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19日目

「……。そう、だ……。テナー……」


 僕はアリアにお祈りをしてから、テナーの方に小走りで向かう。


「テナー……。大丈、夫……?」


 僕がテナーに声をかけると、彼はゆっくりと起き上がり笑顔を見せた。


「いえ、大丈夫ですよ。アルくん。心配をかけて、申し訳ありません……」


 テナーは僕に笑顔を見せたが、『疲れている』と僕にでも分かるほどだった。


「テナー、休憩……」


 僕が言い終わるよりも先に、テナーは笑顔で言葉を続ける。


「……私の方は大丈夫ですので、アルくんはゆっくりお休みください」


「でも……」


「人を(あや)めたショックは大きいでしょう。ですので……」


「僕の言うことを聞けよ」


 自分でもこんなに低い声で、誰かに命令するのは初めてだった。


 テナーは目を見開き、一瞬ためらったが僕に(ひざまず)いてこう言った。


「……はい、ご主人様(マスター)


 最終的に、僕はテナーの提案でリビングに行くことになった。


 テナーは今度は手を出さないと言っていたが、正直不安だ。


 確かに彼は信頼できる。けど、普段の言動やたまに出る『いつもじゃない』顔や言葉には不安しかない。


 僕はちらりとテナーの顔を見る。テナーは気づいていないらしく、何やら考え事をしていた。


 だが、その顔が『いつもじゃない』顔だった。


 オッドアイの瞳には光はなく、暗くよどんでいる。人でも殺しそうな顔だ。


「……アルくん」


「な、何……?」


 テナーの『いつもじゃない』低い声に、僕は少しだけびっくりした。


 その声は異様に冷たく、鋭いナイフのようなものだった。


「銃は、どこで手に入れたのですか?」


「り、リビングの……奥の、部屋……。棚の中にあった……」


 僕は声を震えさせないよう何とか抑える。けど、テナーには気づいているかもしれない。


「……。それを見て、どう思いました?」


「え、えと……。『何でここにあるんだろう』って思った……。でも、自分の身を守るなら、仕方ないと思って……」


「……そうですか」


「では、アリア様を殺した時はどう感じました?」


 氷のような冷たい視線に、僕は目をそらした。


「……特に。特に、何も思わなかった……。ただ、邪魔だなって……」


「……そうですか」


 テナーは先ほどとは違い、うっとりとした表情を浮かべる。


「……それでこそ、私の友達です。ご主人様(マスター)

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