少年篇(3)
流石に、ゲームセンターに着く頃には俺も妹も手を放した。
ゲームセンターと俺と妹は口にしていたが、専用の建物があるのではなく大型ショッピングモールの1フロア丸々使ったゲームコーナーという方が正確だろう。
「お兄ちゃん、今日はどんなゲームやる?」
「んー。そういえば、俺たちはいくら持ってるんだ?」
俺の持っている三つ折り財布は小銭を入れるところと、紙幣を入れるところが分かれているため、駄菓子屋では紙幣の確認をすることはなかった。俺の収入源は主にお手伝いの収入、おじいちゃんおばあちゃんからのお小遣いだ。
気まぐれでお父さんやお母さんがお小遣いをくれることもたまにある。
財布の中身を確認してみると、千円札が4枚、500円玉が1個、あとは数十円といったところだった。
「うわッ!お兄ちゃんお金持ち!!どうしてこんなに持ってるの?もしかして私とゲームセンターに来るために貯金箱割っちゃったの?」
「そんなわけないだろ。俺はエスパーか。多分この前おじいちゃんからもらったお小遣いだろ。そんなにお金使うことがないから忘れてた」
俺は心の中でおじいちゃんにお礼を言った。小学生にとっては100円ですら大金でその工面に四苦八苦する。五千円ともなればお年玉をもらった時か貯金箱を割ったときにしか手にできないだろう。
ゲームセンターで四千五百円を手にしている。
俺は浮かれていることを自覚できず、妹に促されるまま千円札を無価値なコインに変換していた。
「千円で400枚かぁ。得をしたような、そもそもが損なような……
とりあえず、200枚ずつ分けて遊ぼうぜ」
「えェーーーーーーッ!それじゃあ一緒に遊ぶ意味がないじゃん!!二人で400枚!」
「はぁ。わかったよ。じゃあ何やりたい?」
「んーとねぇ。あ、あの魚釣るやつやりたい!!」
妹が指差した先にはコインを入れて釣竿を選択し、魚や蛙、亀、クジラなどを捕まえるゲーム機があった。六人遊べるようで、ちょうど二人分空いていた。特にやりたいゲームを決めていなかったので、俺は異論を挟まず小さな妹の背中を追った。