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お菓子メイカーの陰謀 バレンタイン

作者: 伊奈葉雪華

色付けに失敗したそうで残念ながら色なしですが、ゆきめさんから『可愛く描けたからこれで!』とお言葉を頂いたので色なしではありますがそのまま上げさせていただきます。

(可愛いよね!)


 まだ、寒い日々が続く二月中旬――、


「はぁ……眠い」

「なに言ってるのよ。早くしないと遅刻しちゃうじゃない!」


 一人の少年がフラフラと歩き、その少年を急かす様に一人の少女が腕を引っ張る。


「あぁ……眠い……疲れた……もう帰って寝たい……」

「はぁ……じゃあ、どうすれば走ってくれるの?」


 困り果てた少女は少年に問う。


「う~~ん」


 少年は急に真剣な表情なり、思考する。


「それじゃぁ、おっぱい揉ませてくれるとか?」

「っなぁ!」


 少年の発言に少女は顔を赤くし髪を逆立てる。


「ハハ、冗談、冗談!」


 少年はそう言うと、少女を置いて走り出した。


「こ……のぉ……」


 少女は小さくそう呟くと怒りを滲ませた。


「まてぇええええええええええええええええええええええええ」

「うっわ、ヤバい!」


 全力で追いかけてくる少女に少年恐怖を感じながらも笑みを浮かべた。


「はぁ……はぁ……」

「はぁ……はぁ……」


 二人は学校の校門の前で膝に手を付き、息を荒げていた。


「相変わらずお前達二人は遅刻ギリギリだな」


 何処か楽しそうに女教師が口角を吊り上げる。


「私は何時も余裕を持って行動していますよ……はぁ……はぁ……ただ、このバカの所為で遅れるだけです」

「うん?否定派しない」

「はぁ……」


 二人の夫婦の様な会話を楽しそうに見ている女教師だった。


「仲が良いのは立派だが……」


 女教師がそう言うと、校舎からチャイムが鳴り響いた。


「お疲れ、そして遅刻おめでとう」


 満面の笑みだった。


「……」

「……」

「「ふざけるなぁああああああああああああああああああああ」」

「にゃっははははははは」


 二人の叫び声に楽しそう笑う女教師だった。



 遅刻した二人は一限目の教科担任に怒られたが、その後は順調に授業は進み昼休みとなった。


「えっと……弁当を持ってくるのを忘れたと?」

「うん……」

「あぁ……こういう時うちの学校に売店と食堂が無いのが痛いな……まぁいいや。半分やるから座れ」


 少年はそう言うと弁当のふたを開けた。


「うん……ありがとう」


 しょんぼりしながらも椅子に腰かける少女。


「このお礼は必ずするから……」

「じゃぁ、一つお願いを聞いてくれるか?」

「ん?」


 少年の言葉に首を傾げた少女だったが今朝されたお願いを思い出し、両手で胸をガードする仕草を取る。


「それも良いが……もうすぐバレンタインだろ?」

「そうね」

「その時に、チョコとかは別に要らないからメイド服でご奉仕してくれ」

「……」


 少年のとんでも発言に少女は少年をジト目で見つめる。


「まぁ実を言うと、うちのメイドがインフルエンザに感染してな、今は俺も掃除とか手伝ってはいるんだが……とうとう人数が足らなくなってきてこのペースだと俺の寝る時間がマジでヤバイ……」

「それで、最近はいつも以上に眠そうだったの?」

「あぁ……眠いのは何時もだが、ここ最近はガチでヤバい……でもうちの屋敷めちゃくちゃ広いから、掃除し続けないと、どんどん汚くなるし……庭掃除もしないと落ち葉がすごいことになるし……親父の書類も処理しないといけないし……マジヤバい」


 そう言い、少年は付く手に突っ伏した。


「なに、その真っ黒なブラック企業は……」

「いや……元気なメイドさん達には労働基準法の範囲ないで働いてもらってる。で、その範囲外の俺が酷使されている。その結果、俺が死にそう……」

「それならもっと早く言ってくれれば手伝いに行ったのに……」

「ん?」


 少女は小さく言葉を零したが少年の耳には届かなかった。


「何でもないわよ。分かったわ。叔父さんの仕事は何度か手伝った事あるし、家事もできるから、バレンタインの日はアンタ休みなさい」

「ん?別に休み必要は……」

「アンタ、自分で気づいてないの?最近のアンタ死んで一週間放置された魚みたいよ?」

「いや……それ既に腐ってない?それに半分くらいアナタの……」

「なんか言った?」

「いえ、何でもありません」


 少女の背後に毘沙門天を見た少年は慌てて首を振る。


「それじゃぁ、お言葉に甘えてバレンタインの日は休ませてもらいます」

「うん」


 少女は満足そうに笑みを浮かべた。


(普段からこうなら可愛いんだけどなぁ……)

