3日目
僕は、この日記を書いてから飲まず食わずだ。
つまり、三日も何も口に含むことなく部屋で暮らしていた。
僕は部屋の辺りをどことなく見渡した。
白い部屋、整えられたベッド。
目の前には机と日記。鉛筆に消しゴム。
ぼろぼろの筆箱の中には、なぜかカッターナイフ。
「どうして……ここに、ある……?」
入れた覚えはないし、まず入れない。それが当たり前。
さらに中を探ると裁縫セットに包帯。
あと、僕が座っている椅子。妙にギシギシと音が鳴る。
気持ちとしては特に不快とは思わなかった。
なぜか安心感があって、それでいて疑問を覚えた。
「…………」
備え付けの悪い椅子に座って考え込む。ふと、自分の容姿が気になった。
筆箱からはこれ以上の情報を得られず、適当に部屋を散策する。
カレンダー、本棚。スマホに乱雑した漫画や小説……。
部屋は暗い。照明をつけようとしても、電気自体が切れていた。
そういえば、僕の部屋以外で人の気配が全く感じない。
けれど、僕は特に何も感じなかった。それが当たり前みたいに。
「とにかく……。鏡、とか……。ほしい……」
久しぶりに発した僕の言葉。
声も小さくかすれていて、あやふやな日本語だ。
何でだろう。昔は、もっと流暢に話せたはずだ。
「鏡、は……。自分が何者か知れる……。だから……」
「部屋から、出なきゃ……」
部屋から出ようとしたその時、チャットアプリの着信音が鳴り響く。
僕の部屋ではかなり大きく、思わず身をすくめた。
しかし、僕に残念ながら友達はいない。
「なんだろう……?」
不思議に思いながら、僕は暗い部屋で光るスマホを見つめる。
また一つ、白いページが黒い文字で塗り替えられた。