第21話 甘い歌と
/639年6月27日/
シキとコクウを誘ってから3日が経った。
この3日、タイトとレイはこの街を散策しながら、日用品や必需品などを購入したり、いつこの街を出発するかなどを話したりしていた。
リューソーとパルスは特訓と言って、街の外と仮装空間での決闘を行ったり来たりとしていたので、今日は簡単な任務を受領して2人に行ってもらっていた。
タイトはそろそろお金に余裕がなくなりそうで不安なので、シキとコクウの返事がいい物か悪いものかはさておき、返事の後に任務を受けなくてはならないので、事前に探すため、太陽が傾きかけてきた時間帯に冒険者協会にレイと共に立ち寄っていた。
タ「なんか、いい任務ないかなー?」
レ「あ、この前の鳥の討伐以来あるよ。これ行く?」
タ「それ、二等星任務だから受けれないなー」
シュン、と悲しそうな顔をするレイ。
この前実際に、1体を討伐したのでいけなくも無さそうだが、まだ五等星なので、受けれないものは受けれない。
と、1つの任務がタイトの目に留まる。
内容
地中に潜む巨大ワームの討伐
個体数不明
生息域の記載はあるが、地中にいるため、詳細な位置は不明
四等星任務
報酬は他の同階級の任務に比べて割高
タイトはこの任務を指しながらレイに尋ねる。
タ「これ良さそうじゃない?」
レ「この巨大ワームのやつ?」
タ「そうそう!これレイの神技だったら地中まで見れるから結構いけそうじゃない?報酬も良さげだし、四等星任務だし」
レ「私の神技が、必要?」
タ「うん!神技っていうか、レイが、ね?」
なんて事ないように言うタイト。レイの顔を覗き込むと、口の端を釣り上げ、ニマニマと笑顔を浮かべており、「嬉しい」という感情が全開に、表情に現れていた。
が、タイトはその表情を見ることはなく、レイは何かを思い出したかのように、目を少し見開き、真顔に戻ってしまった。
タイトが任務の紙を一旦、掲示板に戻したところで、
「お?お前たちのこの前の」
この前、冒険者登録をした時にレイと斬り合いになりかけた、大男がタイト達の後ろに立っていた。
大男はタイトとレイを舐めるように見て、協会の中を見回したあと、
「仲間はできたか?勇者様よォ?見た感じそれっぽいのはいねぇみてぇだがなぁ?」
なんと間の悪いやつだ。今は仲間がいるというのに、証明できる人物が今ここにはいない。言ったところで、逆に馬鹿にされるのが目に見えている。
だから、タイトは何も反論はせずに黙っている。横でレイは戦闘態勢に入っていた。
「まぁ?あの勇者様には仲間なんてこれ以上いらねぇよなぁ!?募集なんてやめて、2人で犬死にでもしてろよ!そこに俺らはを巻き込まずによ!」
言いたい放題言いやがる。
タ(1発ぶん殴ってやろうか)
と、本気で考え始めた時、大男の後ろで協会の扉が開け放たれた。赤みがかった太陽の光に紛れ、白い髪を靡かせながら、2人の男女が協会に入ってきた。
シキとコクウだ。
2人は真っ直ぐ受付へと向かい、受付人へこう言った。
シ「隊の解散の手続きをお願いします」
その一言に周囲がザワつく。「別れたのか?」とか、「喧嘩か?」「どこかの隊に入るのか?」など、様々な憶測が飛び交っていた。
その間に2人は手続きを済ませ、協会の中を見渡して、タイトと目が合う。シキとコクウはタイト達の方へと一直線に歩き出した。
3m程の距離まで近づいた時に、大男がシキ達に尋ねた。
「2人が解散とは、何かあったのか?また、共同で任務を頼もうと思ってたのにな...俺の隊にでも入るか?」
と、タイト達とはまるで別人のような、高圧的な態度も、バカにしたような喋り方もなく、2人に話しかけた。シキは終始笑顔で答える。
シ「あはは...せっかく誘ってくれたけど、断らせて貰うよ」
コ「私ももちろん、遠慮させてもらうよ!」
