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53日目

 幼い僕が引っ越しした先の家はかなり大きく、広かった。けど、なぜかその家は寂しそうに見えた。


 家なんて感情は無いのに、幼い僕はそんなことを思っていた。


 僕の母さんは世界的に有名な女優で、別荘や土地なんてちょっとお金を出せばすぐに買えるほどの人だ。


 しかし、父さんは家でパソコンとずっとにらめっこしているような人だ。外に出たかと思えば、偉そうな人にいつも頭を下げていた。


 そんな二人の間に、僕とライムは産まれた。産まれたばかりの頃は僕が未成熟だったり、ライムが普通の人と肌の色が少し違うだけで、病院では問題になったらしい。


「あの~……」


 引っ越し業者の人が幼い僕に話しかけてきた。なんだろう。


 幼い僕は考え事から、人の話を『ちゃんと』聞くモードに切り替える。


「荷物はどこに置けば……」


「あっちの、はしっこの部屋が、いい……。よろ、しく……」


「わ、分かりました」


 引っ越し業者の人はそう言うと、そそくさと他の人たちの協力しながら僕の家具や荷物を運んでいった。


 引っ越し作業が終わった後、幼い僕はすぐさまベッドに寝転がった。


 部屋の電気はつけず、カーテンは閉めきったままで。


「ここが、僕の……新しい……部屋」


 さっきまでの後ろ向きな気持ちは無くなって、何だか嬉しい気持ちになる。


 そして、幼い僕は布団を被るとすぐに眠りについた。


 眠っている幼い僕を見守るのは微笑ましいが、正直言って暇だ。


 僕は記憶を取り戻すためにも、空中浮遊しながら元の家に向かった。

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