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今、生きているあなたへ  作者: ひびき
序章:幼少期 助走編
11/86

第10話 その手を掴んで

/634年4月29日/

        *エレナ視点*


 夢を視た。


 周りは薄暗く、室内を照らすのは青白い火だけで、いかにも魔王の城って感じの雰囲気。

 そこで私の数歩先をタイトが何やら考え事をしながら歩いていて、やがて大きな扉の前で止まる。


 タイトはどんな表情をしているのだろうか?後ろからなので、よく表情が見えない。

 怯えているだろうか?怒りに満ちているだろうか?わからない。けど、私はきっと、笑っているだろう。自分の顔も視えはしないが何となく分かる。


 少しの間を空け、タイトは大きく重そうな扉に手をつき、


ゴオォォォ

と、重く低い音を立てながら扉を開けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

         *タイト視点*

 僕は今、お姉ちゃんが作っている魔法陣の中に立たされている。お姉ちゃんは何かの本を見ながら、黙々と地面に石で魔法陣を書いている。どうしてこうなったかと言うと、


遡ること5分前・・・


 そろそろ修行が始まるだろうと、先に外に出て、家の前でお姉ちゃんを待ちながら準備をしていた。すると、突然扉を勢いよく開けて出てきて


エ(11歳)「タイト!!これね!600年前の戦争のことが絵本よりも詳しく書いてある漫画なんだ!

でね!なんか面白そうなの見つけたから、すぐにこれ試そう!なんかかっこいいし!」

 て、まくし立てて言ってきた。


 で、こうなってる。どこで見つかたかも分からんし、すぐに試そうとする行動力。


タ(脳みそ直列でしか繋がってないのかな?)


エ「今作ってるのはね、600年前の戦争の時に女神様が勇者に力を与えるところなんだよ。

この力で勇者は魔族と人間の戦争に勝ったんだから。こう!ゾワゾワ〜ってきて、かっこよくて、憧れちゃうよね!?」

タ「そう、、、良かったね。」


 ほんとに意味わからん。なんか複雑そうだし、でももう止められるような段階じゃないし、どうせ止まらんし。


エ「あ、そういえば、今日ね凄い夢を見たの」


タ(夢の話なんて普段しないのに珍しいな。

まぁ、いいや)

 興味無いし勝手に喋るだろうから聞き流しとくことに決め、黙って耳だけ傾ける



エ「どんな夢か聞けよ!気にならないのかよ!?」

タ「えぇ、勝手に喋るかと思ったのに」

エ「こっちは聞いてくれるのを待ってんだよ!喋りたいって顔してるだろうが!」


 そんな怒ることなのだろうか。そんな疑問を胸に台本通りの言葉を言う。


タ「一体どんな夢なの?」

エ「知りたそうな言い方じゃない。不合格」

タ「じゃあいいや」

エ「えっとねー、」

タ(喋った)

エ「多分、未来の記憶?かな?

私とタイトが魔王城っぽいところのいかにも魔王がいるぞ!って部屋に入る瞬間だった。」

タ「へぇ〜、それも神技の能力なのかな?」


タ(どんどんすごくなっていく。羨ましい)


タ「かもね〜、

・・・ねぇ、、タイト!」

 優しく名前を呼ばれる。だから


タ「なに?」

 と、応えるように、柔らかく言う。そして、


エ「楽しみだね、これから!」


 雲ひとつない透き通った青空から降り注ぐ、太陽の光のような曇りなき、暖かな笑顔で言うお姉ちゃんに兄弟ながらおかしなことを思ってしまう。

この気持ちを勘づかれないように、いつものように


タ「そうだね」

 と、精一杯冷静に答えた。


 そうこうしているうちに、ついに完成させたらしい。


エ「できた!じゃあ、儀式やるよ!私が女神でタイトが勇者役ね」

タ「え?僕が勇者?お姉ちゃんじゃなくて?てか、女神のめの字もないから今のうちに変わっとこう?」


 心外だ、勇者役にしか興味無いのかと思ったんだけど、


エ「お?チビのくせにやるかぁ?ぶっころだぞ?ぶっころ」

タ「ちっちゃいのは関係ないだろ?!」


 僕とお姉ちゃんは身長差が拳1つ分程あり、そのことについて最近はよく弄ってくる。


エ「ほら?よく考えてみろよ?勇者に力を与えて最強にした女神だぞ?明らかに女神の方が強いに決まってる!」

タ(あぁ、そういうことね、、、こいついつか神に喧嘩売りそうだな。)


