第17話 偉人も英雄も馬鹿にされてから
/639年6月19日/
タ「まずは、冒険者登録に行こう」
レ「そうだね。冒険者協会の場所は、、、分からないけどガラの悪い人が出入りしているとこに行けばあってるでしょ。」
タ「その判断基準だとやばいところに辿り着きそう」
とりあえず、正式に冒険者になるために街を散策しながら、冒険者協会を探す2人。
街は村とは比べものにならないくらい、人で溢れかえっていた。意図して避けないと肩がぶつかってしまうほど。と、思っていた矢先、
タ「あだっ!」
タイトが対抗者と思い切り左肩をぶつけてしまった。肩を少し持っていかれる位の勢い。
タ「あ、すみま」
タイトが反射的に謝ろうとした瞬間、相手は突然奇声を発し始めた。
「ぐわぁぁぁぁー!」
タ「え?だ、大丈夫ですか?」
「いてぇよォ!てめぇのせいで腕が折れちまったじゃねぇかよぉぉ!どうしてくれんだ兄ちゃんよぉ?」
胸ぐらを捕まれ、文字通り上から目線で凄んでくる輩。髪はモヒカンで横は剃られており、肩には棘の着いた謎の防具。目には真っ黒なサングラス。
いかにも輩って感じの見た目をしている。世紀末に出てきそう。
タ「あ、その、、」
タイトは突然の出来事に、声が出せないでいる。
「そっちがぶつかってきたんだからよぉ、慰謝料、当然くれるよなぁ!」
タ「ひ、ひぃぃ、す、すみません。こんな人の多いところ初めてで、、」
「おおん?初めてだとぉ?」
タ「はい、始めてなんです、今までここから南へ3日ほど進んだ村から出たことなかったんです」
「・・・許そう」
((優しい世界))
掴んでいた手を離し、急に仏のような笑顔で許されたタイト。ここまでの変わりよう、逆に恐怖を覚える。
「初めてだってんならぁ、行きてぇとこもわかんねぇだろ?見たとこ冒険者ってかんじだなぁ?
組ならここの道ィ、真っ直ぐ行ってぇ、2つ目の交差点を左に曲がりゃあすぐだぜぇ!」
タ「すまない、俺の不注意でぶつかってしまったのに、道まで教えて貰えるなんて、」
輩は歩き出し、止まることなく答えた。
「気にすんじゃぁねぇ!困った時はお互い様ってぇもんだ!今夜は暖かくして寝るんだぜぇ!」
タ「嵐のような人だった」
やや早歩きで行ってしまい、すぐに見えなくなってしまった。
(世の中には色んな人がいるもんだなぁ。)
さっきから一言も話さないでいるレイを見ると、レイは見た目とのギャップに情報が完結しきれず、右手を刀の柄に添えたまま固まってしまっていた。「おーい、レイさーん?」「はっ!今、0.2秒の領域展開されてた?」「んー、多分そう」
冒険者協会の道まで教えて貰ったので、その通りに再び歩き始める。
今いる、大きな通りには多くの露店や店が並んでいた。食料や便利な道具、衣類、装飾品、魔獣の素材、これさえあれば幸せになれるとかいう、謎の石に怪しそうな壺、などなどまぁ、色々あった。
レ「タイト見て。あそこに武器と防具屋がある」
レイの指さす先にはたった今、剣を購入したらしい若い男が、剣を大事そうに目を輝かせながら店から出てきていた。
タ「ほんとだ。冒険者登録の後に行ってみよう」
レ「タイト、まだ武器持ってないもんね」
タ「そうなんだよね〜。神父が武器は自分で選んで買えって。今はまだ、予備用で貰ったこの短刀だけだから、早く欲しいなぁ。」
ひとまず武器屋は通り過ぎ、真っ直ぐ冒険者協会まで向かう。言われた通りに曲がり、目的地へと到着した。
建物は3階程の高さがあり、想像していたよりも大きな建物であった。
タイトは建物の大きな扉の前に立ち、1度、深呼吸をする。
タ「なんだか緊張するなぁ」
レ「大丈夫、立ちはだかる全てをなぎ倒す位の気持ちで行こう!」
タ「ははッ!、いいねそれ!」
レ「でしょ?」
レイの言葉に笑うタイト、どこか自慢気なレイ。
タ「よし!それじゃ、入るか」
レ「うん!」
ギィィ、
