第35話 北を見るもの
/639年7月14日/
AM9:30
任務を受けるためにタイト達は朝から協会へと向かっていた。
未だ心許ないお金問題を解決するため、2日前のようなギリギリで崖っぷちな状況に今後陥ることがないよう、早めに任務を受けることにした。
タ「いい任務あるといいねー」
パ「今回はギリギリじゃないし、なかったら明日まで待ってもいいんじゃね?」
タ「確かし」
リ「まぁ、今日がこうやって話になっているということは、つまりそういうことよね」
((お???消すぞ?存在、))
リ「冗談ですやん」
レ「対抗策が異次元、言葉通り」
コ「希望も救いもない死刑」
昨日の昼頃に転移で戻ってきたローネが口を開いた。
ロ「先に言っとくが、私は特に危険な状況じゃない限り、助けには入らねーからな?
任務も任務外でも」
忠告のようなものをしてきたローネ。それに対し、タイト達は危険上等といった表情で答える。
リ「あ?助けなんかいらねーよ」
コ「逆に危なくなったら助けてくれるんだ?」
パ「魔族なのにな」
ロ「お前らが生きてねーと暇なんだよ!こっちは!」
タ「そゆことね、」
ローネの本音に苦笑いを浮かべるタイト。
歩くこと数分、タイト達は協会に辿り着いた。中に入り、一直線に依頼が張り出されている黒板へと向かった。
協会の中はそれほど人が集まっておらず、数組の隊が食事をとっていたり、話し合いをしたりしていた。
依頼を探しているタイトの目が1つの古びた紙に止まる。
タ「金貨10000枚!?みんな、!この任務やばい、討伐依頼で金貨10000枚貰える!」
金貨10000枚という豪華すぎる報酬に、、興奮して依頼の紙を指さすタイト。周りの反応も相当なものだろうと期待でいっぱいの表情のタイトだが、思いのほか、周りの反応は芳しくない。
シキが冷静に紙を指さして応える。
シ「よく見てタイト、討伐目標と対象階級を。」
タ「え?」
シキに言われて、タイトは初めて依頼の紙をじっくりと読んだ。
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依頼内容
目標討伐
討伐目標
死災『災叫・零絶』
目撃情報
フィフティの街より南東へ進んだ先の終着点にて
対象階級
個人階級一等星以上
報酬
金貨10000枚
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タ「死災...一等星以上...しかも個人?!」
コ「というわけで、私たちはそもそも階級が全然届かないし、受けたとしても死んだことにすら気づけずに死ぬので受けません!」
タ「金貨10000枚を報酬にするに値する、というわけか」
パ「一等星以上とあるけど、一等星の人ですら、受けることすらしない程の相手だからね」
リ「俺でも、さすがにこれは受けたくねーな」
あのリューソーですら、乗り気になれないらしい。
タ「情報も、こいつの見た目とか、どんな能力なのかとかもないね、」
パ「それはな、過去に挑んだ奴が1人残らず、全員殺されてるからだぞ」
コ「他の死災もそうだよ。
7年くらい前かな?一等星の1人が、とある小さな村に、突如現れた死災の1体と相打ちになってる」
タ「そんなことが...
あれ?でも、死災って元々4体だろ?1体も減ってないよな?」
パ「その死災は分霊だった。死災は全力ですらないのに、一等星のあいつは相打ちになったんだ。」
その言葉にタイトは絶句した。パルスは続けて、
パ「その年、世界の至る所で異変が起きた。災害、魔獣・害獣の大量発生。当時、3人居た一等星はそれぞれ次から次へと舞い込んでくる任務に休む間もなく、対応していた」
パ「1つの任務に一等星を複数使う訳には行かなかったんだ。それに、死災の任務を受けたやつは一等星になってから10年以上のやつだった。
みんな、どこか大丈夫だろうと、なんとかなるだろうと思ってたんだろうな」
パ「一等星は蜂の巣という表現に相応しい、穴だらけの状態で死んでいたらしい。」
ロ「そいや、そんなこともあったな。魔王様から聞いたわ」
リ「詳しいんだな」
パ「...当時、調べまくったからな」
シ「というわけで、死災は一等星ですら手出しができないでいる」
コ「まぁでも、今のところ死災はお互いを牽制し合うように、領土を広げないで均衡を保っているみたい」