 想定外のような想定内のような、不思議な感覚。


エ「ほら、掌こっちに向けて伸ばして。」

タ「こう?」


 右手を目の前に伸ばして待機する。

 お姉ちゃんは、魔法陣の外の少し離れたところで、左手で例の本を持ちながら、同じく右手を伸ばして、掌を向かい合わせる。そして、本に書いてあるであろう言葉を1つ、また1つと頭に刻むように読み上げる。


エ「えーっと?なんじ?に問う。平和を願い、仲間を思い、明日を望むか?ならば、この力、汝に授ける。人のため、世のため、その命を賭して、戦うと此処に誓うか?・・・」


 役になりきっているお姉ちゃんに呆気にとられ、言葉を失っていた。


エ「ん!んん!」

 という言葉にならない声で我に返る。ハッとしてお姉ちゃんを見ると、少し怒ったような顔で、本をこちらに向け台詞を指さしていることに気がついた。

 台詞を確認し、1呼吸して同じく読み上げる


タ「我が命、この戦を終結させるために捧ぐ。力を我が身に宿し、人のため、世のために戦うことを此処に誓う。」

エ「・・・その信念をもって、敵を討ち、再び日の元を歩む日々を」

 その言葉を言い切った瞬間、一瞬だけ、ただ石で地面に書いただけの魔法陣が光った気がした。


タ( ・・・気のせいか)


エ「あーあ!満足した!」

 お姉ちゃんもこんな感じだし、気のせいだろう。


タ「そう、満足してくれて良かった」

エ「うん!まさか、タイトがちゃんと乗ってくれるなんて思わなかったよ。しかも結構なりきってたし」

タ「やめて、急に恥ずかしくなってきた」


 そんなことを面と向かって言われると、なんだか痛い人みたいで恥ずかしくなる。


?「2人とも、なーに書いてんの?」

 と、どこからともなくやってきた。


 歳は、自称いつまでも少年心を忘れない17歳(50後半)で、白髪の神父を生業とするおじいさんがやってきた。名前はダンフライ・カンパニュラ。


エ「戦争の時に女神が勇者に力を分け与える時に使った魔法陣」

ダ「こりゃまた物騒だねぇ」

エ「でももう用済みだから消す」

ダ「知ってるかい?1度書いた魔法陣は特殊な魔道具を使わないと消えないんだよ」


 土を均して魔法陣を消そうとするお姉ちゃんの足が止まる。


エ「まじ?」

ダ「嘘」

エ「ぶっ殺してやる」

ダ「はっ!本物の殺意!」


 茶番が目の前で繰り広げられる。

 思い出した。この神父は神父のくせに嘘をつくし、適当言うし、怠け癖もある。なんで神父になったのかよくわからんやつだった。


ダ「まぁ、魔法陣を消す判断は正しいね。誰かが勝手に使ったりしたら大変なことになるかもだから」


 ここから教会まで徒歩で30分の距離にある。走って20分くらい。

 少し離れてるからあんましこっちまで神父は来ないが、来るということは何かこっち側に用があるのだろう。


タ「で、なにかしに来たんじゃないの?こんなところで時間潰して大丈夫?」

ダ「まぁ、教会の祈りだし、別に適当でいいでしょ。めんどっちいし」

エ「お前なんで神父になったん?」


 同感である。


ダ「んー、成り行き。かなぁ?おじちゃん強いからね割となんでも職業選べたんだよね」

タ「よりによって1番向いてないの選んだんだ」

ダ「お?言うようになったねぇ。そろそろあそこの方にも毛が生えてきた頃じゃないのかタイト」

タ(なにいってんだこいつ)


 視線を離さずに圧をかけるようなつもりで、神父の目をじっと見つめて無視する。


ダ「さすがに教会の祈りをしないといけない頃合いだから行くね。修行頑張ってね」

エ「お前はもっと仕事しろよー」

タ「そうだぞ」

ダ「気が向いたらね〜。

それじゃまた」


 嵐のようなやつが過ぎ去って行った。


エ「毎回あいつに会うと思うんだけど、そろそろ神様に殺されても仕方ないよあのおじさん。」

タ「ほんとにね」


 あのアホの話はこれまでにして修行の準備を始めた。


レ「2人ともー!おはようー!

