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今、生きているあなたへ  作者: ひびき
旅の始まりかも〜編
39/92

第37話 3分クッキング!

/639年7月14日/

〜仮想空間〜


シ「3分だけ、遊んであげましょう」


 シキの挑発めいた発言にマリーは分かりやすく嫌悪を示す。


マ「大層な自信ですね。まるで、勝ちが決まっているかのような言い方」

シ「事実、君は先程のじゃれ合いで僕に傷1つすら、僕を驚かせるような技術すらも見えなかった。

遠距離魔法専門の僕に」


 淡々と事実を並べるシキ。言葉を重ねるほどにマリーの眼光は鋭くなってゆく。だが、シキは止まることなく続けて言う。


シ「挙句、真剣を取られて卑怯な手で作った有利すら無くなってしまう。

もし、ここから、あなたが勝てる道筋があるのなら、僕に見せておくれよ」


マ(彼の言っていることに()はない。自身の実力に見合った自信と実力。自身の強さをよく理解している。)


 マリーはシキから目を離すことなく、収納魔法の中から剣を取り出した。余裕そうな笑みを浮かべながらシキは恐怖を煽るようにゆっくりと近づく。



 マリーは右手を前に出し、氷魔法と土魔法の塊を自身の周りに5つ程生成し、シキへ連続して照射する。


 シキはそれを切る、弾く、避ける、躱すなどして直撃を避けながら耐えている。

 時折飛んでくる別方向からの魔法にもシキは対応して機会を伺っている。


シ(魔法の数自体は少ないが、弾速と魔法の強さに特化させているのか。さらに右と左、後方からも来る魔法)


 マリーはこのまま数の暴力で押し切るつもりなのか、他の攻撃も準備すらもせずにただただ、魔法を放つことに注力している。


シ(付け焼き刃だけど、何とかなれー)


 シキは先程から体の内に貯めていた魔力を全方位に向けて、魔法には変換せずに放つ。

 シキを中心として放たれた薄い魔力の層は、触れた魔法を魔力に戻して描き消していく。


マ「なっ!消え、!?」


 次々と消されていく魔法にマリーは大きく動揺する。さらにその魔力の層を受けたマリーは魔法が使えなくなっていることに気づく。


 この好機を逃すまいと、シキは一気に距離を詰めた。マリーは剣を咄嗟に持ち直し、シキを迎撃する体勢に入る。


 シキは右足を大きく踏み出し、剣を腰の左側から右手1本で振り抜く。マリーは剣での防御に間に合った。だが、


マ(重いッ!)


 準備しきれていない体勢と、想像よりも強いシキの力に後ろに弾き飛ばされてしまう。

 マリーは一瞬宙に浮いた後、すぐに着地し足で踏ん張って勢いを殺す。


 シキはすかさず振り抜いた剣の回転の余力を利用して、左手から2〜3m程の視界を覆い尽くす津波のような水魔法を繰り出す。


 それをマリーは顔にはかからぬよう、剣を右上から振り下ろして斬り掛かる。

 しかし、斬りかかろうとした瞬間に水魔法は氷魔法により凍らされてしまい、

ガン!

