れていて何よりだこと。タイトも内心、1発は殴りたくてうずうずしているのは内緒。

 タイトとコクウはルーザとリズの方を向き、戦闘に集中する。


ル「リズ、神技使っていいよ」


 ルーザが一言、ルーザの後ろにいた背がやや低めの女性に声をかけた。その言葉にリズは胸に手を当ててお辞儀をする。


リズ「承知致しました」

ル「頼んだよ」

リズ「ご期待に添えるよう、全力で参ります」


 そう言うとリズは両腕を軽く開き、右手を何かを掻い摘むような手の形にし、左手は広げる。足は肩の幅に開き、まるで指揮者の演奏が始まる直前のような格好をした。


 そしてリズは声に技力を乗せてゆっくりと押し出すように言霊を吐き出す。


リズ「音が支配する世界で、音楽に囚われる恐怖を刻むがいい」


 瞬間、鬱蒼と草木の生い茂っていた森が、リズを中心に一帯を色とりどりの花畑へと変化させた。器用に木だけを避けて、草のみを花へと変えている。


リズ「<刻音(こくいん)調律>」


タ「うお?!なんだこれ!?」


 一瞬で環境が激変し、あまりの変化にタイトが騒ぎ出した。


コ「うわぁー、理創郷かぁー、ちょーっと厄介」

タ「りそう、きょう?」


 タイトは初耳のようでアホみたいに聞き返す。


コ「ありゃ?知らない?

理創郷はねー、人それぞれみたいなとこあるから説明難しいんだよねー」

タ「と言いますと?」


 コクウが説明口調で理創郷について説明し始める。


コ「神技の中には明確に効果範囲が定められ、自分と他人に能力の影響を及ぼすものがある。

それを理創郷と呼んでいる」


 コクウは続けて、


コ「自分と他人の双方、平等に規則と破った際の罰を強制させるもの、もしくは自身に能力上昇と縛りを設けるもの。または両方。

理創郷の能力。

能力が必中かそうでないか。

出入りができるものできないもの。

理創郷の効果範囲の広さ等など、

ほんとに人それぞれなんだよね」


 次から次へと説明を受け、ぼんやりと気の抜けた表情のタイト。


タ「覚えきれるかな?」

コ「簡単に言うと、領域展開」

タ「あーそういう事ね、完全に理解した」


 腕を組み、頷きながら言うタイト。


コ「ちなみに理創郷発動時、周りの風景が変わるのは、発動者本人の能力の題材、今回だと音楽に対する想像と心象風景によるものらしい」

タ「じゃあ、あいつにとって音楽は平和そのもの?みたいな感じ?」

コ「かな?あとはこういう場所で公演を見たとか」


 コクウがタイトに理創郷について説明をひとしきり終えたところで、どこからともなく案内の声が聞こえてきた。


「音に合わせて動きを止めよ」


タ「なにこれ?」

コ「とりあえず言う通りにした方がいいよ!破ったら罰が来るから!」

タ「えぇ!」


 コクウがタイトに向かって忠告した直後、音楽が流れてきた。


テテテテテレーレ、テレテレデン!テッテデン!テーデン!


 速めのテンポで途中途中、分かりやすく大きな音が鳴る場所。


コ「あーそういう感じ?」

コ(てかこれどっかで聞いたことあるー、

この『でん!』で止まればいいのかな?)


ガキィ!

 考え事をしているコクウの横で金属音と何かが壊れる音が鳴る。 

 音の鳴る方を見ると、こちらに向かってきていたルーザがタイトに斬りかかり、タイトは後ろに下がりながら弾くも剣が粉々に砕け散っているところだった。


「3、2、1」

テテテテテレーレ


 突然始まりの合図がなり、数え終わりと共に音楽が流れ始めた。


 タイトは魔法の剣が砕けたため新しく剣を創造し反撃、ルーザはタイトへの更なる追撃で2人は撃ち合う。


 コクウは2人の元へと走り出した。


テレテレ


 ルーザが剣を上から、タイトが左側の腰の位置から剣を振り上げ、もうすぐで重なり合うというところで、


デン!


 という一際大きな音が鳴る。ルーザとコクウは完全に動きを静止したが、タイトは反応が間に合わず、そのままルーザの剣を弾いてしまった。


タ「あ...止まらな


ドォォン!

 突如、誰が何をした訳もなく、右方向へ大きく飛ばされたタイト。タイトはそのまま近くの木に受け身も取れずに衝突。


タ(これが違反した罰?!)