今日はジョーカーさんが来たよー」


 そうこうしているうちに、少し離れたところからレイの声が聞こえ、そちらの方向を振り返ると、レイの後ろにティールと、レイが言った通り、ジョーカーさんが来ていた。


ジ「やぁやぁ、2人とも、おはよう。クラティールくんのことはさっき来る途中でレイちゃんに教えて貰ったよ。」

エ「それは良かった、文字数を無駄に増やさなくて済むぜ!」

(ホンマにありがとうございます)

タ「何の話?それでまた聞こえたけど誰の声?」


 たまに変な声が聞こえてくる。今度お祓いでもしてもらおうかな。


エ「ていうかよォ〜、ティールから聞いたぜ、便利魔法とかがあるんだってな?なんで教えてくれないんだよ?」

レ「戦いの中とかでも普通に使えそうなのに」

ジ「まぁまぁ、落ち着いて。教えてなかったのは、今はまだ使えなくても大丈夫だと思ったからだよ。」

タ「大丈夫?」


 ほんとに大丈夫なのだろうかと、大丈夫という言葉に引っかかってしまう。


ジ「あぁ、魔法ってのはね、どれだけ歳を重ねても、努力さえ怠らなければ、上達していくものなんだ。

でも、身体能力や、咄嗟の判断力なんかはある一定の歳を過ぎると衰えていく。

まだ脳の若い子供の時とかに鍛えていた方が、体が全盛期の時とかに少しでも強くなれるようにと思って、まだ、教えてなかっただけ」

エ「つまり、そのうち教えてくれるつもりだったと?」

ジ「うん。そういう事。今はまだ必要ないと判断しただけ。

まぁ、でも知っちゃったなら、おさらいも兼ねて今まで教えた魔法について、それと一般魔法と呼ばれる魔法とか、その他諸々について軽〜く教えようかな?」


・・・

・・


ジ「まず、魔法にはいくつか種類があるのは教えたよね?」

エ「火と水、風とか土とかだよね?」

レ「あと、氷と電気、回復魔法も」

ジ「うん、ちゃんと覚えてるね。」

エ「いつも間近で見てますから!」


 お姉ちゃんは嬉しそうに言う。


ジ「これらの魔法にさらに、

軽い毒なら治せる解毒魔法、

物を異空間に保管して出し入れ出来る収納魔法、

差し出したモノの対価を得ることができる代償魔法、

モノの入れ替えができる交換魔法。この交換魔法は代償魔法の一部みたいなもんだよ。

それと、相手の居場所を調べる探知魔法。

と、こんなもんかな?」

タ「結構多いんだね」

テ「俺、覚えきれない」

ジ「そうなるよね、、、まぁ順番にまずは3人に教えてた基礎魔法についてからだね。」

エ「もう知ってるから簡単にでいいよ」


 1度聞いた事のあるものなので、聞く意味がないと判断したエレナは不服そうに言った。


タ「それだとティールは知らないから可哀想だよ」

エ「あ〜、それもそうだな。悪ぃ」


 いつものように怒って来るかと思ったが、思いのほか簡単に引き下がった。熱でもあるのかな?( ᐛ )


ジ「それもあるけど、まだ教えてないこととかもあるからよく聞いてるんだよ?」

レ「まだまだ知らないことがあるなんて、、、

魔法は奥が深いなぁ」

ジ「基礎魔法とは氷、土、火、風、水、回復、解毒、電気のことだね。ちなみに今言った順番が習得のしやすさになってるよ。電気が1番難しいかな?

これを踏まえて、まずこれは全部に言えることなんだけど、魔法とは()()()()()()()()()()()()()、と考えた方がいい。

これは勝負でも同じだ。まぁ、力量によっては不可能なこともあるだろう。でもね、想像できないものはいくらやったってできない。

想像するんだ。体中の魔力の流れを、手から出したい魔法を出すことを」


 言われた通りの手順を踏み、手から風魔法を出す。

 みんなも各々魔法を出したようだ。


エ「まぁ、これぐらいはね」

レ「いつもやってる」

ジ「まぁまぁ、おさらいも兼ねてだから」

エ「ていうか、この物語だと詠唱はいらないんだな」

ジ「うん。それはね、作者が考えるのが面倒だったのと、いちいち戦闘中にその描写書いちゃうと文字数が大変なことになるから描かな、、、

おっと、誰か来たようだ」

エ「骨は拾ってやるよ」

ジ「フッ、僕には噛ませ役という重要な役目が残っているから、まだ死なないんだなこれが」

タ(何を言っているのかわからない)

