第22話 物語序盤から苦戦する事ってあんまりないよな
/639年6月28日/
午前8:30
シ「3人とも、おはよー、
結構朝早くに起きるんだね?」
コ「う〜ん、おはよぉ、みんなー」
タ「あ!おはよう2人とも」
レ「おはよう」
パ「お、おはよう、ございます!」
タイトとレイの最近のお気に入りである、テラス席付きの飲食店で、隊の面々が合流する。
先程、朝食を食べ終えたタイトとレイ、たった今朝食を食べ始めたパルスの元に、シキと、目を擦りながら、今にも寝そうなコクウが2人で歩いてきた。
パルスは2人を見つけると、食べていた手を止め、すぐさま立ち上がり、2人に近づいて深々と頭を下げた。
パ「昨日はその、ごめん!久々に楽しくなっちゃってつい、飲みすぎた」
シ「あぁ!いいよ!そんなにかしこまらないで。
昨日は僕たちも楽しかったから」
コ「うんうん!これからはパルスが何杯飲んだか、管理するから大丈夫!」
パ「うっ......気をつけます...」
パルスは昨日の失態が相当効いているようで、かなり反省をしている。
シキとコクウも昨日のことは快く許し、特にいざこざも無く、事が終わった。
シ「さぁてと、僕たちも朝食を食べようか」
コ「うん!私、魚食べたい!」
シキとコクウも朝食を食べ始め、色々と話していると、段々と人通りが増えて来た。
パ「あいつ、おせーな。まだ寝てんのか?」
シ「まぁ昨日、帰る直前までお酒飲んでたからね〜。まだ寝てるのかもね」
タ「へー、リューソーは最後まで飲んでたんだ」
コ「そっか、2人は寝ちゃってたもんねー!仲良さそーだったなー」
レ「ちょっと、色々と気が抜けちゃって...」
パ「2人はこの仲間集めの時に、色々あったっぽいからね〜。ちゃんと仲間ができて安心したんだろ。仕方ないって」
シ「そうだったのか。あんまり深くは聞かないけど、大変だったね」
タ「まぁ、そうだね。最悪、2人で旅に出ようかとも考えてたよ」
レ「思い出すだけでも殺意が、、」
コ「ヒェッ!」
タ「落ち着きなさい」
思い出し殺意をして、コクウをビビらせるレイをタイトが背中をさすりながら落ち着かせる。
やっと、落ち着いてきたところでコクウが好奇の目を輝かせながら、口を開いた。
コ「ねぇねぇ!ずっと聞きたかったんだけど、!2人って、その、、付き合ってたり、するの?」
パ「あー、それ私も聞きたかったんだよねー」
シ「ほら、2人とも、そういうことは2人の問題だから、あんまり聞かないの」
そう言うシキも、やや気になっているようで、チラチラと2人の方を見る。
当の2人は、予想外の質問にタイトは思考が停止し、レイはみるみる顔が赤くなっていく。そして、レイは胸に手を両手を当て、早口で言う。
レ「そ、その、!私たち、まだ、付き合ってるとかそんなんじゃなくて...」
タ「そうそう、!ちょっとの間会えなかった時期があるけど、一緒の村で生まれ育った幼なじみっていうだけだから、付き合ってるとかはないよ?!」
コ(『まだ』ねぇ〜♪
タイトはそういう感じはないけど、レインの方は多分、そういうことだね!)
