第9話 小さな旅人
/4月19日/
*エレナ視点*
エ(11歳)「なに、、、これ」
目に映る光景に思わず声が漏れる。
視線の先には銅像が見える。容姿から見て、男の人だろう。
異様だと感じたのは、この物体がなんなのかわからなかった訳でも、こんな田舎の森の奥という辺鄙な場所にあるからでもない。
レ「首を、、、斬っている?」
タ「うっ、うぉぇぇぇ、」
なぜ、誰が、こんな田舎に、このような構図で。しかも、この村はこの世界では端っこの方に位置するのに、わざわざ誰にも見つからないようなこんな場所に?
エ(あぁ、頭痛くなってきた。)
頭の中に色々な考えが巡り、頭に熱を感じたところで一旦冷静になろうとしたところで、ようやくタイトが吐いたことを理解する。
エ「あ、えと、だいj/レ「大丈夫?タイト。」
タ「はぁ、、はぁ、、」
手から魔法で水を出し、それを飲み込むタイト。
タ「ありがとう、もう、大丈夫。」
レイを見てお礼をするタイト。
エ(痛い)
それを見て、少し、なんだかなぁと思ってしまう。私も心配したのになぁ、言いきれなかったし、最初別のこと考えてたけどさぁ。
・・・今私、めんどくさいな。
タイトは悪くないとわかっちゃいるが、そんなことを考えてしまう自分が嫌になる。
タ「エレナも、心配してくれてありがとう」
エ「ふぇっ?お、おう!」
まさか、お礼を言われるとは思っていなかったので変な声が出た。
でも、その一言にとても喜んでしまう
エ(あぁ、私、ちょろいなぁ。お礼されただけで、さっきまで落ち込んでたのが吹き飛ぶなんて、、)
そんな事をふと考えながら、視線の先ではタイトを追いかけている。
レ「ねぇ、こっち来て!なんか書いてある」
レイの言葉で、現実に戻される。
銅像の後ろ側からレイにしてはやや大きめな声が聞こえる。急いで見に行くと、銅像の台座のところになにか書いてあるのがわかる。
エ「確かになんか書いてあるけど、なんだこれ?」
タ「なにかの文字?だと思う。多分」
レ「でも、読めない。こんな文字は初めて見る」
所々に改行のようなものがあるため、タイトの言う通り、ほぼほぼ文字で間違いないのだろう。
だが、今まで使ったことも見たこともない文字だ。わからないことに更に、分からないことが重なる。
これ以上考えても無駄だろうな。この銅像見てるだけで不愉快になってくるし早めに離れよう。
エ「タイト、レイ。もう考えてもわからないし、ここを離れよう。」
タ「そうだね、それがいい。この銅像を見ると寒気がするのに、体の中には熱を感じる。しかも、酔った時と同じような感覚がして気分が悪い。」
エ(結構、重症じゃん。さっきの大丈夫ってなんだ?)
タイトの助言もあり、いや、そもそも3人とも早く離れたかったのだろう。特に何も言わずに離れた。
タ「それにしても、エレナが離れようとか言うとは思わなかった。」
エ「なんだそら?喧嘩売ってんのか」
タ「すみませんでした」
最近、タイトに高圧的な態度を取るとすぐに謝ってくるのが面白くて、少し気に入っている。
レ「そもそも別の事しにこの森に入ったしね。」
タ「え?知らないんだけど。今日無理やり引っ張られて来たんだんど?」
エ「あれ?言ってなかったっけ?
