↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/60

10日目

 あの狂ったツギハギ男から何とか逃げ出して、今僕は長い廊下を走っている。


 ドアを見つけても鍵がかかっていたり、部屋の中に閉じ込められそうになったりで散々だった。


 今頃あのストーカー女は、監視カメラ越しに僕の様子を見てげらげら笑っているだろう。


「ムカつく……」


 ストーカー女のことを考えると、腹が立って仕方ない。こうなったら、一思いに口をチャックしてやる。


 あと、後ろからの視線がひしひしと伝わっていて、僕はうっすらと冷や汗をかいていた。


 こういう時は振り返らないのが一番だ。恐怖と緊張が入り交じって、涙が出そうになる。


 けれど、怖いもの見たさと言うのだろうか。逆に、後ろが気になって仕方がない気持ちもあった。


 思考がこんがらがって、頭の整理が上手くいかない。頭のなかで、ノイズと鈴の音が打ち付けるように鳴り響く。


 僕は思わずしゃがみこんだ。色んな声が、音が僕を支配する。


 その時だった。


「……アルトにぃさま?」


 後ろから、女の子の声が聞こえた。


「アルトにぃさま、大丈夫?」


 女の子が駆け寄った時には、僕は意識はもうろうとしていた。


 貧血、目眩、過呼吸……。同時に三つの症状が僕を襲っている。


 どうして僕は、こんな目に合わないといけないんだろう。


 どうして僕は、生きなきゃいけないんだろう。暗い部屋で死んだ(眠った)方がマシなのに。


 あぁ……。もし、神様がいるならば……。せめて、からっぽな僕に、綿(わた)でもつめて僕をいっぱいにしてくれたら……。


 そんな僕の心を見透かすかのように、黒いセミロングで赤い目の女の子は、自分の鞄から裁縫セットを取り出した。


「そうね、にぃさま。わたしはアルトにぃさまのこと、ちゃんと分かってる」


 女の子は糸を通した針を持って、僕の閉じそうな瞳を見つめる。


「だから……。わたしがアルトにぃさまを、直(・)し(・)て(・)もいいわよね?」


 新しい真っ白なページが、飛び散った僕の血肉で赤くなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。