コクウだけがレイの言葉をしっかりと見逃さず、タイトとレイの関係性を確かに見抜いていた。続けてコクウは超ニッコニコの笑顔でひとまず、
コ「そっかぁ〜、まだ2人、付き合ってないんだぁ〜」
と、言葉通りに受け取ったように発言した。
リ「恋バナの匂いを感じる」
突然、どこからともなくリューソーがやってきた。いつになく真剣な表情で、ずんずんと、人混みの中をぶつかることなく、真っ直ぐに脇目も振らず近づいてきた。
パ「お前の五感どうなってんだよ」
シ「もう、酔いは覚めた?二日酔いは?」
リ「酔ってはいない。ただ、頭がすげー痛い」
シ「二日酔いじゃん、大人しくしときなって」
リ「イチャでラブな波動を感じたんだ。黙って寝てるわけにゃいかねぇ!」
暴れる寸前のような態度のリューソーをパルスとシキが壁となり、進行を妨げる。パ「落ち着け、いつもよりうざいぞ」リ「そんなことより、今の状況は?」シ「かくかくしきじき」リ「了解、完全に理解した」
こいつはなんでこんなに真剣なのか訳も分からないがコクウは無視して話を続けた。
コ「まあ、リューソーはどうでもいいとして、」
リ「ファッ?」
コ「私、2人は姉弟だと思ってたけど、幼なじみだったんだ〜」
シ「それは僕も思った」
タ「なんで?しかも、俺が弟?」
レ「そこは私の方がしっかりしてるからでしょ」
リ「それは無いと思うぞ」
気づいた時にはレイの刀はリューソーの首元に置かれていた。リ「すみませんでした」
コ「なんとなく。ただ、タイトが弟属性強めな感じがしたから」
シ「姉弟だと思ったのは、見た目とか性格とか?レインの片目が隠れてるからちょっと判断難しいけど、所々で似てる気がするんだよね」
コ「髪の色が一緒だし、性格も結構似ているし、相性とかもかなり良さそうだったから」
レ「髪の色は偶然一緒になった。性格と相性は12歳くらいまでずっと一緒に居たからだと思う」
パ「感性がだいぶ似通ってるのもそのせいかな?」
タ「多分」
シ「こう言っちゃあれだけど、2人が姉弟じゃなくて少し安心した。血縁が近いとなんか、あんまり宜しくないみたいなことが科学で証明されて来てるから...」
シキが少々気まずそうに答えた。この空気を変えるとかは全く考えず、コクウが好奇心の赴くがままに喋り出す。
コ「そういう話はいーの!
で!私、2人の馴れ初めとか、今までの関係性とか、色々と聞きたいなー!」
シ「コクウ、駄目だよ。人には聞かれたくないこともある事、コクウも知ってるでしょ?」
いつもどんな事でも、割と笑顔で対応をするシキが初めて、少し怒ったような表情でコクウに叱った。パ「昨日の私、今のコクウと同じくらい暴走してた?」
リ「安心しろ、コクウの方が100倍可愛いもんだった」パ「やべーな私」リ「やばかったぞ」
コ「ご、ごめんなさい。つい......」
タ「い、いいよ!そういうのが1番好きな時期だしね!」
レ「うん。私も結構そういう話好きだから、そこまで迷惑じゃない」
タ「レイもこう言ってるしさ、昔のことはちょっと無知で恥ずかしい事が多いけど、最近のこととかは聞かれても大丈夫だから」
シ「タイト、いいの?」
レイが音速でタイトの方を振り返った。そして頬を赤らめながら恥ずかしそうにタイトの服を引っ張る。
レ「えちょ、タイト、、最近もちょっとはずか/コ「最近だったらいいの?!」
そんなレイの言葉をコクウが声量で弾き飛ばした。そして、コクウは止まらない。
コ「じ、じゃあ!もし、仲間が誰も集まらなかった場合、2人で旅に出てたの?!」
タ「うーんまぁ、そういうことになるなー」
コ「じゃあさ!じゃあさ!宿を取るってなった時、2人は同じ部屋で寝てたのかな?」
タ「あぁ、それなら、初日は2人で一緒の部屋で寝たぞ」
コ「なっ!そ、そんな...既に想像よりも進んでいたとは...」
レ「ねぇ、タイト、!もう、やめて、ねぇってば、!」
謎の恋愛事情暴露大会が開催され、タイトは鈍感すぎて、なんでもかんでも正直に喋り、レイはなんでも喋るタイトを止めようと、必死に声を投げかけるも、届くことはなかった。
好奇心のままに質問するコクウに、これくらいなんて事ないと喋るタイト、色々と暴露され恥ずかしがってるレイとそれを慰める会話は、いつ間にか注文していたリューソーの朝食が終わるまで続いた。
レ「もう、やめて、、///」