 タイトの体が謎の力により吹っ飛ばされて動けないでいる。その間も音楽は鳴り止まず、タイトはおもむろに顔を上げた。


テッテデン!


 今度はタイトも音に合わせて動きを止めたが、その視線のすぐ先には剣を握り締め、不気味な笑顔でタイトを見るルーザ。タイトの目の前で敗北が静止している。


テーデン!


 また1歩、ルーザの足が進む。剣を上に構えるルーザの射程圏内に入ってしまったタイト。当のタイトは現状確認のためにこの一瞬を使用してしまったため、動く機会を逃してしまっていた。

 さっきの吹っ飛びで剣は遥か彼方、魔法で作るには時間が無い。


タ(俺の出番、まさかのここで終了?!)


 再び動き出したルーザは構えた剣をそのままタイトに振りかざした。


ガキィ!


 咄嗟に目を瞑ったタイトが恐る恐る目を開くと、そこは部屋の中ではなく、コクウがルーザの剣をすんでのところで受け止めているところだった。


コ「いきなり大将は取らせないよ?」


 そう言ってルーザを見つめるコクウを、貼り付けた笑顔を崩すことなくルーザは見つめ返す。


 タイトは地面に手をつけ、土魔法で地面をルーザの腹部目掛けて局所的に隆起させて攻撃を仕掛ける。

 ルーザはタイトの土魔法をその場で飛び跳ね、足を曲げて土魔法に乗る。土魔法の攻撃の勢いを利用してルーザはまた飛び上がり、空中で一回転しながら大きく後ろへと下がった。


 タイトも魔法の剣を作りながら立ち上がり、反撃をしようとしたところで、コクウが深刻な顔でこちらを見た。そして、1つ呼吸をしてタイトの名前を呼ぶ。


コ「タイト、、、」

タ「はい、!」


 深刻そうな表情で名前を呼ばれて姿勢を正して返事をするタイト。


コ「私さっき、タイトに合わせると言ったな?

あれは...嘘だ、」

タ「・・・はい?」


コ「この神技相手はちょっと合わせるの難しい!」


 少し苦笑いしながら、小刻みに首を横に振って、タイトに伝えるコクウ。


タ「ですよね〜」

コ「ヤバくなったら援護はするけど、基本はタイトのこと一切考えずに行動するから、タイトも私の事気にせずに動いていいよ!」

タ「わかった!」


「合図に合わせて手を叩け」


 打ち合わせをする2人の耳に新しい命令が下る。


タ「次は手を叩くのか、、、」

コ「目の前の戦いと音に集中だよ!?」

タ「はい!」

コ「てか、手を叩かなきゃなら、魔法主体で攻めた方がいいかも?剣は捨ててさ」

タ「確かに。そっちのが手叩きやすいね」


 2人は剣を投げ捨て、タイトは左腕を右腕で引っ張りながら足首を回し、コクウは手の指を交差させて両腕を前へと伸ばして準備運動をしながらルーザ達の方へと歩み寄る。


ル「両手を空けて、手を叩くことに注力するか、、、いい判断だ」


 余裕そうな笑顔でつぶやくルーザ。ルーザも剣を腰の鞘に収めて、いつでも手を叩けるようにしている。


コ「さぁ、行こうか」

タ「あぁ、」


 2人は一斉に走り出した。それに合わせてルーザも2人との距離を縮めるように前に走り出す。

 タイトは足から風魔法を放ってコクウより体2つほど前に出る。


ル(こいつ、足速いな)


「しーあわせなーら」

 ここで、音楽が流れ始めた。誰もが聞いたことがあるであろう、あの有名な歌謡曲である。


タ(これ知ってる!これならいけそう!)


 タイトは子供の頃によく聞いて歌い慣れた音楽を聞いて、自信満々にその時を待つ。

 タイトとルーザは既に5m以内の距離まで近づいている。


「てーをたーたこう!」

パンパン!


