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36日目

「そ、そんなことより……。キミの従者は酷いことになってるみたいねぇ?」


 エレジーが立て直すようにあざ笑うと、僕は一直線にテナーのもとへ駆け寄っていった。


「テナー……!」


「アルく、ん……?」


 よかった、まだ息はあるし生きている。僕はテナーがまだ生きる希望がある、ということを噛みしめた。


 テナーは出血が酷く、外傷は目立たなかったが呼吸が荒れていて、今にも生命の糸が切れる寸前のところだった。


「テナー、大丈……夫。僕が、守るから……」


 僕はリュックから治療セットを取り出すと、包帯を巻いたり止血したりして、簡単な応急処置をする。


 包帯を巻くときに、テナーの腕にはアザのようなものとボディスティッチをされたあとがあった。


 改めてみると悲痛な環境で育ち、僕やアリアに手酷くやられたのだと察して心が痛くなる。


「テナー……。ごめんな、さい……」


「いい、んですよ……。アルく……ん……」


 そう言って、テナーは目を閉じた。死んだわけではない。意識はあるし、かろうじて呼吸もしている。


「茶番は終わったかしら?」


「……うるさ、い。今すぐ、その金切り声を黙らせて……やる」


 僕のやるせない怒りはエレジーへと向き、僕は銃をエレジーへと標準に合わせる。


「その自信はいつまで持つのかしらぁ、アルトにぃさま?」


 声の主には聞き覚えがあった。執着と嫉妬が焼きついて離れない、あの声は。


「アリア……?」


 少女だったものはアリアへと変わり、不完全な存在から確立された存在へと変わった。


「えぇ、にぃさま。お久しぶりだこと。殺されて以来ね」


 アリアは僕に、ねじ曲がった性格の歪んだ笑顔で笑ってみせた。

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