 と、マリーは氷を一刀両断することはできず、ただ剣を叩きつけただけとなる。


 2〜3m程の高い氷壁。しかも横方向にも広く展開されたそれを見て、一息つこうと油断しているマリー。

 そんなマリーを嘲笑うかのようにシキは大きく飛んだのか、氷壁のてっぺんに左手を逆立ちのような状態で着いて飛び越えてきた。


 さらに、左手を氷壁に着いた折に氷魔法を流して、叩きつけたままにしているマリーの剣を再び氷漬けにする。


 シキはトン、と左手を少し押し出してそのまま頭を下にした状態でマリー目掛けて、体を右に捻って右手に剣を構えながら落ちていく。


マ「ッ!」


 シキに気づいたマリーは即座に剣を捨て、右手に魔力を集めて大きな火魔法を生成。シキの落下位置を予測し、腰の位置から両手で押し出すように思い切り放った。


シ「知ってた」


 シキは手待ちとなっている左手を右肩ら辺まで持っていき、右手を少しだけ折り曲げつつ、強めの風魔法を放出した。


 風魔法により押し出されたシキは、マリーの予測とは別の位置に回転しながら移動し、渾身の火魔法はいとも容易く避けられてしまった。


 さらにシキは風魔法で体が回転し、遠心力により威力が高まった剣でマリーに襲いかかる。


 マリーは腕を土魔法の装甲で覆って剣を防御するも力負けしてしまい、大きく後方に飛ばされて氷壁に背中から衝突する。


マ「ぐっ、!な..ぜ...!」


 シキは着地した後すぐに左手を地面に着けて魔力流してマリーの後方に氷壁を作っていた。さらにシキは逃がすまいと、半球状に氷魔法を生成し、四方に加えて上すらも閉じてしまう。


 マリーは背中を強打したことにより呼吸が詰まり、片膝を着いて動けなくなる。


 マリーはこの間に周辺を確認、現在の情報を頭の中で整理する。


マ(半径10m、高さ3m程の小さな氷の建物。

出口はなし。武器も尽きた。相手は無傷で余力あり。

でも、魔法が、化学が、まだある。悔しい、このままでは終われない、!)


 目を覆いたくなるような絶望的な盤面。マリーは諦めまいと、己を鼓舞させ、勢いよく顔を上げた。


 マリーは片膝をつけたまま両手で直径1m程の水魔法を生成し、水を地面に着けて回転させえ不純物をあえて含ませる。

 その後、水魔法の形を球体で保ったまま両手に電気魔法を流して水へと突っ込んだ。


 電気が流れたことにより、水の中で激しく泡が発生される。


 マリーは勢いよく立ち上がり、両手は電気魔法を保ったまま、水魔法を1本の太い管のような形に変形させて、それを持つように左手を前に、右手を胸の辺りに構える。水流の勢いも衰えさせず、右足付近の地面に水を触れさせる。


 マリーは電気を帯びた水魔法を左手で照準を定めて、シキ目掛けて連続的に発射させた。


 連射速度も遅く、弾速もそこまでない。ただ、触れたら少しの間は動けない帯電仕様。剣で弾くことはできない。


シ「まぁ、これくらいなら避けながら近づけばいいかー」


 シキは左手に剣を持ち替え、特段苦もなくそれを走って避けてマリーとの距離を詰めていく。シキの剣の射程圏内に入ったところで、マリーは突然水魔法と電気魔法をやめた。


 シキはとどめを刺すため、右足を踏み出し、下から切り上げようとしたその時、

 マリーは近距離で火魔法を右手に生成して、悔しそうな笑顔でシキを見た。


マ「悪いが、道連れだ、!」


 そう言って、天井をも閉め切った密閉された空間、水を電気分解させて生成された水素の滞留場所、上へと火魔法を放つ。




 よりも速く、シキは左手の剣を下に構えた段階で手放し、魔力を集中、爆発的な風魔法を下から上へと大放出させる。


ドゴォォォ!


 マリーの火魔法を消し、大きな音を立てて建物を打ち壊した。


 勝ちはないが、相打ちにはできると確信していたマリーは、圧倒的な力、知識、相手を読む技術に、シキという人間に恐怖する。


 左手を振り上げてもなお、目線はマリーからは離さずにいるシキから、1歩、後ずさりする。


マ(に、逃げ...)