コ「え?」

ル「ん?」


 待ちに待ったその時、タイトは自信満々に手を2回叩いた。他3人も同様に手を2回叩く。

 ただ、違うのは他のものは移動しながらの中、タイトだけその場で止まって手を叩いたことだ。ルーザは既にタイトの目の前に来ている。


 タイトは先の影響か、止まって叩くものだと思い込んでしまい、この間のルーザの移動をタイトは完全に考えておらず、反応が少し遅れる。


 ルーザは闘心を8割込めて、タイトを勢いそのままに大きく蹴り飛ばす。タイトは腕を交差させて防御し、致命傷は避けたが重い一撃を貰う。タイトは片膝をつき、折れた左腕を回復魔法で治し始めた。


 コクウは手に魔力を集中させ、電気魔法を纏ってルーザを掴みに手を伸ばす。ルーザはコクウの攻撃を察知し、剣を引き抜こうと手を伸ばす。


「しーあわせなーら」


 音楽が聞こえてきたことでルーザは伸ばしていた手を止め、水魔法と氷魔法で自身の右腕の表面に厚さ3cm程度の氷を張り、その腕でコクウの腕を弾いた。


 コクウはさらに左手から土魔法を放つも、ルーザはそれを右腕で防御し、土魔法はその場に落ち、氷魔法は砕けた。


「てーをたーたこう!」

パンパン!


 ルーザは手を叩きながらコクウの足元を薙ぎ払うように蹴る。コクウは小さく飛び跳ねてそれを避け、ルーザに2段蹴りをお見舞する。

 ルーザは左手でコクウの右足を掴み、2段蹴りを受け止めた。


 ルーザは火魔法を放とうと、右手に魔力を込めて準備する。コクウは掴まれた足を振り解くため、体の表面に魔力を纏い、手から電気魔法を放ち、手から全身へと体の表面を移動するように発動する。

 それを察知したルーザは電気魔法が足に流れてくる前に手を離し、距離をとる。


 ルーザは距離を取りながら火魔法をコクウに投げつける。それに対し、コクウは風魔法を極小の大きさまで圧縮し、指先から放つ。

 放たれた風魔法は火魔法を貫通・無力化しながらルーザへ威力を落とすことなく飛んでいく。


ル「的確に顔を狙いやがって...」


 ルーザは風魔法を顔を傾けて避ける。


コ「狙うだなんて、そんな、偶然ですよぉ?ははは」


 コクウの目が笑っていない。


「しーあわせならたーいどーでしーめそうや」

「ほーらみーんなーでてーをたーたこう!」

パンパン!


 手を叩いた直後、ルーザはすぐさま剣を抜き取る。コクウは剣を創造し、魔法を放ちながらルーザとの距離を縮める。と、そこで横からタイトがかなりの勢いで飛んできてルーザに魔法の剣で斬りかかった。

 

ル「ッ!」

コ「タイト!」


 ルーザはギリギリ反応し、剣でタイトを受け止めて弾き返した。コクウはタイトに聞こえるように、大声で言う。


コ「私、この空間の元凶先にやっけてくるね!」

タ「任せた!」


 コクウの提案に快諾するタイト。


ル「それは(いささ)か、いただけないな」


 コクウを阻止しようと1歩踏み出したところで、タイトがルーザの進行方向に立ちはだかる。


タ「行かせねえ」

ル「君が?僕を?」


 タイトとルーザは幾本かの森の木を挟んで、お互いに睨み合う。


タ(魔法の剣、やっぱりすぐ壊れるな。

そうだ、なら触れるだけで致命的な攻撃となる武器にすればいい)


 タイトは強化用の魔力を込め続けているところにさらに追加で、少し別の魔力を纏わせる。


「音に合わせて動きを止めよ」

ル「・・・今回は外れか」


 小さな声で不満を漏らしながらも、両手で剣を握り、構えるルーザ。


「3、2、1」


 お馴染みのカウントダウンと共に2人は走り出した。

 タイトは自分の周りとやや離れた木の影から横方向にルーザ目掛けて幾つかの魔法を放つ。


テテテテ


 ルーザはタイトの魔法を的確に避け、弾く。左右から飛んできた火と水魔法は、火魔法のみを風魔法で無力化する。


ル「攻撃に搦手(からめて)が無い。故に対処が容易い」

 そう言いながら進むルーザはタイトがもう、すぐ目の前にいることに気がつく。


ル(爆発的な加速、大きく立つ砂埃、、足の筋力が異常なまでに発達しているのか?)


 ルーザはタイトの足の速さに疑問を感じながらも、時は待つことなく、まもなく射程圏内へと突入する。


テレーレ


 タイトは氷で創った剣に電気魔法を纏わせてルーザへと左から右へと横振りで斬りかかった。

 ルーザは電気魔法を察知し、咄嗟に後ろに飛んで回避する。


テレテレ


 ルーザ、後ろに飛びつつ左足を前に出して剣を上に構え、火魔法を纏って振り下ろす。タイト、電気魔法を維持しながらそのまま右から切り上げるように剣を振るう。


デン!