タイト、覚えてる?4、5年くらい前にこの森に入って、魔獣狩りしに行ったこと。」
タ「うん、覚えてるよ。死にかけたし」
エ「よね?あれから強くなったんだしさ、ここら辺の魔獣を一匹残らず駆逐してやろうかと思って。
今回はレイも交ぜてさ。」
タ「え?あの時、1匹魔獣殺して、ごめん、、、とか悲しそうに言ってたのに?あの感情はどこ行ったの?」
エ「あの時の私は死んだ!てか、その後殺されかけたし、やっぱあいつら害獣だから絶滅させといた方が世のため人のため」
タイトが到底人には見られらないという顔でこちらを見ている。
タ「他の魔獣も出るかもしれないんだよ!それに、レイは?!レイは怖くないの?死んじゃうかもよ?」
レ「2人がいるからいい。それに、前回誘って貰えなかったから、今回2人と行くの楽しみ」
この場から逃げるため、レイを使って人数の力で何とかしようと思ったのだろう。が、その唯一の手は好奇心旺盛なレイによって無くなった(笑)
エ「お前は逃げらんねぇんだよ」
すると、タイトは急に背筋を真っ直ぐに伸ばし、姿勢を正した。
タ「お姉ちゃん、いえ、、お姉様、私11歳というまだまだ、これからの人生が多く残っており、死にたくない所存でございますので、私だけ帰らs/エ「却下」
何としても帰ろうとするタイト。だが、私が許さない。
エ「大丈夫、大丈夫。今回は道覚えてるし、剣も魔法も強くなったし、道覚えてるし、本物の剣持ってきてるし、レイもいるし、道覚えてるし。」
淡々と呪文を唱えるように、洗脳するようにタイトに囁きかける。
レイ「タイトは死なないわ、私が/エ「それ以上は言わせないよ?」
(止めて頂き、ありがとうございました)
エ「フッ、感謝するんだな」
タ「え?今変な声聞こえた?」
レ「知らない、頭の中に直接響いてきた」
タ「そして、当たり前のようにそれと会話しないでよ。怖いんだけど」
はぁ~~~、と深いため息をつくタイト。そして、次に顔を上げた時、弱気な顔のタイトではなく、覚悟を決めたようだった。
タ「わかった、わかったから、僕も行くよ。だからさっさと終わらせて帰ろう。」
エ「そうこなくっちゃ!いやぁ〜信じてたよタイトは私を置いて逃げないって!いやぁ〜、タイトはツンデレだなぁ、全くもう!」
タ「いや、それだけは否定させて貰う。どちらかと言うと、お姉ちゃんと2人きりで森の中に取り残されてしまうレイがあまりにも可哀想だから。罰にしてもやりすぎなくらい。」
エ「さぁて、魔獣の前にまずはてめぇからかなぁ?」
タ「すみません、冗談です。お姉様と二人行動など、むしろご褒美です。」
エ(え、きもちわる!」
タ「え、酷い。そんな直球に言わなくても」
何故だか被害者面で泣きそうなタイト。
キモすぎて声に出てたわ。仕方ないね。キモいし。てか、今の私が悪いんか?
隣でレイは、嬉しそうに、うんうん、と頷くだけであった。
ナンデ?
・・・
・・
・
魔獣を切る。とどめを刺す。魔法で攻撃する。接近する。とどめを刺す。
うーーん、なぁんか
エ「違う気がするんだよなぁ」
タ「あぁ、エレナも?実は僕もそう思ってたんだよね。」
エ「やっぱりぃ?前の時はもっとこう、自分がやらなきゃいけない、とかさぁ。戦う時の心の高ぶるのが分かるほどの緊張感と、死ぬかもしれないという恐怖感が絶妙な感じで楽しかったのになぁ。」
タ「それはさすがに変態過ぎない?」
エ「うっせ!お前に言われたかないわ。」
タ「理不尽。」
強くなったのはいいが、こう、あっさりと昔苦戦していた敵を倒すのは悲しいものがある。
強敵倒したと思ったら、実はもっと強いやつの、1番下っ端の雑魚でした。みたいな?
レ「私は楽しいと思ったけどなぁ、」
同じ気持ちを共有できず、やや不満そうなレイ、
エ「いや、あのね楽しくないことはないんだよ。確かに、自分より弱いやつを徹底的にボコボコにするのは楽しいけどね?」
タ「サラッと怖いこと言うやん。」
エ「やっぱり強さが同じくらいのやつと正々堂々、真剣勝負で戦うのが1番楽しい」
レ「それは同感」
エ(レイにもわかるのか、この気持ちが!クゥ~~、やっぱり持つべきは気持ちの分かり合える友達だね。タイトはこの気持ちわかんないんだろうなぁー)
そう思いながらタイトを見てみると、
(今日の夜ご飯なんだろう?)