ジ「まぁ、こんなしょうもない話は無限の彼方に置いとくとして、

基礎魔法は練度によって威力や質が上がったり、必要な魔力、酸素が減ったりするんだ。

酸素は出す魔法の威力にもよるけど、無意識に出る魔法の威力が、おおよそ、物を投げる時に使う酸素と同じくらいだと思えばいい。魔力7で酸素3みたいな比率。」


タ(魔法を大量に使ったら、心無しか疲れるのは酸素を使ってたからなのか)


ジ「魔法は使い方によっては水を分散するように出すことで霧にできたり、火と風とか、種類の違う魔法を混ぜて使うことで熱風を出したりもできる。

あと、手の延長と考えると、離れた場所から魔法を出したり、これを複数個考えることで一斉射撃とかもできる」

タ「いつも使ってるやつか。

お姉ちゃんにはもう効かないんだよなぁ」


 見なくても、雰囲気でドヤ顔してるのがわかる。


レ「タイトの大量の魔法はどう足掻いても、捌ける気がしない」


 急に褒められて少しドキッとする。


ジ「まぁ、教えてもないのにできるのは、ほんとに変態だと思うけどね」


 嫌な事を思い出すと同時に嫌な予感がした。咄嗟に声を上げて

タ「やめて!それは言わないで!」

 と言ったが、時すでにお寿司


エ「あぁ!懐かしいそれ!前も言ってたよね!?タイトは変態だって!いやぁ、やっぱり間違いじゃなかったんだね〜」

タ「あぁぁぁぁ!もう、手遅れだった、、、」


 レイが咄嗟に手を胸の辺りで交差させ、こちらに体を向けないようにする


タ「ち、違うんだって!あの、、その、だから!」

テ「タイト、お前も男なんだな。」

タ(こりゃもうダメだ)


 もう、弁明を諦めたのを示すため、わざと大きくため息を吐き、


タ「なにそれ、、意味わかんない」

 と言う。


ジ「で、話を戻すけど、」

タ(無視しやがった

元はと言えば、あなたのせいなのですがね)

ジ「さっき、習得のしやすい、しにくいとか言ったけど、ほとんどの人が少し練習すればできるようになるよ。氷や土が習得しやすいのは目に見えて、固形で構成しやすいからかもね」

テ「電気か、、、カッコイイかも」


 この言葉に物凄い勢いで振り向く、そう、、僕のお姉ちゃん。


エ「ティールもそう思う!?」


 ここで2人は向かい合う


テ「その言い方、まさかエレナも?!」

 そして、ガッと肩を組み、


エ「仲間ー!」

テ「なかーま!」

 と言い出した。


タ(危ない人達だ、あまり関わらないようにしよう。)


エ「残念、兄弟なので回避不可です」

タ「な、、なぜ心の声を」


 ここでニヤリと笑うお姉ちゃん。そして、ゆっくりと口を開き、こう言った。


エ「文章に書いてあっ/ジ「よし!次の魔法に行こうか!」

タ(とんでもねぇこと言いかけたな、、、ありがとうジョーカーさん)

エ「とんでもねぇこと/ジ「さぁ、次は収納魔法だ。やり方はとても簡単!

