38日目
僕は、これまでにない人生の危機を感じている。
死んだはずのアリアが生き返り、僕を殺そうとしているのだ。しかも、何度も銃で撃っても即座に回復する。
何か、呪術を解呪させる方法は……。
「あはっ、にぃさま。わたしと一緒に死にましょう? そうすれば、永遠に一緒にいられるのよ!」
「い、嫌だ……!」
僕ににじりよるアリアに拒絶反応を起こし、僕は思わず後ずさりをした。
「私よりも子供ねぇ、にぃさまは。こんなにもいいアイデアを提案してるのに、拒否するだなんて」
「酷いにも程があるわ」
アリアのその笑顔は、僕の頭に一生こびりついて離さないのだろう。
歪んだ性格のねじ曲がった笑顔、気味の悪い笑い声。
アリアの心の中には闇しか見えない。今まではほんのわずかの光もあったが、こうもなれば元に戻るなんてほとんど不可能だ。
「ごめんよ、アリア。君の期待に答えられなくて」
そんな言葉が、僕の口からこぼれ落ちた。どういうことだ? まさか、もう一人の……。
「その話し方は……。まさか、ライムにぃさま……!?」
「おっと」
アリアは僕の体を乗っ取ったライムという男に抱きついた。
もしかして、あの黒い海や僕に語りかけたのが、僕の体を使って話しているやつなのか……!?
簡単に言うとライムは僕の体を乗っとり、僕の魂は体の外に押し出された。
まるで、僕が幽霊になったみたいだ。声は他のやつらには届かない。
でも、僕の声はライムに直接響いているらしく、アリアが喜んでいる横で冷ややかな瞳を僕に向けていた。
「そうだよ、アリア。僕は存在しなかった、死んだはずのライムにぃさまさ」
僕の体を介して、ライムは僕に似合わない満面の笑みを浮かべた。