朝食のあとは任務を受けるため、教会へと向かっていた。仲間のみんなはまだ、恋バナの熱は冷めていないようで、
リ「てゆーか、シキとコクウってどうなの?付き合ってんの?」
シ「うん、付き合ってるよ」
コ「生まれてからずーっと、一緒にいるもんね!」
パ「あら、素直で純粋。リューソーみたいに穢れては駄目だよ」
リ「おい!」
パ「シキってかっこいいから、結構女が寄り付いて来て大変でしょ?」
コ「大丈夫!私からシキを奪おうとする泥棒猫も、シキを貶めるようなやつも漏れなく全員、ぶっ○してるから!」
シ「なにそれこわい」
リ「あら、とても可愛らしい笑顔で、なんて物騒なことを言うのかしらこの子」
レ「・・・」
コ「ッ!・・・」
と、ここでコクウとレイの目と目が合う。2人は目線で会話をしたのか、無言で近づいた後、何も語ることなく固く握手をした。
タ「なにこれ意味わかんない。何も分からないし怖い!」
リ「じゃあ、逆にコクウに寄り付く男は...いるわけないか」
コ「大抵、いつも隣にいるシキを見て諦めてる」
リ「この世全ての男児に幸あれ」
((もういいから、そろそろ物語進めるぞ))
リ「おかのした」
やっと、協会に着いた。タイトはレイ以外の仲間にも、今回受ける予定の任務と作戦について伝え、了承の後、受付まで持って行った。
が、受付に辿り着く直前にある男が目の前に立ちはだかった。
タ「お、お前は?!」
「クックック」
そう、昨日も絡んできやがったあの大男だ。2mを超える身長。薄汚れた緑の髪。自分の筋肉を見せつけたいのか、袖のない服とそこから伸びる太い腕。無駄に刺々しい装飾があちこちに。
大男はタイトの前に仁王立ちをし、不敵な笑みを浮かべてタイトをじっと見ている。
タ「・・・」
「クック」
タ「・・・・・・」
「・・・」
タ「・・・?」
「お前!さては俺様の名前を知らないな!?」
一度も名乗ってもらってないからな。そら知らないはずだ。名前を知らないと知られたことで大男はありえないくらい怒り出した。
タ「し、知ってるよ。・・・イエティ?だったよな?」
「誰が雪山の未確認生物だ!」
シ「どうしたの?何かあったの?」
さらに怒らせるタイト。この騒ぎを聞きつけて、仲間達がやってきた。
レ「○す」
リ「おいおい、最初っから全速全開かよ」
レ「本音と建前が逆だった」
リ「じゃあ、仕方ないか」
「おい、シキ、コクウよ!お前達、こんなよく分からん頭のおかしい隊に入らずに俺の隊に入れ!」
シ「カマッセ、その誘いなら昨日断ったはずだよ」
タ(カマッセって名前なのかこいつ)
カ「いーや!俺は認めないね!そいつよりも俺の方が経験も実績もあるし、何より強い!
それなのになぜ!?お前はそっちを選ぶ!?魔王を倒すとかいう本当にできるかも分からない目標を掲げる奴らよりも、俺たちと来れば半永久的に安泰な暮らしが約束されているというのに」
シ「そうだね。カマッセの言う通り、彼らは初心者で経験も実績もない。魔王を倒すという言葉に疑いを向けるのも無理はないだろう」
カ「そうだろう!ならばおれ/シ「でも、彼らにはやると言ったらやる、凄みがあるッ!
彼らは誰のどんな目標よりも本気で魔王を倒すつもりだよ。そして、彼らは君が思っているよりも強いよ」
カマッセは怒り心頭といった様子で、奥歯を噛み締め、悔しそうな顔をしている。
カ「魔王を倒して、お前らに何か得でもあんのかよ!?今どき魔王を倒すなんて、馬鹿げた目標を掲げてるのは頭のおかしい奴らだけだ!」
シ「ならば、その頭のおかしい奴らに僕たちが数えられるだけだね。
そして、賭けだ。魔王を倒すことによる得があるかどうかも、僕たちの思い描いている得なのかどうかも分からない。でも、やらなければ何も分からない。
だから、僕たちは彼らについて行く」
真っ直ぐに堂々と自分の思いの丈を言うシキはかっこよかった。そして、出会って1週間ほどしか経っていないタイト達を、シキは信頼していた。それが、心から嬉しく思った。
ただ、カマッセはまだ納得いかないようで、
カ「シキよ、さっき、こいつらは強いと言ったな?」
シ「言ったね」
カ「なら、俺の隊と仮想空間で決闘をしろ!その後にもし、気が変わらないようならそれでいい!」
シ「わかった。ならば、こちらからも1つ。
この決闘で僕の気が変わらなかったら、今後一切、彼らのことを悪くいうのはやめてもらおうか」
カ「あぁ、約束しよう。おい!お前ら!さっさと部屋に入って準備しろ!」
