27日目
僕とテナーは散々泣いて謝った後、それをさえぎるようにスピーカーからノイズとあの金切り声が聞こえてきた。
『はーい、ごきげんよう! まさに、お涙ちょうだい素敵な友情ね~! あ、主従? どちらでもいいわよね』
「ストーカー女……!」
僕が涙を拭いながら立ち上がると、ストーカー女はあの耳が痛くなるような声で僕を笑った。
『あははっ! 今度は子羊のようにならなかったわねぇ。まぁいいわ』
『あと、紹介が遅れたわね。私はエレジー・エチュード。面白おかしい人間を監視、盗聴するのが趣味のレディよ』
「レディって言うより、おばさ……」
『そこ! 聞こえてるわよ!?』
僕が言い終わるよりも先に、ストーカー女は僕に噛みついてきた。あと、マイク特有のキンキンした音がうるさい。
「うるさ……」
「ま、まぁまぁ。アルくん、あの人も年なんですよ」
「うん……。そう、だよね……」
『二人で納得しない!』
僕らが話している間にストーカー女は口を挟む。ウザいにもほどがある。
『はぁ……。あんたらと話してたら、ツッコミが追いつかないったらありゃしない』
ストーカー女は小声で言ったつもりだろうが、丸聞こえである。
『ともかく! 今回は貴方たちに、とっておきのサプライズを用意してるわぁ』
可愛い子ぶっているつもりだろうが、僕には分かる。もう年で無理していると言うことを。
「サプライズ……。あまりいい予感がしませんが、それは何なのでしょう?」
テナーがストーカー女に尋ねると、ストーカー女は声のトーンを落とし口を開く。
『殺し合いよ』
「なっ……!」
「…………」
『だいたい検討はつくでしょう? まぁ、今の貴方たちには到底できないだろうけど……。私が必ず、最適な条件と環境で貴方たちの死を見たいの』
僕は心底バカらしいと思った。人の死を見たいだなんて、歪んだ性癖を持つおばさんだ。
「そんなっ……。てめぇ、ふざけんなババァ!」
テナーは激昂し、暴言を吐く。当たり前だ。僕もふつふつと怒りがわき上がってくる。
「ふざけるのも、大概にしろ……! おばさん!」
『きーっ! どいつもこいつも口がなってないわね! いいわ、そこまで言うならスペシャルコースよ!』
ストーカー女はボタンらしき物を押すと、ガチャリと何かの音がした。