「アンタ、いま失礼な事考えたでしょ?」

「気のせいだろ」


 素知らぬ顔で内心ぞっとする少年だった。



 そして時は流れ二月十四日。


 ピンポーンとインターホンが鳴る。


「ん?いつもならすぐに誰か出るんだけど……」


 少女が不思議に思っていると……


『はい……』

「あぁ……やっと出た。私だけど……ん?なんか声おかしくない?」

『あぁ……悪い知らせだ』

「ん?」

『俺もインフルエンザに感染した……。だから今日は帰れ』

「ほんとに?」

『あぁ、昨日の夜ぶっ倒れて病院に行ったら、インフルエンザだとさ。だから今日の約束は無しだ』


 少女はそれを聞くと、小さく溜息を吐いた。


「どうせ、アンタの事だからメイドさん達も全員休みにして、今この家にアンタ一人なんでしょ?」

『……いや、一人じゃない。愛しのペット達が……』

「それは、一人と言うのよ」

『あいつらは俺の……』

「そう言うの良いから!早く開けなさい。そして寝ろ!」

『……はい』


 インターホン越しでも伝わる少女の苛立ちに屈し少年はスイッチを押し玄関のロックを解除した。


 そして少女が玄関の扉を開けると――、


「私、寝ろって言ったよね?」

「……分かりましたよ……」


 玄関の前でマスクを三重にした少年を目にした少女は目を細め威圧した。


「っあ、なんか欲しいものある?」

「ん?別に無いよ。必要なものは全部部屋に運んだから……」

「そう。後、メイド服借りるけど良い?」

「ん?別に良いが何で着替えるんだ?」

「何でも良いでしょ!」


 頬を少し赤らめ少女は更衣室へと消えて行った。


「うぅ~ぅ」


 少年は体を抱え身を震わせる。


「はぁ……これは本格的にヤバいかもな……」


 そんな事を言いながら少年は自室へと戻った。



「よっと……約束したんだから忘れないでよね……」


 少女は一人更衣室でそう呟きながらメイド服へと着替える。


「これで良し」


 少女は姿見で確認を済ませると、鞄から綺麗にラッピングされた箱を取り出すと更衣室を後にした。



 コンコンと少年の自室に響く。


「入って良いぞ……」


 少年のその声のすぐ後扉が開く。


「入るわね」

「あ……」


 少年は銀のトレイにラッピングされた箱を乗せ、メイド服を可憐に着こなした少女に見入ってしまう。


「な、何よ……」

「いや……」


 少年の呆然とした反応に少女は少し恥ずかしそうに頬を赤らめ目線を落とした。

 すると、少女の目に怒りを掻き立てる光景が飛び込んで来た。


「私、寝ろって散々言ったわよね?」

「っえ……」


 少年はそこで初めて自分がベット用の机に書類を広げている事を思い出した。


「っう……」

「そんなんだから……」

(アンタから目が離せないのよ!)

「ん?何に?」

「何でもないわよ!私の言う事聞かないならこれ上げないから!」


 少女はそう言うと後ろを向き、すねた様な顔をする。

挿絵(By みてみん)

「ハハ、悪かったよ……」


 何時もと違い何処か優しく可愛い少女の怒りに少年は観念し書類を片付け布団を被った。


「最初からさうしていれば良いのよ。はい」


 少女は微笑みながらラッピングされた箱を少年に手渡す。


「ありがとう」


少年はそう言い、笑みを浮かべた。


 それから、少年は一日寝て過ごし、少女は少年の食事等の仕事を行った。


 そして、少女が帰ったあと少年は少女から貰った箱を開ける。


「っふ、相変わらず器用だな……」


 箱から出て来たのは、砂糖細工で作られた少年と少女の人形とチョコやクッキーなどで作られたお菓子の家が乗っているチョコケーキだった。


「食べにくいな……これは」


 少年はそう言いながらケーキを冷蔵庫の中へとしまうのだった。


如何でしたでしょうか?

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