「ガハハ!そうか〜、もう冒険者は辞めるのか?」
シ「いや、誘ってくれた手前言いづらいのだけど、ある隊に2人で入ろうと思ってるんだ」
「ほう、俺の誘いを断って別の隊に入るとはな。妬いちまうじゃねーか!一体、誰の隊に入るってんだ?」
シキは一瞬、タイトと目を合わせ、すぐに大男に視線を戻し、
シ「それは、すぐにわかるよ」
そう言って、シキとコクウは大男の横をスーッと通り抜け、タイト達の前に立ち、堂々とした立ち振る舞いで言う。
シ「タイト、決めたよ。君の誘いに乗ることに。君たちの冒険について行くことに。だから、僕たちを君たちの隊に入れてくれないか?」
シキのその言葉に、ザワついていた人々が静まり返り、視線が1つに集約する。
タイトは萎縮も怯えた様子も少しも見せずに応える。
タ「その返事が聞けて嬉しいよ。これからよろしくね2人とも!」
コ「ありがとう〜!これからよろしくね!」
レ「歓迎する」
シ「ありがとう、これからよろしく頼むよ」
タイトとシキは固く握手を交わした。釣られてレイとコクウも握手をする。
リ「タイトー!いるかー!?」
突然、バァン!と扉を勢いよく開けながらリューソー、後ろからパルスが入ってきた。パ「もっと静かにできねぇのか」リ「だって、さっきから見つかんねぇんだもん」
協会中を見回し、やがてタイトを見つけ、大きく手を振りながら近づく。
リ「やーっと見つけた!タイト!任務終わったぞー!」
パ「だから静かにしろっての」
タ「おつかれー。じゃあ、受付に報告してくるね。
あと、2人に朗報があるよ」
タイトがそう言うと、シキとコクウはクルッと後ろを振り向き、リューソーとパルスと目を合わせる。
2人はシキとコクウに気づくとやや駆け足で近寄った。
リ「お?朗報っつーことはつまりッ!」
パ「そういう、ことなんだな?!」
シ「多分、そういうことです!」
コ「よろしくね〜」
4人は再開と良き返事に喜び合う。
タ「お楽しみのところ悪いけど、とりあえず、完了の報告と、2人の隊加入の手続きをしてこようか?」
シ「あぁ、そうだね。先にそっちを済ませよう」
リ「りょーかーい。じゃあ、俺たちは外で待っとくわ」
そう言って、タイト、シキ、コクウは受付へ、その他3人は外へと向かった。
タイト達が受付へ向かう時に、扉の方を向いたまま動かずにいる、大男を覗き込むと、大男は驚愕の表情を浮かべながら気絶していた。
(今、どんな気持ちだろうか......へっ)
タイト達は任務の完了の報告と隊加入の手続きを済ませ、協会の外へ出る。外では宣言通り3人が待っていた。
リューソーはタイト達が出てくるや否や、
リ「せっかくだしさ、隊加入とこの前の任務達成を祝って祝勝会をしようぜ!」
と、言い出した。
パ「お前にしてはいい提案したな」
リ「おっとー?一言余計だぞい」
レ「場所はどうする?」
パ「近くの酒場は?みんなは良き?」
コ「良き良きの良き」
タイトとシキは親指を立て、パルスの提案に賛同する
パ「おっし、決まりだな。とりま、宿だけ取っておこうぜ」
レ「そうだね。そうしよう」
酒場が近くにある宿を男子組、女子組それぞれ3人ずつで部屋をとり、鍵を受け取った。
その後、不要な道具を部屋に置き、すぐに酒場へと集まった。
うるさくも、なぜか安堵感と心地良さを覚える喧騒。
酒の飲み比べをする者、楽器を演奏する者、この喧騒に黄昏ながら1人で飲む者、様々な人がこの場所に集まっている。
従業員に大きめの長方形の机に案内され、背もたれの付いた椅子に座る。
席の並び順は↓
コクウ シキ リューソー
つーーーーーくーーーーーえ
パルス レイ タイト
((一応付けましたが、そこまで重要じゃないので無視でも構いません。なんとなーく会話の想像が出来たらと思ってつけただけなので))
パ「勢いで酒場に来たけど、みんなお酒飲めるの?