木材特有の乾いた軋み音を立て、大きな扉を開けて中へと入る。
中は人が50人以上は入れそうなほど広く、大勢の人で賑わっていた。1番上の天井まで吹き抜けで、2階と3階にあたる部分には謎の扉がいくつもあった。
入ってすぐ右には受付があり、受付人として4人の人が立っている。大きな掲示板に張り出される10数枚の任務。
中の半分以上は食事のできる空間となっており、とんでもない量のご飯をを勢いよく食べる者、昼間から酒を飲む者、色々な人がいた。
大声で自慢をする大男とその子分的な奴ら
「この前よぉ!体長が5mは優に超える、大型の魔獣を1人で倒したんだぜ!」「さすがっす親分!」
ガツガツと1人で大量のご飯を食べる男と横に座る女
「これうめぇなぁ、この料理なんて言うんだろう」「お皿ごと食べるのはやめない?口の中血だらけで味わかんないでしょ」
泣きながらお酒を飲む人と横で監視する人
「うっす、アルコールうっす」「お前弱いくせに文句言うな」
任務を仲間と共に選ぶ者たち
「次これとかどう?!」「うーん、まぁ、行けるっしょ!」「早速引き受けに行ってくる」
(冒険者って感じがしてきた!)
タ「とりあえず、受付に行けばいいのかな?」
レ「多分そうだと思う」
タイト達は1番近い、女性の受付人に近づいた。
受付人「こんにちは!冒険者協会 ダッシュ支部へようこそ!なにかお困り事でしょうか?」
タ「冒険者登録をしたくて」
受付人「かしこまりました!ご登録されるのは2人でよろしかったですか?」
タ「はい、よろしくお願いします」
レ「お願いします」
受付人「それではまず、冒険者になるにあたって、
『階級制度』『任務受領から完了の手続きの仕方』
『その他規則』についてお話させていただきます」
受付人「まず初めに階級制度についてです。
冒険者は七つの階級に分類されます。1番下の階級が
七等星となっています。階級が上がるにつれて、六等星、五等星と上がって行きます。
また、階級によって受けることのできる任務が変わります。七等星だと魔獣以外の小型の害獣駆除や迷子の動物探し等、比較的簡単な任務しか受けることが出来ません。
任務の張り紙には目安として、こちらの階級が割り振られており、ご自身または、部隊の階級よりも1つ上の階級までの任務しか受けることができません。
また、1つ上の任務を受けるには厳しい審査を行います。その結果、否決される場合もございますのでご了承ください。
階級は本人の戦闘能力、任務達成の数、難易度、貢献度などによって順次、上げられます」
タ「じゃあ、最初は七等星からということですか?」
受付人「いいえ、こちらの階級は主に、本人の戦闘能力を参照して分類されますので、登録直後に四等星、なんてこともあります。」
レ「登録直後に即一等星。颯爽と現れた期待の新星。・・・かっこいい、!」
挑戦的で何故か嬉しそうな、ドヤ顔混じりの笑みを浮かべるのを隠せないレイ。妄想が止まらず、期待と希望が溢れ出てきている。
タ「さすがにそれは、無理じゃない?めちゃくちゃかっこいいけども、」
受付人「参考程度ですが、一等星の任務内容としまして、超大型の龍の群れ討伐、死災襲撃から民間人の守護、等が挙げられます。」
この言葉に一瞬にして、シュンと落ち込むレイ。
受付人は紙を2枚取り出してタイトたちの前に置いた。
中央は掌が収まる程の歪な形をした囲いに、その周りを変な文字と模様が沢山書かれている。
受付人「それでは早速、階級審査に移りたいと思います。こちらの結果を元に身分証明書を作成致します。」
レ「身分証明書?」
受付人「はい。任務を受けるにあたって、階級や条件が満たされているのかの証明をするためのものとなっております。名前と階級、その他必要な情報などが記載されますが宜しかったでしょうか?」
タ「大丈夫です」
受付人「ありがとうございます!