シ「爆発は僕の専売特許だ」


 急に零距離まで近づいたシキはそれだけ言い、マリーの首元に風魔法で圧縮した風の刃を指先から放ち、首を切り落とした。


シ「3分、リューソーは終わったかなー?」


 そう言って、シキはリューソーの方へと歩き出した。


〜リューソー〜


 リューソーの飛び蹴りをすんでのところで、手のひらで受け止め、掴んで離さないファムト。

 シキから少し離れたところで、リューソーは足を掴まれていることを利用し、1度蹴り出した右足の膝を曲げ、再び蹴り出した。


リ「おらよォ!」


 勢いよく後方へと吹っ飛んだファムトはそのまま木に衝突するかに思われたが、神技を発動してペラッペラの体となり、空気抵抗で勢いを殺すことで木にぺったりとくっつくも無傷でやり過ごした。


 ファムトはすぐに神技を解いて着地、リューソーの追撃を警戒し顔を上げる。ファムトが顔を上げた時には既に、リューソーは目の前に居た。


 リューソーは右肩の位置から水平方向に魔法の剣を振るった。

 剣での防御は間に合わないと判断したファムトは神技を発動。痛みなくリューソーの剣を受け、フワッと飛ばされる。


リ「さすがに魔法の剣じゃ切れねぇか、」


 自分の剣を見ながらボソッと言うリューソーを横目に、ファムトはフワッと着地する。

 ファムトはすぐに構えて、リューソーの出方を待とうとリューソーを見る。同時にリューソーもファムトの方を振り向き、両者目が合う。


 リューソーはファムトの剣を見て悪そうな笑みを浮かべて一言。


リ「欲しいもんは力づくで、奪う」

フ(ほんとに勇者か?」


 あまりの悪人顔に思わず心の声が漏れるファムト。その言葉にリューソーは反論する。


リ「魔王から平和を力づくで手にするんだ。変わんねぇよ」

フ「規模もそれによって生じる利の大きさも違いすぎます。

比べる対象が間違っています」


 冷静な正論により、言論の部ではファムトが勝利を収めた。


リ「...正論は暴力でねじ伏せる!」


 あまりにも蛮族じみた発言にドン引きの表情のファムト。


リ「んな事より、3分しか待ってくれねぇんだ、

さっさとや


 面倒くさくなったファムトは、リューソーの言葉を待たずして風魔法を大放出。


 よそ見していたリューソーは風魔法をモロに食らい、後ろへと足を引きずりながら後退させられる。あまりの風に顔を腕で覆い、防御するリューソー。

 風が止んだところで顔を上げて前を見ると、既にいくつかの魔法がリューソー目掛け、様々な角度から飛んできているのに気づく。


 魔法の発射源はいつの間にか、2人程隠れることのできる壁を土魔法で作り出して、壁の後ろからこちらを覗きながら魔法を発射させている。


リ「あいつ!」


 リューソーは降りかかる火球を裂き、氷と土の塊を弾き、回避する。

 魔法に夢中になっているリューソーにファムトは風魔法を小石程度の大きさに限界まで圧縮。それをデコピンの要領で弾き出した。極小の発射音に不可視の風魔法、弾速も申し分ない。


 当たるに違いないと確信していたファムトは追撃のために、先を円錐状に尖らせた土魔法を生成し始めたところで、リューソーは勘で剣を振るった。その振るった剣がたまたまファムトの風魔法に当たり、圧縮された空気を四方に優しく送り出した。