まず、手に魔力を流し込み、魔法を出さないように手に纏わせる。で、その手で、どこか好きなところに向けて手を伸ばすと、手が異空間に繋がる!」


 か言われた通りにやってみると、少し手こずったが、思いのほか、簡単にできるようになった。


 他の皆もできたみたい。ティールに至っては、これみよがしに武器を取り出している。めちゃくちゃ嬉しそう。


ジ「次は代償魔法。

まぁ、これは特別な技術はいらない。ただ、心で誓うだけでいい。対価と代償の選択に決まりはない。全てが対象となりえる。

例えば、タイト君、ちょっと僕に向かって魔法をぶつけてみて」

タ「どのくらい?」

ジ「2回やるから、1回目は普通くらいで、2回目は全力でやって欲しい」

タ「りょーかーい」


 ジョーカーから10m程距離をとり、手を構える。


ジ「何を対象とするか考え、何を代償とするのか?その対象をどうしたいのかを考えればいい」

 そう言うと、ジョーカーさんは魔法で高さが170程の石像を2つ作った。


ジ「この2回、僕はこの全く同じ石像一体を代償に、タイト君の魔法を消すよう誓ってみよう。

さぁ、いいよ」

 そう言いながら、魔法を防ぐように手を前に出しておくジョーカーさん。

 いつも通り、手に魔力を流し込み、氷魔法を構成し、発射する。


 勢いよく発射された氷魔法は、勢いそのままにジョーカーさんへ飛んでいく。が、着弾する手前で魔法が突然、掻き消され、石像の一体が形を忘れたように崩れ落ちた。



氷魔法は固まって氷となっていた魔力が分解しているようにも見えた。


ジ「これが成功例。次に失敗例と行こう。

タイト君の魔法は危ないから腕に闘心(とうしん)を10纏わせるから、全力でおいで」

タ「わかった!」


 杖を取り出し、魔力を思いっきり込めて、氷魔法を構成し、風魔法で押し出し、先程とは比にならない速度で発射する。瞬間、


ダァン!!

 という、少し鈍い音が響く。


ジ「ぐぅ〜〜っ、やっぱり痛いね、タイト君の魔法は。

さぁ、失敗例はどうだった?」


 全力を食らったのに大してジョーカーさんは、痛がってはいるが、血が出てる様子も折れている様子もない。かすり傷がついている程度。


レ「石像は壊れて、魔法も当たった?」

ジ「正解。失敗した場合、対象とするモノには影響が出ず、代償として払うと誓ったモノは、誓い通りとなる。全損という訳だ。

ちなみに代償は自身にマイナスの事でないと成立しないので要注意。

対価と代償は同じくらいの価値でなくてはいけない。蟻で鯛を釣るなんてことはできない。むしろ、代償の方が重い。あまりおすすめはしない」


 ジョーカー が回復魔法で腕を治しながら言った。


ジ「さぁ、次は交換魔法だ。考え方は代償魔法と同じで、この石をそっちの石の場所にやる代わりに、そっちの石をこの石まで持ってくる的な感じ。

手に魔力を注いどけばいいから結構簡単なんだ。

試しに、この剣を遠投します」

 そう言い、本当に剣を鞘から抜き、誰も居ないとこ目掛けてやや上方向へ向かって投げ、左手で土魔法で手の平程の石を作る。


ジ「瞬き厳禁だよ、いくね」

 そう言った時には、石は消えており、ジョーカーさんの左手には剣が握られていた。


ジ「対象はモノのみで、この魔法は収納魔法の中のモノとも交換が可能だ。

交換魔法はまだまだ法則とかがあるけど、難しいからそれはまた今度ね。

それじゃあ早速、修行開始!」


 早速、言われた通りにやってみる。魔法で作った岩の塊をと球体の岩魔法を作り、球体を地面に置く。そして魔力を手に込める。


 特訓を初めて30分程経ったが、なかなかできない。皆はすぐにできるようになっているのに、


ジ「う〜ん、これは戦闘で1番使える魔法だから出来れば覚えた方がいいんだけど、、、」

エ「見て見て!タイト!」


 元気な声のするほうを見ると、手の平程の大きさの6つの石を交換魔法の連続で空中に浮かせ続けているお姉ちゃん。


エ「無限お手玉」


 多分、あれはアホだ。救えないくらいの。こっちは真剣に悩んでるのに。


 頭では理解出来て、原理もわかっちゃいるが、いざやってみると、まぁ、できない。原因も皆目検討もつかない。


 その後も、何度も試してみたが、成功することはなかった。


ジ「まぁ、人には向き不向きがあるから。そんなに落ち込むことないよ、」

テ「そうだぞ!ただ、汎用性が高くて誰でもできるような魔法ができないだけなんだから」

タ「励ましてる?」


 お姉ちゃんの顔が顔がニヤついている。


タ(この顔はきっと、悪気のある顔だ。悪人面だ。ぶっ飛ばしたい。)


レ「大丈夫。タイトにはタイトにしかできないことがあるから自信を持って、!」


 両の手で握り拳を作り、「頑張って」を表情と体で体現してくれた。


タ(なんて優しいのだろう。天使かよ。心なしか暖かくなってきた。それに比べ他の奴と来たら、、、)