では早速、この紙の上に手を置いてください」
指示された通り、2人はそっと手を置く。すると、ポウッと青白く文字や模様が光出した。
タ「おぉ、」レ「・・・」
受付人「肩の力を抜いて、なるべく自然体でいてください。ゆっくりと目を瞑り、あなた方のこれまでの戦いの記憶を思い浮かべてください」
すると、掌を置いている今まで白紙だった部分に文字が浮かび上がってきた。音もなく、まるで初めから書いてあった文字を呼び起こしたかのような、神秘的で奇跡的な光景であった。
受付人「はい、もう目を開けても構わないですよ」
2人はゆっくりと目を開く。
タ「おぉ、なんか文字が書かれてる」
レ「さっきまでなかったのに」
受付人「囲いの中の1番上にあなた方の今の階級が記されています。下の方はご自身の能力値です。こちらはアルファベット表記となっています。」
タイトの紙には六等星の表記。
タ「これは、、どうなんだろ?レイはどうだった?」
レ「私は惜しくも五等星。タイトは?」
(惜しい?)
タ「惜しいのか、それは?俺は六等星だった」
レ「あれ?もう少し高いと思ってたのに。なんでだろ?」
受付人「実戦経験が足りないのかもしれません。気にする事はないですよ。任務をこなして次に審査した時には飛び級で上がっている可能性もありますので。」
タ「そうなんだ、それなら仕方ないか。でも、レイはなんで少し高いんだろう?」
レ「・・・うーん、、多分、私は村に帰る道中で、邪魔な魔獣とかを討伐しながら帰ったからだと思う」
タ「なるほど」
能力値を見てみると、色々な項目があり、それぞれにアルファベットで評価されている。
タ「神技がE評価は仕方なく無い?」
レ「ない人も評価されるんだね。私はAだけど、」
タ「今、サラッと自慢してきた?!」
「気のせいだよ」「そんなはずなくない?」 他はCだったりBだったりと平均的な能力値となっていた。
受付人「ただ今、御二方の証明書を作成しておりますので少々お待ちください。
その間に次の説明に移らせていただきます。」
タイト達は改めて、受付人の方に向き直る。
受付人「続きまして、任務の受領から完了の手続きの仕方についてです。」
受付人「受領については、冒険者協会の掲示板に任務が張り出されております、任務書をご自身で選び、
受付の方まで持ってきていただくと、こちらで任務を受けられるのかの簡単な審査を行います。
証明書を出していただき、それを基準に判断いたします。無事、審査に通りますと、任務を受けることができます。
任務は他人、もしくは別の部隊と共同で受けることも可能です。双方の階級が同じの場合は同じように、1つ上の任務までが受けることができます。また、双方の実力を加味して、審査も比較的簡単に通ることができます。
階級が2つ以上差がある場合は、上の階級の方までの任務しか受けることができません。」
タ「じゃあ、共同であれば、七等星が一等星と同じ任務を受けられるということか」
受付人「双方の了承があれば可能です。
任務の完了につきましては、完了の旨を受付にいる我々の誰かに伝えてもらえば完了として受理させていただきます。その時に報酬もお渡しします」
レ「なにか証明できるものとかはいらないの?」
受付人「はい、任務を受領しますと、神技が発動し、こちらで進捗状況の把握が可能です。なので、証明などは必要ありません。
ですが、素材などは専門の店に売却などもできますので、素材は持ち帰ることをおすすめします。
結構いい値で売れますよ」
レ「私の能力があれば解剖が楽だね」
