1日目
連載小説3つ目です!夏休みまでに完結できるかチャレンジ
僕の頭はからっぽだ。覚えてもすぐに忘れてしまう。
けど、これだけは覚えている。
僕は雷と怒鳴り声が嫌いだ。
怖い、嫌い、逃げ出したい。
脳に突き刺すようなその音は、僕を恐怖に陥れる。
昔はよくそれで泣いた。
泣いて、縮こまって、布団に閉じこもる。
いつもそうだ。僕は隠れて、逃げてばかり。
何も成し遂げてなんかいない。
僕に才能はない。
ただ与えられたものを淡々とこなす。
それが僕。まるで機械みたいな人間だ。
特に努力しようとは思わなかった。
けれど、両親には褒められたいといつも思っている。
そんな矛盾を抱えて、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
そう強く思えば思うほど、涙があふれてくる。
僕のしたいことは何だったんだろう。
僕のからっぽの頭には、新規保存も上書きもない。
ただ、伝えられたことを言われた通りにして。
すぐにそれは僕の頭から流れ落ちて。
僕の頭には何もない。
からっぽの、空気で虚像の僕が存在している。
体の中に血液が回って、心臓が動いている。
それが不思議なくらいに、今日も僕は生きている。
けれど僕は、いつか『そんなこと』も忘れてしまうのだろう。
生きていることに実感を持たなければ、人はすぐに死ぬ。
人間はもろく、儚い生き物だ。
そして自分の都合のいいように置き換える。
自分さえ都合がよければそれでいい。
そんな人間は僕は大嫌いだ。
けれど、そんなものはすぐに忘れる。
忘れてしまえば、僕は自由になれる。
人間関係も自分の立場も全て忘れて。
今日のことを削除して。
僕は今日も死んだように深い眠りにつく。
そして眠ったことさえも、僕は忘れてしまうのだ。
「……うん、こんな感じでいいかな」
僕は真っ白なページを黒い文字で埋めつくし、日記を閉じた。