みたいなアホ面してやがる。
エ「よし!もうそろそろ戻って、いつも通り、実践しよう!私とレイ対タイトで。」
タ「えーっと?
正々堂々 真剣勝負 多対1は卑怯 で検索っと」
レ「2対1の場合でも、それらの言葉は当てはまることがあるので、間違いではないよ。残念、フフ、、なことに、」
タ「今笑った?僕の周り、人をいじめて喜ぶ人が多い気がする。あと、お姉ちゃん、顔では隠してるつもりだろうが、その心笑ってるね?」
おいwやめろw必死に我慢してたのにwww
エ「あははは!それはずるいって!冷静に突き放されるタイトを、フフ、笑わないように頑張って堪えてたのに!ヒヒッ、やっぱタイトしか勝たんわ」
レ「ンフフフ、ごめんね。あまりにも可愛くて」
追い打ちをかけるレイ
エ(もうやめたげてよ。笑いすぎて言葉が出ない。なんなら呼吸ができなくて苦しいまである。)
恥ずかしさからか、顔を真っ赤にして、今にも走り出してどこかへ逃げていきそう。
タ「もう1人で帰る!」
案の定走り出したので、右手を私、左手をレイが掴み、引き止める。
エ「もう、ごめんて、冗談だって。ねぇ、だから一緒にみんなで仲良く帰ろうよ?ね?」
レ「ごめん、フフ、許して。全部エレナに、ヒヒ、言わされただけなの。ンフフ」
エ「この裏切りもんがぁ!」
その裏切り方にはさすがにビビる。崖から落とされた気分だわ。
・・・まぁ、レイが楽しそうだからヨシ!
タ「ほら、2人で楽しそうだし、僕居なくてもいいでしょ」
レ「タイトも居ないとだ〜め。だからそんなに拗ねないで」
エ「レイもこう言ってるしさ〜、仲直りしようよ!ほら、よく見てみてよ。タイト女の子2人に引き止められてモテモテだよ!?ほら!えーっと、なんて言うんだっけ?両手に、、、穴、、だっけ?」
レ「花、ね。両手に穴持ってどうするのよ笑」
タ「何が花だよ、花に謝ってこいよ!」
タイトにしては少し強めな物言いをする。でも、いつもよりほんの少し怖いくらいで、私と
レイはさらにニヤニヤが止まらなくなってきた。
そんなしょーもない寸劇を繰り広げていると、
ガサッ!
突然、草むらから野生の男の子が飛び出してきた!
飛び出した勢いでそのまま倒れ込み、肩で呼吸をする彼は私たちを見て、
?「に、逃げて!はぁ、はぁ、ま、、魔獣が!」
そう、言い終わらないうちに、彼の後ろから2mを超える巨体が姿を現した。
皮膚が赤色で、少し太ったような体つき。これで攻撃するんだぞと言わんばかりの棍棒を持った、豚と鬼が混ざったような1つ目の化け物。
私はそいつを見て、咄嗟に大声を上げた。
エ「てめぇ!今までどこにいたんだよ!いるんなら早よ出て来いや!つまらなさすぎて帰るとこだっただろうが!」
タ「そ、そうだ!そうだ!
お前が出てこないから、もう少しで2対1で虐められるところだったんだぞ!ありがとう!」
レ「やっと面白くなってきた、、!」
?「うーん、、、どっちが悪いやつかわからなくなってきた」
エ「君!どっかに隠れてて!」
鈍く、少し重い殺気を感じ取る。タイトとレイも感じ取ったのだろう。
剣を構え、咄嗟に臨戦態勢に入る。
神技を使用し、少し先の未来を視えるようにする。10m程の距離で睨み合う。
タ「・・・やっぱり逃げられないよね?」
レ「もう無理だろうね。・・・まぁ、私たちなら大丈夫だよ。きっと、」
エ「私が守ってやっから安心しろ!」
あぁ、、、視ていて良かった。目を離してたら、確実に死んでいた。こいつ、図体の割に動きがかなり
エ「速い!」
一瞬にして近づいてきて、左足を前に踏み出し、物を投げる要領で上から棍棒を振り下ろしてきた。
素早く左方向に飛び、すんでのところで避ける。
ドゴォオ!!