シ「その均衡を保つ、という意味でも倒せないでいる理由の1つになってる」
タ「ほぇ〜、勉強なったわ。
てことでこいつは元の位置に戻しましてと、」
流れるような動作で、タイトは紙を戻した。
タ「ほんじゃあ、何受けようか?」
レ「これとかどう?階級も4等星で受けれるし、討伐依頼で報酬もなかなかなものだよ」
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依頼内容
目標の討伐
討伐目標
害鳥の群れ
依頼理由
作物を土から掘り起こして食い荒らす為
特徴
体長、50cm程
数、70羽~100羽
報酬
金貨5枚
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リ「お、いい感じじゃぁ〜ん」
パ「語尾きしょ」
リ「カワイイ?」
パ「可愛いは正義と言うのなら、お前は一生分かり合えることの出来ない、絶対的な悪だ」
リ「言い過ぎ言い過ぎ」
タイトが貼り紙を手に取り、みんなに見せながら言う。
タ「これ受領してくるよ?」
シ「お願い!」
リ「おう!頼んだ!」
タ「頼まれた!」
そう言い、タイトは受付へと向かった。タイトが受付の人に話しかけようとしたその時、
?「あれ?もしかして、最近噂の勇者様ですか?」
と、後ろから声を掛けられた。タイトが振り返るとそこには、話し掛けてきた男とその隣に女が立っていた。
男はタイトと同じくらいの身長で少し痩せ気味。髪の色は黄緑色で、目の色は茶色。武器は目に見えるところにはなく、敵意も感じないような、明るく笑顔な表情。
女の方はタイトよりもやや身長が高く、体も鍛えられているように見える。髪の色は紺色、目の色は青色。ピクリとも動かない表情に、背筋をピンと伸びたまま姿勢を崩さないでいる。
タイトは今までのこともあり、少し警戒しながら答える。
タ「あぁ、俺たちが勇者だが?」
その言葉を聞くと、男はニヤッと笑って見せ、大きな声で喋りだした。
?「いやぁ、あなたに会うことが出来て本当に良かった!僕の名前はルーザ・へリアンサス
僕は、あなた方の熱狂的な信者です!」
タ「そ、そうなんですね、、?」
ル「もしかしたら会えるかもと、この街に来た甲斐がありました!
あの大男達との戦い、実に素晴らしかった!あの戦いで、僕はあなた方に惹かれました」
タ「へ、へぇー、、」
タイトが絡まれている様子を見ていた仲間達が寄って来た。
シ「タイトー、どうしたの?」
タ「なんか、俺たちの熱狂的な信者って自分で言ってる」リ「フンスッ」パ「ドヤァ!!!!!」コ「顔がうるさいなぁ」
あからさまに得意げになる2人。
ル「惹かれたと言った手前、非常に申し訳ないのですが、その任務、昨日我々が受けようとしていたものでして、、、
もしよろしければ、ここは1つあなた方の力量を見ることも踏まえて決闘を受けてはいただけないでしょうか?」
タ「え、あー、分かりました?」
突然の質問に咄嗟に肯定してしまうタイト。
ル「よろしいのですか!?心遣い、感謝致します!
提案なのですが、今回、武器と神技の使用を禁止して、魔法か素手での戦闘をしてみませんか?」
タ「へぇー、ちょっと面白そう」
レ「私神技ないとろくに動けないから、私だけ使っても?」
ル「そうなのですね、了解致しました!あなたは特例で使っても良いとしましょう!」
レイの申し出にも快く承諾してもらった。この世界にも、こんなにも人あたりの良い人間が居たものだ。
リ「ふむ、俺は強制的に素手のみか」
パ「強制してるのはお前自身だけどな、、でも燃えてきたぜぇー!」
ル「よろしいですか?
よろしければ、早速決闘に移りましょう!よろしくお願いします!」
ルーザはそう言うと、ルーザと女がぺこりと1度お辞儀をしてから歩き出した。ルーザが歩き出すとほぼ同時くらいに、近くで屯していた3人の男が動き出して、ルーザについて行った。どうやら仲間っぽい。
ロ「お前ら見てるからなー、負けんなよー」
ローネの応援を背に、タイト達も後を追うように、決闘用の部屋に入った。
「おい、あいつってもしかして...」
「あぁ、なんでこの街に来たんだよ」
「見るだけでも不愉快だ。あいつら、可哀想にな」
部屋に入る直前、タイトは微かにこの会話を聞いた。
タ(この街も...)
