5日目
ちゃんと荷物を入れたか確認して、僕は最後に日記をリュックに詰め込んだ。
チャックを閉め、背中にリュックをかける。
「これで、外……行ける。でも……」
僕はドアノブに手をかけた。
けど、僕は部屋に出るというのが名残惜しくて仕方なかった。
「ごめんね……僕の、部屋……。僕を守ってくれて、ありがとう……」
僕は自分の部屋にお礼を言い残し、ドアを開けて部屋の外へと踏み出す。
監視カメラの視線が気になった。
しかし、あの女を思い出すので記憶から消去する。
僕はやっと部屋から出ると、長い廊下が広がっていた。
「僕の家……。こんなの、だったっけ……?」
あまり部屋に引き込もっていたのと、すぐに忘れてしまう僕は、部屋の外さえも忘れてしまっていた。
天井にはあの女が仕掛けたであろう監視カメラと、盗聴機がいくつも設置されている。
すぐに忘れてしまう僕でも、あのストーカー女は嫌いすぎて頭にこびりついてしまったらしい。
「嫌いなやつ、ほど考えてしまう……。この迷信は、本当なんだ……」
気を抜くと、すぐにストーカー女のことを考えてしまう。最悪だ。もう、あいつとはできるだけ関わりたくない。
そんなことを考えているうちに、一つのドアが気になった。
『washroom』と書かれている。いわゆる洗面所だ。
僕はすぐさま洗面所のドアを開け、鏡を見た。
すると、灰色がかった白い髪。灰色と銀色の瞳。
そして、黒い長袖パーカーに白い肌。これが僕なのか?
床がひんやりすると下を見れば、僕が裸足だということに気がついた。
もちろん、ズボンもはいている。七分丈の黒いズボン。
格好からだと、これじゃ僕は寝起きの人だ。
僕の服はパジャマみたいだった。
少し和んだ気持ちになり、僕は日記に自分の似顔絵を描く。
「上手く、描けたかな……?」
新たなページに『me』と矢印をそえて、白い紙に黒く描いた。