避けたことで振り下ろされた棍棒は轟音を響かせ、地面にヒビを入れ、砂埃を立てる。
エ「危ねぇだろうが」
着地後すぐに攻撃に移り、左側から大振りで剣を振るう。が、やつは捻れている体の向きを戻す回転を利用して、剣を弾いた。
まだ、未発達な体の力では容易く体勢を崩される。
やっぱり速い。視えてたし、撃ち合いになると思ったんだけどな・・・
まだ力が弱いのか。そして、このままじゃちょいとやばいかも。
体勢を崩されて、足の踏ん張りが効かない今は、反撃も回避も出来ない。この期を逃さぬようにと、もう一度、棍棒を振り下ろして来た。
?「危ない!!」
ドガァァ!!!
もう一度、轟音が響くが、大丈夫。視えてた通り、土魔法で作られた岩の壁で防がれて、生きてる。タイトの魔法だ。
タ「大丈夫?!」
エ「ああ!ありがとう!視えてたぜ!」
左足を強く踏み出し、右下から左上方向に剣を振り上げる。今度こそ剣が命中し、胸に切り傷を付ける。
それだけでは怯まず、攻撃を仕掛けてくる。が、棍棒を振り上げたところで、化け物の動きが鈍り、低いうねり声を上げた。
次に、化け物の左腕に足に、胸に、切り傷ができる。やつは困惑して、自分の体の周りを、無闇に攻撃し始める。
レ「1人、忘れちゃダメだよ」
レイが、突然何も無いところから現れ、次には消えた。透明人間とか、そういう神技を貰ったのだろう。
でも、今、そんなこと考えてる場合じゃない、やつが困惑している、今のうちに攻撃を叩き込むんだ!
やつの攻撃を避けつつ、タイトは魔法で、私たちは剣で攻撃する。
何度か攻撃と回避を繰り返していると、あることに気づく。やつの攻撃が地面に当たることによって、やつの周りの足場が悪くなり、砂埃が立ち込めるせいで視界が悪くなっていることに。
幸い、かろうじて見えはするが、そんな中で攻撃に行くのは、危険すぎる。一旦距離をとろうと思い、やつの全身が映るくらいまで下がる。
そこで、砂埃の不自然な動きに目が行く。
エ「レイ!逃げろ!」
遅かった。やつは空気の流れを見て、透明なレイの居場所を突き止め、棍棒を振るった。
今まで検討はずれな場所にしか攻撃が行かず、レイも油断していたのだろう。棍棒はレイを捉える。
ギリギリ剣を盾にして直撃は避けたが、大きく吹き飛ばされ、木に背中から叩きつけられ、動かなくなる。
レ「グァッ」
エ&タ「「レイ!!!」」
急いでレイの元へ駆け寄り、膝を着き、状態を確認する。
エ「レイ!大丈夫?!」
レ「だい、、じょうぶ。でも、、、ちょっと、、動けないかな」
良かった。息をしている。パッと見、骨とかも折れているようには見えないし、内臓がどうこうとかなる程でもないし、ひとまず安心した。
エ「タイト!レイ、だいj」
タ「エレナ!!!」
完全に油断した。戦闘中であることを忘れていた。やつから目を離してしまった。
やつは、私たちの目の前に来ていた。棍棒を振り上げ、私たち目掛けて振り下ろしてきた。
本気で死を感じた。世界がゆっくり流れているように思えた。
エ(私だけならまだしも、レイが危ない。どうすれば。この体勢じゃレイを抱えて逃げれない。
私が囮に、意味が無い。あの棍棒は受け止めきれない。勝てない。負ける。死ぬ。)
頭の中でゆっくりに思える時間の中で、考えを巡らせるが、レイを助ける結論が出ない。
時間が無いことへの焦り、自分が弱いことへの怒り、巻き込んでしまったことへの罪悪感。それらを胸に抱いた私の目に1人の未来が視える。
タ「エレナ!伏せて!」
タイトが左側からものすごい速さで飛んできて、やつに飛び蹴りを入れる。
きっと、足から風魔法を出して、急加速してきたのだろう。
足には土魔法で、棘の付いた装甲を纏っている。
タ「吹っ飛べ!」
そういうと、やつだけが右方向へ勢いよく吹き飛び、タイトは後ろにほんの少し飛んだだけで、着地し、こちらへ駆け寄ってきた。
エ「よくあいつだけ吹き飛ばせたね!」
タ「足が刺さった瞬間に思いっきり、風魔法を出した。おかげで結構飛ばせた。あと、一緒に電気魔法もぶっ放したから今はまだ動けないと思う。」
エ「さすが私の弟!」
タ「レイは大丈夫?」
エ「息はしてるし、口から血は吐いてないから大丈夫だと思う。けど、少しの間、動けないと思う。」
タ「良かった。でも、このままじゃ危ないと思うから、一旦回復させる。だからその間踏ん張ってきて。援護くらいならできると思う。」
やけに簡単に言いやがる。あれ相手に1人はさすがに鬼すぎる。
エ(・・・けど、せっかく頼ってくれたんだから、やるしかねーよなぁ!)