あと、飲める年齢なの?私は18だから飲めるけど...」
リ「俺も今年18になるから大丈夫!」
タ「2人とも1つ上だったんだ、、、」
パ「つーことは、タイトとレインもダメってことか」
シ「すまない、僕も同じく今年17で、」
コ「私は16!そういえば忘れてたな〜、あはは」
((整理すると↓
18 17 16
パルス・リューソー、タイト・レイ・シキ、コクウ))
パ「じゃあ、お酒が飲めるのは私とこれだけか〜」
リ「これ言うな。他のやつは水かお茶かジュースな」
コ「年齢制限はちゃんと守らなきゃダメだよ」
レ「その忠告はあんまり意味ないんじゃないかな?」
タ「こんなとこに未成年が見に来ることないからね」
((ないことはないだろ!?))
近くを通りかかった従業員に全員分の飲み物と何品か食べ物を頼んだ。
タ「そいや、パルスとリューソーの歓迎会やってなかったね」
レ「あ、忘れてたんだ。私はてっきり募集かけ終わってからするもんだと思ってた」
パ「1回で終わらした方がいいだろ?丁度いいよ」
リ「えー、俺はして欲しかったなぁ〜」
パ「1人でやってろ気持ち悪い。タイトが可哀想」
潤んだ瞳で上目遣いをするリューソーに容赦なく切り捨てるパルス。
やがて、注文した品と飲み物がみんなに届く。各々、飲み物を片手に持ち、みんなタイトの方を見て乾杯の音頭を待つ。
タ「う〜ん、やっぱり俺かぁ〜。苦手なんだよな〜、人前に出るの」
コ「隊長でしょ?シャキッと!」
リ「年下に言われてんぞー、隊長ー!」
タイトは、しゃーなし、といった様子で椅子から立ち上がり、みんなの方を向く。左手を握りしめ、緊張から恥ずかしそうに笑う。
タ「あー、えーっと、まずは皆さん隊への加入ありがとうございます。えー、私たちの旅の最終目標は/リ「堅苦しい。もっと適当でいいんだよ」
たじたじと話すタイトの言葉を遮って、ピシャリと言い放つリューソー。
パ「初々しくていいだろうが!お前は黙っとれ!」
レ「次から1回の失言につき、指を1本切り落とす」
シ「隊長の言葉を待ってあげようよ」
コ「この、バカチンがッ!」
仲間から総攻撃を食らうリューソー。あまりの勢いに体をビクッ、と震わせていた。
リ「セ○ムかよ、あと、1人発言が怖い。猟奇殺人鬼かよ」
レ「切り落とすのは首でもいい?」
リ「やめてください。死んでしまいます」
タ「落ち着いて!私のために争わないで!」
コ「それを男の人が正しい場面で使うの初めて見たかも」
シ「ブフォ!、ゲホッ、ゲホッ、フフ、、フフフフ」
パ「おい、大丈夫か?笑」
コ「あー、壺に入っちゃったかー
私が何とかするから大丈夫だよ!ありがとう!」
パ「おう!あんまり心配してない!」
コ「草」
あまりの混沌に壺に入って笑いが止まらなくなったシキ。心配するパルスと介抱しようとしてるコクウ。未だにレイはリューソーを睨み、リューソーは目を合わせないよう逸らし続けている。
コ「ほらー?大丈夫?水飲む?」
シ「だ、、だいしょうび」
パ「びっくりだよなー、この惨状でまだ誰もお酒飲んでないってんだから」
さっきまでの緊張感とかちょっと真面目な雰囲気は遥か彼方へとぶっ飛んで行った。
タ「みんな落ち着いてきたところで、早く乾杯だけ済ませよう!」
リ「そ、そうだな。先に済ませよう。斜め前からの視線かも怖いので」
レ「なにか?」
リ「ヒィっ!」
リューソーが完全に怯えてしまっているので、早々に歓迎会兼、祝勝会を始めるタイト
タ「よし!
