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今、生きているあなたへ  作者: ひびき
旅の始まりかも〜編
33/92

第31話 ここどこやねん!

/639年7月7日/


 街を出て3日目

 ついに魔王幹部へ辿り着くための道を見つけ、森の中をけもの道に沿って歩いて行くタイト達。けもの道を歩いていると、森の木は途中から桃の木へと変わり、多くの実がそこら中になっているのが見て取れた。


パ「お、桃だ」

コ「おー、沢山なってる。食べ頃だね」

タ「後で少しばかり取って行こうか」


 しばらく進むと、少し開けた場所に出た。

 そこには石造りの遺跡があった。屋根のような形の石が地面に崩れ落ち、そこら中に無数の石が転がっている。屋根のすぐそばには、2~3m程の石造りの扉が盛り上がった地面の斜面に面するようにあった。


 遺跡には石で作られた犬、鳥、猿の彫像が横並びでお座りの状態で置かれている。それぞれの目の前には皿のような、くぼみのある石が置かれており、餌を求めているようにこちらを見ている気がした。


 桃の木に囲まれたそれらは陽の光に当てられ、どこか懐かしく感じられるような、神秘的な景色を生み出していた。


 レイによると、扉の向こうは洞窟になっているらしく、開ければ先に進めそうだが、扉としての機能は完全に失っており、全員で押してもビクともしなかった。


シ「もうちょい先なのかな?」

 というシキの一言で、1度遺跡を無視して来た道の延長線上に進んでみたが、途中でけもの道は途絶えていた。


 渋々、来た道を戻って、森に入った地点から遺跡までの間に他の手がかりがないか探してみるも、何も無い。


 やはり遺跡なのだろうと、戻って念入りに調べるも、これといった収穫はなく、森に入ってから3時間が経ち、太陽が真上に登ってしまっていた。

 お腹も空いてきたので一旦、昼食を含めた休憩をとることにした。


リ「さぁて、今夜の願い事は『ここの幹部が出たはいいが、入り方を忘れて〇んでますように』だな!」

コ「あの一瞬で、その文章3回は長すぎる

私が1回分言うから、もう1人誰かお願い」

パ「任せろ!」

リ「これで願いが叶うな!」

タ「お、落ち着いてみんな..気持ちはわかるけども」


 七夕にちなんで、とんでもない願い事を言いそうな3人をなだめるタイト。


シ「うーん、ここのはずなんだけどなぁ」

レ「いない、なんてことはないはずなんだけどね」

タ「休憩が終わったらもう少し、調べてみようか?」

リ「まじで、どこにいんだよ!」


 リューソーは案の定、こういう謎解き的なのが苦手らしい。午後までもつのだろうか。


パ「明らかな人工物はっけーん!」


 突然、パルスがそう言いながら地面から何かを拾い上げた。

 パルス拾い上げたのは綺麗な球の形をしており、掌で握れば覆い隠せそうな程の大きさの石であった。


シ「この遺跡の装飾なのかな?」

パ「かもなー、自然ではこの形はできないだろうからな。記念に貰っとくか」

コ「なんか悪い物もついてきそうだからやめといた方がいいんじゃない?」


 パルスが収納魔法に入れようとしていたところにコクウが言うと、パルスは途端に動きを止めた。


パ「・・・」


 少しの間考えた後、パルスは

パ「たしかにな、捨てとくか」

 と言って、その石を遺跡の扉方面に投げ捨てた。石は犬の彫像の近くまで飛んで行った。


コ「投げるのも...もう遅いか」


 コクウはパルスを止めようとしたが、既に投げていたので諦めた。


タ「後でこの木になってる桃を、あの動物たちの前にある皿にお供えしてみる?」

リ「謎解きゲーのちょっとした小ネタによくあるやつな」

シ「もうこれで正解であって欲しい」


 休憩をやめ、早速桃を少しばかり拝借し、それぞれの皿に1つずつ置いてみた。が、何も起きない。


シ「やっぱりダメかぁー」

リ「うし!次の幹部ボコしてここの幹部の所在を脅して聞こうぜ!」

コ「一応、私たち勇者だということを忘れないで」


 凶行に出ようとするリューソーを申し訳程度に勇者ということを思い出させて、思いとどまらせようとするコクウ。


レ「これ、そもそも皿に対して桃が大きすぎる。皿というか、皿のふちに乗ってる感じだもんね、」

タ「1個目置いた時に、『あ、もう...なんか違うなこれ』とは思った」



 タイトは初手から違うことに気づいて尚、律儀に桃をお供えしていたらしい。((バカがよォ))レ「今、馬鹿って言った?」((あなたには言ってないのに))