カマッセの一声で仲間であろう者達が5人立ち上がる。「アイアイサー!親分!」「片腹痛し」
そして、そのまま仮想空間の部屋へと入っていった。全員が入り、扉を閉めたところでシキが謝ってきた。
シ「ごめんね、タイト。勝手に決闘受けちゃって」
タ「謝らなくていいよ!それにこっちもごめん。シキにあそこまで言わせちゃって」
シ「そっちこそ謝らないで。仲間として普通のことを言ったまでだから」
タ「頭のてっぺんからつま先、心の奥底まで美青年だ。崇めなくては」
コ「そう思うよね!シキってめちゃくちゃかっこいいよね!」
褒められて少し気恥しそうなシキ。リ「俺もあぁなりたかったな」パ「来世に期待しとけ」
リ「てか、あいつなんなんだよ!?めちゃくちゃ腹立つな」
パ「まぁ、冒険者だしな。ちょっと強いくらいで調子に乗っちゃってんだろ」
コ「悪い人では、ない...はず」
シ「そこは言い切った方がいいよ。
とりあえず、僕たちも準備しようか?」
タ「さっきの話聞く限り、勝ち負け関係なしにシキたちの心変わりしなければいいってことだよね?」
シ「うん」
リ「ん?じゃあつまり、、」
コ「負けても、この隊に入るって言えばタイト達の勝ち」
パ「勝ち確ってわけか。あいつ多分、あんまし頭の方は良くねぇぞ」
タ「でも、やるからには勝ちたいよね。レイも戦うってなった時から、戦闘態勢に入って温めてるから」
レ「仮想空間だから、殺しても罪には問われないよね?」
リ「あぁ、そうだな。殺すか、相手が降参するかだな」
レ「わかった殺す」
パ「レイン1人で全部片付きそう」
タイトは任務の受領だけ済ませ、タイト達も決闘の準備をするため、部屋に入る。
部屋の中は外側から見るよりも明らかに、広い構造となっている。恐らく、何らかの神技によって、扉から先は異空間となっているのだろう。場所、時間、天候などは双方で選ぶことができ、抽選で決まる。
部屋に入るとまず、5畳ほどの広間があり、壁際には決闘を視聴できる大型のモニターがあり、いくつかの視点から見れるようになっている。負けた人はここで観戦をするのだろう。
広間には人数分の扉がある。
リ「ほんじゃ、また後で。着替えて寝たら始められっから」
パ「2人は初めてだよね?服とかも仮想空間に入ったら、自分の思うような服を想像すればできるから安心してな。服とか装備とか決まったら始まるから」
シ「仮想空間では魔力とか技力の総量は現実と同じように減るけど、仮想空間で使った分は現実には作用しないから。あと、収納魔法の中も使えるから」
コ「要は、普段通りに戦っても何も問題ないってこと!じゃあ、がんばろーね!」
4人が一部屋に1人ずつ入る。タイトとレイも少し緊張しつつ部屋に入る。レ「大丈夫?」タ「大丈夫。少し緊張してるだけ」
中は布団とクローゼットが最低限置かれており、そこで薄着に着替えて、布団で寝ろということらしい。
タイトは言われた通りに着ていた上着やら装備やらを脱ぎ、薄着に着替えて布団で寝て、仮想空間へと入っていった。
((お気づきの方も多いかと思いますが、もろワールド○リガーのあれです。色々考えたんですけど、自分の中で規則とか条件とかを決めてたらこうなっちゃいました。
世界観は違うので許して頂きたいです。))
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*視点 戦闘時*
場所は森の中、天気は晴れ、時間は真昼間。まず、リューソーが仮想空間の地へと転送されてきた。
リ「お、こっちの希望通りだな」
パ「この3つが一般的な基本みたいなとこあるよな」
シ「冒険者は基本近距離が多いからね」
コ「そのせいで私たち遠距離はちょっと不利なんだよねー」
リ「お!シキとコクウも来たか、あとはあの2人だな」
リューソー達が噂をしていると、2人もやってきた。
レ「へぇー、意外と作り込まれてるんだ」
パ「この前の特訓の時はただの広間だったからな」
タ「体の違和感とかもないし、やっぱりすごいねこれ」
身体能力、魔法射出までの反応速度などに違和感がないことを確かめた。
タ「これ決闘を始めるには、ってなんか目の前に出てきた」
シ「それの『はい』の方を選べば始まるよー」
タイトの前に表示される選択画面。タイトはシキに言われたように選択する。
決闘を開始してもよろしいですか?