エ「そうだぞ!お前は足から魔法を出すという、唯一無二の変態技があるだろうが!ブハハハハ!」

こいつ、死にかけててもぜってぇ助けてやんね。


ジ「まぁ、しょうがないから一先ず次に行こうか。

次は探知魔法だ!」

テ「探知魔法?「お宝とか!?」」←エ


 さすが、目の付け所は同じ。


ジ「う〜ん、魔力のこもった道具とかなら探知できるけど、金銀財宝とかは難しいかな?」

レ「じゃあ、人とか魔獣とか?」

タ「魔力なら魔法とかの罠とかも?」

ジ「罠は設置した人の技量次第だね。上手な人は超正確に時間をかけてしないと分からないこととかもあるから。

それ以外は正解だよ。基本的に人、魔獣とかを探知するのが目的かな。魔法も罠ほどじゃないけど隠されて発動されるからね」

エ「なんか難しそう」

ジ「実際そうでも無いよ。やり方は2種類あって、

まず1つ目が、自分の中の魔力を一瞬だけ波紋状に放出するやり方。まぁ、引き剥がすような想像だとわかりやすいかな?」

テ「やってみたけど、いまいちわかんないな?」

ジ「それは近くにいるし、目で見てるからね。後で実践はするとしてまずは説明を聞いてね。」

テ「りょーかいしやすた」

ジ「このやり方は、使う魔力の量は極端に少ない。

けど、探知した人が誰なのか、位置もおおよそでしか分からない。あと、一瞬だけだからその後すぐにどっかに行かれるともう分からなくなる」


タ「魔力だけで、誰なのか分かるの?」

ジ「魔力は個性によって変化する。人の数だけ魔力の揺らぎ方、流れる速さ、量、質が違うんだ。全く同じ趣味嗜好、性格、人生経験の人はいない。まぁ、仲間の魔力がわかっとけば何とかなるよ〜」


タ(仲間のさえ分かれば他は敵と考えればいいのか)


レ「魔力量とかも分かるんだ」

ジ「そうだよ。でもたまに魔力をわざと少なく見せたり、多く見せたりする人とかもいるから見極めが大事になってくる。

相手がどういう人間なのかをよく知ることが必要なんだ」


タ(いわゆる運次第かいな。)


 考えること多すぎて頭が追いつかなくなってきた。


ジ「そして2つ目は、常に魔力を体外に流し出すやり方だね。これはさっきみたいに放出するのではなくて、纏った魔力を拡張させる感じだね。」

テ「・・・やってないぞ?」

ジ「知ってた☆

これは、魔力の量はさっきのよりも少し多いけど、相手の位置が正確に分かり、覚えてさえいれば、誰なのかを探知することができる。それに現在進行形で相手がどこで何をしているのかが分かる。

あとこれは、魔力が自分から離れてないから、自在に動かすこともできる。1点集中で一方向に極端に伸ばすこともできる」


ジ「あと、魔力の量は増えるとか言ったけど、さっきのが目薬レベルで、こっちは水魔法をちょろちょろ出すレベルだからあんまし気にしなくてもいい。

てかこっちを常にできるようにしとけばいい」

エ「じゃあ、なんのために1個目のやつ教えたの?」

ジ「探知するということは、相手も探知していた場合にお互いにバレるということ。

魔法は素の状態でも少しだけ体外に出てるものなんだけど、少し意識して内側に留めておけば探知されても気づかれないんだ」

エ「私みたいな近距離大好きはそっちの方がいいってこと?」

ジ「そうそう。で、魔力を内側に留めておいて、相手が拡張型で探知してる様子だったら、一瞬だけ探知して、相手には気づかれるけど、まぁ一瞬じゃどこにいるかまではわかんないから、一方的に大体の位置を探知して、魔力の放出を0にして奇襲とかもできる」

タ「それぞれに利点があるんだね。あと、そればっかりでもダメとか、難しすぎる」


 これから戦っていけるのか不安になってきた。


ジ「まぁ、とりあえず拡張型の方が何かと便利だからそっちを先にできるようにした方がいいかな?

タイト君は魔力の総量も多いし、」


レ「私はこの目で見通せるからいいかな?」

確かにレイにはいらないかも?