みんな隊に入ってくれたこと、本当に感謝する!絶対魔王倒すぞ!それと、この前の初任務達成おめでとう!てことで、乾杯するぞぉ?!乾杯ー!」
他「「乾杯!!!」」
カン、カン、とグラスのぶつかり合う音が何度も鳴り、飲み会が始まった。
タ「パルスの神技って、他の人も飛ばせるんだね」
パ「直接触れなくちゃダメだけどね。ちなみに物体もいけるぜ」
レ「コクウのタイトを浮かせてたのは、神技?
速度を遅くするとか、浮かせる能力?」
コ「うーん、似たようなものかな!」
シ「リューソーは体力が多いね。戦闘開始からずっと全力で走り回ってたのに、タイトが連れ去られそうになった時、1番最初に走って追いかけてたしさ」
リ「へへ、だろ?俺、昔から息切れした事ねーんだ」
パ「それが神技なのでは?無限の体力とか」
リ「なんとも言えない強さだなそれ」
タ「あるだけまし。ないやつもいるんだから文句言わない」
リ「これは失言。失礼!」
シ「あ、てかこの隊の名前ってなんなの?」
沈黙が流れる。異様な空気感を感じ取ったシキが慌て出す。
シ「あ、その!嫌だったら言わなくてもいいから」
リ「隊長、隊長だろ?言ってくれよ」
シキとコクウの視線がタイトに集中する。そして、タイトの重い口が開かれた。
タ「・・・魔王倒し隊(仮)」
先程よりも長い時間の沈黙が流れる。周りの喧騒が聞こえなくなる位の沈黙が。
シ「そ、そう。えと、いいん、じゃないかな?」
コ「うーん、入る隊間違えたかな?」
シ「しっ!そういうこと言わないの、本気で考えたかもしれないんだから」
嫌悪感を必死に隠しながらも褒めようとする、心優しいシキと素直に思ったことを発するコクウ。
タ「ほらね、予想通り(泣)」
タイトが心に傷を負ったところで、6人は主に、3日前のことを思い出しながら、当たり障りのない会話をした。
あっという間に1時間程が経ち、成人組は段々できあがってくる。
突然、パルスが勢いよく席を立ち、リューソーに向かって右手でビシッ!と指さしながら
パ「おらぁ!お前はぁ、もっとタイトとかー、レインのー言うことをぉ、聞けー!」
リ「お前さては、、、酒弱いなっ?!」
シ「あー、完全に出来上がってるね」
コ「お酒はほどほどにね!」
頬を紅潮させ、目の端が垂れて周りの目を気にせずに大声を発し、完全に酔っ払っているパルスと、ギリ意識のあるリューソー。シキは危険を察知し、通りかかった従業員に水を注文した。シ「すみませーん、水2つお願いできますかー?」従「かしこまりました!」
パルスはヨレヨレとしながらタイトとレイの間に入って2人と肩を組み、リューソーをじっと睨みつけながら言う。
パ「2人もぉー、あいつが勝手な行動してたら、こう、ビジーっと言ってやらねぇと!ああいう阿呆はー、拳で分からせてやりゃァいいんだよ」
パルスの助言的な言葉を貰ってる手前、タイト達はパルスを抑える言葉をかけれずにただ、耐えに徹するしか無かった。レイは極力絡まれないよう、肩を組まれながらも空気と化していた。パ「いいなー?拳だぞぉ?」タ「う、うん。わかったから」
パルスの被害者を横目に聞こえないよう、小さな声でコソッと、話すリューソーとシキとコクウ。