パ「・・・」


 パルスが無言で何かを探すように地面に視線を巡らせている。


パ「あった」

 やがて、目当てのものを見つけたのか、それを拾い上げ、お供えした桃を皿から退()かし、それを皿にお供えした。


リ「ん?どしたん話聞こか?」

パ「その言葉、聞くだけで悪寒がする」

シ「さっきの石?」

タ「大きさがぴったりだ」

コ「猿、鳥、犬、桃。皿にぴったりの大きさの球体。」


 ブツブツと何かを詠唱するようにつぶやくコクウ。やがて、

はっ!

 と何かに気づき、やや大きめの声で言う。

コ「これって、もしかして『桃太郎』!?」


 その一言に、全員がコクウの方を一斉に振り向く。


リ「そうか...!これは桃太郎、、、ってなんだ?」

パ「お前、そういうの興味無さそうだもんな。私も本は嫌いだったからなー」

リ「なー」


 珍しく貶さずに共感する2人。


シ「簡単に言うと、桃から生まれた男の子が、犬、雉っていうか鳥、猿にきびだんごをあげて、1人と3匹で鬼退治に行く物語だよ」

リ「追加戦力の頼りなさよ」


 リューソーは物語にもツッコんで行く性格みたい。たまにいるよね。


タ「あれ?俺が知ってるのはライオン、ゴリラ、ワニがお供する話なんだけど...」

レ「私もタイトと同じ」

コ「それ3700年後の世界のやつだ」

レ「私たちが知っているのは、うん、違うということかな?」

コ「わかって言ってるねそれ」

タ「そそるぜこれは」

コ「首へし折るよ?」

タ「やめてください、私の体には石がないので死んでしまいます」


 この世界は復活液もないもんね。ちゃんと死んじゃうね。


リ「その団子がこの丸い石で、あと2つ丸い石を探さないといけないってことか!」

シ「多分ね」

パ「これで違ったらもう帰ろうぜ」


 タイト達は残り2つの丸い石を探し始めた。石はどこかに隠してるとか、何か特殊な謎解きがあったとかはなく、普通にそこら辺に転がっていた。

 1つ、皿に置き、最後の1つを置く前に


パ「今更だけど、これ魔法で作ったらダメだったのかな?」

 と、パルスが言い出したので実験も兼ねて、シキが魔法で同じ大きさ、形の石を作り出して置いてみたところ、石は途端に蒸発するかのように消えていった。

 タイトの火魔法が魔力で掻き消された時と同じような消え方だったので、そういうのズルはできないらしい。


パ「ほんじゃ、今度こそ置くぞー」

リ「開けーごま!」


 リューソーの掛け声とともにパルスが石を置く。すると、大きく、全員で押してもピクリとも動くことがなかったあの扉、!

の前に魔法陣が出現した。


 リューソーは扉と魔法陣を何度も見比べ、

リ「何も無くていいから扉を開けてくれよ!」

レ「扉の奥はほんとにただの空洞だったの?!」

パ「なんかコケにされてる感半端ないって!」


 謎解きの末に予想外の結果。タイトの隊ではかなり批判の模様。


シ「この魔法陣の中に立てばいいのかな?」

タ「俺たちが入るんだ。なにか来る方かと思ってた」

コ「なんか、いろいろと納得いかないけど行くしかないかー」


 タイト達はみんなで魔法陣の中に立って少し待つと、魔法陣が淡く紫色に光り出した。徐々に光は増していき、周りが光に包まれ、タイトはあまりの眩しさに目を瞑る。

 そして、タイトが次に目を開けた時には薄暗い洞窟?の中にいた。目の前には真っ直ぐの道が50m程続いており、その先は少し開けた空洞になっているようだ。後ろは壁で何も無く、前に進むしかないような状況。