ジ「もし、能力を封じられたらどうするの?」

レ「たしかに。やっぱり覚えとく」


ジ「一通り説明したところで、かくれんぼをしよう!」

エ「いきなり知能が下がったな」

テ「ようこそ我らの方へ」

エ「さも私が知能低いみたいな言い方やめい!」

テ「え?」

エ「は?」

レ「ん?」

ジ「お?」

タ「へ?」

・・・


ジ「ただのかくれんぼじゃなくて、探知魔法を使ったやつだよ。

魔力の放出を0にするのも集中力がいるから。鬼に見つかった人も探知魔法で探すって感じで。

鬼と最後以外は両方の特訓ができる感じで、」

レ「楽しそう」

タ「鬼になった時、能力禁止だよ?レイ無双になっちゃうから」

レ「わかってるよ〜」

ジ「さあ!まずは鬼を決めようか!

じゃあ、いくよ!ジャンケン!」


・・・

・・


タ(負けた。あいこもなしにいきなり1人負けした。

僕、ジャンケン弱いな。あぁ〜そろそろ5分経ったかな?行くかぁ)


 足取りも気も重いのを必死に振り切って魔力探知をできるだけ拡張させて探しに出かけた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

        *クラティール視点*


 俺は今、ジョーカーと肌が密着する程の超ど近距離の位置にいる。この近さでジョーカーは淡々と喋り始める。


ジ「探知魔法を使ったかくれんぼで実践訓練。

・・・と、思ったんだが、まさか、落とし穴型の魔物に囚われることとなるとはな!」


タハハハ!

 と、カラカラと笑い始めるジョーカー。


ジ「しかもただの落とし穴じゃないぞ!底なしの泥沼で、これに触れている間は魔法も神技も使えない。

さらに!これは嵌った相手だけでは脱出不可の第三者がいないと抜けられない特殊仕様さ!」


 俺らは今泥沼の落とし穴に、腰の高さまで浸かっており、ジョーカーに抱き抱えられて、事なきを得ている。考えれば考えるほど


テ(それってつまり、、、)


テ「詰んでね?」

ジ「あぁ、、、大詰みさ!ここから僕達はいかに魔力を隠すとかじゃなく、発見してもらうために魔力を全力で放出しなければならない!」


 考えただけで気を失いそうになる程の危機的状況。


テ「まぁ、沈んでいかない沼だから待ってるだけでいいね」

ジ「ふっふっふ、

それは違うぞクラティール君。僕は今、足をばたつかせて、必死に浮かぼうとしているんだぞ!」

テ「見えない水面下でそんなダサい状況になっていたとは」

ジ「ダサい?!君、あの

「だってよぉ、シャ〇クス!!腕が!」

の名シーンも水面下では浮かぼうと足をばたつかせていたんだぞ!知らんけど」

テ「保険かけんな!そこは創作物のあれ的な感じでなぁなぁにならないの?」

ジ「クラティール君、それはありだ。

・・・だがここではなしだ!」


 少し溜めて、断言したジョーカー


(創作の中に現実を突きつけるような小ボケが好きだからね!!)

テ「誰だこいつ↑」

ジ「気にするな」


ジ「さぁ、こんなのは置いといて、」

(こんなの)

ジ「魔力を全開にして見つかるようにするよ!」

テ「了解した」


 言われた通り、魔力を周囲を覆うように体の外へ向けて魔力を流す。

 が、なんかできてる気がしない。俺下手なんかな?


テ「ジョーカー、俺放出できないんだが?」

ジ「安心しなクラティール君。僕もだ!

魔法使えないのに魔力出せるわけないやんな!

アッハッハッハッハッ!」


 また、大声で笑いだした。結構危うい状況なのに、


テ(あれ?この人に教わって大丈夫なんかな?)

ジ「お?今失礼なこと考えたな?」

テ「お前も読むんかい!」

ジ「僕は経験則による読心術の1種だから。

エレナちゃんのあれはもう、ダメなやつだから」


ジ「さて、助けがくるまで適当に話しとこうか」

テ「呑気だな、、、まぁええか」


(もう何も考えたくない)


 それから、特に語る必要も無い他愛のない会話をしていた。大体10分経ったくらいだろうか。


タ「やっと見つけ、、なにしてんの?」


 一瞬とても嬉しそうな表情が見えたが、俺たちの状況を見て、真顔で質問された。

 悪いことはしてないはずのに心が痛い。


ジ「やっと見つけてくれた!タイトそっちから手を引っ張って助けてくれない?