タ「毛1本残さず持ち帰ろう」
受付人「任務受領から完了までは以上となります。
続いて、その他規則についてです。
もしも、任務受領前に別の部隊と同じ任務の取り合いになり、共同では行わないとなった場合には、仮想空間で決闘を行い、決闘の勝者が任務を受けることとなります。決闘の細かい規則や暗黙の了解などはこちら側は把握しかねますので、そちらで伺っていただくことになります。」
タ「仮想空間?」
レ「で決闘?」
受付人「はい、仮想空間とは場所、時間、天候を各々が選んだ中から乱数で決定します。
決闘者は専用の個室へ入り、自身の意識を仮想空間の仮の肉体へと移され、自身の能力を反映して本物同様の動きが可能です。
仮想空間と言えども、体力や痛覚などはございますのでお気をつけください。」
タ「謎の扉はそのためのものか」
受付人「その通りです。こちらの決闘は誰でも利用可能で、階級の審査対象となります。」
レ「格上に勝てば、、、フフッ」
ちょっと悪い顔をするレイ。
受付人「説明は以上となります。ところで、御二人は1つの部隊として活動されますか?もし、そうであれば、部隊登録も必要なのですが、」
タ「お願いします」
受付人「了解いたしました。
では、簡単な説明から。先程何度か部隊と言っていましたが、部隊とは2人は以上の団体が、常に任務を共同で行うことを指します。もちろん、所属していても個人での任務は可能です。
報酬は山分けですが、隊員の数が増えると報酬も比例して少し増えます。所属していた方が何かと得ではあるので、所属することを推奨いたします。」
(隊員が減ると、相応に報酬も減るということか)
受付人「部隊の階級につきましては、個人同様に任務達成の数、難易度、貢献度、それと隊員の階級の総合で分類します。」
受付人「部隊の説明は以上となります。仲間の募集はかけますでしょうか?」
レ「2人だとさすがにきついよね」
タ「だね。それじゃ、お願いします」
受付人「了解いたしました。それではいくつか質問をさせていただきます。
階級、年齢、性別、種族に条件はつけますでしょうか?」
タ「んー、なくていいよね?」
レ「別に誰でも構わない」
受付人「かしこまりました。任務を受ける頻度をお聞きしますが、片手間、趣味、割と本気、本職、
どれになさいますか?」
タ「そんな質問もあるんだ。じゃあ、本職で」
受付人「かしこまりました。では、質問ですが、御二方は基本、一緒に行動するということでよろしいですか?一応、加入希望者がわかりやすいように、御二方の特徴を記載しておきたいのですが、」
タ「だとさ。ここ数日の間は一緒に行動しよう?」
レ「そうだね、そうしよう」
受付人「かしこまりました。それでは特徴を記載させていただきます。」
受付の女性は、募集の紙に時折タイト達を見ながら、特徴を書き上げた。
受付人「お待たせしました。それでは最後に、なにか目標などはございますでしょうか?」
タイトとレイはお互いに顔を見合わせ、一呼吸置き、覚悟を決めて言い放つ。
タ&レ「目標は魔王討伐、です」
その言葉を言った瞬間、周りの喧騒がまるで時間を止められたかのように止んだ。
そう思った次の瞬間、タイト達は悪意のこもった笑いの渦にのまれた。
「だははは!!この時代に魔王討伐だとぉ?こりゃ傑作だ!酒持ってこい!つまみにちょうどいい!」
「ここ数年、魔族による被害が減っているのを知らないのかい?!」
「時代錯誤の英雄気取りが!お前らみたいなやつが魔王なんて倒せるかよ!雑魚が!」
「せっかく部隊に入ってやろうと思っていたのなぁ!だァ〜レがてめぇらの隊になんか入るかよ!」
