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今、生きているあなたへ  作者: ひびき
少年期  旅立ちの時編
20/92

第18話 うるせぇ奴ら

/639年6月20日/

        *タイト視点*

 朝、目が覚める、微かな光が窓から入り込んでいる。


 外の空は薄暗く、まだ太陽が上っていない時間であるという事を理解する。


 二度寝を決め込もうと、窓とは反対の方へと寝返りをうつと隣で寝ていたレイとバッチリ目が合った。

 たった今起こした様子ではなく、ずっと起きていたかのような反応をみせるレイ。


タ「おはよう、レイ。昨日は寝れた?眠くない?」

レ「あ、おはようタイト。眠くないよ。うん、昨日、寝たよ。ぐっすりと」


 何故か妙にしどろもどろになりながらレイは答えた。


タ「ほんとに?」

レ「嘘じゃないよ、ほんとだよ」

タ「俺、ちょっとそこら辺散歩しようと思ってるんだけど、レイはどうする?」

レ「寝る」

タ「眠いんかい」

即答。


タ(やっぱり俺は床で寝た方が良かったかな?)


 そんなことを思いながら、脱衣所で簡単に着替えを済ませ、部屋の扉の取っ手に手をかける。


タ「帰ってきた時にレイが寝てたらあれだから、鍵は持っていくね?」

レ「うんー。わかったぁ」


 今にも寝そうな声で答えるレイ。あまり音を立てないように鍵を取り、扉を閉めた。


 梅雨も明けて、朝晩は薄手の長袖で心地良いくらいの気温。何故か新鮮な気分を味わえる空気を大きく吸って吐く。すっきりとした頭で歩きながら、今日は何をしようかと考える。


 一応、仲間の募集はかけたので、街の中にはいなくてはいけない。


タ(昨日あれだけ言われたし、とりあえず2日間だけ様子見ようかな?

あ、ここの店雰囲気良さげ。テラス席もあって、この時期はちょうどいい気温だし、後でレイと一緒に来よう)


 あれだけ馬鹿にされたので、もしかしたら誰も来ないかもしれないという可能性を考える。


タ(まぁ、考えても仕方ないし、いいや。)


 とりあえず、募集が終わったら任務を受けてみよう。そこであった人を一時的でもいいから仲間に誘ってみよう。


 その後も今日の昼食や晩御飯について考えながら歩くこと数十分。

 細い路地から大通りに出て、左に曲がると、

ドンッ、!

 と、やや小走りの少女と正面衝突してしまった。


?「ゔっ、いたた、」

タ「あ、!」


 あまりの勢いに少女はやや後方へと尻もちをついて倒れてしまった。濃ゆくも澄んだ、紫色の長髪を靡かせ、魅了されてしまいそうな、混じり気のない綺麗な桃色の瞳。年は12、3歳くらいだろうか、身長は顔ひとつ分低い。


 特に武器などは持っておらず、少女が日も昇っていないような時間に出歩くのはやや危険だろう。


 怖がられないように、優しく声をかけようとした。


タ「ごめんね、だいじょ/?「助けてください!タイトさん!」


 心配する声掛けを遮るように、言葉を覆い被せてきたことは、今はどうでもいい。


タ(なぜ、初めて会ったはずの、俺の名前を知っている?)


 言い表すことの出来ない、深い恐怖が頭の中に広がり、胸を押し潰してゆく。


タ「君は誰?なんで、俺の名前を」

?「それは、」

 そう言いかけた時、やや小走りでこちらに近づいてくる足音と、やや大きめの声で言い争うような会話が聞こえてきた。


「お前何やってんだよ!」

「仕方ねぇだろ、あいつの能力が強すぎんだよ」

「わかっててできねぇのかよ!この無能がよ!」

「うるせぇなぁ、黙って探せよ」

「誰のせいだよ!お前が逃がして連帯責任で俺にとばっちりが来たら殺すからな!」


 足音がこちらに近づいてくる。


?「最悪、もうこんなところまで、、、

タイトさん!転移か瞬間移動でもなんでもいいから、早く能力を使って遠くに!私の能力はもうほとんど残ってないから!」


 そいつらに追われているのだろうか、必死に助けを求めてきた。でも、俺は、


タ「能力なんて、俺、使えない、!」

?「ッ、!