いやぁ〜、この魔物嵌ったら第三者がいないと抜け出せないんだよね笑」

タ「え?あ、そうなんだ。わかった。」


 明らかに戸惑ってる。そりゃそーだ。あのジョーカーが為す術なく助けを求めてるんだからなぁ。


ジ「ほい、クラティール君先に出ていいよ。下から押し上げるから」

テ「お?ありがとう」

タ「はい、手を伸ばして」


 タイトが両手を差し出して来たので、右手を伸ばしてお互い掴んだのを感じて、


ジ「じゃあ、せーのでいくよ?

せーーの!」


 沼から少し勢いをつけて抜け出すことに成功した。泥沼で下半身は汚れているかと思っていたが、何一つ汚れはついておらず、ほっとした。


テ(一体どういう原理なんだ?)

タ「次はジョーカーさんの番だよ」


 タイトに話しかけられて、考えていた脳から現実に戻って行った。


タ「2人でいけるかなぁ?」

テ「確かに。大の大人に対してこっちはガキ2人だからなぁ」

タ「最悪、3人仲良く沼の中になるかもね」

テ「洒落にならんなそれ笑。

じゃあ、俺近くの木掴んどくからタイト、俺の手掴んでジョーカー引っ張りあげてよ。そしたら逆に引っ張られることないでしょ」


 近くの木を右手で掴み、左手をタイトに差し出す。


タ「いいねそれ!」


 タイトもそれに賛同したようで、躊躇うことなく右手で差し出した手を掴んで、ジョーカーに向かって左手を差し出した。


ジ「じゃあ掴むから引っ張ってね?」

タ「せーのでいくよ?」

テ「りょーかーい」

タ「せぇーの!」


 力一杯入れて引っ張ったジョーカーは沼から抜け出したと思ったら、勢いそのまま2.3m程飛び上がり、右手に電気魔法を作り出していた。


ジ「逃がさん」


 ジョーカーの視線の先には泥沼がある。ジョーカはそのまま、落下の勢いを利用し、沼を殴りつけた。


 その一連の様子は、先程まで冗談を言っていたようなふざけた態度も、いつも訓練をつけてくれたような優しい顔もなく、ただ、相手を殺すことを決めた、そんな表情だった。


バチンッ!!


 ジョーカーが沼に殴りつけ、徐々に消えていくのを見て、仕留めたのだと理解した。


ジ「いやぁ〜タイト君、ありがとう!正直危なかった。足バタバタしてたから足つってたんだよね。

いやぁ〜、あと5分で探し出してくれなかったら、ほんとに死ぬところだったよ〜」


テ(事態は俺が思ってるよりもずっと深刻で、実は死ぬ寸前だったらしい。危ない危ない。)


テ「タイト、ありがとう!」

タ「どういたしまして!」


 いつも言う言葉通りの表情をしているので、素直なやつだなと感じる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

         *エレナ視点*

エ「少ない!」

ジ「・・・すぅっ、何がだい?」


 音を立てて呼吸をして、きもいキメ顔しながら聞いてきた。


エ「私の出番だよ!今回、タイトとティール視点ばっかじゃん!」

ジ「そういうこと言うな」

(そういうこと言うな!!!!!)

ジ「ほら、怒っちゃった」

エ「いつかぶち〇す」

タ「物騒すぎん?」

ジ「ほら、もう遅いしもう帰ろう?ね?」

エ「おい、適当にあやすんじゃねぇ!ぶん殴るぞ!」

ジ「闇の団長と同じくらい暴君だね、君は」


 一体、ナニひろさんなんだろうか?


テ「エレナ敵に回したら本気で殺されそうなんだが」

エ「当たりめぇだ!ボコボコにしてやんよ!」


 終わった、て顔をするティール。


エ「まぁ、ティールならその後に助けてやるよ。私ら仲間だしな」

テ「姉貴ィっ!一生ついて行くっす!」

レ「姉貴、!」

ジ「姉貴!」

タ「あ、あねぇちゃん」

エ「お前、笑わせんな!ごっちゃ混ぜになってんぞ

あと、ジョーカー、単純にきもい」

ジ「辛辣」

エ「先に言っとくが、お前が敵になったら、迷わず殺しに行くからな

ほら、よくあるじゃん。師匠を超えてさらに強くなる的なあれ」

ジ「躊躇なく踏み台にするのね君は」

エ「当たり前だ!!」


 ワイワイガヤガヤと、そんなくだらない話をみんなでしながら、家に帰った。


 風呂に入って、夜ご飯を食べて、明日もいい日になーれーと思いながら紙飛行機を投げ、布団に入り今日という一日を終えた。

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