はい◀
いいえ
すると、何も無い空の方から女性の声が聞こえてきた。
「双方の確認が取れましたので、只今より決闘を開始致します。5秒前、4、3、2、1、始め」
リ「おし、始まったな。じゃあ早速俺は/パ「ちょっと待て、簡単に作戦会議するぞ」
走り出すリューソーをパルスが瞬間移動で追いつき、タイトたちの元へ戻す。
リ「え?今?」
パ「始まっちまったから今しかない」
レ「じゃあ、手短に。私があの大男殺しに行くから。他はお願い」
リ「ここに来る前から殺意の念がすごいから、それは譲ろう。じゃあ、俺は他適当にやるわ」
パ「何とかなるか?じゃあ、私も同じくそこら辺にいるやつと戦ってるね」
タ「必然的に俺もか」
シ「僕たちは前と同じように後方から支援するね」
コ「木ばっかりで可能な限りでしか出来ないけど、頑張るね!」
タ「わかった!それじゃあ、行こうか」
ほぼ打ち合わせのような作戦を立てて、シキとコクウは配置に移動を始め、ほか4人も敵の方へと移動を開始した。
ズドォォォン!!
何やら地響きのような音が1つ、2つと連続して聞こえてくる。
リ「さっきからなんの音だ?」
レ「あの大男が木の幹を私たち側に向かって、上に投げてそれが地面に衝突する音」
パ「そこまで見えるんだ」
レ「あ、リューソー、そこ降ってくるよ」
リ「ふぇ?」
レインの一言でみんなが空を見上げると、リューソー目掛けて完璧な角度で5m上空から大木が降ってきていた。
タ「リューソー!しゃがんで!」
バキャァ!
タイトが咄嗟に大木の半分ほどの大きさの岩魔法を大木にぶつけて木っ端微塵にする。
リ「っぶねぇ。助かったぜタイト」
タ「気にしないで。そんなことより、早くここから離れよう」
レ「それがいい。今ので私たちの位置がだいたいバレたから」
4人は歩いて移動しながら、話し合いを始めた。
パ「あの木を避けながら、近づかなくちゃいけねぇのかよ。頑張れよお前ら」
リ「瞬間移動が羨ましいぜ」
レ「でも、あとここを20mくらい進んだら、あいつら5人がいるよ。で、もう1人はこっから右に10m進んだ先で待機してる。あ、また飛んできた」
またもや正確に、タイトたちの所へと大木が飛んできた。
まだ10mほどの距離があり、着弾までには時間があったため、4人とも回避することができた。
タ「じゃあ、俺そのはぐれてるやつ倒しに行ってくるね」
リ「おう!気をつけて行けよ!」
タ「任せんしゃい」
ここで、タイトだけ別行動を取り、ほか3人は変わらず敵の本隊目掛けて進み始めた。
シ「うーん、やっぱり誰がどこにいるのかわかんないね」
コ「ね。せっかくこんなに高い岩の塔を作ったのに、結局みんな森の葉っぱで隠れちゃった」
シ「次からは敵の位置とか分かるように、何かこっからでも分かるようなことしてもらおうね」
タ(だいたいここら辺だよな。レイが言ってたのって)
走る足を止めて周りを見回す。が、目視する限り見つからない。魔力探知にも引っかからない。
ドゴォォォン!
タイトの2m前方に大木が降ってきた。
タ(さっきから俺に近いとこに飛んできてる。なんかの神技で場所バレてんのかな?)
タ「ッ!」
唐突な殺気と魔力をタイトは察知する。タイトは横に大きく飛び、後ろから飛んできた氷魔法を回避する。
「片腹痛し」
回避した先で背中から声が聞こえてきた。タイトは刀を抜き、足から風魔法を放出し、空中で無理やり後方へと体を回転させる。
タイトは振り下ろされた相手の剣を回転の勢いのまま弾く。
タ「誰だお前」
「ふむ、名乗る程の者ではない」
タ「そ、そうか」
「あえて、名乗るのならばマージ・イッタだ」
タ「ああ、結局名乗るのか」
前髪で目元が隠れており、やや痩せ型の体、やる気のなさそうな声にだらんと下がった腕。正直に言って強そうでは無い。
タ(ただ、さっき後ろに来られるまで気が付かなかった)
タイトがマージの出方を伺っていると、マージは地面に手をつけて土魔法で岩の壁を作り出した。
タ(俺じゃなくて、自分の前に?!)