そ、そんなはずは、!/「こっちからあいつの声が聞こえるぞ!」


 そいつらは既にすぐ近くまで来ていた。声のするほうを見た瞬間に、路地からそいつらが出てきた。

 2人とも顔には仮面をつけ、上下共に黒一色で統一された服。黒塗りの手袋を着けた手を剣に添え、常に戦闘態勢。背筋の嫌な寒気、鋭い緊張が走るほどの殺気がこちらに伝わってきた。


タ(少女が危ない!)


 何とか逃がそうと、少女の方を振り返ると、ほんの2秒前までいたはずの少女は音も、空気を切って進む風の動きすら残さず、()()()()()


「ちっ!勘づいて逃げやがった」

「こいつはどうする?」


 仮面で見えないはずのに、俺の方を見ているのがわかる。先程の殺気が一気にこちらに収束してくる。


「・・・、いや、あいつを探す方が先だ」


 そいつらは足早に俺の横を通り過ぎて行った。そして去り際にこうも言ってきた。


「長生きしたいんだったら、関わんねぇことを勧めるぜ」


 遠くへと走り去っていく音を背に、わけも分からないまま、静かな朝へと戻って行った。


タ「ただいま、」


 歩く気も失せて、真っ直ぐに宿へと戻った。小さめの声で挨拶をしたが、返事はない。レイを見ると、ぐっすりと眠っていた。やはり、昨日は寝れなかったのだろう。


タ(荷物の整理と武器の手入れでもするか)


 部屋に設置されている椅子に腰掛けて、荷物整理から始めた。


 散歩1時間、荷物整理と手入れに2時間経った頃にようやく、レイが目を覚ました。上半身を起こし、目を閉じたまま体を伸ばす。今にも寝そうな眠り目を指で擦り、ゆっくりと目を開ける。


タ「おはよう、今度こそちゃんと眠れた?」


 ゆっくりと動いていた体が、ビタッと動かなくなった。部屋を一周するように、声のする方へと視線を向けて、目と目が合う。

 と、慌てて服装を正し、少しボサついていた髪を手ぐして解いて身なりを整えた。


レ「早かったね、帰ってくるの」

タ「ちなみに1時間の散歩の後に2時間はこの部屋にいたよ」

レ「うそ、、、」


 完全に固まってしまった。「おーい」と、手を振っても、視線が揺らがない。ただの屍のようだ。


タ(そんな気にすることないのになー)


 俺バカだから、あんましわかんねぇけど、


タ「レイ、そんなことより朝ご飯、食べに行こうよ。散歩中にいい感じのところ見つけたんだー」

レ「行く」


 立ち上がりながら、朝ご飯の提案をすると、レイはすぐに食いついてきた。

 レイは、すぐ準備に取り掛かろうと、布団から立ち上がり、何かを探すように部屋を見回し始めた。が、何やらこちらを見たまま動きを止め、首を傾げる。


レ「タイト、何かあった?」

タ「え、?特に何も無いけど、、、なんで?」

レ「いや、ないなら大丈夫。気にしないで」


 気になりすぎるので聞き出そうと思ったが、着替え始めそうだったので、一旦部屋から出た。「着替え終わったよ。ごめんね待たせちゃって」「ううん、気にしないでー」


 ズボンはそのままで、簡単な着替えを一旦脱ぎ、丈夫な素材でできた長袖を着て、上から黒のローブを羽織る。

 忘れ物がないか、部屋を一通り確認し、鍵を返して宿を出た。


 散歩中に見つけた店に、レイと今日のことを話しながら向かう。

 店に到着し、テラス席に着いて、俺はホットドッグ1つ、レイは白ご飯に味噌汁、焼き魚にスパゲティ、ピザ4分の1切れの軽い?朝食を注文した。

 なぜか、レイと変わらないくらいの時間で食べ終わり、温かい緑茶を飲みながら、人通りの増えていく街の風景を見ながらゆっくりしていると、街ゆく人波の中で1人の少女がこちらを見て、目の前で止まった。