タイトは少し落ち込んで部屋に入った。
タ「仮想空間の決闘って、他の町でも見れたりすんの?」
シ「協会には映像機があって、協会に居たらこの世界のどこかでやっている決闘を現在進行形で見ることができるよ」
コ「それで私達をたまたま見つけたってことだと思うよ!」
シ「彼、結構いい人そうだったね。名前、なんて言うか聞いた?」
タ「確か、ルーザ・ヘリアン?だった気がする」
シ「ルーザ...どこかで聞いたことある気がする」
シキはそう言うと、少し考え始めた。
タ「有名な人かもね?てか、武器と神技の使用が禁止って言ってたけど、そう言う設定とかにできるの?」
パ「おう!できるぞ!場所、時間帯を設定するこの機会の左上ら辺に歯車があるだろ?それ押したら詳細設定ができるぜ!」
リ「スマ〇ラみてぇ」
タ「おお、ほんとだ。一人一人で決められるんだね?」
コ「そうそう」
タ「これで、武器の持ち込みを全員と、神技の使用をレイ以外禁止してっと。よし!場所とかどうしよ、」
リ「拳だしな、どこもそんなに変わんなくね?時間帯と天候を昼で晴れにすればいいと思うぞ」
リューソーの言う通り、場所の設定は乱数にして、昼の晴れに設定する。
タ「じゃ、あっちの方で、」
パ「またなー」
リ「行ってきマース」
シ「・・・」
まだ考え事をして、部屋に入ろうとしないシキにコクウが心配そうに話しかける。
コ「シキ?どうしたの?なんか思うところでもあるの?」
シ「あぁ、ごめん。多分大丈夫。所詮噂だから。
...まぁでも、何とかなるはず」
シキも自分で納得したようで、いつもの表情に戻り、部屋に入って行った。
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仮想空間にて
リ「なぁ〜んか、戦うの久しぶりな気がする」
((喜べ、久しぶりの戦闘だぞぉ?))
パ「直近で戦ったのって、ローネと私達2人のやつくらいだもんな」
コ「それも一瞬で終わったから、ちゃんと戦ったのって、多分10話くらい前のことになるかもしれない」
((せいかーい。
まぁ、主に冒険に焦点を当てて物語を書いてるからね。世界の知識だのなんだので戦闘が少なくなってしまうのは許してちょ))
リ「で、本音は?」
((戦闘って描写を細かく書かないと伝わらないから、めちゃくちゃ面倒臭いし頭使うし、時間もかかるしできついでございます))
パ「正直でよろしい」
((いいから、早く戦闘行ってこい))
「双方、準備が整いましたので戦闘開始5秒前。
4、3、2、1、では初め!」
リ「とりま、真ん中の方に歩くか」
タ「だね、」
パ「てか、また森の中なんだなー」
シ「乱数にしたからね。たまたま森になったかもね」
少し歩くと、ルーザ達の影が見えてきた。
と同時に、レイが小さく声を上げた。
レ「え、?」
コ「どうしたの?」
レイが答えるよりも先にルーザが話し掛けてきた。
ル「武器と神技の使用は禁止してきたかい?」
先程の丁寧すぎる敬語が無くなり、少し違和感を覚える。
タ「言われた通り、レイの神技以外禁止してきたよー!そっちはー?」
レ「タイト!あいつらッ!」
ル「クヒヒ、ハーハッハッハ!!」
辺りにルーザの笑い声が響き渡る。レイの焦った表情と途切れた言葉、不愉快に感じてしまうルーザの笑い声になんだか悪い予感が頭をよぎる。そして、その予感は的中する。
レ「あいつら、武器を持ってきてる!多分神技も禁止にしていない!」
レイの言葉に、タイト達は言葉を失う。
ル「君たち、言われた通りに禁止にしてきたのかい?僕たちが、君たちを騙して、武器を持ってくるかもしれないなんて、考えもしなかったのかい?」
ル「実に愚かだ。勇者とは、人の言うことになんの疑問も持たずにおいそれと、それに従うような生易しい連中のことを指すのかい?」
先程の優しそうな笑顔は見る影も無くなり、人を嘲笑うかのような表情でルーザはタイト達を見る。
シ「どうして、こんなことを?」
シキが軽蔑するような目で相手を見て聞く。
ル「どうして?クヒヒ、
楽して勝つ。冒険者の常識だろう?相手が凶暴な獣なら四肢を切り落としてから仕留める
見つけられないのであれば、餌を用意して捕獲し、抵抗できない状態にする
当然の事だろう?それと同じさ!
人間相手には騙して戦力を削ぎ、確実に勝つ!卑怯でもなんでも、勝ったやつが全てだ!」
レイは相手を心底軽蔑し、殺す勢いで睨みつける。パルスは表情に怒りを顕に。リューソーは相手を視界で捉えて、静かに強く拳を握り締める。コクウは覚悟を決めた表情を。シキは手を額に当てて悔しそうな表情を。タイトは騙されたことに対する、驚愕の表情から次へ進めないでいる。
ルーザはそんなタイト達の表情を見てなお、顔にへばりつけた不快な笑顔のまま、大きく息を吸い込んで叫ぶ。
ル「さぁ!正々堂々!お互いを尊重しながら戦おうじゃないか!!!」
今、戦いの火蓋が切って落とされた




