7日目
洗面所を後にした僕は、リビングに行くことにした。
相変わらず監視カメラの視線にはイラつくが、何とか心を抑えて僕はリビングに向かった。
家の中ともいえど、久しぶりに部屋の外に出たのでちょっと歩いただけで息が上がる。
「運動……しないと……。でも運動は、苦手……」
僕は極度の運動音痴で、かけっこではいつもビリだった。そのせいで、皆にからかわれてた。
先生は『運動が苦手でも、他のことで補えればいい』と言っていた。
けれど、裏ではその先生は、他の先生たちと僕の悪口を言い合っていた。
僕は、上面だけの優しさは大嫌いだ。
だから僕は、先生のその口をチャックした。
その後のことはよく覚えてない。
「あぁ、でも……」
そこから、僕は部屋に閉じこもるようになった。毎日ことあるごとに、父さんと母さんは喧嘩してた。
僕は怒鳴り声が嫌いだから、布団を頭まで被って泣きじゃくった。
大好きなご飯も、あまり食べてなかった気がする。
だから、僕は逃げるようにその日の出来事を忘れることにした。
それからのことは、ほとんど覚えていない。
忘れてしまった。僕の記憶から消し去った。
ただ、それだけのこと。
しばらく歩くと、目当てのドアが見えた。
僕は、荒い息を整えてリビングのドアを開ける。
ドアはいかにも古めかしい音を立て、僕の恐怖心をかきたてた。
「誰か、いる……?」
そのリビングはテレビはつけっぱなし、テーブルにはポテトチップスや食べかけのピザが散らばっていた。
僕は思わず手を伸ばしそうになったが、何とか耐えて周囲を観察する。
黒いぼろぼろのソファとクッションがあったので、僕はそこで休憩と仮眠を取ることにした。
寝る前に日記の新しいページをめくり、今日あったことを思いつく限り書いた。
「今日は、これで……おし、まい……」
最後の一行が書き上がる前に、僕は眠りについてしまう。
そして、僕は知らなかった。
リビングのドアを閉め、謎の男が『起こさないで』と人差し指を立てていることに。
白いページが、赤く染まろうとしていた。