 丁寧に手入れされている黄色の髪は背中の中央の辺りまで伸びている。瞳の色は空を写したかのような水色で、背丈はレイよりも少し高い。綺麗な顔立ちをしており、痩せすぎずの体型。腰に剣を携え、とても動きやすそうな格好をしている

 1枚の紙を手に持ち、こちらと紙を交互に見比べている。


?「黒髪の男女2人組。男の方は黄色の目、女は紫色の目と眼帯。黒いローブ。少しくらい騙してもバレなさそうな、男。とその用心棒のように後ろに立つ女。」


・・・


?「見つけたァー!!!」

タ「俺たちの特徴だろうなとは思ってたけど、最後のやつはなんだ!?」

?「わかんない、書いてあったから」


 少女はふるふると首を横に振って答えた。

チャキ、

 金属性の細く高い音が聞こえ、振り向くとレイが恐らく、冒険者協会の方角を睨んで、刀を抜きかけていた。「一旦お茶飲んで落ち着け」「ふー、落ち着いた」


?「私を隊に入れて欲しい!」

タ「え?」

?「え?」

レ「え?」


(・・・ハッ!いかんいかん。一瞬、言葉が理解できなかった)


 募集に応えてくれる人が本当に来るとは思っていなかったので、少々思考が止まってしまった。


?「・・・だめ、なのか?まだ募集してるよな?

あ!階級か?階級は五等星で、冒険者歴は浅いけど、2ヶ月で、」

タ「あー違う違う。ほんとに入ってくれる人がいることに驚いてただけ」

レ「冷やかしかと思った」

?「こんなかっこいいこと成し遂げようとしてるのに、そんなことするようなゴミ、いるわけないだろ?」


(いたんだよなぁ)

 と、思い無言でいると、察したのか


?「いたのか、、、それは悪かった。ごめん」

レ「あなたが謝ることはない。悪いのは現状で満足して、自分の欲望のままに人を傷つけて気持ちよくなってる屑ども」


(レイの悪い方の人格が出てきてしまっている!早急に話題を変えなくては!)


タ「お、俺の名前はタイト・ゼラニウム。近接型で魔法も結構使う感じ。

神技(しんぎ)は多分、無い。

よろしくお願いします。

一応、俺が隊長?だよね」


レ「タイトが隊長で文句ないよ。

私はレイン・ヒヤシンス。同じく近接型の魔法も使う。レインって呼んで。

神技は透視。壁の向こうでも相手の動きが分かる。これのおかげで、片目がこれでも何も支障がないの。

これから、よろしくね」


?「次は私だな!私の名前はパルス・エーデルワイス。パルスって呼んでいいよ!私も近接型で、魔法はあんまり得意じゃない。

神技は瞬間移動!文字通り、半径約20mまで一瞬で移動できる。こちらの方こそ、よろしくね」


(瞬間移動、、)


 そう言って、俺たちはパルスと握手をした。


パ「ていうか、えーっと、タイトだよね?」

タ「うん?」

パ「神技が多分ないってどゆこと?」

タ「あぁ、それは、それっぽい特殊能力的なのができたことがないのと、ちゃんと調べたことがないから」

パ「なるほど、もしかしたらあるかもってことだね!」

タ「まぁ、ほぼほぼないと思うけどね。」

パ「まだ消しちゃいけないよ、小さな希望を」

レ「どこかで聞いたことがあるなぁ」


パ「あ、そんなことは置いといて、隊加入の手続きしに協会に行こうぜ!」

タ「協会かぁー、はぁー、行くしかないかぁー、しんどー」

パ「あぁ〜、やっぱり協会で冷やかされたんかー、」

レ「大丈夫だよ、次馬鹿にしてきたやつは、確実にぶち○すから」

パ「殺意えぐ〜」


 既に殺気立っているレイを宥める。タ「おみやげみっつたこみっつ」レ「誰が狼じゃ」パ「懐かしいなあ」((好きな映画ですどうも))パ「なんかいる〜」レ「気にするだけ無駄」