エ「お姉ちゃんに任せなさい!」
タ「任せたよ」
エ(もう、目を離さない。相手が死ぬまで相手だけを見る。
やつもそろそろ動き出す頃だろう。今はレイが回復し終えるまで2人を守る。それだけに集中しよう。)
大きく息を吸う。準備はできた。
ようやく動き出したやつは、すぐに私たちに向かって来るわけではなく、近くの岩に歩いて近づいて行った。
そして、岩に向かって棍棒を振り下ろし、岩を砕いた。ある程度岩を砕くと、棍棒を置き、大中小様々な大きさの石を大きな手で鷲掴みにし、こちらに向けて投げてきた。
既にその行動を視て、大中位の大きさなら弾き返せる。でも、小さすぎる石は流石に無理。だから、
前方の広範囲に目一杯の風魔法を繰り出し、小さい石を吹き飛ばす。それと同時にその他の石の速度も下げる。
あとは、タイトとの実践の時みたいに弾くだけの作業。むしろタイトの魔法の方がキツいまである。
ほんの数秒の攻防、石を捌ききったところで、やつは棍棒を取り急接近し、棍棒を振り下ろしてすくるのが視えた。
エ「視えてんだよぉ!」
体勢を立て直し、防御を捨てて、思い切り足を踏み出して、闘心を剣に流し、攻撃に全てを込める。
エ(大丈夫。だって、)
ダァン!
タイトがやつの顔面に地面から土魔法で地面を勢いよく盛り上がらせ、ぶつける。
タ「ありがとう!回復終わったよ!」
エ「視えてたぜ!助かった!」
レ「ごめん!こっから卍解する」
エ「おう!」
やつは顔面にモロに食らったことで、体勢を大きく崩す。
エ(ここしかない!力が足りないなら他で補えばいい。全てを捨てて攻撃に当てればいい。後のことは2人が何とかしてくれる!)
捻った体を思い切り回転させて剣を振るう。剣はやつに当たることなく空を切る。そして、左手で風魔法を体に巻き付けるように出し、回転の力と風魔法利用して、さらに回転を付け体を一回転させる。
もう一度、強い1歩を踏み出し、やつに近づき思い切り、切り上げる。
私の剣はやつの右腕に命中し、切り落とした。
グオォォォオ!!
