13日目
意識が遠のく。まるで、海の底にいるような感覚だった。
うまく息ができない。僕は目の先にある光に手を伸ばしたけど、届かなかった。
僕は暗い海の底へ沈んでいくばかりで、どんどん光も意識も無くなってくる。
僕はこんなところで死んでしまうんだろうか? 嫌だ、まだ死にたくなんかない。
でも、暗い部屋に閉じこもっていたときは、死にたいと感じていたときもあった。
こんな僕を、神様は許してくれるのだろうか?
真っ暗な部屋で、誰も来ない部屋。
友達なんて当然いない。だから、僕はいつもぬいぐるみで遊んでいた。
その後のことはあまり覚えていない。
一瞬だけ、ノイズとともに誰かが浮かび上がった。
誰かは分からない。名前も分からない。けど、僕に似ていた気がした。
でも、僕とは髪の毛の色も違う。それに、大人しい僕とは反対の活発で……。
頭が混乱してきた。僕に弟なんていなかったはずだ。
そう、いなかったはずなんだ。
「ぐっ……!?」
急に頭が痛くなる。耳鳴りも酷い。
でも、僕は何か大事なことを忘れている気がする。
それはいったい何なんだろう? ツギハギ男でも、アリアでも、ストーカー女でもない。
「誰だ……? 誰なんだ……!?」
そのとき、ふっと僕の目の前にその『誰か』が現れた。
男の子で、髪色と肌の色は違うけど僕にそっくりだった。
「思い出してくれないんだね。僕のこと」
「僕は悲しいよ。ねぇ、にいさん。本当に、何も覚えてないの……?」
僕がうなずくと、その男の子は悲しげに微笑んだ。
「そっか。じゃあ……仕方ない」
「僕を思い出すまでは、僕に会えない。またね。アルトにいさん」
男の子は僕を突き放し、暗い闇の底へと沈めさせる。
新たな日記のページは、黒ずんでいて何が書いてあるのか分からなかった。