 朝食の会計を済ませ、協会へと向かった。


パ「今日これからどうするつもりだった?」

タ「なんか、募集中はこの街に居てね〜、て言われたから何もすることないけど、この街をブラブラするつもりだった」

パ「え?そうなの?確か場所と時間を指定して、申請すれば街の外に出れたはずだけど、」

タ「あ、そうなんだ?言われたっけなぁ?」

レ「まぁ、私たちはこっちに来たばっかりだからじゃない?」

タ「それだ」

パ「じゃあ、街の外でお互いの力量を確かめ会おうよ!」

タ「それいいね、この街いると、たま〜に視線感じるから、外に出れるのは嬉しいわー」

パ「苦労してんな〜」


 その後、協会着いたー。登録したー。申請終わったー。少しざわついたけど、レイが斬りかかってたけど、特に問題もなく目的地へ到着ー。


 パルスの戦い方はかなり新鮮だった。


 まず、ある程度の距離を一瞬で詰められるだけでなく、ど近距離で能力を使う事で、超多角的にかつ、瞬間的に攻めるのが得意であった。

 攻撃に踏み入った後でも移動が可能なので、相手に振らせてから、無防備な所への移動がほんとに強い。


パ「私の能力は技力がある限り、使ったあとでもすぐに何回でも使えるんだー。まぁ、そのせいで技力切れでオワタ。みたいなこと何回かあったんだけどね。

あと、魔法がもっと使えたら、もっと色んな戦い方できたんだけんどなぁー。まぁ、それはしゃーない」


タ「へへ、見て見てー」

 そう言って、右足を上げて足の裏から火魔法を出して見せる。


パ「ぶはは!なんだそれ!初めて見た!魔法使えるやつはそんなこともできるんだな」

レ「あれはタイトだけ、あんな変態的なこと私にはできない」

タ「おい?」


 一応、今日初めて会った人になんてことを。


パ「いやぁ、初見であの瞬間移動見切られたのは驚いたよ。後ろに目付いてんのかと思った。

これなら2人とも四等星までならすぐにいけそうだな。」

レ「目指せ一等星」

パ「個人階級だと、冒険者のほぼ8割が四等星以下なんだぜ。その四等星も全体の1.5割しかいない」

タ「壁は高いな」

パ「まぁ、魔王討伐を目標にしてんだから余裕だろ。気づいたらそのうち行ってるさ」


 その後も試験的に戦うこと数時間、昼食をとり少し休憩をした後に再開。数時間、夢中で戦い続けて、そろそろ申請した時間制限だという頃に、


?「いたァー!!」


 少し離れた距離にいるというのに、馬鹿でかい声で叫ぶ男を見つけた。男はすぐさま走り出して、こちらに近づいてくる。

 燃えたぎるような情熱的な赤に、チャラい印象を与えるような短く切られた髪。この男も腰に剣を携えている。明らかに魔法を使うやつには見えない。瞳の色は薄い黄緑。


?「いやぁー!探したぜ!めっちゃ探した!今日の朝、募集見て、街中走り回ったのに見つけられなかったから、ついさっき協会に見に行ったら場所変わってんのに気づいてよー、慌てて来たってわけだ!」


 矢継ぎ早で喋る。息切れはしないのだろうか。


?「俺の名前はリューソー・シオン。よろピクミン。

階級は四等星!冒険者歴は2年とちょっと。近接型だ!魔法は使えん!てか使うつもりもない!

神技はなんかあるらしいけど、説明の時寝てたからよく覚えとらん!」


 尖ってるやつが来た。2人を見ると、(こいつ大丈夫か?)みたいな目をしてた。とにかく勢いがすごい。


リ「男のお前が隊長か!?」

タ「はい」

リ「そうか、なら俺と勝負だ!」

タ「話の脈絡がー」

パ「会話が成り立たねぇこいつ」

リ「この勝負で勝った方が隊長ってことで!