パ「転移魔法陣だったのな」

リ「ここどこだー?」

コ「ここの道真っ直ぐ進んだら良さそう」


 それ以外の道がないため、全員で道に沿って歩き始めた。歩き始めてすぐにリューソーが


リ「幹部戦かー、なんか作戦とか立てるか?」

シ「色んな恨みを込めて、僕の神技で速攻で倒す?」

パ「さすがにヤバすぎる笑」

コ「もう、勇者の名前捨てた方がいい」

 コクウが諦めたように言う。


レ「作戦とか立てても、リューソーは作戦通りに動かないでしょ」

リ「それもそうだな!じゃあ、『その場の勢いで行こうぜ!』でいくか!」

パ「いっつも通り」

タ「逆に安心するまである」


 『作戦なんてない!』作戦で行くことにタイト達の意思が固まったところで、少し開けた空洞に出た。

 空洞は思ったよりも広く、半径20m程の円形の広場のようになっていて、天井も暗くてよく分からないがかなり高い位置にあり、ちょうど戦闘ができそうな広さであった。


 タイト達から見て、対角の位置にはもう1つの道が見られ、少しばかりの光が見える。


 そして、この広場のど真ん中に1人。タイト達はその存在感に言葉が出せないでいる。

 魔王幹部だ。


 初めてみる魔王幹部は存外、人のような見た目をしていた。2本足で立ち、2本の腕、少し白い肌、体つきから見て女性なのだろう。体格は大人の女性程。

 そして、桃色の髪の中に2つ、くねくねと曲がった角が生えていた。目を軽く閉じ、不自然に作られた背の高い石に腰掛けている。


シ「鬼、か」


 シキ一言に、魔王幹部は閉じていた目をゆっくりと開けた。引き込まれるような紅い目で、タイト達を不敵な笑みを浮かべながら見た。


 そして、一言。


?「()を待っていた」


 魔王幹部の一言でタイト達に緊張が走る。


コ「その言い方、私たちを知ってたの?」

?「・・・」


 幹部はコクウの質問に、やや鋭い目つきでタイト達を見つめる。


?「いや全然?

普通にここ10年くらい誰もここに来なかったから言ってみただけ。なんか意味深でかっこいいでしょー?」


 重苦しい空気をぶち壊すように、ケロッとした口調、表情で言う。


タ「・・・ふぇ?」


 空気感の違いに思わず変な声を出すタイト。他の面々も脳みそがバグったのか無表情のままで固まってしまっている。


?「魔王幹部、ローネ・ストックだ!君たちみたいなの、待ってたよォ〜!

200年くらい前までは月1で誰かしら挑戦に来てたんだけど、最近はめっきりこなくてなぁー。実に10年ぶりだ!」

リ「だ、誰も来ないのはここの謎解きが分からないからでは?」

ロ「いや、簡単にしすぎたら度胸試し的な感じで、軽い気持ちで来るやつが現れるじゃん。そういう奴は時間の無駄だから嫌なんだよ。

勇者は本気で挑んで来るやつじゃねぇとな!」


 性格が思ったよりも柔らかい感じで裏表の無さそうな魔族にタイトは気を緩めそうになる。


パ「じゃあ、今から戦闘開始。というわけかな?」


 シキがそういうと、ローネは両手を挙げて

ロ「いや、お前たちは合格だ。おめでとう。

次の幹部のとこに行ってもいいぞ」

タ「戦闘なし?」

ロ「あぁ!軽い気持ちの舐めたやつは戦って分からせてやるんだが、お前たちは本気っぽいからな。

本気のやつは此処にたどり着ければ合格ってことにしてんだよ」

レ「どうやって判断してんの?」

ロ「...緊張感?とか?」

パ「ガバガバ判定やんけ」


タ(正直勝てるか分からなかったから助かった)