「男のお前!お前は横の女に守られる側の人間だろ!ひょろっちいしよぉ!ブハハハ!」
「女の方は眼帯つけてるからお互いに足の引っ張り合いの間違いよ!あははは!」
「笑うなんて酷いだろ!彼ら、フフ、だって、、ほん、、きなんだから、、、無理だ堪えきれねぇ!」
小さい頃のじゃれ合いのような言葉ではなく、鋭く、傷つけることを目的とした、胸に深く突き刺さったような痛みを覚えるタイト。
タ「いつかなぁ、ジョーカーが言ってたな。魔王討伐の相手は魔族だけではないって」
タイトはボソッと隣にいるレイにしか聞こえない声で呟いた。
レイは静かに右手を刀に添え、構えの状態に入っていた。一切の熱を感じない冷え切った目線。今までに見たことの無いレイの表情。
「お?やるかぁ?新人ごときに負けるかよ!」
体が上にも横にも大きい1人の男が威勢よく長椅子から立ち上がり、剣を抜いた。
レ「・・・死ね」
レイの踏み込む足に力が入り、一気に地面を蹴る。直前にタイトが左手でレイを遮る。
タ「レイ、駄目だよ。俺たちの向ける矛は人じゃない、、その矛だけは間違えちゃ駄目だ、」
レ「でも、私はいいけど、タイトが、!」
タ「ごめんね、俺のためにここまで怒らせちゃって」
レ「、、ッ!」
レイはそっと刀から手を離す。
「チッ!止めんじゃねぇよ!興ざめだ!」
男の一言で今この数分の出来事が、罵倒の声が、刺すような笑い声がなかったかのように、喧騒へと戻って行った。いや、先程とは違い、ヒソヒソとタイト達を奇異の目で見て、笑い合う声が小さく聞こえる。
受付人「その、、災難、でしたね」
受付の女性も少し困った表情で、なんて言えばいいのかという表情を浮かべていた。
タ「いいんです。こういうのも覚悟の上、なので」
受付人「・・・私たちはあなた達のこと、応援していますよ。」
受付人「では、こちらの条件で募集の貼り紙を貼らせていただきます。また、他に分からないこと等、ございましたら、いつでも受付の我々にお尋ねください。」
レ「ありがとうございます」
タ「お騒がせしてすみません」
受付人「いえいえ、あなた達が謝ることはありません。今後とも、よろしくお願いします」
タイト達は小さな笑い声を背に冒険者協会を後にした。
レ「・・・タイト、大丈夫?」
タ「俺は大丈夫だよ、レイは?」
レ「私なら全然大丈夫」
タ「そう、、なら、良かった」
この街に入った時とはまるで逆の、重たい空気を感じる。人の顔が見えないように、視線は下へと向いている。
「お!お前らはさっきの!」
タイトがふと顔を上げると、先程の輩が目の前にいた。
「さっきぶりだなぁ!どうだった?!登録はできたか?!」
タ「あ、あぁ。君のおかげでできたよ。」
「そっか!それなら良かった!俺ァ今からそこのケーキ屋の手伝いに行ってくらぁ!」
タ「え?ケーキ屋?」
レ「その、輩みたいな見た目で?ケーキ屋?」
「やっぱ、ちっと恥ずかしいな、、
この街ィ、旅立つ時にゃぁ、出てく前に一度うちによってくれよォ!そんじゃな!死なねぇ程度に頑張れよぉ!」
タ「お、おう!・・・優しいんだなお前」
「何がだよ!俺ァ輩だぜ!そんなわけねぇだろうが!ほんじゃな!」
タ「・・・」
レ「・・・フッ、」
タ「クッ、ハハ」
レ「フフフフ」
タイトは肘で口を抑え、レイは手で顔を遮り、何とか笑いを堪えようとする。
2人は、大声で笑う程じゃないが、どことなく面白可笑しく、小さな笑いが止まらない。
タ「あー、なんか元気出た」
レ「ね、あんな人初めて見た」