やつは低く大きな唸り声を上げて絶叫している。
エ(やった!!けど、勢い凄すぎてこのまま体勢崩すわ。)
予想通り、前に倒れ込む。急いで立ち上がるが、既にやつは左の拳を振り上げていた。
が、その拳は振り下ろされることなく、上から急降下してきたタイトが腕に剣を貫通させ、勢いそのままに地面に腕ごと突き刺して、阻止する。
タ「おら、さっさとくたばれ」
左腕を地面に突き刺すことで、顔が丁度私たちくらいの位置まで下がってきた。その状態でタイトは氷魔法でやつの腕と地面を凍結させ、動かせないようにした。
レ「もう動けないでしょ?あなたの足、切り刻んできた。」
エ「いつの間に?!あと、怖すぎ」
レ「やられたらやり返す」
タ「ま、、まぁ、速くとどめさそうよ。」
エ「それもそうだな」
体があれだけ硬かったので、首も苦労するかと思ったら、意外にも闘心を剣に10込めるだけで、苦戦せずに首を切り落とせた。
切り落とした後、火魔法で死体を焼いた。ゆらゆらと揺れる炎を見ながら、先程の戦いを思い返していた。
エ「なんか、いつもギリギリだね」
タ「それはお姉ちゃんが相手の強さを見誤って、戦いを挑むからだよ」
エ「あははは!いやぁ〜、今回は余裕かと思ったんだけどなぁ〜。あんなに移動が速いとは思わなかった!」
レ「ほんとだよね。でも、楽しかったね」
エ「1番死にかけてたのに、、」
化け物を見るような目でレイを見るタイト。やがて、何かを諦めたようにため息をつく。
エ(あ、そういや)
エ「レイ、戦ってる時に消えたり出てきたりしてたけど、なんか新しい神技でも貰ったの?」
レ「うーん、多分違うかな?私も最初そう思ったんだけど、いくら使おうとしても透明にならなくて、でも透視の能力使うと透明になれるようになるんだよね。それも目がこうなってから」
そう言いながらレイは右目に手を添えた。
エ「まぁ、強そうだし、良かったじゃん。」
タ「ただでさえ急に現れるレイがさらに察知しずらくなった。」ボソッ
小さい声で言いながら遠くを見つめるタイト。
エ「そういえば、前からちょっと思ってたんだけど、タイト、お前なんで戦ってる時だけ私を名前で、しかも呼び捨てで呼ぶの?」
タ「え?そうだったの?!無意識だった、、、嫌だったらごめんね?」
エ「いや、いいよ。そんなん気にならんし。まぁ!?どうしてもって言うんなら?エレナ様と呼んでも良くってよ!」
タ「そんなことより」
エ(そんなことより?!)
タ「さっきの子どこにいるんだろ?
もう、終わったから出てきていいよー!」
タイトが森に向かって叫ぶ。
すると、ガシャガシャと音を立てながら、先程まで持っていなかったはずの無数の武器を手に持ち、少年は立ち上がった。
少年の容姿は、光に照らされた森の葉のように、濃く、そして鮮やかな緑の髪。瞳は橙色。長袖を肘の高さまで捲り、上から茶色のフード付きのマントを被り、長ズボン。靴はくるぶしよりも少し高めで、固そうで少し重そうな靴を履いている。
?「もう、倒したの?」
エ「あれ?あいつあんなに大荷物だったっけ?」
タ「うん!もう大丈夫だよー!」
レ「細かいことは気にしない」
エ(こま、かいのか?)
?「ごめん、巻き込んで。でも、俺戦い方知らなくて。」
そう言いながら近づいて来た少年は既に武器を持っていなかった。
エ「あれ?さっきあんなに持ってた武器は?捨てた?」
?「違う違う、収納魔法だよ。ほら、こうやって」
そう言いながら、右手を外側に手を伸ばしたかと思ったら、肘から先が消えた。消えた腕と残っている腕ら辺で、うねうねと景色が歪んでいるように見えた。
そして、何やらゴソゴソと方を動かし、やがて何かを掴んだようで腕を引っ張り出した。その右手には先程まで無かった、短刀が握られていた。
?「こんな感じ。」
エ「す、すげぇ、めちゃくちゃ便利そう。何それ?神技?」
?「え?一般魔法の1つだよ?」
エ「じゃあ、私にも使えるの?」
?「もちろん」
エ「へぇ〜、・・・てかお前見ない顔だな?誰だ?」
レ「あ、やっと聞いてくれた」
タ「ずっと<?>表記で視聴者置いてけぼりにすんなよ。」
エ「うるせぇうるせぇ、で、君名前は何?」