木剣もってっか?木刀でもいいが。そんで、相手に剣で致命的な一撃を食らわした方、もしくは降参させたら勝ちだ!」

タ「話を聞けや。

木刀持ってるよ。」

リ「お、渋いねぇ。今すぐやるぞ!」


 なんか、一周まわって面白くなってきた。こいつのおかげで話が進む進む。


 突然始まった勝負の準備をしていると、レイとパルスが近づいてきて、小声で耳打ちしてきた。


パ「どんな手を使ってでも勝ってくれ!あいつが隊長とか私嫌なんだが?」

レ「任せて、遠くから魔法で狙撃しとくから」

タ「うーん、一応、真剣勝負だからなぁー。どうしたもんか。とりま、本気で勝ちに行くよ」

パ「ボコボコにしろ!有り得んくらいに」

レ「相手に負けるよう念を送ってるね」


リ「おーい、もうこっちは準備出来たぞー!」


 痺れを切らして、リューソーが声をかけてきた。急いで収納魔法の中から木刀を手に取る。


タ「はーい、こっちももうできますよーっと」

パ「頑張れよ!ほんとにまじで頼むから!」

レ「頑張って!」


 構えに入る前に一つだけ確認する。


タ「一つだけ聞くけど、魔法はあり?なし?素手は?足は?」

リ「男の真剣勝負だ!魔法なんてちゃちなもんなしだ!素手と足は、まぁ、ありにしとくか!」

タ「りょーかーい!」

レ「魔法使ってこ、魔法」

パ「変態的な足を見せてくれ」


 酷すぎる応援に力が抜けそうになる。改めて気を引き締め、戦闘態勢に入る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

         *視点 戦闘時*

パ「あ、じゃあ、私が合図出すね。

タイトいい?」


 パルスが2人の中間地点タイトよりに立ち、手を置くいて、タイトに確認をとる。


タ「うん!」

パ「それじゃ!行きまーす」

リ「俺の確認は/パ「はじめぇ!!」

リ「おいいぃぃぃ!!」


 そう叫ぶ割には、リューソーは完璧な頃合で走り出した。そして、何より速い。瞬間移動とは比にならないが、タイトは一気に距離に詰められた。


 リューソーは左足を大きく踏み出し、上から木剣を大きく振り下ろす。それに対し、タイトは右足を踏み出して回転をつけて、リューソーの剣を打ち返す。

 続けて、タイトは左足を1歩踏み出し、木刀を右へやった回転を利用して、逆回転をつけて、相手の左脇腹目掛けて振り抜く。が、タイトの左上方向からの木剣に打ち返される。


 リューソーは、軽く静かな足取りでタイトに攻撃を仕掛ける。相手の剣を打ち返しては隙を目掛けて攻撃を繰り出す。激しい攻防が続き、移動と位置の逆転が起こる。タイトは有利とは言えない状況で、必死に食らいつく。


 何度か繰り返していると、タイトが木刀を腰の左側へとやった頃合いで、リューソーが横から水平方向に剣を振ってきた。


タ(来た!)


 タイトは大きな横ぶりを、瞬間的に倒れるように両手を体の左側の地面に着き、勢いをそのままに、相手に向かって左足で掬いとるように回し蹴りをする。


タ(入るか!?)


 タイトがそう思った瞬間、リューソーは足を曲げて飛び上がって、避けた。


リ「甘ぇ!」


 リューソーは木剣を上に振りあげ、重力を利用して振り下ろそうとする。タイトは回した左足を着地点で足の裏を着けて、右足を捻った体を元に戻すように、勢いよく回転を付けて、右足に闘心(とうしん)の4割を込めて、リューソーを横へと蹴り飛ばす。


リ「ぐっ、!」

タ「こっちが本命」


 完全に予想外だったリューソーは、防御もできずに地面をごろごろと転がる。


 タイトは勢いを利用してすぐさま立ち上がり、追撃するために距離を詰めるために走り出す。

 と同時にリューソーが右足の膝を地面に着け、膝立ちになり、剣を最も力の加えられる腰の右側へと持って行った。目線はタイトから離れることは無い。


 急接近するタイトが射程圏内に入り、右足を踏み出して、木刀を左上へと振り上げる。リューソーは低い姿勢から膝を折っている右足に力を入れ、瞬間的に立ち上がる。姿勢をタイトと同じ高さまで持っていく。

 立ち上がる勢いを利用して、左足を元の位置よりやや前に踏み出す。木剣を肩の位置まで持っていき、思い切り振り抜く。タイトも同様にやや斜め上方向から、思い切り振り下ろす。


カァァンッ!