 互いの剣が触れ合う1歩手前で動きが止まる。ルーザは止まっている間に火力を上げて、もう少しで届きそうなタイトの氷の剣を溶かす。


 再び動き出したルーザは剣を1度引いて、今度は右肩の位置から左へと剣を振るいだした。タイトはすぐに剣を捨て、ルーザが剣を引いたことを確認し、左足を大きく踏み出してルーザに殴りかかった。


テッパァン!


 突然の音に、ルーザは理創郷の効果だと勘違いし、一瞬動きが止まる。だが、これがただの銃声だとルーザが気づくのに1秒も要らなかった。

 逆にタイトは止まりきれずに拳をルーザのお腹に当てると同時に風魔法で吹き飛ばし、遅れて動きを止めてしまう。


パァン!パァン!


 不本意な一撃を食らったことか、はたまた焦りか、ルーザは2度目、3度目の銃声が鳴り響く中、殴り飛ばされながらもタイトの左肩からみぞおちに至るまでを斬りつけた。

 だが、これは理創郷の動きを止める周期と重なっており、殴り飛ばされて木に衝突したルーザは斬りつけたことによる違反で、自身の左肩からみぞおちまでに大きな切り傷がつけられ血が出てきている。

 さらに


ル(体が重い、鈍足の効果か。飛ばされたことによる移動も対象だったな。

腹部は闘心で致命傷は避けたが、切り傷が深すぎる。)


 ルーザは自身の体に手を当て、魔力を込めるが、


ル(回復...はこの傷では魔力の無駄か)

 と、判断しその手を下ろして剣を握った。


テーデン!


 木にもたれかかって座り込んでいたルーザは音を最後まで聞いて、ゆっくりと立ち上がった。

 ルーザがタイトを視界で補足した時、タイトは斬られたはずの自身の体に傷がついてない事に困惑している様子だった。


 タイトはルーザの方を見ておらず、好機と捉えたルーザが動き出そうとしたその時、ルーザの後方に左側からリズが飛び出して来た。

 ルーザが咄嗟に振り返ると、ちょうど真後ろを走り抜けようとしていたリズと目が合う。リズはルーザを見ると、酷く驚いた表情を見せた。

 

 リズの後ろには獲物を狩る目をした、木から木へと飛び移りながら移動する、悪魔のようなコクウ。リズはコクウから放たれる無数の魔法に回避と反撃をしながら逃げている最中であった。


 リズはルーザの様態を見ると、走る足を止めてコクウへ反撃の魔法を放ち始めた。


ル「リズ、走れ!」


 ルーザが叫ぶと、リズは放つ前に魔法を止めた。だが、もう遅かった。

 リズが足を止めたことを確認したコクウは、木の幹に足の裏を着け、前方へと飛び跳ねてリズとの距離を急速に詰める。


 コクウは移動しながら、右手の魔法の剣を突きの体勢で構え、左手を前に出して狙いを定める。その目にはリズしか見えていない。


 ルーザはコクウの剣に違和感を覚える。

 形としては完成している剣が、まだ創りかけの不確定の状態で止めらているかのような魔力の揺らぎ。


 ルーザは剣を破壊することを目標とし、右足を後ろに下げ、コクウが目の前に来る瞬間に合わせて剣を下から斬り上げた。


 ルーザの剣は狙い通りにコクウの剣に命中し、ついでに左腕を肘の位置で切り落とした。派手に砕け散っていく氷の粒。


 ここで、コクウはようやくルーザを視認したのか、想定外の出来事にルーザから目を離せないでいた。


コ「・・・というのは嘘」


 そう言いながら、途端に恐怖を感じるほどに、笑顔になるコクウ。

 

 コクウは肘から上が無くなった左腕をルーザの顔面に向けて風魔法の弾丸を放つ。


ダァン!