 タイトは少し弱気でいたため、戦わずに済みそうで安心している。


ロ「お前たち、外の時からよーく見てたぞぉー?めちゃくちゃ面白そうな奴らだな。なんだったっけ?『ここの幹部が死んでますように』だっけか?」


 悪戯をするような悪い笑顔でリューソー達を見つめるローネ。途端に顔色が悪くなるリューソーとパルス。


リ「うーん、一旦死んだかな?」

パ「逆立ちして土下座したら許されるか?」

コ「ごめん、死んだ、!」

シ「コクウは死なせないよ、僕がいるから」

コ「シキ、、、」

リ「こんな時にイチャつくな!」

タ「次回からはまた2人旅になるかー」

レ「2人でも頑張ろうね」

パ「あーもう死ぬ事で話が進んでやがる」


ロ「ははははは!いいねぇ!」


 ローネは大声で笑いだした。上機嫌になってくれたようで何より。


ロ「決めたぞ!私はお前たちの旅に同行するッ!!」

タ「・・・は?」

シ「え?、同行するって...え?」

リ「落ち着けよ、あれは多分魔族語で言っただけでただの空耳だそうに違いない。」

コ「1番落ち着いて欲しい」


 タイト達はローネのとんでも宣言に現実を受け止めきれていない様子。


シ「信じられる、理由(わけ)がないだろう?」

ロ「...それは、私が魔族、だからか?」

 シキの突き放すような言葉に鋭い目つきで聞き返すローネ。


シ「・・・あぁ、そうだ。」

ロ「そうか...

お前は、私が見境なく人間を襲うように見えるか?」

シ「否定はできない」

ロ「根拠は?」

シ「ここ数年、前までは0に近かった魔族の襲撃が少しずつ増えている」

ロ「その襲撃とやらを私が先導していると?」

シ「そう、思っているよ」

ロ「なるほどな、」


 冷たく、激しく言い争う2人。ローネは少し間を置いてから、もう一度口を開いた。


ロ「だが、お前の予想は不正解だ。」


 ローネはシキの予想をキッパリと切り捨てた。そして更に、続けて言い始めた。


ロ「私たちは魔王幹部として、魔王様の命を受けて、この世界の至る所に配置されている。

理由は3つ。

人間の情勢を知るため。

自然界に突如現れる、異質な強さを持つ魔獣や害獣を把握するため。

そして、魔王様に中途半端な覚悟で挑もうとするやつを追い払うため。」


 ローネは指を1つずつ立てながら、説明してきた。自分たちがこの世界にちりばめられ、その土地に居座る理由を。


ロ「私たちの役割の中に人の村への襲撃は入っていない。つまり、魔族の襲撃とやらは、私たちは全くの無関係だ。」

リ「そんなんいくらだって嘘つけるだろ?」

ロ「そうだな...ならば契約魔法で契約してもいいぞ?

『もし、私が魔族の襲撃に少しでも関与しているのであれば、私は命を絶つ』、とな」

コ「どうして、そこまでするの?」

ロ「言っただろ?お前たちの旅が楽しそうだから

それに、ここにいても暇なだけだしな!」


 はっきりと言い放つ姿勢に、他意は本当になさそうでタイト達は判断に困る。

 シキは変わらず、魔王幹部を疑っている様子で、


シ「でも宣言通り、契約魔法は交わさせて貰うよ」

ロ「あぁ、いいぜ。ほら、隊長さんよ、手ぇ出しな。こういうのは隊長がするもんだ」

 そう言って、ローネは快くタイトに右手を差し出してきた。


シ「ごめん、タイト。任せてもいいかな?」

タ「あ、あぁ。構わないよ」


 タイトも動揺して、少し遅れたが右手を差し出して、ローネと握手する。


<契約魔法>

:ロ「魔族の襲撃にローネ・ストックが関与していないことに我が命を懸けることを、ローネ・ストックが」

タ「タイト・ゼラニウムがここに契約する」:


 言い終わって少しした後に2人は手を離した。


リ「今のはなんだ?」

コ「契約魔法。お互いに不可侵の規則を設けるために使う魔法。

今回みたいにどちらかが嘘を言っていないかを確認することに使われることもある。

もし、契約に違反した場合は何らかの罰が下される。今回は罰を決めているから、もし彼女が襲撃に関与していた場合...彼女は死ぬ」


リ「...それって、あいつはかなり不利な契約を結んだことにならないか?」

コ「そうだね。それだけの自信と覚悟があるということだよ」

リ「そっか、命までかけたんだもんな」


 リューソーは契約魔法を理解した


レ「旅に出るとして、ここはどうするの?」

ロ「あー、それは心配すんな。私、自前の持ち運び転移魔法とここの転移魔法繋いでるからそれで一瞬で戻れる。そもそも人も来ねぇし大丈夫だろ!」

タ「勇者に同行する魔王幹部。なんかすごいことになりそう」

パ「ここでは常識は通じねぇぞ、もうこりゃ」


 タイト達に魔王幹部の仲間が加わった!