グ「俺の名前はグラティール・ジニア。呼びやすいように呼んでくれていいよ。ちなみに11歳」
エ「あ、年同じじゃん。じゃあティールって呼ぶね。次は私たちが自己紹介する番だね?私の名前は〜/割愛
グ「よろしくね。」
エ「で、ティールはこんな辺鄙な森の中で1人で何してたの?」
グ「いやぁ、1人って訳じゃなくて、元々お父さんと一緒に旅してて、ここまで来たんだよね」
タ「その年で?」
グ「うん、まぁ、旅っていうか、俺の村自体が鍛治職人の村だから、それの主張と俺の経験を積むのを兼ねた旅って所かな?」
レ「だからあんなに武器持ってたのか。あれはティールが作ったの?」
グ「全部じゃないけど、いくつかは自作だよ。まだまだだけどね。」
タ「ふーん。あれ?ティールのお父さんは?もしかして、さっきの化け物に」
グ「勝手に殺さないで。ここに来る途中、お父さんが少し道を間違えて、森の中を進んでたら綺麗な花畑を見つけたんだよね。それで、休憩しようとしたら、お父さんから、
「依頼があるから先に行くけど、お前は休んだらぼちぼち来い」
って言われて花を見ながら休んでたんだよ。そしたらさっきの化け物に襲われたってわけ。」
タ「ここら辺に花畑とかあったんだ?」
グ「あれ?知らなかったんだ。ここから近いし行ってみる?」
レ「行ってみたいかも」
エ「レイが言うなら行こうか」
グ「先導は任せて。えーっと確かこっちのはず」
ティールについて行くこと数分。鬱蒼と生える森から急に開けた場所に出た。
辺りを見回すと一面が花で覆い尽くされており、鮮やかな彩りを放っていた。複数の色が入り交じり、風に揺れている様に声も出ず、ただただ、見蕩れていた。
レ「綺麗」
エ「これ、全部薔薇じゃない?」
タ「え、ほんとだ、棘があるし、図鑑で見たまんまだ」
グ「すごいでしょ」
すごいなんて言葉では言い表せない。でも、すごいとしか言いようのない光景。
きっと、この景色を忘れることはない。そして、こんな景色が、こんなにも近くにあったということは、この世界を旅すればもっと、こういう景色を見れるのか。
エ(早く旅して色々なとこに行ってみたいなぁ)
と、夢への期待がが果てしなく続いていく。
レ「ねぇ、みんなは何色の薔薇が好き?私は黒色が好き」
さっきまで殺し合いをしていたとは思えない、普通の質問をするレイ。
グ「俺も黒色が好きかなぁ」
タ「僕は青色が好き」
エ「私は赤!」
そんな他愛もない話をしていると、段々と日が落ちてきた。
とりあえず、村の方に向かって歩き出し、森を抜けて村に着くと、1人の男性がこちらを見つけて駆け寄ってきた
?「おう、遅かったな。もう友達できたのか?」
グ「うん。さっき化け物に襲われたの助けて貰ったんだ」
エ「もしかしてさっき言ってたお父さん?」
グ「そうだよ」
「そうだったのかぁ!息子を助けてくれてありがとう。おじさん、鍛治職人やってんだけど、なんか欲しい武器とかある?お礼に作ってあげるよ!」
エ「う〜〜ん、今はない、かな?」
タ&レ「僕も
私も」
「そうかぁ?まぁ、まだ子供だもんな!大事な武器は自分に合うように深ぁぁく考えて選ぶのがいい!その気になったらいつでも言えよ。この村には1ヶ月半位滞在する予定だからな。その間なら受け付けるぜ!てことで、これからよろしく!グラティール、行くぞぉ」
グ「はぁい。それじゃ、これからよろしくね。また明日もいい?」
エ「いいぜ、いつもここら辺で修行してるから、来たかったらきていいよ。」
タ「修行せずに見てるだけでもいいからね。」
グ「うん!明日も来る!それじゃ、また明日!」
エ&タ&レ「ほんじゃ!
バイバーイ
また明日」
手を振って皆でティールを見送り、こちらも解散するような空気が流れたので、
エ「そんじゃ、私達も解散スっか?」
レ「そうだね」
タ「ていうか、今更だけど、僕は忘れてきただけだけど、なんで今日ジョーカーから貰った魔道具持ってこなかったの?」
エ「馬っ鹿、お前この前よりどれくらい強くなったか確かめるのに、そんな道具使ったら分からないだろうが」
タ「そういう事ね」
エ「そゆことだ」
レ「じゃあ、またね」
エ&タ「またな!