 全ての魔法に対処したリューソーは壁の後ろからこちらを覗くファムトと目が合う。

 ファムトは咄嗟に手にある土魔法を未完成ながら放ち、壁の後ろに隠れた。


 適当に発射させられた土魔法をリューソーは軽々しく一刀両断し、ファムトとの距離を走って詰める。


リ「おらぁぁぁ!」


 リューソーは叫びながら、壁を回り込む。のではなく、爆発的な加速の勢いを利用して土の壁を蹴り破った。


フ「なっ!?なぜ!」


 飛散する土の欠片と共に、リューソーから見て左方向を見て宙に浮かぶ神技発動中のファムト。そして、ファムトは手から剣が離れていることを認識。


フ「剣が!?」


 ファムトの手から離れ、実体化している剣をリューソーは逃さなかった。

 ファムトは剣を掴むため神技を解き、着地。すぐに剣目掛けて大きく飛んだ。

 そして、リューソーが剣を拾いに来ることを予測。右手を剣へと伸ばし、左手に魔力を流して火炎放射しようとするファムトはほぼ真下にいるリューソーを視界で捉えた。



 リューソーの視界には宙に浮かんだ剣を映していなかった。リューソーが見ていたのはファムトのみ。


 リューソーは剣をその場に置いており、左足を前に踏み出し、右手の拳を握りしめてそれを隠すような形で体を捻る。右手に身体中の闘心を10割全て込めて神技を解除しているファムト目掛けて思い切り殴った。


リ「うおぁぁぁ!!!」


 神技の発動は間に合わないと判断したファムトはリューソーが殴りつけてくるであろう、お腹に闘心を7割集めて防御を固めていた。

 それが仇となった。


<インパクト>


フ「ウグァッ!」


 ファムトは通常ではありえない勢いで速く、重く、遠くへと殴り飛ばされた。あまりの衝撃に神技の発動もままならず、木に何度も衝突、貫通を繰り返してボロボロとなった状態でようやく止まった。


リ「久しぶりに<インパクト>出たな」


 リューソーは宙に浮いた剣を見ることなく左手で掴み取る。リューソーは大きく空気を吸い込んで、吐き出す。


リ「ふぅーーっ、きょーは調子がいい、、

最っ高の気分だ」


 噛み締めるように言うリューソー。その目にはファムトしか映っておらず、顔は高揚から来る笑顔で満ちていた。


フ「ゲホッゲホッ、!ウオェ」


 ファムトは木に背中を預けて座り込んで、咳き込みながら吐血を繰り返す。今にもくたばりそうなファムトは絶好調状態のリューソーを見る。


フ「フッ...この、化け物め...」


 あまりの痛さに頭がおかしくなったのか、笑いながら小さく言うファムト。


フ(剣も取られ、神技での回避も意味をなさなくなった。右腕は途中の木にぶつかって折れてる。内蔵はボロボロ。足もまともに立つことすらできない。)


 ファムトはリューソーの方を見て、ゆっくりと近づいて来るのを確認する。


フ(神技の概要もバレてる。詰み、だな)


 ここで、リューソーがファムトの目の前へと到着した。


フ「1つ、聞いても良いですか?」

リ「いいけど、大丈夫かよ?早くとどめ刺さないと辛いだろ」

フ「お気になさらず、すぐに終わりますので。」


 ファムトは精一杯空気を取り込み、言葉を紡ぎ出す。


フ「なぜ、私が壁に張り付き、動けるとわかったのですか?」


 神技を一部解除して壁の中から動いて、通常では見ない角度からの攻撃を繰り出そうとしていたのに、壁を破壊し、阻止されたことを思い出しながら聞くファムト。

 その質問にリューソーはしばらく考え込んで答えた。


リ「勘」


 一瞬固まるファムト。ファムトはさらに質問を重ねる。


フ「・・・あの風魔法も?」

リ「勘!」


 あまりにもケロッとした回答にファムトは呆気に取られた。


フ(ここまでだと、1周まわって気分が良い気がしますな)


フ「お時間取らせました。

さぁ、とどめを。」


 ファムトはそう言って頭を前に下げて首を差し出した。


リ「おう!」


 リューソーは素直に剣で首を斬り落とした。


シ「あれま、終わった?」


 どこからかやってきたシキ。


リ「おう!終わったぞ!

どうだ?3分たったか?」

シ「うーん...まぁ!ギリギリ合格ってとこかな?」

リ「よいしょぉ!」


 拳を高々と上げて喜びを露わにするリューソー。


シ「さ、他のみんな手伝いに行くよ」

リ「おう!俺今絶好調だからな!いくらでもやれる気がするぜ!」

シ「その発言、頼もしいね!

期待しちゃおっかな〜?」

リ「どんどんしちゃってくれ!」

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