リ「なーんだ、戦闘するのかと思ってのに残念」

パ「力試し的なのもしたかったんだがなー」

ロ「お?やるかぁ?言っとくが、お前ら2人がかりでも私に傷1つ付けられやしないぜ?」


 その一言がリューソーとパルスの心に火をつけた。


リ「ほぉ、言ってくれるじゃねーか」

パ「『傷1つも』かぁ?舐められたもんだな?」

ロ「いいやる気だなぁ!

言っとくが、こっちは何百年と幹部やってんだよ!お前たちのようなヒヨっ子に負けるわけねーだろ!」


 剣を抜く2人と拳を構えるローネ。静かな緊張が流れる。


ロ「ビビったのか?!早く来いよ!」


 ローネの挑発に触発されるように、一斉に走り出す2人。2人は左右に別れながら距離を詰める。

 そんな2人にローネは両手に魔力を集中させて、土魔法で先端の尖った岩を作りだし、あと2.3歩で射程範囲に入るかという頃合を見て放った。


 リューソーは魔法を、速度を落とすことなく剣で左下から斜め上へ切り上げるように弾き飛ばし、更に距離を縮めて射程範囲に捉えた。

 パルスは火魔法を放ちつつ、魔法は<瞬間移動>で避けて相手の背後をとった。


 ローネは即座に右手を火魔法に向けて、水魔法を勢いよく放った

ボンッ!

 小規模な水蒸気爆発を起こし、音を立てて火魔法は消えた。


 この間にリューソーはローネの真正面から左足を大きく踏みだし、剣を腰の右に構え、パルスはやや空中から叩き落とすように、剣を真上に構えていた。


タ「入るか?」

 そんなタイトの期待を裏切るように、ローネは薄く笑い、


ロ「単調」


 と、言い放った。その一言にタイトは身の毛のよだつ悪寒を覚えた。


 次の瞬間、ローネは右足を軸にくるりと時計回りに回転しながら裏拳でパルスの手を軽く殴って剣の軌道を逸らし、2人に背を向けて1歩だけ前に出た。


 パルスの剣は起動を変えられた勢いで、本来はぶつかるはずのなかった2人の剣が激しくぶつかり合い、2人で鍔迫り合いの状態となった。


ロ「ほい、おつかれ」


 ローネはそう言うと、左手の電気魔法でパルスに触れた。

パ「ヴッ!」

リ「ガァッ!」


 鍔迫り合いで刀が触れ合っている2人は、パルスから剣を伝って、リューソーまで電気魔法が流れ込んでしまい、2人とも倒れてしまった。


ロ「な?言っただろ?