 見事にルーザの頭に命中し、ルーザは体を後ろに仰け反った。


コ「一発、目標達成!」


 コクウは更に、ルーザが魔法を食らった影響で完全に無防備状態となったリズの襟元を右手で掴み、リズの顔を自分の顔へと引き寄せた。

 そして、コクウは覚悟を決めた、悪戯を企む子供のような笑顔でリズに囁く。


コ「一緒に、死んで♡」

リ「...あ、あぁ、//」


 砕け散ってなお、世界に残り続ける氷の小さな粒が突然、空中で物理法則を無視して止まる。

 次の瞬間、小さな氷の粒の全てがリズ目掛けて一斉照射された。コクウ自身を貫いて。


 タイトが現場に到着した時、コクウはリズに覆い被さるように倒れていた。

 コクウはタイトを見ると、いつもの笑顔で言う。


コ「あとは、任せたよ、!」


 それだけを言い残し、2人は消えた。リズが消えたことにより理創郷はあちこちに亀裂が入り、崩壊を迎えることとなった。色とりどりの花畑は消え去り、元の森へと却る。




ル「狂っている、彼女は。

死ぬのが、怖くないのか?」


 血が流れ出る額を抑えながら一点を睨み、何も無い虚空へと本気で問うルーザ。


ル「認めないッ!認めていいはずがないんだ!」


 その表情は先程の不気味な笑みは無く、怒りのような憎しみのような表情が見えた。


タ(自分の思い通りにいかなかったら、怒る人間かよぉ...もうヤダ、こいつ、、)


 ルーザは急にハッ、とした表情で我に返り、また見る人を不快にさせる笑顔を取り戻した。


ル「クヒヒ、すまない!少々取り乱した!」

タ「怖い!めちゃくちゃ怖い!コクウ!戻ってきて!1人にしないで!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜待機室〜


コ「だはははははは!!!無茶、、言うな、!ぐふふ、、!ちょっ、、!お腹痛いひひひ」

 子供のように怖がって泣き叫ぶタイトの姿を見て大爆笑のコクウ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜やぁ!俺は仮想空間!〜


 ルーザは剣をタイトの方へ向けて、己を鼓舞するように大きな声で話し出した。


ル「さぁ!戦闘を


 意気揚々と語り出したルーザの言葉を遮るように、飛んで横から乱入してきた赤い影。


ガキィ!!


 ルーザは乱入の剣を来ることがわかっていたかのように、その者の剣を受け止めた。


タ「リューソー!!」

リ「その面、一発殴りに来たぜぇ!!」

ル「どいつもこいつも、顔を狙いやがって」


 リューソーはすかさず剣を右肩まで引き寄せて振るう。次は左下、次は左肩、下、上。攻めの姿勢を崩すことなく、全ての攻撃に闘心を全乗せし、凄まじい速さで連撃を繰り出すリューソー。

 ルーザは防戦一方となるが、リューソーの攻撃全てを捌きながら喋り始めた。


ル「随分と思い切りがいいじゃないか、!」

リ「調子がいいもんでな!」

ル「・・・<インパクト>、か」


ル(<インパクト>発動による覚醒状態。少々分が悪い)


 剣だけでは分が悪いと判断したルーザは、剣に魔力を流し、リューソーの剣を重ねるように剣を振るい、触れる直前で電気魔法を発動。

 リューソーは剣が触れるギリギリで大きく後ろに飛び、ルーザの剣を回避した。


 リューソーがルーザから離れたことで、2人が撃ち合いをする最中魔法を創造し続けていたタイトは全方位から魔法の一斉照射を開始。


 圧倒的な物量にルーザは捌ききるのは困難と判断したのか、ルーザは手を地面に着いて自分の周りをぐるりと1周するように土魔法の壁を作り出した。


ズドオォォォン!


 ここで、別のところから爆音が鳴り響くが、2人は見向きもしない。魔法が壁に着弾し、大きく煙が立つ中でタイトとリューソーは距離を詰める。

 魔法攻撃によりヒビの入った壁をルーザは、風魔法で壁を壊すと共に全方位に大小の石を飛ばす。

 リューソーは石を回避するため、走る足を止めたが、タイトは氷魔法で全身を隠すほどの細長い縦を創り出し、止まることなく進み続ける。


 タイトとルーザはお互いの射程圏内に入るや否や、剣を振るいだした。初手、タイトは左肩から水平方向へ振ろうとした剣を、ルーザは魔法の剣を破壊することを目的に上から剣を振るう。


バリンッ!