タイトが急いで壁の後ろに回ると、マージは既に居なくなっていた。
<魔力探知>
タ(見つけた!けど!速すぎる!それとこいつ、まさか!?)
魔力探知で探すも移動が速すぎて目で捉えることが出来ない。それに加えて、マージの足音、落ち葉や木の枝を踏む際の音、風きり音、マージから発せられる音の全てが聞こえない。
故に、魔力探知頼りとなったタイトはマージを追うことはほぼ不可能に近い状態となっている。
タ(厳しいな。ならば)
タイトは走り出した。どこに何がある訳でもなく、マージから逃げる訳もなく、ただひたすらに森を駆け巡った。
それをマージは追いかけた。引っ込み思案な彼は、自分より弱い存在、基、自分から逃げる相手が格好の獲物であった。彼は不気味に笑いながらタイトを追いかける。
タイトは彼の殺気と魔力探知を頼りに、地形を利用しながら避け続けた。木の枝に捕まり、上方向に回避したり、草木に隠れるように滑ったり、時には反撃も行った。
そして、なるべくマージにはバレないように自然を装い、木や地面に触れ、等間隔で円になるように魔力を込めていた。
1周した後、タイトはやがて円の中心部へ戻って来た。中心から魔力を込めた地点までだいたい10m前後。
<魔力探知>
マージが円の中に入っていることを再度確認する。そして、相手に探知されないように、魔力探知を解除し、草木に隠れるようにしゃがむ。
マージが完全にタイトを見失った頃合を見て、地面に両手で触れ、魔力を込めた地点にも同時に氷魔力を放出し、辺り一帯を一気に凍らせた。分厚い氷の壁と天井を作り出し、簡単には逃げられないようにする。
タ「フーッ、これで風も来ないし、足跡とか草木の揺れとかで分かるだろ」
聞こえないのであれば見ればいい。見れないのであれば、通った痕跡が分かるようにすればいい。
タ(射程圏内はこの氷の世界全部。足に魔力を込めれば氷を自在に操れる。一瞬でも、行先が分かれば、捕まえられる)
マージは嵌められたことを瞬時に理解した。そして、次の一手が勝敗を分けることも。
なので、マージは自分が状況理解に時間を要すると考え、今が1番油断しているタイトを速攻で仕留めるべく、音もなく最高速度でタイトの背後に近づいた。
マ「片腹痛し」
タイトはマージに反応し、振り向きざまに刀を振るった。が、タイトの刀はタイトの予想に反し、空を切った。
タ(あ、負ける)
ツルッ!
タ「うわ、うわぁぁぁぁ」
地面を凍らせたことで、踏ん張りが効かなくなり、勢いよく振り向いたタイトは回転を止められず、派手に転んでしまった。
タ「あいててて、あれ?あいつ、どこ行った?トドメを刺しに来ないな」
目の前を見ると、何故か腹部を抑えながらしゃがみこんでいるマージ。
タ(あれ?当たってないよな?血もでてないし)
タイトが警戒しながら近づくと、マージは剣を手放し、何やら唸り声をあげていた。
マ「ぐっ、ぐおぉぉぉッ!片腹...痛し、!」
タ「あ、それって、腹立たしいとかそういう意味じゃなくて、本当に痛かったのかよ!紛らわしいな!」
ヒュー、ヒュー、と肩で呼吸をしており、本当に辛そう。
タ(てか、仮想空間て、その時の健康状態とかもそのまま反映するのかよ)
タ「なんか、勝った気がしないけど、これも勝負なので...」
タイトがマージに近づき、首を斬るため、刀を振り上げた。
マ「くっ!片腹痛し!」
タ「もう、どっちの意味かわかんねぇな」
そのままタイトは刀を振り下ろす時、一瞬躊躇した。
タ(大丈夫。仮想空間だから本当に死ぬ訳では無い)
そう自分に言い聞かせて、刀を無気力に下ろし、マージの首を斬った。
タ「さて、アイツらのとこに行くか?もう終わってっかな?」
タイトは氷魔法を解き、3人の元へと走り出した。