私の勝ちだ」


 勝利宣言をするローネは急に右手の拳を振るい、拳で視界外から飛んできた氷魔法をバラバラに打ち砕いた。


ロ「いてぇな〜。2人で、て言っただろ?お前たちの参加は認めてねーぞ?」

コ「化け物かな?見ることなく防がれちゃった」


 少し残念そうにするコクウ。でも、手加減はしていたのか、あまり悔しそうでは無い。


ロ「まぁ、私のすk、神技は<超反応>て言って、第六感並に反射神経が良くなんだよ」

シ「通りで行動一つ一つの反応が速いわけだ」

レ「それに最小限の動作、」

 手の内を明かしてきたローネ。もう、戦闘をするつもりも、敵対するつもりも無さそうだ。


ロ「さぁーて、旅に出るぞぉー!遠出なんていつぶりだろーなー」

タ「ちょっと待って、着いてくるのはまぁ、いいけど、」

レ「もう決定したんだ」

タ「その、角はどうにか隠せないかな?あまり、人には見せられないというか、俺たち一応勇者だし、魔族を連れてるとかはさすがにやばい気がする」

ロ「おお!たしかに!忘れてたわ!どーやって隠すかなー?」


 気分が良さそうに旅の準備と角の対策を考えるローネには聞こえない声でシキが耳打ちしてきた。顔には不安の2文字が現れるかのような表情をしていた。

シ「本当に連れてって大丈夫なの?」

タ「うーん、まぁ、そんなに悪そうなやつじゃな無さそうだし、契約までさせたし、」

コ「私たちはタイトの判断に従うけど、少しでも妙な真似したらすぐに戦う覚悟はしとかないとだよ?」

タ「わかった」


 できればその時が来ないことを祈りながら、頷くタイト。


コ「タイト、フード付きの服とか持ってない?」

タ「多分あるけど、なんで?」

コ「フードに大きめの魔物の角をつけようかなって。

中身は空洞にして、角が通るようにフードに穴を空ければ、そういう服だってみんな思うんじゃないかな?」

タ「おぉ、それいいかもね」


 タイトはコクウの意見に賛同すると早速、フード付きの服を取り出してコクウに渡した。

 コクウは角を収納魔法から取り出して、中身をナイフで切り出した。


コ「えーっと、ローネ!ちょっとこっちに来て!」

ロ「お!なんだなんだ!?」


 コクウはローネを呼びつけると、フード付きの服を着せてフードを角を貫通させながら被せた。

 服の穴が空いた部分をやや大きめに切り、そこに魔物の角を糸で縫い合わせて完成した。


 試しに着せると、15cm程の角はすっぽりと収まった。頭を揺らすと小さく音は立つものの、そこまで気にはならない程。角は完全に隠れ、逆にオシャレのような格好になった。


コ「ちゃんとそういうオシャレだってわかるように、可愛い感じの角を選んどいたよ!」

ロ「心遣い、感謝する!ちょー可愛い!」

 グッ!、とお互いに親指を立てて共鳴し合う2人。早速仲良くなったようで。


ロ「さーて、ほら!お前ら起きろ!いつまでも這いつくばってんじゃねーぞー」


 未だに床にへばりついているリューソーとパルスを叩き起こすローネ。


リ「く、悔しいです!!」

パ「いっそ、清々しい位の完敗だった」

ロ「まぁまぁ、2人とも筋は悪くねぇからこれから頑張りな」

リ&パ「「し、師匠、!」」

ロ「誰がだ」


 ローネが本当の意味で仲間に加わった!


タ「さて、もうそろそろ出ようか」

シ「出口はどこだい?まぁ、だいたい予想は着くけど、」

ロ「おう!あの通路を進んだ先に転移魔法陣があるぜ!転移先はあの遺跡。」


 言われた通りに通路を7人で歩く。ローネの言う通り、通路の終点には魔法陣があり、そこから帰れるっぽい。だが、転移魔法陣よりも目を引かれたのは、


コ「海、!」


 洞窟の中まで海の波が洞窟の岩に波打っていた。波打ち際の5m程先は洞窟が途絶えており、青い空とそれに反射した青い海が見ることが出来た。


シ「綺麗な景色だ、」

リ「泳げっかな?」

パ「海を舐めるだけにしとけ」

リ「しょっぱ!」

パ「行動までが速すぎんだろ」


 海に興奮しているリューソー。


レ「ここって、この世界のどこら辺に位置してるの?」

ロ「ちょうど南西の最端部分だな」

タ「結構な距離を転移してんだね」

ロ「普通に見つかる訳にも行かねーからな」

コ「よくここを見つけたね」

ロ「ここを見つけたのは魔王様だ。どうやって見つけたかは、知らんッ!」


 幹部でも詳細は不明らしい。ただ単に気にならなかっただけかもしれないが。


 タイトたちは、充分に海を堪能したあと、転移魔法陣にみんなで乗って、元の遺跡へと帰ってきた。


 日はまだ高いところにあり、次の街まで少しでも近づけるよう、少し休憩を取ってから出発することにした。

 休憩の後、少しばかり桃を収穫した。リ「てか、ここ桃がなってない時期は謎解くのムズくね?」ロ「まぁ、そこは頑張ってねーって感じ」パ「適当かよ」


 出発の準備を終えると、タイトがみんなの前に立ち、右手を少し上げながら、

タ「それでは!張り切って行きましょー!」

 と、張り切った声で右手を上に掲げながら言った。他の6人もそれに呼応するように、右手を上げながら


その他6名「「「おー!」」」


 こうして、6人の人間と1人の魔族の旅が始まってしまった!

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