 ルーザの狙い通り氷でできた剣は砕け散る。ルーザは剣先から風魔法を地面へ向けて放ち、小さな氷の破片を飛ばす。

 タイトは手に残った剣の残骸を振り抜いた勢いのままに投げ捨て、左足を前に踏み出して右手の拳を構えてルーザに殴りかかった。ルーザ、右手の拳を狙って下から剣を振り上げる。タイト、右手の拳を広げて前方へ風魔法を放ち、その反動を受け入れ、手を自分の元へと引き戻し、ルーザの剣を(かわ)した。


 タイトは拳を再装填し、すぐにもう1度殴り掛かる。ルーザは空振ったことで剣が頭の上で行き場を失っていた。

 ルーザは仕方なしにタイトが殴るであろう腹部に氷魔法で盾を張り、次の行動の準備に入ろうとする。


 タイトは目標地点の氷魔法を察知。拳に高温の火魔法を纏い、一瞬のうちに溶かしながらルーザの腹部を殴りつける。

 氷を完全に溶かしきることは出来なかったが、攻撃を与えるには十分な薄さまで溶かし、タイトは腹部を殴った。


ル「グッ...」


 腹部に高温の拳を食らい、呻き声をあげるルーザ。咄嗟にタイトを右足で蹴り飛ばし、腹部に回復魔法を当てようとしたところで、


リ「やあ」


 リューソーが目の前に、右肩に剣を構えながらやってきた。ルーザは咄嗟に防御するために剣を右上へと構えて振るった。


ル「さっきので、やられてくれても良かったのにな」

リ「あんくらいで死ぬやつは、冒険者にならねぇ方がいいと思うぜ」

ル「フッ、同感だ」


 リューソーが攻める一方ではあるが、2人は何度か剣で撃ち合う。そんな中で、リューソーは右上から振り下ろそうとした剣を手から離す。

 リューソーの力が加わることの無くなった剣はルーザの下から振るわれた剣に、抵抗もなく宙を舞う。

 ルーザは剣に触れた瞬間に気づいた。リューソーが剣を捨て、闘心を込めた拳を構えたことに。


リ「喰らいやがれ!」


 リューソーの拳は確かにルーザの腹部に当たった。だが、ルーザは闘心を過剰に張らず、風魔法で自分自身を後ろへと逃がし、多少ではあるが被害を抑えた。


リ「ちっ、不発か」


 ルーザが飛んで行った先に、タイトが追撃のために走る。距離にして20m弱。ルーザは重たい一撃を食らってなお、すぐに立ち上がる。

 2秒経つか経たないかの時間で、タイトは近寄ってきた。


 近づきざまに、タイトは走りの勢いを利用して、ルーザを右足で蹴る体勢に入る。

 ルーザはタイトの手に魔力が込められていないことを確認。左腕で蹴りを受けるために土魔法の装甲、その後すぐに反撃のために右手の剣を右上へと構えた。


ル(まずは1人)


 タイトを仕留められることを確信したルーザ。その目に異様な光景が映る。

 タイトの蹴りが、途中から有り得ない程の急加速を得る。タイトの後方に立つ砂埃。足に込められた魔力。


ル(急加速、砂埃、風魔法、足の魔力)


 ルーザはこの状況と今までの移動速度を鑑み、1つの結論に至る。


ル(こいつ、魔法を足から!)


 今回、目立って足からの魔法を使っていないタイト。故に気がつくはずもなかった。今まで見たことの無い魔法の使い方、発想に。




 タイトは右足で電気魔法を発動、右足に電気を纏わせて差し出してきた左腕を蹴る。

 足がルーザに触れる直前、タイトは見た。ルーザの顔を、今までの不気味な笑顔ではなく、希望を得たような、心からの笑顔を。


 そして、ルーザは小さく言葉を漏らした。


ル「見つけた...君は.../バチッ!


 感電により、力を込めることのできなくなったルーザの体は、容易く左へと飛んで行った。

 飛んでいく途中で、リューソーが追撃を狙いに行き、完璧にぶち当てて、別方向へとさらに殴り飛ばした。


タ「おぉ、、やりすぎやりすぎ」

リ「へへ、さっき不発だったから、つい」


 剣は手から離れ、左手はボロボロで、木に背中を預けて座り込むルーザに2人は駆け寄った。


 ルーザの表情はよく見えないが、口元は笑っている様子。いつもの笑顔か、先程の笑顔なのか、判断はつかない。

 ルーザが何かを言い出そうと、息を吸い込む。


ザシュッ、


 とリューソーが何も言わず、先に首を切り落とした。


リ「しゃあぁぁぁぁぁ!!!」

タ「あ、え?あぁ、えとっ、やったぁ?」


 これにて、対ルーザ戦、終・了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