24日目
「さっきも言ったけど……。まずは、話の共有……。色んな情報を再確認して、あのストーカー女をどうにか、させる……!」
「そうでも、しないと……。僕の、気がおさまらない……!」
僕は机に身を乗り出し、怒りをあらわにする。僕は怒鳴り散らしたりはしないけど、僕だって人間だから当然怒る。
からっぽでも感情はある。それを見た従者のテナーは少し驚いていた。
「あ、アルくん……」
テナーは一呼吸置いて、言葉をつむいだ。
「……分かりました。私の話でよければ、お聞きください」
テナーは僕がいない間どうしていたとか、この施設のことを一通り教えてくれた。
「私が何者かに、呪術で操られているのは覚えてますよね?」
「うん、覚えてる……」
僕はそのことを日記に書いてあるから覚えている。
それに、テナーは一時的に正気を取り戻したとはいえ、僕をまた殺そうとするかもしれない。
でも、その時はその時だ。ちゃんと考えて対処しよう。
「私はその人物に、『お前はこの部屋で待っていろ。衣食住はそろっている。もし足りない物があれば、通販や出前を取れ』……と」
「あぁ……。だから、あんなに……テーブルが散らかってたんだ……」
僕はリビングで最初に見たテーブルのことを思い出す。多分、あれは限りなく食生活が極端な人の食べ方だ。
「テナー……太った?」
「えぇ、三キロは確実に……」
「そっか……」
「はい……」
本当は太った? とは言いたくなかった。ただ、テナーの食べ方は『カレーは飲み物です!』みたいな感じだったからだ。
テナーは礼儀正しい従者だが、早く食べて流し込むタイプで、スプーンやナイフの持ち方がおかしい。
僕はよく食べてよく寝る子供で、どんなにご飯を食べても太らない体質なのだ。えっへん。
……自慢はあまりしないでおこう。口で言ってないのが幸いだが、もし言っていたらテナーに嫌われたかもしれない。
「その……。テナーは、自分をリビングに連れてきた人のことを、覚えてないの……?」
「はっきりとは覚えていません。ただ……」
「ただ……?」
テナーは生唾をごくりと飲んで、呟いた。
「あの、恐ろしい悪魔のような人間です……!」