リ「次からはあいつの酒を監視しとこうな?何しでかすか分からんから」
シ「うーん、それがいいかもね。毎回あんなだとちょっと、、ねぇ?」
コ「お酒、羨ましいけど怖いなー」
だが、コソッ、と話しても所詮、1m程度の距離。パルスに聞こえてしまった。
パ「おーん?なんだぁ?私が酔っているとでもぉ?」
リ「まずい!聞かれてた!」
コ「リューソーがパルスの悪口言ってました!」
リ「ふむ!なるほど!仲間を売るのに一切の躊躇がねぇなこいつ!」
パ「いやぁー?シキも言ってたの聞こえてたぞぉー?」
そう言いながらパルスは目標を切り替え、机の反対側へと周り、シキの後ろに立つ。首に手を回し、力は入れずに、首を絞めあげるような格好をとる。
シキは完全に抵抗をやめ、されるがままになっている。その間、その光景をタイトは憐れみの目で、レイは飲み物を片手に眺めていた。レ「やっと解放されたね」タ「うん。ごめんねシキ」
ここで先程シキが注文した水が届く。従「ご注文の水、2つです」タ「あ、どうもすみません〜」レ「・・・」
シ「あ、あはは。パルス、悪口ではないけどごめんね。できれば話して貰えると嬉しいんだけど?」
パ「んー、ダメ。さっき、私を厄介扱いしたからなー」
コ「あ、えと、、そのぉ、や、やめ、、」
シキが困り果ててしまっている。横でコクウがどうにかしようと焦ってはいるが、どうしたらいいのか分からず、オロオロとするだけで何もできていない様子。
そこへ、救世主の一声が!
リ「まぁ、落ち着けよ。な?一旦席に座って」
リューソーだ。同じく酒を飲めるものとして、自己犠牲を承知でパルスをなだめに行った。
パ「あん?」
リ「すみませんでした」
救世主の心は弱かった。せっかくの助け舟がちょっとした高波で転覆してしまった。コクウがリューソーの傍に近寄り、机に突っ伏してしまったリューソーを揺する。
コ「ああ!リューソー、もうちょっと頑張ってください!」
リ「もう、やだ。ムリ。手首切って、血抜いて死のう」
コ「後で、手首丸々切り落としてあげるから、助けてよー!」
この惨状を肴に料理を食べるタイトとレイ。
レ「フフ、肯定するの絶対そこじゃないでしょ」
タ「リューソーもできあがって来てるなー」
先程、届いた水をリューソーとパルスの前に、静かに置くタイト。
パルスの酔い絡みは更に熱を帯びていっていた。
パ「おら、シキも飲めば分かるんだ!だから、飲めー!」
シ「まだ、飲める年齢じゃないので」
パルスは自分の酒をシキに押し付けようとしており、シキはそれに、必死に抵抗していた。
タ「最初にみんなの年齢聞いて、飲める飲めないとかを1番気にしてたのに、、、」
レ「これがお酒の呪いか、」
((未成年へのお酒の強要は犯罪なので、みんなはしないよーに!))
パ「飲め飲めー!」
シ「あの、ほんとにやめてください」
すると、先程タイトが置いた水を1つ、コクウが手に取り、酔い絡みをしているパルスの手をガッシリと掴んだ。そして、薄く笑みを浮かべながら言う。
コ「一旦、水飲んで落ち着いて?シキ、嫌がってるので」
パ「お?コクウも飲みたいのかー?なら飲ませて/コ「落・ち・着・い・て!