また明日」
そう言って、レイと別れ少し歩き、家の扉を開ける。
エ「ただいま!」
タ「ただいまー」
父「おかえり」
母「おかえりなさい、もうお風呂湧いてるから、どっちか先に入っちゃいなさーい」
エ「タイト、先に入ってきていいよ」
タ「わかった、先に入るね」
タイトが風呂に入っている間、今日あったことを2人に話した。
銅像のこと、魔獣のこと、化け物のこと、グラティールのこと、花畑のこと。
私はこの時間が好き。1日であったことを2人に話すと、ちゃんと聞いてくれて、2人が笑顔だと、私も笑ってしまう。
エ(あれ?私が笑ってるからなのかな?
・・・まぁ、どっちでもいいか!)
エ「あ、あとね、なんかねたまに胸のここらがたまに痛くなるの」
そう言い、右手を心臓の辺りに添える
父「胸っていうと、体の中ってこと?」
エ「わかんないけど、多分そう。なんか、急にチクッとした痛みがするの。」
父「いつから?」
エ「3・4年位前からかな?」
父「怖いねぇ、病院に行った方がいいかも、今すぐ行って診てもらおうか」
焦った様子で、お父さんが立ち上がり、玄関へ向かって歩き出した。
母「お父さん、落ち着いて。ねぇ、エレナ」
そんなお父さんをお母さんは止め、私に優しく話しかけてきた。
母「胸が痛む時ってどんな時か分かる?」
エ「うーん、わかんないけど、タイトとレイが仲良くしてるのを見た時?かな?
なんかね、最近おかしいんだ。他のことは結構どうでもいいんだけど、タイトのことになると、すぐイライラしたり、モヤモヤしたり、、、
あとね、タイトが喜ぶと私まで嬉しくなったりするんだ。」
そういうと、お母さんとお父さんは目を見合せた。そして、お父さんが小さな声で
父「そうかぁ〜、もうそんな時期かぁ」
と言った。何を言っているのか分からない。
母「ねぇ、レイ。落ち着いてよく聞いてね?」
レ「なぁに?」
母「それはね、きっと恋だよ」
エ(こい?鯉?濃い?故意?
・・・恋?え、恋?)
エ「誰に?」
母「タイトに」
は?
エ「はぁぁぁ?ありえない!兄弟だよ!そんなわけないって!おかしいよ!」
母「おかしくなんてない。例え、同性だろうと、家族だろうと、誰を好きになっても恋は美しい。
今はわからないかもしれないけど、いずれわかる時が来る。今はただ、心が戸惑っているだけ。だから、その日が来たら自信を持って」
エ「違う!絶対に違うって!タイトだよ!?」
全く見当ハズレなことを言ってくる母に猛反発する。
エ(私が?タイトを?そんなわけない!)
そうこうしているうちに、タイトが風呂から上がってきて、
タ「お風呂上がったよー。ところでなんの話をしてるの?」
と、ムカつく顔で聞いてきた
エ「あんたには関係ない!!!私も風呂に入ってくる!」
なるべく顔を見られないように、足早に準備して風呂場へと向かった。
風呂場の扉を閉める直前、
タ「なんで怒られたの?」
母「さぁ?なぁんでだろうねぇ?」
ぽかんとしているタイトに、ニコニコして答える母。
エ(声を荒らげたから顔が熱い。お母さんが変な事言うから。)
そう思いながら、手で顔に触れ熱を確かめるが、鏡は見ない。
風呂から上がり、そうそうに晩御飯を済ませ、飛び込むように自室に戻る。そのまま寝ようかと思ったが、
エ(タイトなんて、有り得るわけが無い!意味わかんない!兄弟だし!お母さんが変な事言うから。)
と、あれこれ考えてしまい、なかなか寝付けずにいたので、今の気持ちを全部紙に書きなぐり、雑に紙飛行機を折って外に向かって思い切り投げた。
エ(あー、すっきりした)
投げた紙飛行機は急降下して地面に落ちたが、紙飛行機を投げることに全力を出したので、その行方を気にすることなく、その後すぐ眠りについた