 大きく、乾いた音が辺りに響く。


 両者共に渾身の一撃を受け止められ、鍔迫り合いとなる。ここで、タイトが無理にリューソーに一撃を入れようと焦り、木刀に力を込めて強引に押し返す。


バキィ!

 リューソーが元々、長い間使っていたこと、先程の渾身の一撃の受け合い、タイトの無理やりな攻撃にリューソーの木剣が音を立てて折れた。


 木剣が折れたことで、勝負は引き分けで終わった。

と、リューソーは思い、戦闘態勢を解いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 だが、以前タイトは止まらない。急な力の解放に体勢を少し崩したが、瞬時に立て直し、油断している、リューソーの右脇腹へと木刀を叩き込んだ。


リ「イテェェ!」


 思い切り命中したことで、リューソーがあまりの痛さに悶え出す。


リ「ちょ、止まれ止まれ!普通木剣が折れたら終わりだろ!?」

タ「俺は、俺に戦いを教えてくれた人には、相手を戦闘不能にするまでが戦闘だと教わったから」

リ「はっ!」


 とてつもない衝撃を受けるリューソー。続けて、


リ「なんだ、それ!めちゃくちゃいい!その教え!気に入ったぜ!」


 何とかお気に召した様子。離れた場所から戦闘を見ていた、レイとパルスが近づいてくる。


リ「つまり、剣が折れて、勝負が終わったと決めつけた俺は既に負けていということか!」

パ「やかましいやつだな。早く止まれよ。呼吸」

リ「おぉ、すまんすm、呼吸?」

レ「何はともあれタイトの勝ちということで、私たちはこれで、、、」


 早々に帰ろうとするレイとパルス。


リ「ちょっ、待てよ」

パ「謝っとけ。とりあえず」

リ「まぁまぁ、俺は勝負に負けた。隊長の座はタイト、お前の物だ。だからよ、俺を仲間に入れてくれないか?」




 リューソーが仲間になりたそうにこちらを見ています。仲間にしますか?


         はい◀

         いいえ




タ「なんか出てきた」

パ「いいえだ!いいえ!断っとこ」

タ「あぁ、勝手に、、」



ピコン

         はい

         いいえ◀




 リューソーが悲しそうにこちらを見ています。本当に仲間にしませんか?



         はい◀

         いいえ




タ「あ、またでてきた。」

パ「タイト、断るんだ」

リ「なんで断るんだよ?!」

パ「あ?知らねえのか?ここで、5回断った後に、もう一度戦闘に入るだろ?で、そこでまた勝って、2回断った後に仲間にすると、お前じゃなくて、魔王が仲間に入る裏技があるんだぜ?」

リ「なんだそれ?!じゃあ、俺は?討伐されんのか?」

パ「お前は故郷で農家を営んでるよ」

リ「戦闘系の役職から、かなり遠い位置にいるぅ!」

レ「自業自得」

リ「隊長ー、どうか仲間に入れてください!雑用でもなんでもしますので!」


 さっきまでの気迫はどこに行ったのやら。タイトはかなり困った顔をしていた。


タ「ま、まぁ俺はべつにいいけど、、

2人は?いや?」

レ「タイトがいいのであれば、それに従う」

パ「お前はタイトに感謝するんだな」

リ「ははー!ありがたき幸せ!もし、よろしければ靴でも舐めましょうか?」

タ「あ、やっぱり入隊拒否で、」

リ「調子に乗りました。申し訳ございません」


 そんなこんなでタイトの隊には、2人の仲間が入った。4人は街へと戻り、リューソーの隊加入の手続きを済ませ、協会から出ると、空は暗くなってきていたので、宿を探す。


店主「えー、4人、2部屋で銀貨50枚ねー」

タ「あれ、めちゃくちゃ安い。昨日はもっとしたのに、」

パ「そんなにいい所に泊まったの?」

レ「うーん、こことあんまり変わんない」

パ「ちなみにいくらだったの?」

タ「2人1部屋で金貨3枚」

リ「ぼったくられてんじゃねーか!」


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