シキが、!嫌がってるから」
パ「お、おう。その、悪かった。ちょっと悪酔いしちゃった」
いつも笑顔でいるコクウのあまりの圧に酔いが覚めるパルス。
コ「謝る相手、違うでしょ?」
コクウの厳しい言葉にパルスはシキの方を向き直し、謝罪する。
パ「ごめん、シキ」
シ「だ、大丈夫」
パ「これからは、気をつけます」
重苦しい空気が流れる。誰がこの空気をどうにかするのかと、リューソーとタイトが目線で会話をしていると、
?「おー?ここ、盛り上がってますねー?!」
と、店に入ってきた時からずっと、演奏をしていた楽団のうちの一人がギターを背負って、タイト達に近づいてきた。
黄色の髪、太らず痩せすぎず、筋肉質でもない普通くらいの20代前半くらいの男。ずっとニコニコしていて、明るく、人当たりも良さそうな人。
リ「どこがだよ、たった今盛り下がったとこだわ!」
タ「リューソー、知り合い?」
リ「あー、知り合いっつーか、こいつら、色んなとこで旅しながら、酒場とかで演奏してる集団なの。だから前に何回か話したことあるだけ」
シ「僕も何回か見た事ある」
パ「わ、私も知ってるぞ」
コ「結構知名度あるもんね。この人達」
?「どうもー!キラクと呼んでねー!旅する楽団、
『楽栄旅団』です!」
レ「背中に蜘蛛背負ってそー」
あまりピンと来ていない様子のタイト。
レ「あれだよ、前にエレナが「なんかの音楽の集団見つけたー」って、言ってた人たちだよ」
タ「あー、なんかそんなこともあった気がする」
リ「てゆーか、あれだな。最後に見たの1年ぐらい前なのに、他の奴らは違うけど、お前だけ見た目何も変わってないんだな」
キ「ん?知らないの?僕、あれだよ。えっとなんだっけ?」
コ「概念的生命体?」
キ「あ!それだー!」
キラクがコクウを指さし、勢いよく答える。
キ「て訳で、姿かたちはこれからもずっと変わらず、このままだよー!」
パ「へー、知らなかった」
リ「おれもー」
シ「言われるまで気づかなかった。話には聞いてたけど、こんなに人に似てるものなんだね」
ここでも知らない単語の出現に着いて行けていないタイト。
タ「え、?その、がいねんてき?生命体って何?」
リ「ん?知らねーの?
簡単に言うとー、、、えーっと、なんて言えばいいんだ?」
コ「人の感情とか、あらゆる事象とか、そういう感じの人の記憶とか思い、意識の集合体?が人の形を持って顕現したのが、『概念的生命体』だよ。
説明下手でごめんね」
タ「ああ、いや、今ので大体わかった。感謝する」
キ「で!僕はみんなの『楽しい』って、感情が集まったもの!気楽でキラク!楽しそうな雰囲気?空気感のところに現れるよー!よろしく!」
リ「だから、いつも酒場で見るのか」
ジャララーン、
と、キラクがギターの弦を弾き、音を奏でる。
キ「さぁさ、夜は始まったばかりだよ!こっから楽しんでこ!てことで、かんぱーい!」
リ「いえーい!」
他5人「かんぱーい!」
仕切り直しとして再び、乾杯をする。空気が一気に柔らかく、弾んできたように感じる。キラクはタイトたちの横で、お酒を飲みながらギターで弾き語りをしている。
キ「宵街を行く人だかりー♪」
タ「これって、、」
楽しそうに演奏をする、キラクの歌にタイトが反応を見せる。
タ「ねぇ、これってエレナがよく歌ってたやつだよね?」
レ「ん?あ、ほんとだ。懐かしい」
タ「ねー」
タイトとレイは昔の情景に思いを馳せながら、キラクの歌を優しく噛み砕くように、静かに聴いていた。
1曲、歌が終わったあと、キラクは2人を見て、嬉しそうに笑った。
キ「僕の歌がそんなに良かったのかな?
嬉しい限りだね〜、!2人して気持ちよさそうに寝ちゃって」
4人の程よい大きさの話し声、キラクの楽しく、優しく、心を溶かすような演奏、周りのうるさいとは思わないような喧騒の中。
2人は頭をお互いに預けながら、小さく笑いながら夢の中へと入り込んでいた。
夜はまだ、始まったばかりだ