タ「これからだよ、これから実力と結果をつけて、見返してやろう!」
レ「今に見てろよ。すぐに土下座させてやる」
さっきの輩のおかげで思い空気が一変した。
タ「よし!さっきも言ってた通り、武器でも見に行くかぁ」
レ「賛成」
・・・
・・
・
武器屋にて
タ「これとかどう思う?」
タイトは1本の刀を手に取り、刀身を眺めながられに尋ねた。
レ「刀・・・今まで剣しか握ったことないのになんで?」
この質問にタイトは体をビクッ!と反応させた。
タ「えーと、それは、そのぉ、」
タイトが煮え切らない様子で、ごもごもとしていると、レイが追い打ちをかけるように言う。
レ「もしかして、私が持ってるから?」
・・・
タ「その通りです。レイと神父が持っててかっこいいなと思ったからですはい。」
レ「ふーん、タイトってなんか、流されやすいね」
タ「言わないでよぉ、自分が1番理解してるんだから。・・・レイは一緒じゃいや?レ「そんなわけないじゃん」
タイトの言葉にやや食い気味に否定するレイ。しかも目がまじ。本気←これくらい、まじな表情。
タ「そっかぁ、なら良かった」
レ「私も予備で持っとこうかな?」
タ「予備2本目?」
レ「壊れた時用に持っておこうかなって」
タ「なるほど、それなら賛成」
レイの予備の刀を見つけるために店内を見回すと、木刀が何本か置かれているのが視界に入った。
タ「あ、特訓用で木刀も買っとこう」
レ「それ、私も買う。」
それからは、色々と店内を見て回った。剣や刀だけでなく、短刀、槍、大剣、斧、魔法の杖、防具など、多くの種類があり、その中でも色々と商品があり、ついつい、長居してしまった。「この手袋、何故か掌の方に無数の針が付いてんだけど?」「今度これ付けて、さっき笑ってきたやつらと和解するって言って握手しようよ」「フフ、それめっちゃあり」
((実力と結果で見返すとは?))
店主 「刀が1本あたり金貨6枚が2本、木刀が1本あたり銀貨15枚が2本、クナイが1つあたり銀貨50枚が10。
合計で金貨17枚と、銀貨30枚ね。」
((計算方法
金貨、銀貨、銅貨がこの世界にはあり、銅貨100枚で銀貨1枚分。銀貨100枚で金貨1枚分の計算です。
簡単だね!てことでよろしく!))
タ「すみません、かれこれ2時間くらいいたのに、これくらいしか買わなくて、」
店主「気にするな。お前らは買ってくれるだけまだマシだ。この世には、一日中見てるくせに、買わずに閉店まで粘るやつもいるくらいだ。
それに比べりゃ、可愛いもんだ」
タ「すみません、、」
2人が武器屋を出ると、空はすっかり青を失い、橙色に染まりあげられていた。
タ「あ、いけね、宿とるの忘れてた」
レ「大丈夫、ここは冒険者の街とも言われるくらいだから、そこら中に宿があることは調べ済み。」
タ「流石ですレイ様」
レ「もっと褒めてくれてもいいよ」
くだらない茶番を繰り広げる2人。「足でも舐めましょうか?」「・・・えっち」「え?」
レイの言う通り、歩けばそこら中に宿が見つかった。そこら辺の適当な宿を見つけ、気だるげな女店主に声をかけた。
女店主「宿のご利用ですねぇ〜。お部屋は2人1部屋のダブルベッドでよろしかったですか〜?」
タ「レイ、一緒の部屋でいい?あまり、お金は使いたくないからさ、、」
レ「え?一緒の部屋、でいいの?え、だって、その、え?」
タ「あ、さすがに嫌か」
レ「ううん、嫌じゃないけども、ちょっと恥ずかしいというかなんというか、でも、!大丈夫!手は出さないよう、気をつけるから!」
タ「寝相が悪いの?まぁ、いっか、2人1部屋で」
しどろもどろになるレイと、何故か冷静なタイト。
タ「ダブルベッドってなんだろう?」
レ「わかんない」
タ「レイもわかんないよねー、まぁ、それでお願いします」
女店主「では2人は合わせて金貨3枚となります爆発しろ」
タ「はい、金貨3枚ですねー。・・・え?今、爆発?」
支払いを済ませると部屋の番号札の付いた鍵を渡された。
部屋を開けると、小綺麗な部屋で目立った汚れやごみなどは落ちておらず、2人でも狭すぎず、満足できる感じだった。そう、ベッドを見るまでは、
タ「ダブルベッドってこれのこと?だよね?2人で1つってことなの?」
レ「一緒の布団、、、」
タ「ごめんレイ、さすがにこれは我慢できないよね?俺は床で寝るから、この大きい布団は使っていいよ」
レ「そんなことできないよ。タイトは気にしないで布団使っていいから」
タ「それだと、レイはどうするの?床で寝るの?」
レ「?、一緒の布団で寝るつもりだけど?」
・・・
タ「とりあえず、鍵もってご飯食べに行こう」
レ「そうだね」
近くの食事処で晩御飯を済ませ、部屋に戻る。レイが先に部屋のお風呂に入ることになった。
タイトはその間ゆっくり、丁寧に紙飛行機を折る。誰かに届けるように、強く優しい思いを込めて。
タ「お姉ちゃん、僕、ついに冒険者なったよ。
心も体もまだまだお姉ちゃんには叶わないかもだけど、レイをちゃんと守れるよう、頑張ってみせるから。だから見守っててねみんな」
完成とほぼ同時くらいに、お風呂の扉が開けられた。涼しそうな薄着、乾かしきれていない長く綺麗な髪、昼間とはまた違った雰囲気のレイが出てくる。
レ「タイトー、何してるの?お風呂もういいよ?」
単なる好奇心で聞くレイ。まぁ、17歳が1人で紙飛行機を真剣に折っていたら気になるだろうが、
タ「あぁ、これね。これは、お姉ちゃんが毎日こうやって、外に作った紙飛行機を投げてたんだー。
だからこれも俺たちの旅に連れて行ってあげようかなって、」
レ「へー、知らなかった」
タ「家の中だけだったからねー。じゃ、俺も風呂に入ってくるね。あ、作りたかったら作ってもいいよ。ここに紙置いとくから。」
そう言って、タイトは収納魔法から紙の束を机の上に置いて、お風呂に入った。
タイトがお風呂に入った後、すぐにレイの話し声が聞こえてきた。レイも紙飛行機に言葉をかけて願いを込めているのだろう。
タイトがお風呂から出ると、寸分の狂いなく綺麗に折られた紙飛行機が10機程転がっていた。
タ「おお、結構作ったね」
レ「あ、ごめん。ちょっと、やましい気持ちをかき消そうと無言で没中しちゃって、つい作りすぎちゃった」
タ「別にいいよ〜。じゃこれ投げようか」
レ「う、うん。そうだね」
タ「今日は大量だから、何回も投げないとね」
それぞれの思いを胸に窓の外と紙飛行機を、投げ放つ2人。ふわふわと空気の波に揺らされながら、暗闇へと消えていく紙飛行機。何故か遠くまで飛んで行っているのだという確信がある。
タ「それじゃ、おやすみ」
レ「お、おやすみ、なさい!」
こうして、2人の冒険者1日目としての小さく、大きな冒険が幕を閉じた。
何事も思いどおりにはいかないものですね。
すみません、だいぶ遅くなりました。許してください。
何回か下書きが消えて、再起不能になってました(泣)
これからも目標は週2投稿で頑張ろうと思っていますが、週1投稿でもなるべく褒めて欲しいです。
次回はついにタイト達に仲間ができて、ひとまず、部隊結成となります。
次回ももよろしくお願いします。
それでは、行ってらっしゃい。